異世界から持ち帰ってきた相棒をオタク沼に落とそうと思う(いせぬま)   作:ニキ/バハちゃん

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1-4-A1:複数回に分けてアラームをセットしてるような奴は最終的に消すのを面倒くさがってデッドラインのみ残し他全てを削除するのは周知の事実。──人はこれを退化と言う

「あにそん……」

「ランダムダンス……」

 

 徹夜のアニメ鑑賞会から一夜明けて。

 寝巻きの雑魚寝三人衆は取り敢えずの精神で、遅めの朝食を摂っていた。

 メニューは昨日の夕飯の残り物に、エミが秒で作った胃に優しい味噌汁という実に健康的なもの。

 もそもそと箸で未遥さんの作り置き(ラスト)をつつきながら、話題の中心となるのはざくろの発した遊びの誘い。

 そもそもの単語を知らないエミのひらがな発音を自然と引き継いではみたものの……

 

「「って、何?」」

 

 悲しいかな、その言葉を知らないのは俺もなのだ。

 

「……エミちゃんは兎も角、上城くんも知らない感じ?」

「俺がオタクになったのって大体一年前くらいだし、実の所界隈にそんな詳しい訳じゃないんだよね……アニソンのライブとかなら知ってるけど、ランダムダンスはちょっと聞いた事無いかも」

「私はそもそもあにそんが何か分からないですけれども」

「「アニメの曲(OP&ED&劇中曲)」」

「ああ!(理解した顔)」

 

 寝起きの頭で思い出せないとかではなく、単純に知らないその単語。いや、単語パーツ一つ一つは当然理解は出来るんだけど、アニソンをランダムでダンスするって一体何? 組み合わせたらまるで想像付かないんですけど?

 無知を晒す形となった俺に対し、ざくろの反応は"まぁしょうがないかぁ"と言った感じの半ば諦めの混じった苦笑い。……うーん? これ、俺が無知というより、元々知名度の低いイベントだったりするんだろうか?

 

「こほん! ……説明しよう! アニソンランダムダンスとは! ライブ会場でDJがランダムに流すアニソンの内、自分が踊りたい曲がかかったらステージに出て好きにダンスするリアルイベントのことである!」

「何その超楽しそうなイベント!?」

「何そのエミが超好きそうなイベント」

 

 一人先に食べ終えたざくろはちゃんと「ごちそうさまでした」と述べた後、態とらしい咳払いをしてからナレーション風にイベントの概要を語りだす。

 聞いた感想としては(うわエミ好きそー)以外に無いのだが、チラと横を見てそこに居たのは想像以上に目をキラッキラとさせている銀髪の異世界人様だ。

 あーこりゃ参加確定ですね、ほな今日のランニングは無しということで。……アーミッカボウズニナッチャッテカナシイナー! ホントハゼンゼンヤスミタクナンテナイノニナー!

 

「……てかそれ、チケットとかはどうなんの? 俺リアイベ何一つ行ったことないから分かんないんだけど、当日参加とか出来るもんなの?」

「そもそもチケット予約とか無いね。現地で参加費代わりのドリンクチケットとかは買わなきゃだけど、逆に言ったらそれだけかな?」

「へー……イベント場所と時刻は?」

「今回のは電車で30分。開始時刻はなんと〜〜……………………徹夜で寝坊したのもあって、気付けばもう数時間前(・)」

 

 何目逸らしてんだコラ。

 

「お前イベント前日にウチ来て何してんの???」

「えぇ!? もう終わっちゃったの!?」

「いや、数あるイベントステージの一種にランダムダンスがあるって感じだから、メインまではまだ二時間くらいあるっちゃあるよ。アラームは準備込み(・・・・)で最悪この時間に起きれば間に合うデッドラインにセットしてたから」

「寧ろデッドラインのアラームしかセットしてませんでしたよねあなた?」

 

 エミと揃って「「ごちそうさま」」を言う頃には、時刻はもう11時半を過ぎている。

 あくびを噛み殺しながらそう話すざくろは、思い出したかのようにスマホに何事かを打ち込んでいたが、ふと何かに気付いたのか苦虫を噛み潰したような顔へ変化した。

 次いで視線を方々に彷徨わせて何を探しているのかと思ったら、見付けた充電器にそそくさとスマホをぶっ刺し始める。ああ、充電無かったの?

 いや別にいいけどさ、余りにも躊躇が無いの俺ん家(ち)を自宅か何かと勘違いしてらっしゃらない?

 

「あ、それで二人とも、行くってことでいい?」

「もち!」

「折角誘って貰ったし、エミも乗り気だし、行くよ。……さっき準備込みって言ってたけど、何か俺らも用意しなきゃいけないものある?」

「んー? じゃあ出来れば異s……向こうで着てた制服とか! あ、シャワー借りるよ?」

「え? 要るのそれ?」

「出掛ける前なんだからお風呂は入るに決まってんだろお前!?」

「アラン、今のは流石にデリカシー……」

「いやそっちじゃなくて制服の話だよ!? これ分かってて揶揄(からか)われてるよな俺!?」

 

 やること(充電)済んでそそくさと洗面所へと引っ込んでいくざくろ。

 エミ視点のことを考えて『異世界』ではなく『向こう』と咄嗟に言い換えれる子が、この場でシャワーのことと取り違えるのは流石にからかい目的としか思えな……あっほら案の定ほくそ笑みながら手ひらひらと振ってくるし!

 

「別に無くてもいいと思うけど、きっと持ってった方が二人とも楽しめると思うよ? だって──」

 

 知らないことばかりのエミが何の疑問も無く荷造りを始めたのを見て、時間まだあるなら先に洗い物片付けるかなと流しに向かう。

 短い付き合いの中で理解したざくろの人となり的に、どうせしょうもない理由なんだろうなぁ等と、他人事のように聞き流す俺の背に衝立の奥からこんな種明かしの言葉が届く。

 

 

 

「──アニソンランダム(・・・・・・・・)ダンスはコスプレが(・・・・・・・・・)正装なんだから!(・・・・・・・・)」

 

 

 

 ………………はい?

 




※絶対の正装では無い
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