異世界から持ち帰ってきた相棒をオタク沼に落とそうと思う(いせぬま) 作:ニキ/バハちゃん
『きょう午前、○○市の住宅街で火事があり、現場には消防車などが駆けつけました。警察と消防は、出火当時の詳しい状況について──』
「チャンネル伸びたなぁ」
「ねーアラン、コメント返信ってどのくらいした方がいいのかしら」
「気に入ったものにするくらいで、基本はいいねでいいと思うよ」
「ん!」
適当に着けたテレビから垂れ流される地方ニュース。もうそろそろ寝なきゃダメなので、手始めにそれの電源から切る。
初登校を明日に控えているというのに、着々と
「──向こうの公式動画、もう50万再生超えてるよ」
──アニソンランダムダンスというイベントは、何も現地体験型の閉じコンでは無いらしい。
ダンススペースの正面、そこに設置されたカメラ。それが撮影したイベント風景は後程、
……そう、
あのメズマライザーのMV再現が世間に拡散された結果、その踊り手であるエミのチャンネルに視聴者が流入し、跳ねたのだ。
(ついでに、ほぼ何も弄ってない素人編集の
思い返せばざくろが『後日動画が上がる』とか言っていたような記憶がある。コレかよ。
「いやぁ…………現地撮影なのに公式動画が編集扱いされてんの、なんか申し訳無いな」
「ねぇアラン! これって最近学んだ"異世界人の現代チート無双"と言うやつかしら!?」
「そうだよ。流石だね、フィジカルモンスター姉貴」
「ねぇそれやめて??? 皆して私のことそう呼ぶけど、そのあだ名は可愛くない!!!」
名前もSNSアカウントも分からず、ただ尋常でない身体能力でメズマライザーMVを踊りきった化け物に、誰かが仮の呼び名として付けた
公式動画のコメント欄はおろか、エミのチャンネルでさえ定着してしまったその
こんなにも可愛い女の子なのに、一番先頭に来る特徴がフィジカルなの、流石に草生えるんだよね。
「なーフィジモン」
「何? もやし」
「ダンスって難しい?」
「──出来たらかっこいいとは思うわよ?♡」
「お前、その言葉使えば俺が動くと思ってる節無い?」
「あるわ。で、やるの?」
「……体力着いたら、覚えてみようかなぁとは思ってる」
「マジで!?」
「……事実、この人らかっこいいし」
俺のスマホで再生されている、
視聴履歴を染めるそれらを観て、改めて実感する
自信満々に前に出て、恥ずかし気も無くコスプレ姿で踊り散らすダンサー達は、例えそれがエミじゃなくても
このイベントを気に入ったエミに、きっと今後も連れ出されるだろう、音と踊りとオタクカルチャーの祭典。
ここで
──"ピンポーン"
「……こんな時間に?」
「またミハル?」
「さぁ?」
思考をぶった斬るかのように、唐突に玄関のチャイムが鳴った。
時計はとうに23時を超えている。ド深夜に来訪者とか、どこまで緊急な案件なの? 可能なら明日とかにしてくれよ、寝る時間なんですけど。
──"ピンポーン"
「はいはーい」
二度目のチャイム。……マジで何事? 明日まで待てない事案なの?
パパっと服を正し、声をかけながら玄関へ。
最低限の防御魔法を張りながらチェーンと鍵を外し、いざドアを開ければ──
「……こ、こんばんはー、あっくん」
──そこに居たのは、ざくろちゃんだった。
「……こんな時間にどしたの? 何か忘れ物でもあった?」
「……ッスゥー………………」
凄く挙動不審な少女の手には、それなりの大きさのキャリーケースが握られていて。
目線を右往左往させる少女の顔は、過去一の焦燥に染まっていて。
……え、マジで何があった?
挙動不審極まりない彼女の様子に、取り敢えず当たり障りの無いことから聞いてみると、返答は意を決したかのような深呼吸。
ド深夜の、アパートの玄関前にて。
唐突に現れた彼女が、綺麗な土下座と共に口にしたのは…………俺の想像力の範疇を遥かに超える、
本当に、有り得ない告白だった。
「──魔法の練習ミスって自宅吹っ飛んだんで、暫くお家に泊めてください!!!!!」
…………はい?
用語:アニソンランダムダンス
1-4で扱った、まだ創作でほぼ使われたことの無いコンテンツ。
元々はK-POP文化で広まった『ランダムプレイダンス』から派生した、アニメ・ボカロ・ゲーム等の楽曲を中心にした参加型ダンスイベント。
DJが流す曲に合わせ、踊れる人が前へ出て踊り、曲が変われば参加者も入れ替わる。振り付けを完璧に覚えている必要は無く、見様見真似やフリーダンス、オタ芸、コール等でも参加出来る。
現在の名称が広まるきっかけの一つとなったのが『アニメメメ』というイベント団体で、2023年7月から『アニソンランダムダンス』の名称で動画投稿を開始。
名前にアニソンと付いているものの、実際にはVOCALOID・VTuber・ゲーム・アイドル・J-POP等、選曲範囲は極めて広い。
踊ってみた文化、コスプレ文化、アニソンDJ文化等が混ざり合ったイベントで、初心者から熟練ダンサーまで参加出来るのが特徴。
この作品で描写した当イベントの内容については、イベント名や開催場所、DJ名、メズマライザーのMVを完コピするようなフィジモン姉貴等はフィクションですが、文化や内容はそのまんまです。
どんなイベントか実際に見たい人は、YouTubeとかを調べてみよう!
以上で一章完結になります! ご愛読&応援ありがとうございました!
これから先は何話か番外編を投稿した後、二章書き溜め期間に入ります!
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