『一章完結』異世界から持ち帰ってきた相棒をオタク沼に落とそうと思う(いせぬま)   作:ニキ/バハちゃん

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1-4→2-1:い せ ぬ ま 

『きょう午前、○○市の住宅街で火事があり、現場には消防車などが駆けつけました。警察と消防は、出火当時の詳しい状況について──』

 

 

「チャンネル伸びたなぁ」

「ねーアラン、コメント返信ってどのくらいした方がいいのかしら」

「気に入ったものにするくらいで、基本はいいねでいいと思うよ」

「ん!」

 

 適当に着けたテレビから垂れ流される地方ニュース。もうそろそろ寝なきゃダメなので、手始めにそれの電源から切る。

 

 初登校を明日に控えているというのに、着々とインターネット(全くもって)中毒に陥っている(寝ようとしない)エミさんはといえば、自分のチャンネルの初動画(『あのね』)に着いたコメントを楽しそうに眺めている。

 

「──向こうの公式動画、もう50万再生超えてるよ」

 

 ──アニソンランダムダンスというイベントは、何も現地体験型の閉じコンでは無いらしい。

 ダンススペースの正面、そこに設置されたカメラ。それが撮影したイベント風景は後程、主(・)催(・)し(・)た(・)集(・)団(・)の(・)公(・)式(・)Y(・)o(・)u(・)T(・)u(・)b(・)e(・)チ(・)ャ(・)ン(・)ネ(・)ル(・)に(・)、そ(・)の(・)ま(・)ん(・)ま(・)ア(・)ッ(・)プ(・)ロ(・)ー(・)ド(・)さ(・)れ(・)る(・)の(・)だ(・)。

 

 

 ……そう、

 

 

 あのメズマライザーのMV再現が世間に拡散された結果、その踊り手であるエミのチャンネルに視聴者が流入し、跳ねたのだ。

 

 

(ついでに、ほぼ何も弄ってない素人編集の雨中雨弾き踊ってみた(・・・・・・・・・・)も、上手なCG編集と認識されて好評だし……ここまで早く伸びるのは想定外)

 

 思い返せばざくろが『後日動画が上がる』とか言っていたような記憶がある。コレかよ。

 

「いやぁ…………現地撮影なのに公式動画が編集扱いされてんの、なんか申し訳無いな」

「ねぇアラン! これって最近学んだ"異世界人の現代チート無双"と言うやつかしら!?」

「そうだよ。流石だね、フィジカルモンスター姉貴」

「ねぇそれやめて??? 皆して私のことそう呼ぶけど、そのあだ名は可愛くない!!!」

 

 名前もSNSアカウントも分からず、ただ尋常でない身体能力でメズマライザーMVを踊りきった化け物に、誰かが仮の呼び名として付けた識別名(あだ名)──フィジカル(フィジ)モンスター(モン)姉貴(ネキ)。

 公式動画のコメント欄はおろか、エミのチャンネルでさえ定着してしまったその呼び名(印象)を、果たして彼女は塗り替えることが出来るのだろうか。

 こんなにも可愛い女の子なのに、一番先頭に来る特徴がフィジカルなの、流石に草生えるんだよね。

 

「なーフィジモン」

「何? もやし」

「ダンスって難しい?」

「──出来たらかっこいいとは思うわよ?♡」

「お前、その言葉使えば俺が動くと思ってる節無い?」

「あるわ。で、やるの?」

「……体力着いたら、覚えてみようかなぁとは思ってる」

「マジで!?」

「……事実、この人らかっこいいし」

 

 俺のスマホで再生されている、他の(・・)アニソンランダムダンス回の映像。

 視聴履歴を染めるそれらを観て、改めて実感する輝き(・・)への遠さ。

 自信満々に前に出て、恥ずかし気も無くコスプレ姿で踊り散らすダンサー達は、例えそれがエミじゃなくても眩しくて(・・・・)。

 

 このイベントを気に入ったエミに、きっと今後も連れ出されるだろう、音と踊りとオタクカルチャーの祭典。

 

 

 ここで君(・)と並ぶ未来を、きっと夢(・)と呼ぶのだろう。

 

 

 ──"ピンポーン"

 

 

「……こんな時間に?」

「またミハル?」

「さぁ?」

 

 思考をぶった斬るかのように、唐突に玄関のチャイムが鳴った。

 時計はとうに23時を超えている。ド深夜に来訪者とか、どこまで緊急な案件なの? 可能なら明日とかにしてくれよ、寝る時間なんですけど。

 

 ──"ピンポーン"

 

「はいはーい」

 

 二度目のチャイム。……マジで何事? 明日まで待てない事案なの?

 パパっと服を正し、声をかけながら玄関へ。

 最低限の防御魔法を張りながらチェーンと鍵を外し、いざドアを開ければ──

 

「……こ、こんばんはー、あっくん」

 

 ──そこに居たのは、ざくろちゃんだった。

 

「……こんな時間にどしたの? 何か忘れ物でもあった?」

 

「……ッスゥー………………」

 

 凄く挙動不審な少女の手には、それなりの大きさのキャリーケースが握られていて。

 目線を右往左往させる少女の顔は、過去一の焦燥に染まっていて。

 

 ……え、マジで何があった?

 

 挙動不審極まりない彼女の様子に、取り敢えず当たり障りの無いことから聞いてみると、返答は意を決したかのような深呼吸。

 

 ド深夜の、アパートの玄関前にて。

 

 

 唐突に現れた彼女が、綺麗な土下座と共に口にしたのは…………俺の想像力の範疇を遥かに超える、

 

 

 

 本当に、有り得ない告白だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──魔法の練習ミスって自宅吹っ飛んだんで、暫くお家に泊めてください!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………はい?




用語:アニソンランダムダンス
1-4で扱った、まだ創作でほぼ使われたことの無いコンテンツ。
元々はK-POP文化で広まった『ランダムプレイダンス』から派生した、アニメ・ボカロ・ゲーム等の楽曲を中心にした参加型ダンスイベント。
DJが流す曲に合わせ、踊れる人が前へ出て踊り、曲が変われば参加者も入れ替わる。振り付けを完璧に覚えている必要は無く、見様見真似やフリーダンス、オタ芸、コール等でも参加出来る。
現在の名称が広まるきっかけの一つとなったのが『アニメメメ』というイベント団体で、2023年7月から『アニソンランダムダンス』の名称で動画投稿を開始。
名前にアニソンと付いているものの、実際にはVOCALOID・VTuber・ゲーム・アイドル・J-POP等、選曲範囲は極めて広い。
踊ってみた文化、コスプレ文化、アニソンDJ文化等が混ざり合ったイベントで、初心者から熟練ダンサーまで参加出来るのが特徴。
この作品で描写した当イベントの内容については、イベント名や開催場所、DJ名、メズマライザーのMVを完コピするようなフィジモン姉貴等はフィクションですが、文化や内容はそのまんまです。
どんなイベントか実際に見たい人は、YouTubeとかを調べてみよう!



以上で一章完結になります! ご愛読&応援ありがとうございました!
これから先は何話か番外編を投稿した後、二章書き溜め期間に入ります!

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