『一章完結』異世界から持ち帰ってきた相棒をオタク沼に落とそうと思う(いせぬま) 作:ニキ/バハちゃん
こんなに間を開ける予定は無かった……!
異世界転移という創作物のジャンルがある。
自分のケースを分類するのなら、大ジャンルはこれになる。
小ジャンルは──
ある世界の元いた人物に、ある時別人の意識が憑依する。
大多数の作品において、憑依先の人格が消えるか混ざる、そんな創作題材。
自分の
それは
きっかけは事故だった。
護身術の訓練中に、たまたま頭に重い一撃が入り、気を失う。
そこから寝ている間に流行り病を患い、高熱に数日魘されて。
意識が朦朧とする日が暫く続き……そうして君は意識を取り戻した。
まるで異世界憑依物の導入みたいな形で、君は意識を取り戻して……
「ねぇ
『……何だ、ゴミ』
「どうやったら俺の意識だけ、この世界から消せるかな」
『
──異世界に来てからの第一目標は、自殺だった。
****
魔法王国リベルグラム。
大層な通称に恥じない、魔法研究に関しては他国を圧倒する、
その内、国内において
俺が憑依してしまった『アラン・アーバント』という
「おやアラン、もう動いていいのかい?」
「ッ……ええ父様。なにせ数日分の勉学の遅れが出ていますので、まずはそれを埋めなければならないでしょう?」
「ははっ──うん、悪くないね、その動機?」
『……俺に興味が無いくせに、表情一つ変えずによくもまぁ……』
性格は
一人称は俺で、出力される言葉は常として口汚い。
自他に厳しい血統&実力至上主義者であり、とりわけ平民は生物レベルで見下すような人物だが、それを面と向かって叱れるような人は、片手で数えられる程度しか存在しない。
『おい。口調が気持ち悪い』
「……外聞評価、落ちるよ?」
『自分が自分じゃなくなる方がクソだ、そこは変えろ』
「……分かった、頑張るね」
『チッ……』
──何故なら彼は
勉学にも礼儀作法にも、一度として学習に詰まったことは無く。
魔法の行使や剣術等の実技でも、同年代の子と比べ物にならない程、上達が早い。
才覚と出自が盾たり得るからこそ、彼の振る舞いを止める者は居ない。
言われた所で、「黙れ凡人」と切って捨てる彼は、まさに無敵の存在で。
──
「寝起き早々でも訓練の時間はちゃんと守れますか。遅れれば叩き起しにいくところでしたよ」
「ぼ──
「アラン様が弱っちかっただけの話でしょう?」
『しばくぞこいつ。おい、黙らせろ』
(ごめん無理ぃ……アラン君ならまだしも、僕戦った経験とかないよ?)
『チッ……別に俺でも勝てねぇよ、歳の差でしかマウント取れない爺の分際で』
屋敷の庭にて、僕に木剣を向ける初老程の執事。
名を、『セバス』
アラン君の教育係であり、躾役であり、そして
先程述べた、この家で唯一アラン君に躾が可能な人物である。
「剣を構えなさい、今日もボコって差し上げましょう」
「……寝起きで身体がなまってる、少し覚束無いからな」
「ええ、当主様から聞いていますよ。ちゃぁんと加減をしてやれと」
『見え透いた嘘だ。父が俺のことを話すわけが無い』
(僕も僕だけど、君たちどんな親子関係なの……?)
──同期している記憶から、アラン君として振る舞うための、言動やルーティンを掘り起こしていく。
時間は、止まらない。
だから、せめて、
(……軽い、なぁ)
初めて握った木剣の感触。
日本での僕ならきっと、それを重いと言っていた。
****
やりたいかやりたくないかなんて、僕の評価関数に無い。
それが現状における、僕の
『……年嵩があるのは評価する。勉学は俺より知っている』
「地理と歴史、魔法学はてんで流用出来ないね……算術や読解ならかなりズル出来るけど」
『今詰まっているところはお前でいうショウガッコウの範囲だ。覚えるのなんざ訳ないだろ』
「あんまり賢くなくてごめんね……」
『チッ……なら今の内に学園高等部の範囲を予め全て学んでおくべきだ、リアルタイムで学習していたら下民共に抜かれかねん。馬鹿を自覚するなら対策しろ』
「うん」
──アラン君と話して分かった、彼の評価関数。
彼の中には常に『完成したアラン・アーバント像』があり、そこから外れることを極端に嫌う。
知能の発達という点で、アラン君は極めて
そこから来る自己認識や自我の確立、四大貴族家の嫡子であるというプライド、秀でた才能等が絡み合って出来てる、『アーバント公爵家という家名に相応しい、天才的で完璧的な自分』の理想像。
それがあるからこそ、彼は自他に厳しい。
突出していないことを、
自分の能力不足を、だからこそ心底嫌う。
『…………なんで、こんな目に遭わなきゃならないんだ……!』
怒りと、虚無感と、絶望が、ぐちゃぐちゃに混ざった吐き捨て。
どうにもならない現実に、ただ
それを聞く度に僕は死にたくなる。
死に方が分からないのに。
辛いとは思えない。
思ってはいけない。
僕より君の方が、比べる必要が無いくらい辛いのだから。
「……
『……ああ、そうかよ。流石は
──人生で初めて、努力した。
これまでした事が無かった、自発的な勉強を。
同年代の子供に知識で負けるのを許せない、君の価値観に則して。
何故か
アラン君の『自分の理想像』に近付けるように、僕は学んだ。
この世界の地理を。歴史を。貴族の作法を。魔法学を。護身術を。魔法そのものを。
彼のいつも通りの振る舞いで、天才である君を騙る。
君の望むままに、君の体を僕が動かす。
それが、異世界で送るべき僕の人生だった。
「ひぐっ…………ぐすっ………………!」
──ある女の子を、僕と君が泣かしたことを発端に、
──君が変わっていくまでの。
アラン株売却所はこちらになります(1-1)
そういえば直近にて、花芽すみれさんが『あのね』の歌ってみたを出していられました
もっと広がれあの曲