異世界から持ち帰ってきた相棒をオタク沼に落とそうと思う(いせぬま) 作:ニキ/バハちゃん
「………………嘘、だろ」
こめかみピクつかせながら判明した驚愕の事実……この家には米が無い!? こ、こんなことが許されていいのか!?
「えぇ……途端に作るのだるくなった……買ってきたの完全におかず用の量だし、これメインで作ると消費マッハなんですが」
しゃあない明日も買い物かぁ……取り敢えず今日は何作ろう? 雑に肉と野菜で炒めるか? ……いや面倒だ、冗談のつもりだったけどカップ麺で済ませるとしよう。
うわぁ、フライパンが新品なの我ながら引くわぁ……反面ティフ
「地味に卵もあるし……あっやばい"最強"を想像したら寧ろカップ麺"が"食べたくなってきた」
ただ、読み始めた瞬間に邪魔するのも申し訳ないし、先に風呂入って
あーもう何もかもがグダグダだよ。
「水道代節約、そしてガス代節約。うわやべぇ異世界転生最高かよ」
着替えを籠にぶち込みぱぱっと脱いでIn To The Bathroom
空の浴槽を絞りカスみてぇな体内魔力で作った水で満たし、火球をその中に叩き込んで秒で沸かす。
うん、非常に楽。なにせお金がかからない。
異世界時代含めて、魔法を覚えて一番幸せなことってこれかもしれん。あっちだと生産性の無い戦闘くらいしか使い道無いし。
「……流してたけどこっちでも普通に使えるんだよな。ただ向こうとは比べ物にならないくらい出力も魔力も落ちてるけど」
──異世界から帰還してみて分かったが、気付いてないだけで地球人はみんな普通に魔力を持っていた。尤も、俺が居た世界の基準からすれば、その量は誰もが一般人以下の保有量でしかないのだが。
大気中の魔素濃度も低いし、根本的に魔法を使うのに適した環境じゃない。別に何かと戦うような世界じゃなければ、生活を多少便利にするくらいにしか使う気無いから問題は何一つ無いけれど。
……あ、髭生えてる。そうかアラン君と違って脱毛してないのか
「つくづく便利だ」
全身を洗った後、軽く魔法で脱毛処理してから湯船にいざログイン。あぁ”〜効ぐぅ〜……肉体の疲労が温度によって溶けていぐぅ〜………………いや、なんですぐ分かるくらい疲労してんのこの体? 今日したの買い物くらいだよね? 待って腕が女の子みたいに細いんだが???
「終わり過ぎだろこの肉体。……わぁ赤ちゃんみたいに柔らかい」
筋密度ゴリゴリのクソ重ボディに慣れてたから、本来のヒョロガリボディが新鮮なのがまた面白い。……これ筋トレしたとして肉付くのか? 先行き不安甚だしい。
「あー……あと何してあげよう」
湯船に体が自然と沈めば、温度でほぐれた頭が取り留めのない思索をし始める。
……初視聴アニメは後回し、漫画は今読んでるとして、次は動画かゲームだろうか。
三次元に目を向けるなら……あぁ遊園地にも連れて行きたいな、ゲーセンも楽しんでくれそうだし……そもそもバスや電車も初めてか。行ったことないけどライブとかも良さげじゃないか?
……あぁそうだ、夏には海に泳ぎに行こう。秋は京都の清水の紅葉とか見せたいなぁ。冬になれば雪景色にはしゃいでる姿も見てみたいし……
「今がゴールデンウィークだから、桜は来年にお預けかな」
くだらないことならファミレスでカオスドリンク作ったり、ネットカフェで丸一日過ごしてみたり、お金が貯まればいつか旅行にも連れて行って……
「──
『私、天涯孤独なんですけど。それと私がいなかったらあんたの面倒誰が見るの?』と言って、
俺が精神的に一番キツかった時に支えてくれて、あのクソみてぇな覇天祭を三年間共に駆け抜けてくれた、感謝してもしきれない最高の相棒。
(生きるのにポジティブな
……それなりに長く浸かっていた気がする。
バスタオルで全身を軽く拭いてから水滴を対象に設定、皮膚との摩擦を消し残りを肌から払い
髪を温風で雑に
(結構節約してんのにこれで残り魔力2割くらいか。……まぁ全然充分だな)
結局のところ時短でしか使ってねぇし、使えなくても困ることは別に無さそう。
便利。ロマンも何も無いが一旦それに尽きるか。戦闘に使うよりかは、こういう平和なことに使う方が何万倍も生産的。
(取り敢えず明日は米買って、そんで換金手段模索して……つか身分証どうしよう)
……面倒だ、考えるのは明日に投げよう。
****
「エミー? 風呂空いてから10分経ったぞー?」
「今! いいところなのよ!?」
それで四巻手に取り始めたら終わりだよ、ゲームが止められない10才の子供みたいなこと言いよってからにコイツ。その内布団の中で俺に隠れて深夜でも読み始めてそうだ。
力ずくで取り上げればむぅ〜と頬を膨らませて睨まれた。出会ってからかなり経つのに初めて見たぞそんな顔。
「爆速で出てくる」
「寝巻きは?」
「持ってきてるわよ。……あ、何か着て欲しい服でもあった?」
「無いです」
自分の可愛さを自覚してる系女子特有のからかいやめてね?
ニヤニヤしながら聞かれても女子の服の予備とか異世界じゃあるまいし持ってねぇよ、いいからとっとと風呂入ってこい。
「……そう言えばエミ、バッグって他に何が入ってんの?」
「んー? 着替えの他だと換金物と装備一式、調味料とブランケットくらい? あ、アルバムもあるわよ」
「調味料とブランケット」
「調味料とブランケットよ。──もし無人島に遭難してもこれさえあれば生きていけるもの」
「それはそう」
事実生きていけたし。
「……前から気になってたけど、このデカいの何?」
「洗濯機。物を入れて操作すると自動で洗ってくれる」
「魔法で良くない?」
「一般人は使えません」
「ああ……思ったより不便なのね? こっちって」
その感想が出てくるのは人類でも多分あなたくらいです。
場所は変わって洗面所。風呂場の使い方を教えていると、ふと(あれ? 魔法が使えるなら洗濯機いらなくね?)と恐ろしいことに気付いてしまった。
……水塊作って柔軟剤入れてそこに衣類放り込めば、あとはそれかき混ぜればいいだけだし……水気も条件式で弾けば干さなくてもいいし、それでもう洗濯終わりじゃね? マジかよ異世界転移最高だな、水道代をケチれるチートで現代無双でも始めるか。
「シャワーの使い方はこうね。で、こっちがシャンプー、隣がボディソープ。タオルに出して泡立てて使ってくれ」
「はーい(脱衣開始)」
「お前マジでさァ……」
本当になけなしの魔力で視界を歪めて裸を自衛。平気で男の前で脱ぎ出してんじゃねぇぞこの女、洗面所に仕切りのカーテンでも導入するか? したところでどうせ閉めないわ、クソが。
どうせ下は薄いキャミとスパッツなのが一応の救いではあるが、モロの下着でなくてもスタイル良いから目に毒なんだよなぁ。言っても直らんしこいつはマジで……
「お湯が無いのですが」
「男が入った後の湯なんて抜くに決まってんだろ」
「偶に思想が過激よねあんた」
「配慮が行き届いてると言ってくれます?」
浴槽を
ガチャッ
「何? 一緒に入りたいの?」
「恥じらいを持てよお前はマジで!」
「そこから離れないから聞いただけなのに!?」
「それは俺が悪かった! ごめんってすぐ出てく!」
……流石に今のは俺が不注意だったな、後で大声出したのちゃんと謝ろう。
……いや、そこに居たからって自分でドア開けるか普通? え、これどっちがヤバいの!?
うーんこれは現代魔法チート