春は出会いと別れの季節って言うけどさ、それ以上に年中トップクラスにクソ忙しい季節だよね

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第1話

 春の魚と書いて(サワラ)と読む。きっかけは数日前、テレビで鰆特集をしていた。それだけだ。それだけでも釣りをする理由に足り得る。初めて釣竿を握ってから2年近く経った。始めは中古の安竿で満足だったのが、いつしか趣味としえて立派に誇れるレベルで金を賭けていた。波に優しく揺れる船上からルアーを垂らし水面を見つめる。沢の様な透明度はない。青く暗く、深く遠く。底を感じさせない水だ。その水の中で幾多の生命は生まれ死に絶え別の生き物の血肉になる。そのサイクルにわずかながら介入する。その生命神秘を感じられるのが、好きだった。スーパーに並ぶだけで終わらせるにはあまりにあっけない。命を自らの手で採る。それが楽しかった。

 

「なぁ~トレーナー。まだなのか~?」

 

 肩に重みを感じた。船主(タップダンスシチー)が抱き着いてきたようだ。小学生の頃近所で飼われていた犬を思い出す。近くを通りかかればこちらを押し倒す勢いで飛びついてくる大型犬だった。彼女も、そんな雰囲気をしている。俺の肩に顎を乗せ甘える様にすり寄って来る。

 ただ、今回船長がご所望の物は俺でなく海中で優雅なスイミングをしている魚たちだろうが。

 

「まだ10分も経ってないよ~」

 

 彼女の方を向くことなく頭を優しく撫でてやる。目いっぱい撫でてやる様に少し乱雑で思いやりの籠った手で髪を沿っていく。癖のある毛が手に反発の突進をしてきて心地が良い。不屈で我流な…俺の船長。そんな彼女を感じられて…。

 

「は~や~く~」

 

 鰆が我慢できないようで駄々をこね出す。こちらの頬を突いて引っ張って…スクイーズでもいじっているかの如く遊び倒す。男の頬など、そう楽しいものでもないだろうにやがて彼女は夢中になっていた。俺もそれを甘んじて受け入れ、竿の先をぼんやり眺める。

 鳥の声が聞こえる。岸から数キロも離れていない沖などとは言えないこの場所。振り返れば港が良く見えるような海上。それでも人の声が滅多に聞こえないのは今日が平日だからだろうか。ファン感謝祭の代休として平日に貰った休みを俺とタップ2人で過ごすことにした。

 他の仲間を誘ってもよかったのだが、彼女らは各々過ごす予定があると断られてしまった。大方俺たち2人きりにしてあげたくて配慮してくれたのだろう。ファン感謝祭で忙しく、彼女に構ってあげられなかったのは自覚している。

 …あれ?なら今釣りに没頭してる俺って滅茶苦茶不義理じゃね?いやでもタップに魚ふるまってあげるって約束で来たのだし…う~ん。

 

「いたっ」

 

 その時だった。頬に痛烈な痛みを感じ声を上げる。悪戯をした主を見ればしたり顔を浮かべていた。全くこの子は…。

 

「唸ってたぜ、アンタ」

 

 悩みが声に出てしまっていたようだ。鬱屈とした感情はこの場には似合わない。お天道様の光に悩みを焼き切ってもらおう。

 悩みと一緒に釣竿を竿受けに置いて彼女の手に連れられる。

 

「ごめんごめん。それで?」

 

 舟の日陰に入り真正面で見合う。可愛らしい顔にまた惚れ直す。何度惚れただろう。何度、思い焦がれただろう。積み重なった時間は想いと共に。実った今でもまだ積み重なっていく。

 

「今日のアタシは口が寂しくてな」

 

 そして唇が塞がれる。一回や二回じゃない。過去何度かこうしてきたが船上では多分、初めてだったと思う。柔らかな唇の感触と、ほのかに香るシャンプーの匂いが鼻腔をくすぐる。我慢できず、もう一度キスをする。同時にその体に手を伸ばしギュッと抱き締める。

 ここにいる。タップは今、ここにいる。俺の手の中に、俺の目の先に、生きている。それがこの上なく嬉しい。愛おしい。

 

「たまにはいいな。こうして()()を愛でるのも!」

 

 豪快に笑ってくれる彼女に釣られて笑みが零れた。少々多忙に流され、こうして二人きりになるのは久方ぶりだった。つい先日までのファン感も然ることながら、先月のドロワでも忙しかったのだ。彼女の練習相手になる為寝る間も惜しんでダンス練習したり、タップはタップでドロワの練習あったりで本当に忙しかった。

 辛い別れもあったこの期間だった。それが明けた今、幸せを求めるのは至極当たり前のことだった。少し、抱き締める力が増す。

 

「ん?なんだい航海士殿、今日は甘えん坊さんだな」

 

 今はこうして君がいる世界を全身で味わっていたい。君がいる、君と共に歩める世界がこんなにも愛おしいから。春の日差しが差し込んでくる。影が消え、白い彼女の肌が目の前に飛び込んできた。弾けるほど元気で明るく豪快な彼女の肉体も今日は格段愛おしい。

 

「タップ…」

「ああ…」

「…ありがとう」

 

 君が俺を拾ってくれた。君が夢をかなえてくれた。君が俺に…居場所をくれた。タップと歩んだ数年で、数えきれない宝物を手にした。きっと君は俺のお陰って言うけど、そんな事無い。俺だけでも、君だけでもダメだったんだ。

 だから、ありがとう。もう一つの言葉は…少し照れ臭い。

 

「アタシもそうさ、My sweetie.崖っぷちのアタシらを、こうして引き上げてくれた。感謝してるよ」

 

 彼女の手が俺の頭に乗る。優しい、温かい手だ。その手が俺の顔を彼女の胸に飛び込ませた。全身が包まれ、愛がそこら中から伝わって来る。

 

「…アタシの夢の果てまで、しっかり導いてくれよ。あと少しだからさ」

 

 肯定代わりの沈黙をすると、手がスルリと退いた。顔を上げればそこには太陽のような笑顔が。つられて笑顔が零れ落ちる。…ああ、やっぱ、好きだ。

 

「夢の果てと言わず、どこまでも連れてくよ」

「…あぁ、任せた!My first mate!まずは、美味しい晩御飯に導いてくれよ!」

「あはは!任された!」

 

 いい雰囲気にすっかり流されて放置していた釣竿の方を見る。すると何やら大きく動いているのだった。…かかってる!?

 

「やば!?」

 

 慌てて駆け寄ろうとするも、タップを抱きしめていた腕を解くのに手間取ってしまいもたもたしてしまう。

 

「何やってんだトレーナー!早く早く」

「う…うん!」

 

 10秒ほどかかってようやく竿へスタートダッシュを決めた。その時だった。

 

竿<じゃあの

「待ってその竿頑張って貯金して買ったんだから!!」

 

 春の海は、まだ冷たかった。




ドロワタップ強すぎてあれの追加捏造とかできないです補完の余地がない

一応ドロワタップ引いた人がニヤリとできる要素は入れたけど…気が付いたら是非感想欄に書き込んでください

タプトレが釣りしてるとこ正直そんな想像できないけどタップ担当後ならあり得るかなと思って捏造しました。アウトドア技能を追々習得してそうな仲間に囲まれたからね喜べ

平気でキスしたけど公式でkissしようとした描写あるし問題ないなヨシ!!

ご拝読ありがとうございました。お気に入り登録評価感想とうお待ちしております!

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