いつの間にか寒くなってきました。自分は割と鈍感な方なので衣替えまでのスピードが遅く、肌寒い日を過ごしてきました。そろそろコタツの方も出した方が良いかな?
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それでは第七十話、どうぞ!
次の朝。イッセー達はホテルを出て京都駅に向かっていた。
裏京都での一幕の後、金閣寺での観光を再開しホテルに戻ったあと、一行は二日目の食事と風呂を堪能した。その後、アーシア達教会トリオが遊びに来た。というよりも夜這いに来たのだが、幸い一線は越えずロスヴァイセに回収されたため割愛させて頂こう。
「それにしてもお前ら、凄いなその顔」
朝出会った松田と元浜は顔が腫れあがっていた。今も絆創膏が大量に顔に貼っている。
「まあな」
「これは名誉の負傷だ」
この二人はイッセーが教会トリオと絡み合っている間、女風呂の覗きを行おうとしたのだが、事前にそれを察知していた生徒会、シトリー眷属女子によって撃退されたのだ。鍛えられた悪魔に人間が勝てるはずもなく、こうしてボコボコのまま今に至っている。
当の二人はやってやっと言わんばかりにかっこつけていた。
変態二人は置いておき、今日の観光についてだが、イッセーたちの今日の息坂はは嵐山方面になる。まず行くのは天龍寺だ。
「それで、天龍寺までは?」
イッセーが桐生に訪ねると、彼女は予定表を見ながら答える。
「えーと、京都駅から嵐山方面行きに乗って、最寄りの駅で降りるわ。そこから徒歩で移動ね」
「了解だ。じゃあ、駅まで行こうぜ。部長に聞いてたけど、本当に京都の移動はバスと電車がメインなんだな」
「まあ、観光地ってそんなものじゃね?」
その意見に松田がそう答える。そして、イッセー達はさっそく京都駅で嵐山方面行の電車に乗り、目的地を目指した。
「到着だ」
到着したあとは、天龍寺まで徒歩。初めて来るところだが、看板が出ているので迷うことは無い。皆で歩いていると、ついに天龍寺に到着。趣のある門がイッセー達を迎えてくれる。
大きな門を潜り境内を進んでいく。受付で観光料金を払っていた時だった。
「おおっ、お主たち、来たようじゃな」
聞き覚えのある幼い声。振り返れば巫女装飾姿の金髪少女が立っていた。
「九重か」
「うむ。約束通り、嵐山方面を観光案内してやろうと思うてな」
九重、先日であった妖怪の大将『八坂』の娘だ。あの話し合いの後、詫びも兼ねて九重はイッセーたちの観光案内を買って出たのだ。イッセー達以外に一般の人間もいる為か獣耳と尻尾を隠している。
すると、松田と元浜が九重を見て驚いていた。
「はー、かわいい女の子だな。なんだイッセー、お前現地でこんなちっこい子をナンパしてたのか?」
「…ちっこくてかわいいな…ハァハァ…」
松田が失礼なことを言う以上に元浜が危険な状態に陥る。そう、彼は小猫などの小さな子に興奮するロリコンであった。小猫以上に幼い九重を見て興奮しないはずはなかった。
が、そんな元浜を桐生が吹き飛ばす。
「やーん!可愛い!何よ兵藤、何処であったのよ?」
「は、離せ!馴れ馴れしいぞ、小娘め!」
嫌がる九重だが、その様子に桐生は更に可愛がる。
「お姫様口調で嫌がるなんて、最高だわ!キャラも完璧じゃないのよ!」
「オイオイそろそろ離れろよ。こちらは九重。俺やアーシア達のちょっとした知り合いなんだ」
「九重じゃ、よろしく頼む」
えっへんと堂々とした態度の九重。お姫様だからか、若干態度がふてぶてしいがそれも産まれの高貴さ故だろう。
「あぁ、グレモリー先輩繋がり?それなら分かるかも。あのホテルも先輩の親御さんが経営してる会社と繋がりあるみたいだし」
「ま、まぁそんなところ。それで、九重。観光案内って、何をしてくれるんだ?」
イッセーが訊くと、九重は胸を張って自信満々に答える。
「私が一緒に名所について回ってやるぞ!」
現地の人が案内してくれるのはありがたい。妖怪が悪魔と天使を観光案内する、これも異文化交流の一環といえるだろう。
「じゃあ、早速この天龍寺を案内してくれよ」
「もちろんじゃ!」
イッセーの言葉に九重はパァっと笑顔を輝かせた。
九重に案内されて、天龍寺を回る。誰かに教えられたらしい知識を自信満々に話す姿は可愛らしく、回る先で一生懸命に京都を紹介しようとしている姿は微笑ましい光景であった。次に訪れた大方丈裏の庭園もまた見事なものだった。色づいた秋の山々を背景にして、和の庭園も秋模様で、見る人を魅了してくれる。この風景の中、池で泳ぐ鯉もポイントだ。
「ここの景色は絶景じゃ。何せ世界遺産じゃからな」
と九重が言う。それを訊いた瞬間、目に映る風景の凄味が増す感じがしたが、ちょっと思考が単純かな?とイッセーは微妙な気持ちになった。
庭園も見て回り、最後に法堂に案内された。堂内に入り、天井を見上げた瞬間、イッセー達の目に飛び込んできたのは大迫力の龍の絵、体が長い東洋の龍だ。凄まじい眼力でこちらを睨んでいるように天上に描かれていた。
「これは雲竜図。どこから見てもにらんでいるように見える『八方睨み』じゃ」
何処から見ても睨んでいるように見えるのか。そう言われて少し場所を変えるイッセー。確かに、場所を移動しても龍と目が合った。
「(なぁ、ドライグ。東洋のドラゴンはこんな感じなのか?)」
『そうだな。ヴリトラも含め、大体このような姿だ。この絵に似ているのは同じく龍王の『
『
「 (アルトリアにも、この絵を見せてやりたかったな………) 」
とイッセーは物思いにふける。そのあと、天龍寺も一通り回った後、一行は外に出た。
「さてと、九重。次はどこに行く?」
イッセーが訊くと九重はいろんな方角を指さしながら楽しそうに言った。
「二尊院!竹林の道!常寂光寺!どこでも案内するぞ!」
こちらの楽しんでいる様子に九重もまた張り切っている。妖怪たちの姫であると同時に、彼女もまた年相応の少女であった。こうして俺達は九重先導で、嵐山観光に歩み出た。
◆
「いやー、回った回った」
そう息を吐く松田。イッセー達は九重の勧めで、彼女行きつけの店で湯豆腐を昼食に取っていた。あの後、一行は九重の案内で嵐山を見て回った。釈迦如来像と阿弥陀如来像を祀った二尊院を見学し、人力車に乗って竹林の道も通ってきた。
人力車は初めての体験であったイッセー達だが、車夫が話し上手で観光先でガイドしてくれながら人力車を引いてくれたことで楽しむことが出来た。何よりも人力車から見える秋模様の嵐山の風景は最高の眺めだった。
「ほら、ここの湯豆腐は絶品じゃ」
九重が湯豆腐をすくってそれぞれの器に入れてくれる。仕切っている九重は心底楽しそうだった。これが普段見せている笑顔なのだろう。その分、頭を下げて母の救出を懇願してきた九重の姿は痛々しいものだった。早く八坂姫を取り戻さなければならない。京都のため、彼女の為にも。
と、再び考え込むイッセーだったが、冷めないうちに豆腐を頂くことにした。味は絶品の一言、ホテルで食した豆腐をさらに上回る美味しさであった。豆腐は出来立てが美味しいと言われている。これもまた出来てから時間がそんなに立っていないのだろう
「和の味がする。悪くない」
「はい、いつも食べているお豆腐とは違って風味が新鮮でおいしいです」
「お豆腐いいわよねぇ…」
教会トリオもご満悦の様子だ。兵藤家で初めて豆腐を食べたであろうアーシアとゼノヴィアにとっても新鮮な体験だった。
「あ、イッセー君」
その時、声がかかる。聞き覚えのある声だった。
「おおっ、木場か」そういえば、今日は木場の所も嵐山を刊行するんだったな」
隣の席では祐斗の班が同じく昼食を取っていた。
「うん。天龍寺に行ってきたのかい?」
「ああ、九重の案内で見てきたけど、見事な龍が天井に描かれてたぜ」
「僕もこれから渡月橋を見てから午後は天龍寺に行こうとしていたところなんだ。楽しみだな」
「渡月橋か。俺達もこれ食べたら行くぜ」
等と話していると、「秋の嵐山、風流なもんだぜ」という聞き覚えのある声が聞こえた。
「おう、お前ら、嵐山堪能してるか?」
声の主はアザゼルだった!しかも真昼間から湯豆腐を肴に日本酒を飲んでいる。不良教師極まれりだ。
「先生!先生も来てたんですか?って、教師が昼酒はいかんでしょう」
イッセーが非難すると、「その通りです」とアザゼルの対面の席に座る女性が同意した。
「ロスヴァイセさん!」
「その人、私が何度言ってもお酒を止めないんです。生徒の手前、そういう態度は見せてはならないと再三言ってはいるのですが…」
額に青筋を立てて、怒っている。
「まあ、そういうな。嵐山方面を調査したあとでのちょっとした休憩だ」
どうやら二人は嵐山で『
「だがな、ロスヴァイセ。ちったぁ要領よくいかないとよ。そんなだから、男のひとりもできないんだぜ?」
バンッ!
その一言に真っ赤になってテーブルを叩くロスヴァイセ!完全に彼女の地雷を踏んだ。
「か、か、彼氏は関係ないでしょう!馬鹿にしないでください!もう、あなたが飲むぐらいなら私が!」
そういってロスヴァイセはアザゼルの持っていた杯を奪ってぐびっぐびっ、と飲みだした。見事な飲みっぷりだが……
「ぷはー。…だいたいれすね、あなたはふだんからたいどがダメなんれすよ…」
赤ら顔になるロスヴァイセ、完全に酔っぱらっている!早い、早すぎる。一口飲んだだけで呂律も怪しくなってしまっている。
「い、一杯で酔っぱらったのか?」
驚くアザゼルだが、ロスヴァイセはすぐに二杯目の酒をつぎ、再び豪快に飲み干した。め、目が座ってる。するとロスヴァイセがアザゼルに絡みだした。
「わらしはよっぱらっていやしないのれすよ。だいたいれすね、わらしはおーでぃんのクソジジイのおつきをしてるころから、おさけにつきあっていたりしててれすね。…だんだん、おもいだしてきた。あのジジイ、わらしがたっくさんくろうしてサポートしてあげたのに、やれ、おねえちゃんだ!やれ、さけだ!やれ、おっぱいだって!あほみたいなことをたびさきでいうんれすよ。もうろくしてんじゃかってはなしれすよ!ヴァルハラのほかのぶしょのひとたちからはクソジジイのかいごヴァルキリーだなんていわれててれすね、やすいおきゅうきんでジジイのみのまわりのせわしてたんれすよ?そのせいれすよ!そのせいでかれしはできないし、かれしはできないし、かれしはできないんれすよぉぉぉぉ!うおおおおおおおおおんっ!」
大号泣、とんでもない文字数でオーディンの愚痴を叫びながら泣いていた。ロスヴァイセ、まさかの泣き上戸である。イッセー達、アザゼル、そしてその他諸々、その場にいる全員がどうしたらいいかわからなくなっていた。
「わかったわかった。お前の愚痴に付き合ってやるから、話して見な」
そう言うとロスヴァイセはパァッと明るい表情になった。
「ほんとうれすか?アザゼルせんせー、いがいにいいところあるじゃないれすか。てんいんさーん、おさけ、じゅっぽんついかでー」
まだ飲み足りないのか、10本追加と言い出した。皆驚いた、100均にうるさい以外はまともな人だと思っていたロスヴァイセがここまで酒癖が悪いとは。真面目な人ほどため込むという言葉をイッセーは目の前で実感させられた。
「お前ら、さっさと食って他に行け。ここは俺が受け持つからよ」
アザゼルがため息交混じりにそういう。皆は顔を見合わせ、言う通りにすることにした。昼飯を即平らげ、店を後にした。
「ひゃくえんショップ、サイコーれすよー!アハハハハハ!」
店を出る寸前まで、酔ったロスヴァイセの爆笑が背後から聞こえてきた。今後パーティーがある際はロスヴァイセさんには酒を飲ませない方がいいと、イッセーはリアスへの報告事項を増やす事になった。
◆
店を抜け出て、渡月橋を目の前にしたイッセー達。
「ロスヴァイセちゃん、すごいことになってたな」
「ああ、あれは相当酒癖が悪いぞ」
美女には見境が無い松田と元浜さえも若干引いている様子。ロスヴァイセは、赴任してまもないにも関わらず男女問わず生徒に人気がある。そんな彼女のあんな姿見れば男子は困惑するだろう。現に此処にいる全員びっくりしていた。
「きっと、ロスヴァイセ先生も若いなりに苦労してるのよ。相手があのアザゼル先生よ。溜まったものをぶつけたくなるのも納得ね』
九重にガイド役を取られていた桐生はロスヴァイセの奇行に同情していた。あそこまでため込んだ原因はアザゼルだけではなく、元雇い主のオーディンにもあるだろう。ヴァルハラでは、オーディン付きになるまでは窓際だったらしい。そんな彼女にとって出向先からのヘッドハンティングは天啓と言えるだろう。
「お主達の眷属は大変なのが多いのか?」
「…ちょ、ちょっとな」
九重にそう訊かれてしまう。イッセーもそう返すしかなかった。何はともあれ観光の続きだ。次は渡月橋、店を出て数分ほど観光街を歩くと目の前に桂川が姿を現す。
そこに掛かる歴史を感じさせる古風な木造の橋が渡月橋である。ここもまた先に見える山の景色と併せて絶景と言えるものだった。
「知ってる?渡月橋は渡り切るまで後ろを振り返っちゃいけないらしいわよ」
「なんでですか?」
「それはね、アーシア。渡月橋を渡ってる時に振り返ると授かった知恵が全て返ってしまうらしいのよ。まあエロ三人組は振り返ったら終わりね。真の救いようのない馬鹿になるわ」
「「「うるせえよ!」」」
「それは言い伝えで、そんな術式はこの橋には仕組まれていないのじゃが……」
イッセー達三人が桐生の言葉に言い返した。九重はそんな事はないと小声で補足する。三人の発言を気にする素振りを見せず、桐生が解説を続ける。
「あと、もう一つ。振り返ると、男女が別れるという言い伝えもあるそうね。まあ、こっちはジンクスに近い話だけど――」
「絶対に振り返りませんから!」
桐生の説明を遮って、アーシアは涙目でイッセーの腕につかまってきた。
「だ、大丈夫だよ、アーシア言い伝えだって」
そう言うものの、アーシアは首を横に振って「絶対に嫌」とイッセーの腕に強くつかまっている。しょうがないなと思いつつ、イッセーは橋から桂川の景色を見た。優美な自然と趣深い歴史を感じさせる景色、最高の修学旅行だ。これにテロリストの不安が無くて、アルトリアが居れば文句なしなのだが……
「どうしたのじゃ?そのように黄昏れて……」
「ん?あぁ、ちょっとな。もう一人、一緒に来たかった奴がいてさ」
「?もう一人、誰じゃ?」
「……アルトリア。アルトリア・ペンドラゴン。俺の幼馴染で、俺たちグレモリー眷属の最高の仲間だよ」
イッセーの言葉にアーシアも口をキュッと噤み、顔を俯かせる。
「私も名前だけは聞いたことがある。聖剣エクスカリバーの担い手、魔王殿の食客。どの様な人物なのじゃ?」
噂に聞く聖剣使いの名と、イッセーとアーシアの反応に九重は質問を続ける。
「一言で言えば、誇り高い女騎士って感じかな。凛としてて、誰に対しても誠実で、生真面目で、いつも学園のみんなの為に走り回っててさ。そのくせ夜も町の見回りに出てて、小さなもめ事を解決したりもしてたらしい。すげぇ奴だよ」
「聞く限り、大分世話焼きな質のようじゃの」
「あぁ、俺も昔から世話になりっぱなしだよ」
あの日、小学校の裏手で初めて会った日から二人はずっと一緒にいた。イッセーが更衣室の覗きをしたときは彼女が真っ先に駆けつけて懲らしめた。また授業参観の日、イッセーが親を説得してイッセーの父がアルトリアの親代わりになって参加した。
「でも今、アイツはどっかに行っちまった。俺の目の前で誰かが仕掛けた転移術式に入って消えちまった。そして今でも、アイツは行方不明のままなんだ」
「………」
「そうであったか……」
それを聞いた九重はすこしバツの悪そうな顔をした。
「一昨日、伏見稲荷にいただろ?あそこのお社で願ったんだ。早くアルトリアが見つかりますようにってな。もっとも、神様が叶えてくれるかは分かんないけど」
「そうであったか。ならば安心するとよい。あそこは私達、狐の主である宇迦之御魂神の社の一つじゃ。私や母上ならば直接お会いする事も出来る。そこでお主の願いが叶うように頼んでみるとしよう」
「マジか!」
「本当ですか!」
「うむ!」
「そうか………ありがとな、九重」
九重のその言葉に二人はパァっと顔を明るくし、イッセーは九重の頭をワシワシと撫でた。
そのままイッセー達は渡月橋を渡る。因みに渡っている最中には、アーシアは頑として振り返らなかった。そして、無事に渡り切り、反対岸に到着。アーシアも大きく息を吐いて落ち着いたようだ。そこで祐斗たちとも合流する。
さてと反対側はどう回っていこうかな。そんな風に風景をぐるりと一望した時だった。
突然、ぬるりと生暖かい感触が全身を包み込んでいった。
次回、英雄派が本格登場します。竜の鎧に身を包んだ『騎士王』の元、英雄たちの宣戦布告が行われます。お楽しみに。