新・聖龍伝説 現政奉還記 序章 作:セイントドラゴン・レジェンド
色々とツッコミどころ満載な場面が多々見られますが、何とぞ温かい目で読んでください。
※作中に出てくるオリキャラが執筆した自伝は、此方が既に執筆した聖龍伝説の三部作の事です。小説内では彼の自伝本として登場させています。
現政奉還記 ~序章~ 乱世、再び
[訪れし平和、齎された均衡]
過去《かつて》、一人の少年がこの世に生を受けた。
その少年の名は小田原修司。生まれながら心に闇を抱く者。
少年は心に抱く闇がゆえに、周りの者達とは格段に違っている異質なる存在として生き永らえていた。
心に闇を抱く少年は、やがて苦しいだけの人生に喘いでいたその時 ある存在に出逢った。
その存在は、二次元と呼ばれる創作の世界を創造した 神と呼ばれる存在
ウォール・トゥーサム それは手塚治虫とウォルト・ディズニー 二人の三次元人の魂の融合体であった。
ウォール・トゥーサムは少年を、自分達を始めとした多くの三次元人たちの思想から生まれた別次元 二次元界へと誘うのであった。
少年は其処で多くの二次元人たちと出逢い、そして成長していった。
そして少年はその二次元界で一人の少女と出逢うのであった。
少女は誰にでも平等に接し、誰にでも気軽に平然と優しさを掛けてあげる 実に心の優しく美しい乙女であった。
生まれながらに心に闇を持つ少年は、その心ゆえに人として最も必要な感情 そう愛を感じることができず、少女からの優しさや愛情すら感じられず苦しんでいた。
そんな中、少年が自分がいた三次元界から二次元界へと来てしまったが為に 二次元界に危機が迫った。
少年は二次元界の英雄である友らと共に、その危機に立ち向かった。
そして少年達の前に立ちはだかったのは、少年の闇の心が生み出した 少年の分身であった。
少年は自分の分身である今日と立ち向かい、そして己の弱い心に打ち克った。
だが少年らの前に新たに立ちはだかる脅威 全ての負の感情を司る暗黒の存在 絶夢鳥
その次元が歪んだ影響で出現した脅威に、少年は己が全ての意志で挑み 辛くも二次元界を救った。
その後、少年は忌まわしき闇を抱く自分の素性を知っても尚 愛し続けてくれる少女を始めとする二次元界の英雄達と共に、自分が結成させた一つの組織を更に巨大で確固たる集団に築きあげた。
その組織の名は
その後 少年と聖龍隊は、少年の掲げる目標の一つである 少年の生まれ出た三次元界と英雄や数多のキャラクター達が生まれ暮らしている二次元界 二つの次元を一つにし、互いの共存を目標として共に未来を築き進もうと模索し始めた。
その内、聖龍隊は三次元界でも活躍の幅を広げ ある時は世界的なテロリスト集団に挑み、ある時は悪政を敷く独裁国家を解放に導いたりと、多くの人々を救ってきた。
その間、聖龍隊は世界に牙を向く強大な敵や存在らと幾度と無く挑んでは立ち向かい、そして勝利を収めていった。
だが同時に、聖龍隊の総長である青年は 己が結成した聖龍隊はもちろん、二次元人達の人権を護り抜くため ある行動に出た。
それは国連に自らの人権を差し出し、自らを国連所有の人間兵器として身売りするというモノであった。
その中でも聖龍隊を始めとする、世界のあらゆる権力を苦しめ続けた組織 革命軍士
革命軍士と激しい戦いを続ける聖龍隊は、どうにか世界を守り続けることが出来えた。
2011年、日本に起きた東関東大震災でも彼らは怒涛の活躍を見せ 同年に勃発した亜細亜大戦争に出兵し、震災で危機的状況下に追い込まれていた日本に戦火の手が来ぬよう食い止めて見せる。
聖龍隊は数多くの試練と葛藤を経て、まだまだ完璧とは言えないものの落ち着いた平和を世界に齎すことができた。
そして2012年 12月末期 聖龍隊を築き、数多の二次元人たちと共に歩んできた 少年であった男は、聖龍隊を離れた。
聖龍隊の総長を長年務めてきた男は、聖龍隊結成時より共に戦い続けてきた人外の友に聖龍隊総長の座を譲った。
全ての権限を腹心の友に譲り、己には何も残さなかった男は最後に アニメタウンを去り際に、その空港内で長らく聖龍隊で励み心の弱い自分を支えてくれた一人の女性に一つの指輪を手渡した。
それは女性の誕生石であるサファイアの婚約指輪であった。女はその指輪を心から喜び、指に嵌めた。
こうして男は「己が必要となくなった世界がどの様に変わるのか」を見届けるために長年住んでいた二次元人達の国アニメタウンを去っていった。
そして2013年。三次元人たちは新たにある特別な二次元人たちを生み出した。
その二次元人を人々は新世代型二次元人と呼び、新たな時代を築く礎として多大な期待を秘められていた。
しかし、その年の2月 新世代型達が突如の反乱を起こし、三次元人たちに牙を向いてきた。
新総長を筆頭にした聖龍隊はこれを阻止、反乱を起こした新世代は全て処分された。
その後、新世代の二次元人たちは更に厳重なプロテクトそして監視体制を敷いて生み出されていった。
先の新世代型の反乱により、三次元人だけでなく同じ二次元人からも危険視される新世代型は、三次元政府の命により二代目の聖龍隊総長に監視を務めさせた。
様々な種族、そして存在によって多種多様な文明や発展を積み重ねた世界は 世界三大勢力である聖龍隊/国連直下の軍隊である国連軍/非合法な組織や存在ではあるが国連管轄化の国々や世界を護るという名目で特別な認可を得られているセブンズ・ガード。この三つの力によって世界の均衡は護られ保られていった。
全ての国々、そして異世界は穏やかに時が流れていく。
だが、此処に一人の人物が 訪れた平和と均衡に多大な憤りを感じていた。
「…………この訪れし平和、そして齎された均衡に何を感じる? 朋よ」
「……………………………………………………………………………………」
その人物が傍らの人物に話しかける、だがその者は無言で聞き入れるのみ。
「永に続く太平なる世、訪れし平和と齎された均衡に喜びつつも無垢に浸り続ける人々……その果てに迫りくる世は、如何なる次代か」
「…………………………………………」
「……もはや悠長な事を言うてる場合ではないか。よし、我々も行動に移すとするか、朋よ!」
「…………………………」
二人の人物、そして口にした行動とは何か。
[平和な独立国家]
所は変わりて、此処はアニメタウン。
アニメタウンは国連にも認められた国家として繁栄を極め、日本からも独立している一つの国であった。
そんなアニメタウンは国連認可の軍隊 聖龍隊によって平和なときを歩んでいた。
しかし、そんなアニメタウンに住む二次元人たちは、その人権を認められてはいるものの、その実態は三次元政府によって厳しく取り締まられているのが現状である。
何故かと言うと、それは二次元人の中に三次元人ですら平然と傷つけ殺める危険極まりない異常者 通称ヒールと呼ばれる者が出現するからだった。
そんな異常で悪質と見なされた二次元人たちは、政府の命により存在そのものを抹消される
それは異常者《ヒール》の矯正・処分を任されているのが、他でもない聖龍隊であった。
そんなアニメタウンでは、ある書物が人々の話題をさらっていた。
それは前聖龍隊総長である小田原修司が執筆した「聖龍伝説」という自伝本であった。その本は三部作に分けられ、自伝には聖龍隊の結成はもちろん小田原修司の素性が事細かく記されていた。
その自伝の内容に、読んだ人々は驚嘆した。
其処には、聖龍隊結成時より所属していた数多の英雄達の素性や背景が明確に書き記されていたのだ。
だが、それ以上に人々が驚いたのが聖龍隊総長であった人物 小田原修司が、自らが自閉症を始めとする発達障害者であると公表している事だった。
此処はアニメタウンのとある公園
人々が平和な時を過ごす中、誰もが小田原修司が書き記した自伝本「聖龍伝説」を手に拝読していた。
今や大ベストセラーとなった自伝本は、英雄達の生き様と聖龍隊という組織を結成した男の辛く悲しい身上が包み隠されること無く執筆されており、人々の目を釘付けにしていた。
そんな自伝本にも記載されている、小田原修司の思想概念が生み出した強大な力を持った存在 闇人
人々は、己の生まれながら授かった闇の心と障害により生まれてしまった闇人 彼から醸し出される哀愁に半ばの関心を覚える。
そしてアニメタウンの公園に複数の少年少女の集まりが。そのグループの中には全身黒いローブに頭をフードで覆い被っている一人の人物の姿も確認できた。
そう、その姿は紛れも無く あの闇人そのもの……
「……ってナニ抜かしてんだアンタは!!」
い、いえ……私はただ、有りのままを申したまでで。何より今物語を申している最中だっていうのに、まさか文句を言われるとは……。
「何を言ってるんだい! このあたしを、あの史上最凶クラスの敵役である闇人みたいに言うとは腹が立つ!!」
そ、それは失礼しましたホント。
「解ったんなら、さっさと正しく紹介しなッ!」
わ、解りました……ええ、この男の子は
「男じゃないよ! よく間違われるけどアタシは女子だってのッ」
ご、ごめんなさいッ。え、え~~とこの少女は
「美がついてないよ、美が」
えぇ~~、美を付けるんですか美を。
「なんか文句でもあるんかい」
は、はい。解りました……え、えっとこの女子
「ゴッホン」
はい……この美少女の名はギュービッド。「黒魔女さんが通る!!」のキャラクターで、黒魔法のインストラクターでもある魔女であります。見た目は完全に美少年っぽいのでありますが、一応は少女なのであしからず。
「ってコラッ! なにが一応なんだ! ケンカうってんのか作者!!」
「まあまあギュービッド様。この小説の作者と言い争わないでくださいよ」
「そもそも作者と言い争うなんて前代未聞ですよ、先輩」
と怒り狂うギュービッドに優しくも穏やかに宥めるように話し掛けるのは、頭に赤と黒のリボンを付ける黒いゴスロリの衣装に身を纏うのは、ギュービッドに黒魔法を教わる
「ちょっとッッ! チョコと桃花の事は美少女と格付けしておいて、あたしは美少女と呼ばないとは何様だッ!!」
えーー、だってチョコちゃんと桃花ちゃんはどっからどうみても美少女じゃないか。君と違って。
「……サタンよ、ベルゼブルよ……そして墓の上をさまよう者よ……」
「せっ、先輩!!」
「我のいけにえを受けとり……」
「ギュービッド様だめ! NO黒死呪文!!」
余りの激情に作者に黒死呪文を掛けようとするギュービッドを慌てて静止する桃花とチョコ。
「……ギュービッドのやつ」
「作者と口ケンカするなんて聞いたことも無いよ……」
と怒るギュービッドや彼女を宥めるチョコに桃花を目にして呆れ果てる青年と少女。少女の名は琴浦春香、「琴浦さん」の主人公である少女である。
そして青年のほうは、通称エロイと言われる青年、真鍋義久というエロガキである。
「ちょっと、俺の紹介ヒドくねえ?」
真鍋の文句はさておき「ってムシすんな!」他の人物たちの紹介を進めよう。
琴浦と真鍋の傍らに居るのが、巨乳でスタイルの良い御舟百合子。眼鏡を掛けたぽっちゃり体型の室戸大智。そして最後に森谷ヒヨリ。
「まぁまぁギュービッドさん落ち着いて」
「そう怒るなって、ギュービッド」
怒り続けるギュービッドに宥め続ける真鍋に御舟。そんな情景を呆然としながらも眺めるチョコに琴浦。
そんな彼女達が出逢ったのが、あの日である。
ある日のこと
「ちょ、ちょっと良いかい。君チョコちゃんっていう黒魔女見習いだったよね?」
「え、ええ、そうですけど……」
突然街中でチョコに話し掛ける見知らぬ男に戸惑うチョコ。男はチョコに切羽詰った様子で話し続けた。
「じ、実は今、魔界でギュービッドが大変な事に巻き込まれているんだよ……!」
「え! ギュービッド様が!?」
驚くチョコに男は話し続ける。
「そうなんだ! 僕はそれを君に伝えるために、こうして魔界から来たんだ……僕は昔、ギュービッドにある事で助けてもらって彼女に恩があるんだ。僕だけじゃギュービッドを救い出すことができなくて、それで彼女の弟子であるチョコちゃん、君の力を借りたいんだよ……!」
「わ、私にできることがあるなら……!」
「ありがとう! 僕についてきて。魔界への入り口に案内するよ」
男は言葉巧みにチョコを道の行き止まりに誘い、其処の壁に出現した異世界への入り口まで導く。
「こ、この先にギュービッド様が……」
「そうだよ。ささ、早く入って」
入り口の前で戸惑うチョコを後押しする男。
しかし、男は心の中でこう思っていた。
(ククク、さぁ早く入れ、黒鳥千代子……魔女見習いのお前の魂を生贄にあの世に連れて行けば、俺様も上級悪魔の仲間入りなんだ)
この男、その正体はチョコの魂を狙う悪魔だったのだ。
そうとは知らず男に言われるがままに入り口に足を踏み入れようとするチョコ。
チョコがあの世への入り口に騙されて入ろうとした、その時。
「ダメ!」
突然の声に驚く男に足を止めるチョコ。二人が振り向くと、其処には一人の女子が居た。
「あ? お前は誰だ?」「あ、あなたは……」
目の前に突如として現れた女子に目を奪われる男とチョコ。女子は戸惑うチョコに駆け寄ると、彼女に慌てた様子で言った。
「ダメっ、この先はあの世よ! この男の人が言っている事は全部ウソよっ」
「えっ?」「な、何を言うんだこの子は……!?」
女子の発言に驚くチョコに困惑する男。
そして女子はチョコの手を掴むと、一目散にその場から立ち去ろうとチョコの手を引っ張る。
「は、早く!」「えっ、え?」
急かす女子、しかし当のチョコは状況を飲み込めずに、ただただ困惑するばかりであった。
そんな二人の前に、男が立ちはだかった。
「な、何がどうなっているか解らないが……せっかく此処まで連れてきた獲物を奪われてたまるか!」
そう言うと男は自分の容姿を豹変させて、悪魔としての素顔と本性を現した。
「きゃあ!」「ああ! あ、悪魔……!」
目の前に立ち塞がる男の正体を目の当たりにして悲鳴を上げる女子に驚愕するチョコ。
悪魔はそのまま二人に迫ろうとした、その時。
「琴浦、大丈夫か!」
その場に一人の青年が駆け付けては、二人と悪魔の間に入って少女二人を庇うように身を張った。
「ま、真鍋君!」「こ、今度は何?」
駆け付けてきた青年に声を掛ける女子、だがチョコは更に一変する状況に混迷を極めてしまう。
そんな中、女子が青年に言った。
「ま、真鍋君。この人、この女の子の魂を奪おうとしている悪魔なのっ」
「成るほどッ。まぁ、こんな厳つくて禍々しい顔見たら誰だって解るな」
「ぐ、グキキ……ッ。ワケの解らない女の次はどこぞのガキか、クソッ」
悪魔が歯軋りをしている、更にその時。
「琴浦さんっ、真鍋君!」
「二人とも無事かいっ?」
「っ……!」
二人の女子と一人の青年が立て続けに駆け付けてきた。
「御舟さん、大智、それに森谷も!」
駆け付けた三人に、青年は声を荒げて言った。
「みんな……この男、どうもこの女の子を狙っているみたいなんだ」
「クソッ、次から次へと……!」
悪魔の苛立ちが最頂点に達した、まさにその時である。
「チョコーーッ!」「チョコちゃん、大丈夫ーー?」
「あっ、ギュービッド様! それに桃花ちゃんまで」
空からギュービッドと桃花の二人が颯爽と飛来し、二人を見たチョコは名を叫ぶ。
そして地上に降り立った二人、ギュービッドはチョコに言い聞かした。
「チョコ大丈夫かッ? コイツは見習いの魔女の魂を狙っている悪魔だッ」
「クソ……!」
ギュービッド達までやって来て窮地に追い込まれる悪魔。
そして悪魔はギュービッドとチョコ、そして桃花の三人の連携で見事に消えてしまった。
「あ、ありがとうございます。お姉さんが居てくれなかったら私、ギュービッド様たちが来てくれる前にあの悪魔に言われるまま連れて行かれてました」
「そ、そんな……私はただ……」
悪魔に騙され、危うく連れて行かれそうになったところを静止してくれた女子に礼を述べるチョコ。女子はそんなチョコの礼に若干照れる。
「ほ、本当にありがとうございます……私、黒鳥千代子っていいます」
「私は琴浦春香。何も無くて良かったね、千代子ちゃん」
そう、この時チョコを救った女子こそ琴浦春香で、其処に駆け付けてきたのが他の「琴浦さん」のキャラである真鍋に御舟、戸室に森谷らである。
これを機に、チョコにギュービッドに桃花、そして琴浦に真鍋に御舟に室戸に森谷らは親睦を深めていった。
「いや~~あん時は焦ったなぁ。俺が来なかったら琴浦もチョコも、あの悪魔に何されていたか」
「ただの人間であるアンタが来たからって何もできなかったと思うぜ」
真鍋の言葉にギュービッドが呆れながらも話し返して見せた。
[二次元人らの実情]
と「黒魔女さんが通る!!」と「琴浦さん」の面々が話している、その時。
「ふ~~ん、成るほど。まさか今時、プロト世代と僕ら新世代の二次元人が仲良くできているとはなぁ……」
『!?』「だ、誰だ!?」
突然聞こえてきた謎の声に驚愕する皆、そして真鍋が問い放つと皆の目の前に一人の青年が現れた。
「あ、あなたは……?」
目の前に突如として現れた青年に驚く皆、そしてチョコが青年に訊ねると彼は答えた。
「僕かい? 僕は斉木楠雄、其処にいる琴浦春香と同じテレパス……いや、おそらくは二次元人でも最も優れた超能力を秘めたエスパーだ」
「え……!?」青年の言葉に騒然となる琴浦に皆。
皆の目の前に現れた学生服の青年、それは眼鏡をかけた赤味のピンク色の髪に、頭には先が球体の変なアンテナを二本も装着している人物であった。
「お、お前は一体……!」
突如として現れた斎木に驚く真鍋が指を差すと、斉木は眼鏡を人差し指で掛け直しながら訳を話した。
「いや何、僕は少しばかり君らに興味が湧いたから姿を見せただけだよ。それと、この小説の作者の個人的な趣味としてもね」
『…………………………』
「まぁ、そう状況が呑み込めないのも無理はない。ただ僕には悪意もなければ敵意もないことだけは解ってほしい」
「と、ところで……えっと、斎木さん」
「なんだい? 黒鳥千代子」
「え! な、なんで私の名前を……!?」
現れた斉木に訊ねるチョコ、だが訊き返した斉木が自分の名を知っていたことに驚くチョコ。斉木はそんなチョコに平然と述べた。
「さっきも言っただろ。僕は其処にいる琴浦春香と同様のテレパシーが使える。だから君の名はもちろん、此処にいる全ての者の名前などの情報も知る事ができるんだよ」
「こ、琴浦さんと同じテレパス……」
斉木の言葉に唖然とするチョコに、真鍋が斉木に問い質した。
「と、ところで……お前さっきプロトと新世代が、どうのこうって……」
真鍋の質問に斉木は険しい面差しで答えた。
「忘れた訳じゃないだろ、真鍋義久。君達「琴浦さん」の面々は新世代の二次元人、そして君らと一緒に居る「黒魔女さんが通る!!」の面子はプロト世代と呼ばれる、僕ら新世代の前に生み出された二次元人。そんな違う二次元人同士が、こうも親睦を深められているなんてね……ま、だからこそ僕は君達に多大な関心と興味を持った訳なんだけどね」
この斉木の発言に、チョコは少しムッとした表情で反論した。
「だ、だからって……」
そんなチョコに斎木は眼鏡を掛け直しながら言った。
「まぁ、気分を害してしまったのなら謝るよ。ただ、未だに僕ら新世代の二次元人は創造した側の三次元人はもちろん同じ二次元人側からも危険視されてしまっているのが現状だからね。そんな現状でも、僕ら新世代に心を許してくれる二次元人が居てくれる事に、僕自身好感を得たのも事実だ。だからこうして君らの前に堂々と新世代型としてはもちろん超能力者としても出現した訳だ」
斉木の話しに唖然としてしまう皆。そんな皆に斉木は再び語った。
「まぁそれに、あの問題視されている新世代型の反乱も三次元政府を始めとする政府機関の情報制限で、一体どんな反乱だったのかも余り知らされてないからね。何故、僕らの前に創り出された新世代が……最初にこの世に生み出された新世代の二次元人が如何なる理由で創造主である三次元人達にも牙を向けたのかは機密にされてしまっているのだから仕方ないけどね」
『………………』
言葉を失くし斉木の話に耳を傾け続ける皆に、斉木はより一層深刻そうな面差しで皆に言った。
「まぁそれに何より……そう「琴浦さん」と「黒魔女さんが通る!!」の君らには非常に深い共通点があるんだしね」
「きょ、共通点……?」
斉木の口から出た言葉に唖然となる琴浦そして皆に、斉木は険しい目つきで言うのだった。
「そう、それは……!」
『ゴクッ』
皆が思わず唾を呑み込んだその時、斉木は言った。
「……君ら、アニメ メジャーになったじゃないか……」〔ズゥーーン〕
『ってソッチかいッ!!』
暗いオーラを発しながら四つん這いで呟く斉木の台詞に思わず激しくツッコム真鍋とギュービッド。
そんな暗い暗いオーラを醸す斉木は四つん這いのまま皆に話した。
「だ、だって……君達どっちとも、アニメでかなり有名メジャーになったじゃないの……っ。やっぱ、二次元人にとってのアニメ化って一種の出世みたいなもんだし、僕だって正直羨ましく思うよ……」
「だからって! そんな事で一々落ち込むなッ!」
しょ気る斉木に激しく言い放つギュービッドの発言に対しても、斉木は暗い心境で話し返した。
「正直、僕のほうもアニメ化はされたけどウェブ上だけの公開だけだったし……君達みたいに地上波での放送が好ましかったよ。せめて琴浦組のように深夜枠のアニメでも良いし……深夜でも地上波だけマシな方だよ、ホント」
「だァからってッ! そんなに落ち込む事ないだろうがッ!!」
更に激しく言い返すギュービッドに対し、斉木は様子を一変させて平常に戻ると再び眼鏡を掛け直しながらギュービッドに鋭く告げた。
「因みにギュービッド、君の場合はこの小説の作者も含めてアニメで初めて「黒魔女さんが通る!!」を見た視聴者の大半が、君を男と思っていたようだしね」
「ウッサイ! 気にしてるんだから言うんじゃねえよッ!!」
斉木の発言に怒り狂うギュービッドに、斉木は態度を改めず冷然と言ってのける。
「そもそも、君の容姿は完全にショタキャラと言うか美少年だしね。……声も少年ボイスだし余計に男の子キャラと思い込まれる始末だし」
「言うなッ! 朴璐美さんの悪口言ってんじゃねえぞ貴様! 朴璐美さんはあたし同様に美しい乙女な上に細身でグラマラスな体型で有名なんだぞッ!!」
「ぎゅ、ギュービッドさま落ち着いて……」
「見た目はもちろん、声優の事でもケンカしないで下さい……」
斉木と口論になるギュービッドを宥めるチョコに桃花。そして二人の口喧嘩を目の当たりにして呆れ果ててしまう琴浦さん組。
と、桃花がそんなギュービッドと口論になる斉木に訊ねた。
「あ、ところで斉木さんは超能力者だって自分のこと言っていますけど、それって琴浦さんと同じテレパス以外にも使える超能力があるって事ですか?」
訊かれた斉木は眼鏡を指で掛け直しながら桃花たちに話し始めた。
「そうだ。僕は琴浦春香の持っているテレパス以外にも多種多様な超能力を持っている。例えば先ほど君達の前に現れた際に使用したのが空間移動、つまりはテレポートだ。他にも自身の姿を変える事ができるトランス・フォーメーションに物体を瞬時に移動させる事ができるサイコキネシスにテレキネシス……と、説明するのにも時間が掛かるほど多くの超能力を扱える訳だ」
「す、凄いですね……そんなに能力が使えるなんて……」
斉木の説明に愕然としてしまうチョコに、琴浦が悲愴な面持ちで話し掛けた。
「チョコちゃん、前にも言ったと思うけど……不思議な能力とか使えても、かえって辛い思いしたり逆に苦しんだりするだけなんだよ」
この琴浦の発言に、斉木自身も同意した。
「その通りだ。特殊な能力が使えたとしても、決して幸福になれる訳ではない。むしろ周囲の人々から軋轢を受けたり蔑視されたりして苦労が絶えない日常を過ごさなければいけないのが実情だ……君らも、この本を読んでいるのなら解るだろ?」
「そ、それは……!」
斉木が手に取り見せた本に真鍋も皆も視線を釘付けにした。それは今アニメタウン中で話題になっている小田原修司の自伝本[
斉木はその聖龍伝説の本を見せ付けながら、皆に言い聞かせた。
「この本の中でも取り上げられているが、特殊な能力を持ってしまったり常人とは違うだけで周囲から忌み嫌われ、更には周囲と馴染めず苦しむ事が鮮明に書かれている。小田原修司も自身が障がい者という事で実の家族とも余り仲良くできなかったみたいだしね」
「た、確かにその事も本には書かれているけど……」
呟く桃花に斎木は自身の身上も語り始めた。
「僕自身、既に幼少の頃から高レベルの超能力を扱えた。それ故に某国に誘拐され、危うく兵器等に利用されそうになった事もあった」
「そ、そんな事が……!?」
斉木の過去を知り愕然としてしまう真鍋に、斉木は眼鏡を掛け直しながら平然と言った。
「……まぁ、その某国を壊滅させて僕は無事に逃げ出せたんだけどね」
「って壊滅させたんかッ!」
再び斉木の発言に鋭くツッコむギュービッドなのであった。
と、斉木と皆が激しくも可笑しく話していると、其処に
「お、斉木じゃないか」「あ、燃堂」
一人の青年がやって来ては琴浦やチョコ達と一緒に居た斉木に声を掛けた。
見た感じ、かなり柄の悪そうな青年であったのだが、斉木はその青年の顔を見るなり琴浦やチョコには決して見せなかった表情を浮かべて青年に顔を向けた。
「ん、そいつは……」
真鍋が青年に指差して斉木に訊くと、斉木は平然とした態度で皆に青年を紹介した。
「あ、彼は僕の親友で
「あ、宜しくっス。なんだ斉木、お前オレ以外にも友達居たんだな」
「いや、彼らは今初めて会ったばかりで……」
一緒に居た琴浦組やチョコ達を差され若干戸惑いを見せる斉木。燃堂は更にその場に居た他の面々にも気軽に挨拶をした。
「ウィッス、こんちわ君たち」
『………………』
初見で、しかも見た目的には柄の悪そうな燃堂に戸惑いを感じてしまう皆。
だが一人だけ、琴浦だけは持ち前のテレパスで燃堂の本心を読み取っていた。
(へぇ~~、斉木には俺以外友達が居ないと思っていたけど、ちゃんと居たんだなぁ。良かった、俺以外にもちゃんと居て)
この燃堂の本心に、琴浦は多大に驚きながらも感動した。
(こ、この人……! 見た目とかなり違って、なんて思いやりのある優しい人なんだろう)
と、琴浦が燃堂の心情を知って驚いていると(解ったかい? 燃堂は見た目に反して、意外にも心の純粋なイイ奴なんだよ)と頭の中で斉木の声が響いた。
(え! い、今のは……!)
琴浦が内心驚いていると、再び頭の中で斉木の言葉が届いた。
(琴浦春香、僕は君と違って単に相手の心理を覗くだけではなく、相手に自分の思想を送る事も可能なんだ。簡単に言えば、自分の伝えたい事を相手の脳に直接送信できるって訳さ)
しかもこの時、琴浦だけにあらずチョコ達や真鍋らにも斉木の声が直接脳に入ってきたのだ。
(こ、これは……!)
真鍋を含んだ皆が驚いていると、斉木はそんな皆に伝えた。
(オマケに燃堂以外の此処に居るみんなの脳に直接、僕の声を伝えている。正直、燃堂は僕がエスパーだって知らないんだ。済まないが、此処は彼に合わせて僕の事は上手く伏せておいてくれないか?)
(ま、まぁ……そういう事なら、別に仕方ねえけど……)
斉木の話を聞いて唖然としつつも合意する真鍋たちであった。
[聖龍隊の純星と風神]
と、チョコ達「黒魔女さんが通る!!」の面々と「琴浦さん」の面々に「斉木楠雄のΨ難」の斉木と燃堂が加わった丁度その時
「おや? 君達は確か……」
「あ、貴方は……!」
ある男性がその場に現れ、皆その男性に目を奪われた。
トレーニング中なのか、黄色のフード付きジャージを着た体格の逞しい男性。
スポーツ刈りの好青年に見える童顔の青年にチョコはその人物の名前を口にした。
「順一さん!」「やあ」
自分の名を呼ばれ、青年は明るく返事を返した。
青年の名は村田順一。聖龍隊で初の総合部隊、通称 総部隊と呼ばれる複数の部隊を同時に率いる総部隊長を務め上げている人物である。よく周囲からは「ジュン」の愛称で親しまれている。
「あ、順一さん! お久しぶりですッ」
「お、君は念堂力くん! 元気で何よりッ、はは」
順一を見て笑顔で話し掛ける念堂に、順一の方も笑顔で言葉を返した。
そして村田順一ことジュンはジョギング中に見かけたチョコ達に声を掛けては、そのまま話し掛け続けた。
「どうしたんだい? 作品の違うキャラクター同士で集まって、何をしてるんだい」
訊ねられたチョコは順一に話し返した。
「順一さん、私たち今 最近みんな揃って買った本について語っていたんです」
「買った本?」
順一が訊き返すと、それに今度は琴浦が答えた。
「ほら、これですよ。あの小田原修司さんが執筆したって言う自伝本」
そう言って琴浦が順一に見せたのが「聖龍伝説 始まる伝説」と表紙に記載された小田原修司が執筆した、自身と聖龍隊古参メンバーの経緯を書き纏めた一冊の本であった。
その本を見た順一は、半ば興奮しながら皆に話し出した。
「おおっ、それは我が師 小田原修司が書き記した伝記じゃないか!」
「順一さんも買った? やっぱ小田原修司の弟子なんだし、聖龍隊の結成秘話とか読んでみました?」
真鍋が訊くと順一は満面の笑顔で答えた。
「ああもちろん! 前総長で師である修司さんが書き記した、聖龍隊結成時の大戦の秘話と修司さん自身の心境を綴った、まさに聖龍隊と修司さんの歴史が詰まった伝記を見逃すわけ無いだろッ」
「じゃあ、やっぱり既に順一さんは修司さんの伝記本を購入したんですか?」
御舟が温和な口調で訊ねると、順一は満面の笑顔で堂々と言い放った。
「もちろんッ。全部で三部作、修司さんが二次元界アニメタウンにやってきた所から始まる[始まる伝説]ミラー・ガールこと加賀美あつこさんが聖龍隊に加わり聖龍隊の組織としての基盤がしっかりしてきた[聖龍伝説二章]そして聖龍隊が二次元・三次元など全ての世界の命運を賭けた大戦の最中、戦士達や修司さんの心境を記した[聖龍伝説 気高き二次元人達]の三冊だよね」
「いまアニメタウン中の話題になっていますからね。聖龍隊の伝記と小田原修司自身の自伝本として」
戸室が語ると、順一は熱く皆に語り明かした。
「うんッ、僕なんか観賞用と保存用と携帯用の三つ、合計九冊も買っちゃったよ」
「九冊!?」「携帯用って何スかッ?」
順一の発言に驚く琴浦と燃堂に、順一は明るい笑顔を変えず平然と答えた。
「え? もちろん自宅とか室内では読まない、外出時に携帯するやつの事だけど」
「マニアっすか!?」
「うんマニアだよ、そしてマニアだよ」
「否定してッ、其処は否定して! アンタ一応は国将軍なんだからッ!!」
相も変わらない笑顔で平然と答え返す順一の発言に、真鍋はキレの良いツッコミを言い返す。
そんな順一もトレーニングの一環であるジョギングを一旦中断しベンチに腰を下ろして、チョコや琴浦組に斉木と燃堂らと談話しながら休憩をとった。
「それにしても……聖龍隊が結成した経緯って今まで語られること無かったですけど、まさかこうして修司さんの自伝と共に語られ世に出る事になるとは」
携帯用の聖龍伝説の本を片手に語る順一、そんな順一に彼の周りにいる若者達は口々に言った。
「そうだよな。聖龍隊の戦いや活躍って今までテレビのニュースや特番で色々と知ってはいますけど、結成した当初の話って余り伝えられたり当時の聖龍隊の人達自身からも語られる事ってなかったですからね」
真鍋の話に順一は穏やかな表情で答えた。
「うん、当時はまだ二次元界としての認識も無かったからね。僕達のいるこの世界、つまり二次元界が別次元の三次元界の人々の思想概念から生まれた世界だって上手く世に知らせるのが難しかったからな。だから、その事実が明らかになった戦いである聖龍隊史上初の大戦については今まで語られる事が無かったんだ」
「でもその戦いを含め、当時の聖龍隊の英雄達の心境や葛藤も鮮明に書かれていますから、つい夢中になって読んじゃいますよ」
「今の聖龍隊を取り仕切っている最高幹部、通称 聖龍HEADのメンバーになっているセーラー戦士、キューティーハニー、ナースエンジェル、カードキャプター、コレクターズ、
順一の話に熱く語り返すチョコと琴浦。すると二人に続いてギュービッドと真鍋も熱く語り始めた。
「そうそうッ。辛い自分の出生や心境、そして何より自分の存在意義も説いた自伝小説だってテレビでも大々的に紹介される程だもん」
「あの麗しい美女のセーラームーンことネオ・セレニティやキューティーハニー様たちの心の葛藤を赤裸々に綴った多くの話は、まさに伝説と呼ぶべき話ですもん」
更に桃花や御舟に室戸の語り出す。
「私達と同じ二次元界のヒーローヒロインだけじゃなく、別次元から来た聖龍隊総長の修司さんの抱える苦しみや孤独も詳細に書かれていましたし、大変良かったです!」
「誰とも打ち解けない孤独の心、最終的にその心に存在する闇と向き合う武人の物語……とっても共感しました」
「歴史を紡ぎ創る闇の心 通称ダーク・ソウルと呼ばれる禍々しいながらも強大な闇を生まれながらに持った少年の、二次元界の人々を救いたいと強く願う想いが起こした数々の勝利……大変感銘を受けました」
と、再びチョコと琴浦が語った。
「なにより、あのミラーガール……加賀美あつこさんの活躍も、目を見張るものが多かったですし!」
「一人の孤独な少年を思い続ける少女の自愛と優しさが起こした奇跡も……もう感動しました!」
目を輝かせて熱く語る子供たちを前に、順一も同様に熱く語った。
「うむ、その通りだ! 今に続く時代の礎を築いた聖龍隊の英雄……その聖龍隊を結成した武人にして我が師 小田原修司の伝説の始まり! 僕も感動したよ!! いや~~、僕なんかホントまだまだだなぁって実感させられるよ。さすが聖龍隊の先輩達だよ」
すると、そんな順一の発言に皆は笑顔で言った。
「なに言ってるんすかッ。順一さんだって凄いじゃないですか!」
「そうだよッ。あのアジアで最も悪名高いと言われた三次元界の独裁国家 北の国も、当時聖龍隊に入ったばかりの順一さん達の活躍で無事に解放できたじゃないの!」
「その後、順一さんを含んだ北の国の解放に多大な戦果を挙げた人達が認められてスター・コマンドー(流星の精鋭総合部隊)が結成され、順一さんはその指揮官である総部隊長に任命されたし」
「総部隊長に任命された後も、同じスター・コマンドーの人達と共に活躍し続け」
「二年前のアジア大戦争では、北朝鮮の残党であるヤン・ミィチェンを打ち倒し」
「見事、震災で多大な被害に遭っていた為に弱体化していた日本を護り切った順一さんは、今では三次元界も含んだ日本の国将軍に出世できたじゃないですか!」
「独裁国家で悪名を極めていた北朝鮮を解放した上に、その残党軍までも亜細亜大戦で討ち取った順一さんはもちろんッ、順一さんが率いるスター・コマンドーの人達も! 俺たち二次元人の誇りですよッ!」
真鍋、ギュービッド、戸室、桃花、チョコ、琴浦、燃堂の言葉に、順一は明るかった表情に少しばかりの影を落として呟いた。
「……そうだ、その通りだな……」
『……?』
突然表情を変える順一を不思議に思う皆。
すると順一は不意に立ち上がり、再び明るい笑顔を浮かべると皆に言った。
「さぁってと、休憩は此処まで。僕はまた、ジョギングの続きに戻るよ。それじゃッ」
順一はそう言って別れを告げると、再びトレーニングの一環で走り去ってしまった。
「……じゅ、順一さんどうしたんだろう……」
「ほんと。一体どうしたんだろう? なんだか急に空気が変わったけど……」
不思議がるチョコに桃花の二人、すると真鍋が琴浦に訊ねた。
「なぁ琴浦。順一さんが何を思っていたか解るか?」
「ううん、順一さんの考えとか……全く読めなかった」
「えッ? テレパスの琴浦でも解らなかったって……!」
琴浦が真鍋に返した言葉に驚くギュービッド。実は琴浦春香は極度のテレパスであり、他人の心や思考が解ってしまうのであった。
と、皆がその場から走り去ってしまった順一について話していると斉木が困惑する皆に述べた。
「それは順一さんを始めとする、聖龍隊の最戦線で活躍する人が、皆ハート・ロックと言う術を扱えるからだ」
「は、ハートロック?」
斉木の発した言葉に頭が混乱する真鍋に、斉木は詳しく話した。
「ハートロック。通称 精神心理密閉という特別な鍛錬を行った者が扱える術だ。これを身に着ければ、テレパス等の人の心理を覗き込む事ができる能力者相手でも、自分の思考や心意を知られる事を防げるらしいよ。この術を得ているのは、政府などの機関で機密の任務や情報を知る人間を中心とした、一部の軍人や政府関係者のみらしいけどね」
「く、詳しいんだな……斉木」
「いや、僕もネットぐらいで知ったぐらいだよ」
詳細に説明する斉木に圧倒される燃堂に、斉木は上手く誤魔化しながら話し返した。
その時だった。
「いや~~皆さんで何やら楽しそうにお話してますなぁ」
『っ!?』
突然、近くの草むらと木々の方から声がして、皆驚いた。
すると木々の間から声の主が、ひょっこりと顔を出しては皆に愛想よく言葉を掛けた。
「よッ、さっきから楽しそうですな皆様。ニヒッ」
「ば、バーンズさんっ?」
言葉を掛けてきた人物の顔を見て、琴浦が声を上げた。
その人物は人間ではなく、まるで怪獣映画のギャオスと瓜二つの顔立ちに如何にも機嫌の良さそうな表情を浮かべる軍服スーツを着用した人外の男であった。その軍服スーツのギャオス顔の男の胸には、青い鳥のバッジが輝いていた。
「バーンズさん! いつから其処に……!」
「お前さん達が作者と言い争っている所から聞いていたさ」
真鍋が指差しながら訊くと、バーンズは笑みを浮かべて答え返す。
そしてバーンズは草むらを押し退け、チョコ達と琴浦たち、そして斉木と念堂の前に出てきた。
「バーンズさん、どうしたんすか? 聖龍隊の新総長がこんな所に……」
「また……私達の監視か何かですか?」
バーンズに真顔で訊ねる念堂に対し、森谷ヒヨリは不安げな面持ちで訊ねる。すると問われたバーンズは明るい面差しで話し返す。
「いやいや、ちょっと近くを散歩がてらに飛行してたらお前さん等の賑やかな話し声が聞こえてきたもんでね。楽しそうだったから話し掛けずに隠れて聞いていた訳さ」
と、バーンズの話しを聞いたギュービッドは、あからさまな態度で話し掛けた。
「それだったらバーンズ、折角だし此処にいるみんなに何か奢ってよ? 何てったって聖龍隊の新総長なんだし、それぐらい余裕で出来るだろ」
ギュービッドに言い寄られたバーンズは、戸惑いながらも彼女に答え返した。
「い、いや……確かにオレも今や聖龍隊の総長に出世したけど、まだ財布の中身が厳しいからなぁ……せ、せめて此処にいるみんなで折半つまりは割り勘でだったら少しは出せるけど……」
このバーンズの話しを聞いたギュービッドは目の色を変えて話した。
「解った、それならアタイ達も出せるだけ出すよ……うん、まだみんなで何か買うには人数的に少ないし…………あ、あそこに。ちょっと待ってくれッ」
辺りを見回し何かに目を止めたギュービッドは一目散に駆け出した。
そして彼女は一つの集団を大急ぎで連れてきた。
「連れてきたッ」
ギュービッドが連れてきた一団を見たバーンズは彼女に言った。
「おいリトバスの連中、連れてくんなや」
ギュービッドによって連れて来られたのは「リトルバスターズ!」の直枝理樹を始めとした一団。茶髪のポニーテールの棗鈴とその兄の恭介。赤シャツに赤い鉢巻の筋肉ムキムキの青年、井ノ原真人。剣道着姿の宮沢謙吾。ショートボブの可愛い髪型に大きめのセーターを着用している神北小毬。紫色の髪に前を白いヘアピンで留めた、丸い髪飾りの髪留めで独特のツインテールが特徴的な三枝葉留佳。銀色のストレートロングヘアーに、その左サイドにコウモリの髪留めをつけている能美クドリャフカ。身長も胸も大きい来ヶ谷唯湖。日傘を差している青い髪に赤いカチューシャの西園美魚。紫の髪に小さなリボンを付けている二木佳奈多。髪の両側に留めている黒い猫耳リボンが特徴の笹瀬川佐々美。容姿端麗の朱鷺戸沙耶の面々だった。
「…………まぁ、別に構わないか。お前ら全員、俺が奢ってやるからついて来い」
思わず呆然としつつも納得するバーンズは、ギュービッド達に琴浦たち、斎木と念堂の二人に続いて「リトルバスターズ!」の面々も引き連れて公園内を歩き始めた。
[憩のカフェで]
新世代型の若者達を引き連れて、バーンズは彼らに何を奢ってやろうかと公園内を見て回った。
と、そんな折、一つの屋台がバーンズの目に飛び込んできた。
「おッ、あれは」
バーンズはその屋台に皆を引き連れて歩み寄った。すると屋台の売り場から一人の女性が顔を覗かせた。
「あら、バーンズじゃないの」
顔を覗かせた女性は屋台の側まで来ていたバーンズを見て笑顔を向けると、バーンズも女性に笑顔で明るく受け答えした。
「よっ、アカネの姉さん。商売繁盛してまっか」
「もちろんっ、お蔭様でね」
女性は笑顔でバーンズにウィンクをしながら返事をする。
そのバーンズの後ろで彼に奢ってもらう予定の若者達が屋台の看板に目を向けると其処には【TAKOCAFE】と大きく描かれていた。
「へへ、此処のたこ焼きは絶品なんだぜ。むろん、たこ焼き以外の食いもんやドリンクもあるから好きなだけ選べよ」
「へっ? 此処ってたこ焼き屋なんすか?」
バーンズの発言に驚く真鍋に、バーンズは笑みながら言い返した。
「おうよっ、たこ焼きは美味いし看板娘のアカネねえさんは可愛いし、言う事なしだぜ」
「ふふ、ありがとう」
バーンズの言葉にたこ焼き屋の女性は微笑んで礼を言う。
こうして新世代を始めとした若者達は、バーンズの奢りでTAKOCAFEで焼きたてのたこ焼きを入手してそれぞれ屋台の周りに配置されているテーブルに席を着いた。
一方のバーンズは、皆に奢る食べ物の代金を店主である藤田アカネに払っている中、事も有ろうにアカネを口説いていた。
「アカネのねえちゃん♪いつ来てもたこ焼きは美味いし、何よりねえちゃんは別嬪だし……今度どっか一緒に遊びに行かない?」
「ふふ……お断りよ」
「ははッ、いや参ったねぇ」
笑顔でバーンズの誘いを巧みに断るアカネにバーンズは微笑で返した。
そしてバーンズも若者らの輪に入りつつ席に着いた。
「いやぁそれにしたって……今思えば随分アニメタウンも発展してったもんだよ。今では魔法も科学も、そして数多の種族が共存できる社会に途上してるんだもんなぁ」
「やっぱり昔に比べて、二次元界って発展していると思います?」
喋りだすバーンズに問うチョコに、バーンズは笑顔で答え返した。
「ああ、そうだな。昔と比べたら、俺たち二次元人の生活と言うか世界観はかなり変わったよ。今思えば、昔が懐かしいねえ」
バーンズが余韻に浸っていると、琴浦と真鍋がそんなバーンズに話し掛ける。
「バーンズさんも今じゃ聖龍隊の新総長にすっかり板が付いてきましたけど、昔っから女好きは変わりませんよね」
「それは真鍋君だって同じでしょ。でも、今も昔も聖龍隊はとても素敵な集まりだったんですね」
「おッ、やっぱり解ってくれてるかい。まぁ昔から色々と起こった聖龍隊に二次元界ではあったけど、俺と修司を中心とした聖龍伝説は形を変えて今に受け継がれているって訳だな」
琴浦たちが話す、小田原修司執筆の聖龍伝説について語るバーンズ。すると、そんな会話に今度は理樹がバーンズに一言発した。
「それなら僕達も読みましたよっ」「んッ」
理樹の一言に振り向くバーンズたち、すると理樹を始めとする「リトルバスターズ!」の面々の手には、それぞれ中には章が違う物もあるが各々が聖龍伝説の伝記本を手にしていた。
「おおッ、お前達も読んでくれているのか。いや~~今となっては小っ恥かしい話も沢山有るんだけど、それでも俺様の活躍は必見だろ?」
「……前半はね。中盤から後半は、全て修司さんとアッコさんの絡みが中心でした」
〔ズコーーッ〕「ま、まぁ……それはそれで仕方ねえな。なんせ、その本を書いたのは他でもない修司自身なんだからな」
棗鈴の発言に思わずズッコけるバーンズは苦笑を浮かべながら複雑そうに話した。
「ま、まぁ……それにしたって、アニメタウンいいや二次元界も今ではかなり発展したもんよ。昔は本当に二次元界と三次元界が共存できるか不安に思っていたけどよ」
「だけど……未だに二次元人への蔑視が消えずに残ったままで、少し不安です」
再び椅子に腰を下ろし姿勢を立て直したバーンズが昔を振り返りつつ感傷に浸っていると、其処に琴浦が実に不安そうな面持ちでバーンズに言葉を掛ける。
すると今度はチョコや桃花らも話し出す。
「そうだよね。三次元人は私たち二次元人に対して、今でも危険視してるって言うし」
「小田原修司の政策のお陰で少しはマシだって良く聞くけど、全然双方の深まる溝が埋まる様子が見られないし」
二人の発言にバーンズが表情を渋らせて話し返した。
「まぁ、二次元人の中には未だ多くの異常者《ヒール》が出没する現象が多発しているからな……修司が発案した悪役排除法によって、異常になった異常者《ヒール》はスグに処分されたり投獄されたりしてっから、一般の二次元人達には無意味に非難が向かないようになったとはいえ、まだまだだからなぁ」
『…………ハァ』
「あ、あれ? 君達どうしたの? ねぇ……」
突然酷く落ち込む琴浦と森谷に戸惑い出すバーンズ。するとその時、慌ててギュービッドがバーンズの頭をワシ掴みして耳打ちした。
「バーンズ! 余り二人の前で異常者《ヒール》の話しはするなってのッ。忘れた訳じゃないだろ、琴浦の親父が琴浦の腹違いの妹を虐待した事で異常者《ヒール》認定されて今、刑務所に投獄されている上に……琴浦の母親や森谷が昔、琴浦にした仕打ちが原因で二人ともブラック・リストに載せられて、ちょっとした事でもスグに連行される身の上だってッ!」
「あ、ああ済まん……そういや、忘れていたぜ」
ギュービッドに耳打ちで指摘されたバーンズは彼女の発言に軽く頷いた。
因みにブラック・リストというのは異常者《ヒール》認定スレスレの人物を【要注意人物】としてリスト・アップした記載書の事であり、一般的に元悪役や悪堕ちしてしまった経緯の二次元人や、国家反逆者にテロリストおよび反国家思想を持っている人物が記載されているのである。このブラック・リストに一度名前が記載されてしまえば、その殆どが常に国家を始めとする政府機関に目を付けられてしまうのだ。
と、そんな様子のバーンズ達に近くの席に腰を下ろし分厚い本を読んでいた一人の人物が話し掛けてきた。
「何だか賑やかだね、バーンズ」
その声にバーンズと他の皆々が顔を向けると、その人物は愛想よくバーンズ達に挨拶を述べた。
「やぁ君達。僕らの所の新総長に、また迷惑かけられてないかい?」
「ジュニアさん!」
焦げ茶のスーツを着たその人物の顔を見た御舟は名を口叫んだ。
「なんだジュニア。お前も此処に居たんだ」
「ああ、たまには外の空気に当たりながら本を読むのも一興かなってね」
バーンズが話し掛けると、そのジュニアは分厚い本を開いたままで答え返した。
するとジュニアは、目を横に逸らしながらバーンズ達に告げた。
「それに、此処にいるのは僕だけじゃないよ」「?」
ジュニアの発言に不思議がるバーンズ達が彼の視線の先に目を向けると、其処には水色の髪に青い長袖の落ち着いた洋服を着衣した女性がジュニアの前の席でアイドル雑誌を開いて座っていた。
「あ、アプリコットさん、ですか?」
女性に戸惑いながらも棗恭介が訊ねると、女性は優しい微笑を向けつつ恭介らに顔を見せた。
「あら、君たちは。それにバーンズまで一緒に居るなんて……君達、なにかバーンズにさせられたの?」
「ってオイオイ、アプリコットよ。何でオレがなんだよオレが。オレはただ、この未来を背負うであろう若者達に少しばかりの気持ちをと思って、このカフェでみんなに奢ってあげているっていうのに」
「はいはい、解っているわよ。冗談だからそんなにムキになって言い返さなくても良いわよバーンズ。ふふ」
楽しげに、そして賑やかに話をするバーンズとアプリコット。二人の会話のやり取りを目の当たりにしていた皆は、面白おかしくて思わず笑みが顔から零れてしまうばかりだった。
「それにしても昼間っからお二人さんでデートですか。良いですなぁ二人は。セレニティとエンディミオン、アクア・レジーナと海斗、ミュウイチゴに蒼の騎士と同様、HEAD内で数少ないカップルですからなぁ」
「冷やかさないでくれよ、バーンズ」
「私も、ジュニアと同じでたまには屋外で落ち着いて雑誌でも読もうかなと思ってこのカフェに足を運んだら、既にジュニアが来ていたから一緒に同じテーブルで読書しようって事になっただけで」「はいはい。やっぱ仲の宜しい事で」
ジュニアとアプリの返しに対して、両手を小さく上げて首を頷かせるバーンズであった。
「ところでアプリコット。お前がアイドル雑誌なんか読んでいるなんて珍しいな。最近になって興味とか湧いてきたのか?」
「アイドルって訳じゃないけど……最近、アイドル活動を頑張っている女の子達に多少の関心が湧いてきて」
バーンズが顔を覗かせてアプリが拝読している雑誌について訊ねると、アプリはその雑誌の表紙を飾っている星宮いちごと霧矢あおいの最近の芸能活動に対しての励みっぷりに関心が向いているのだと釈明する。
そんなジュニアにアプリコット、そしてバーンズ達が楽しく会話をしていると、更に其処へ一人の女性が歩み寄ってはアプリコットに声を掛ける。
「アプリちゃん」「あっ、アッコさん。こっちですよ」
その女性を認識したアプリは手を振って、女性を手招きする。
赤味のピンク色のスーツを着込んだ、ふわふわな赤いお下げ髪が特徴的な髪型の女性がアプリコットに駆け寄った。
「ごめんなさい。まだバーンズが書類を片付ける前にどっか行っちゃって……お陰でその整理に時間取られちゃってさ……」
と、女性の話を聞きながらアプリは視線を別の方に向けた。「?」女性は視線を自分から別の方に向けるアプリを不思議に思いつつ、彼女の視線を追っていくと、其処には何気なく女性に気づかれない様に自然な装いで背を向けて席に着いているバーンズの姿があった。
「あ! バーンズっ!」「あっ、ああ……げ、元気かアッコ」
バーンズの姿を捉えたアッコは声を荒げて名前を呼ぶと、バーンズは気まずい様子で小さく返した。
だがアッコはバーンズに立腹しながら反論した。
「元気かじゃないわよ、もうッ。バーンズが溜めた書類、さっきまで私とウッズさんが必死になって片付けていたんだから! もう総長になったんだから書類の500枚ほど目を通すぐらいはしてよねッ?」
「し、仕方ないだろ……一昨日のお前の誕生会でみんなして騒いだ分、書類の方がバカみたいに溜まっちまって……」
「それはバーンズだけじゃなく、聖龍隊のみんながそうなのよッ!」
「………………」
アッコに叱られ黙り込んでしまうバーンズの姿は、気のせいか少しばかり縮んでいるように見える。
そんなアッコがバーンズを叱っていると其処に場に居た若者達が気軽に彼女に話し掛けてきた。
「アッコさんっ」「まぁみんな。今日も元気そうで何よりだわ」
声を掛けられたアッコはバーンズを叱り付けていた険しい顔立ちから一変、穏やかな表情で声を掛け近寄ってきた子達に愛想よく返事をする。
そして加賀美あつこも加わって、皆でTAKOCAFEのテーブルで会話を始めた。
「アッコさん読みましたよ。貴女の大切な人が書いた自伝本」
「聖龍隊の、あんな事やそんな事など……色んな事を初めて知りましたよ」
「はは、まさか修司がアニメタウンを去る前に、こんな自伝本を書いていた上、いつの間にか出版社に出していたなんて知らなかったわ」
目を輝かせて問い掛ける琴浦やチョコに、アッコは微笑しながらも話し返す。
「修司さんだけじゃ有りません。バーンズさんやジュニアさん、アプリコットさんの活躍にも胸が高鳴るほど興奮しましたッ」
「ははッ、君は正直だなぁ。よし、これでもう一杯ぐらいドリンク買ってきても良いよ」
理樹の話しを聞いて上機嫌になったバーンズは、徐に財布からお札を取り出すと理樹に手渡そうとしてしまう。
「ジュニアもスゲェじゃないか。9歳にして親父さんのウッズさんに負けないほどの知能で、聖龍隊の参謀長を任せられるなんて」
「確かにそうよね。情報の機密保持やその漏洩を防ぐ役割を担う参謀長を若い頃から任せられるなんて……普通じゃありえないほど素晴らしいわ」
「い、いや……正直、あの頃は聖龍隊はまだ国際的に正式な組織じゃなかったから、組織内の役職は全て当時の総長である修司義兄さんの意思一つで決められていただけだよ」
ギュービッドに朱鷺戸沙耶からの言葉攻めにジュニア本人は戸惑いつつも的確に受け答えする。
「アプリさん。昔は辛い事がたっくさん遭ったんですね……」
「今では参謀長のジュニアさんと婚約までしている仲ですけど、昔は本当に波乱万丈の人生を歩んでいらっしゃったんですね」
「えぇ、昔は……いいえ、自伝本に記載された当時は本当に色んな事が身に降り懸かったわ。でも、そのお陰で今では大勢の人達と親しくもなれたし、何より多くの事を学べた訳だし、良かったなって心から想えているわ」
桃花に御舟から話し掛けられたアプリは臆する事無く平然と落ち着いた様子で受け答えた。
その時、女子達がアッコの指に煌く青い光に目を向けて彼女に話し掛ける。
「アッコさん、それが例のアレですか?」
チョコに指摘されたアッコは笑顔で躊躇する事無く言い返した。
「ええそうよ。これが私と修司、どんなに距離を置こうと二人が結ばれた固い繋がりを表わす指輪よ」
そう言いながらアッコは自分の左手薬指に嵌めている青い宝石の指輪を眺めなる。
「あ、あの……失礼かもしれませんけど、その……その指輪、見せて貰っても良いでしょうか」
「え、別に構わないわよ。はい」
神北小毬達に頼み込まれるアッコなのだが、彼女は嫌がる様子も見せず指輪を薬指に嵌めたまま、左手の手の甲を女子らに向けて彼女達に指輪に嵌められた青い宝石を観させて上げる。
「うわぁ、綺麗……」「こ、これ何の宝石なんですか……?」
青い宝石の輝きに見惚れる三枝葉留佳の横でアッコに訊ねる能美クドリャフカに、アッコは笑顔で答えた。
「サファイアよ。私の誕生石」「へぇ……」
思わず頷いてしまう女子達。すると其処に真鍋がアッコに訊ね掛ける。
「ねぇねぇアッコさん。自伝本には、アッコさんが昔っから修司さんの事を好いていたって書かれているんだけど……二人の馴れ初めである窓ガラスの件から当時の聖龍隊と敵対していた悪役達からの襲撃までの件って、全部本当なんすか?」
訊ねられたアッコは躊躇う様子もなく平然と真鍋に答え返した。
「そうよ。修司が私を身を挺して庇ってくれた所から全てが始まって……そしてそれが今、時代と世界に繋がっている訳よ」
「ロマンチックですね」「うんうん」
目を輝かせて首を頷かせるチョコと桃花に対し、今度は斉木がアッコに訊ね掛けた。
「だけど加賀美さん。この自伝本には、小田原修司が自身を発達障がい者と告白している文章以外にも、アッコさんやバーンズさんを始めとする今の聖龍HEADのメンバーである人達の過去とか経緯も克明に記載されていますけど、大丈夫なんですか?」
これに対しアッコは平然とした表情で答えた。
「私はそんなの気にしてないわ。むしろ、修司が昔っから自分のコンプレックスであった障がいを、やっと世間に公表できるまで自分を受け入れてくれた事を嬉しく思うわ」
そんなアッコに続いてバーンズとジュニア、更にはアプリコットも答えた。
「確かに、アッコの言うとおりだな。あいつは昔から自分の生まれ持った障がいについて色々と悩んで来たからな……それを自伝本として世間に晒させるって事は、それだけ自分の事を受け入れられるほど強くなったって事だ」
「何より、自伝本に登場している聖龍隊メンバーのみんなは、自分の事も記された伝記本については何も思っちゃいないさ。むしろ義兄さんが自分の障がいを公表できた事に凄く驚いているからね」
「そもそも、自伝本に表記された人達つまり私達は最初っから聖龍伝説の本に自分達の事も記されているって知っていたのよ。ただ修司さんが自分の障がいも伝記に記していたのと、その自伝を聖龍隊から離別した後、私達も知らない内に出版社を通して本として出版していた事には非常に驚かされたわ」
最後に再びバーンズが皆に語り明かした。
「修司の奴が、自分にとってはマイナス思考の根源だった障がいを公表できるようになるとは……ホント、あいつは変わったよ」
そのバーンズの表情は、何処かしら清々しいほどの穏やかな表情であった。
[全ての異世界を治めし将軍]
その時、突然どこからかアラーム音が鳴り響いた。
〔ピッピッピーー、ピッピッピーー、ピッピッピーーーー〕
「ん、なんだ?」
バーンズを始めとするTAKOCAFEの周りで寛いでいる皆が顔を向けると、音はTAKOCAFEの屋台の中からであった。
「あ! いけない、時間だ」
屋台から聞こえてくる音に気づいた店主の藤田アカネは屋外で作業をしていたのだが、それを急ぎ中断して屋台の中に駆け込んだ。
その様子に目を奪われてしまっている面々、その内のバーンズは徐に腕に装着していた腕時計に目をやった。
「なになに、今は……15時か」
時間を確認したバーンズが再び顔を上げて屋台の方に目を向けてみると、藤田アカネが屋台の内部その下の方から自分の半身ほどの大きさは有ろうかと言う薄型テレビを持ち上げていた。
「よっこいしょッと」〔ドンッ〕
大きな音と地響きを鳴らしながら薄型テレビを屋台の台座の上に乗せるアカネ。
皆、そんなアカネに何事かと思い切って訊ねた。
「あ、あの……おねえさん、何かテレビで始まるんすか?」
燃堂が訊ねるとアカネは目を輝かせて周りの皆に言い放った。
「始まるも何もッ、あの義輝様が今日の午後三時に緊急の公言を生で中継するってテレビ欄に記載されていたのよっ! 見逃す訳にはいかないわ……!!」
燃え滾る瞳で興奮するアカネを前にして唖然となる皆。
その時、真鍋がポツリと言葉を出した。
「確か、義輝って……あの足正義輝《あしまさよしてる》の事すか?」
真鍋に続いて琴浦やチョコ達も口々に言い始めた。
「確か最近になって国際連合の総長に抜擢された人だったよね……」
「うん、確か琴浦さんや斉木さん達と同じ、新世代型二次元人の……」
皆が騒然となる中、バーンズとジュニアが皆に語り掛ける。
「そうだ。二次元人にして、初めて全ての国家と異世界を治める重要な役職に着任する事となった国連総長だ」
「二次元人が三次元界も含めた重要なポジションに就く事なんて……今までは最低でも県将軍や国将軍止まりだったのに、遂に二次元人が国連総長に抜擢されたんだ。僕ら二次元人が三次元人に少しは認められた存在に成れたって事だろう」
二人に続き、アッコとアプリコットも騒然となる若者達に語り出した。
「本当に、長かったわ。私たち、創作上の存在が創作側の人達に此処まで社会的な立場を許されるなんて……!」
「今までは県将軍に、その県を代表する二次元人が……沖縄の音無小夜、北海道のちせさん。最高で日本の国将軍の村田順一君で、私たち二次元人の努力は実らなかったけど、遂に……遂に、二次元人が国連総長に任命される日が来たのよね」
目を潤わせて感激するアッコとアプリ。自分達、創作上の人間が創作側の人間に社会的立場を認めてもらう事はもちろん許される事も少なかったからである。
そして藤田アカネは屋台の売り台にテレビを乗せて、すぐさま電源を入れるとテレビ画面に視線を釘付けにする。
テレビの画面にまず映し出されたのは良く報道会見で観られる複数のマイクが置かれた木の台であった。
すると画面の隅に小さく四角のマスから一人のレポーターが視聴者に向かって語り始めた。
「本日9月8日、日本時間15時 かの新しく国連総長に任命されました足正義輝公が緊急の公言があると世界各地の報道機関に報せが来ました。この足正義輝公、二次元界と三次元界がようやく国連軍と聖龍隊を始めとする勢力の度重なる奮闘により治まりつつある両次元界の平定を任される事と成った新世代型二次元人であります。新世代型につきましては、先の軌道エレベーター・ヤコブ完成に基づき、その管理官を勤めていましたルミネ率いる新世代の反乱以降、危険思想が高まる中での国連総長赴任は様々な波紋を呼びました。しかし、当の義輝公は、彼の剣帝将軍 足利義輝をモデルに生み出された新世代型の二次元人ということで大いに人気を得ている現状であります。足正義輝総長本人も、文武両道にしてありとあらゆる才能に秀でている新世代型という事らしいので期待に胸が高まります。あっ、今義輝公の準備が整ったようであります!」
レポーターは完全にテレビ画面から消え、そして画面の横から木の台に向かって歩を進ませるのは、煌びやかな着物と立派な甲冑を身に着けた、武人の言葉が似合う風貌の男性だった。
男はマイクの前に立つと、威風堂々とした姿勢と凛々しき顔立ちを振舞いつつ演説を始めた。
「皆の諸君、本日もまた良き太平の日々を過ごしているかね。ははっ」
愛想よく笑むその振る舞いには余裕すら感じさせる覇気を醸しつつ、義輝は演説を続けた。
「さて本日、予が皆の前に姿を現し公言するのは他でもない。予は心の其処から……この太平の世に退屈を覚えている。今日まで我が国連の下で働いてくれた国連軍、そして彼の大英雄集団 聖龍隊によって、世界は真素晴らしい世と相成った。しかし人々は、その太平の中で力強く生きる事を忘れ、延々と流れる時の中で堕落し続ける有様。この様に全ての国そして異世界には、悲しき事だが人々の活気が次第に失われていくばかりである。こればかりは予の成せる政ではどうする事もできぬ。予は考えた、活気を失い続ける世の中を憂いながら予が出した答え……それは世界を、時代の全てを零《ゼロ》に戻す事である! 予は自身の地位と権限を無に還し奉り……更には誰もが己が運命を賭けて天下獲りすらできる世を創る為に、全世界の権威ある者達も一部とはいえ蒸発させた!」
『………………………………………………………………』
テレビを見ていたバーンズ達は、国連総長の熱い語りに愕然となり、言葉を失ってしまう。
そんな中、義輝公は相も変らぬ覇気を発しながら世の人々に説いた。
「予を始めとする、全ての者等の地位と権威を無に還し奉る。すなわち……現政奉還を此処に宣言する! さあ熱き者よ、己が全てを賭け、次代を創れ!!」
次の瞬間、テレビ画面にノイズが走り映像が途絶えた。
公言をテレビ越しで目の当たりにしていた面々は驚きの余り固まってしまい、しばらくの間言葉すら失くしていた。
「………………え」
『ええぇッ!!』
バーンズ、ジュニア、アプリコット、アッコの聖龍隊のメンバー。
テレビを持ち出しては自分が憧れてやまない将軍 義輝の公言に大層驚くTAKOCAFEの店主 藤田アカネ。
プロト世代と呼ばれる世代の二次元人である黒鳥千代子に桃花・ブロッサム、そしてギュービッド。
そして、現政奉還を宣言した国連総長 足正義輝と同じ新世代型の二次元人。琴浦春香、真鍋義久、御舟百合子、室戸大智、森谷ヒヨリ、斉木楠雄、燃堂力、直枝理樹、棗鈴、棗恭介、井ノ原真人、宮沢謙吾、神北小毬、三枝葉留佳、能美クドリャフカ、来ヶ谷唯湖、西園美魚、二木佳奈多、笹瀬川佐々美、朱鷺戸沙耶。
みんな揃って驚愕するのだった。
2013年 9月8日 新国連総長 足正義輝により現政奉還《げんせいほうかん》が促された。
この日より世界は、そして全ての異世界を巻き込んだ 戦界創生の、本当の始まりであった。
[世界観説明および主要キャラクター紹介]
小説の世界観。
多くの物語が一つの世界観として一体化しており、二次元人と三次元人が共生している世界。
しかし危険な可能性をも秘めている二次元人を三次元人は危険視する一面も有り、その中でも敵役や陰湿なキャラクターなどは悪役(ヒール)と分類され容赦なく処罰・処分の名目で連邦刑務所に投獄されたり、処刑されて行く。
(三次元人も二次元人ほど数が多くはないが悪役として処分されている。例:2次元人・8割ほど/3次元人・2割ほど)
そして「将軍制度」なるものが有り、地方や国にその治安や防衛軍事力を決定する権限を持つ軍人職が有る。
地方将軍・国将軍・州将軍の順に位が高くなっていくが、ロシアのみアジアやヨーロッパ等にも領土が有る為、国将軍が州将軍の役割を得ている。
そんな世界の治安バランスを保っているのが「三大勢力」であり、聖龍隊・国連軍・セブンズガードである。
※国連軍とセブンズガードは主に、「ONEPIECE」の海軍と王下七武海が基と成った構成であります。
主要キャラクター紹介(主に各話に登場し出したキャラのみの紹介)
小田原修司
所属:聖龍隊 総長(現在は役職を離れ、世界を放浪中)
武器:日本刀 闇の心《ダーク・ソウル》
肩書:破壊鬼神
現時点での年齢:25
先代の聖龍隊総長にてかつて国連に自らの人権を差し出して人間兵器として生きて来た武人。
先の時代で争い続けた「革命軍士」を倒した後、提言通り国連に全ての権限等を還し、国連側からは自らの人権を返還された。
その後、聖龍隊総長の座も副長であった腹心の友バーンズに譲り自身は「己が必要となくなった世界がどの様に変わるのか」を見届ける為にアニメタウンを去って行った。
その時、空港内で意中の者、加賀美あつこにサファイアの婚約指輪を渡し見事に自分の思いを伝えられた。
更に聖龍隊のメンバーも気づかないまま、いつの間にか出版社に出していた自身の自伝本「聖龍伝説」の三部作を世に公表した。その中で自身がコミュニティ障がいを始めとする発達障害者であると公表もした事で、世間では多大な反響を呼んでいる。
村田順一
所属:聖龍隊 総合部隊(現在は日本皇軍筆頭) スターコマンドーの総部隊長
武器:なし 装具:星手甲
肩書:心照輝星《しんしょうきせい》
現時点での年齢:23
聖龍隊総部隊長にて日本将軍、そしてかつての聖龍隊総長小田原修司の一番弟子。
同じ小田原修司から直接鍛えられたメンバーを従えた純粋な心の持ち主。
2年前の乱世においては北朝鮮の残党軍総大将ヤン・ミイチェンを撃破したなど数多くの功績を残した実力者。
非能力者にして多くの能力を持つ多種多様な仲間達を従える程の人望が有り、かつての乱世では魔法界で造られたと云う想いを力にする装具を仲間達から渡され、己を強くさせてくれた人との繋がりつまり「絆」の力で戦おうと奮い立ち、人の痛みを常に忘れない様に武器無しで戦場に立つ。
バーンズ・ウィングダムズ・キングズ
所属:聖龍隊 総長
武器:自分自身
肩書:戦翔風神《せんしょうふうじん》
現時点での年齢:25
2013年になって聖龍隊総長の座を全総長である小田原修司により受け継いだ超獣族の武人。
基本的に明るく、そして温厚な性格である。だが戦闘時には多大な戦果を挙げ、かつての鬼神 小田原修司と並ぶ風神と称されている。
ジュニア・J・プラント
所属:聖龍隊 参謀長
武器:鞭
現時点での年齢:23
聖龍隊の古参として、昔から情報保持や機密事項を取り扱っている重要な役職を与えられている参謀長。
穏やかで如何なる状況にも冷静に対応する聖龍隊屈指の頭脳《ブレイン》でもあり、戦火では彼を始め活躍する小田原修司とバーンズと同等に戦況を塗り替える程の影響力を持っている。その為、周囲からは二人に相並ぶ地神と称されている。
アプリコット
所属:聖龍隊 最高幹部 通称HEADのメンバー
戦法:周囲の水分を操る、攻防一体の戦術
現時点での年齢:24
理想CV:皆口裕子
聖龍隊古参の一人であり、参謀長のジュニアの婚約者《フィアンセ》でもある。
昔と比べ、体型が発育しており、やや細い腰周りに巨とは言えないが膨らみのある胸を持っている。
その為、聖龍隊を代表するバーンズと修司の婚約者である女性達からは、かつて同じ貧乳であったのにも関わらず一人だけ胸の発育が良くなったアプリに対して「裏切り者」「解せぬ」等と言われてしまっている。
加賀美あつこ
所属:聖龍隊 副長
武器:魔鏡盾《ミラー・シールド》
肩書:魔鏡聖女
現時点での年齢:26
理想CV:山崎和佳奈
小田原修司が抜けた事により、総長の座に就いたバーンズに代わって副長の座に転じた女性。
全ての二次元人の始祖と呼ばれるキャラクターであり、変身ヒロインの元祖でもある彼女は、聖龍隊古参として多くの能力者たちと向き合いつつ、彼らの苦悩や葛藤を見てきた。
他人からの愛情を感じられない修司を昔から直向に想い続け、遂に彼がアニメタウンを去る際に修司からサファイアの婚約指輪を受け取るのであった。
足正義輝《あしまさよしてる》(新世代型二次元人)
文武両道、あらゆる才能を持ってこの世に生を成した新世代型二次元人、そして国連総長である。
聖龍隊および国連軍などの勢力によって平和になった己の時代において全ての次元・世界の頂点に君臨したその時、全ての世界から活気が失われているのを感じ再び人々の熱い息吹を求める。
それゆえに誰もが運命を賭けて天下獲りすら目指せる世を創るべく、己の地位や権限を無に還したのはもちろん全ての世界の権威ある者を蒸発させた「現政奉還」を宣言する。
時代の全てを零に戻した「戦界創世」を引き起こした張本人。
現時点での年齢:推定50前後
理想CV:池田秀一