新・聖龍伝説 現政奉還記 序章   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 今作には、あの昔懐かしい世界名作劇場の作品等と巨大ロボを始めとするスーパーロボットのキャラクター達が総出演いたします。

 温情溢れる世界名作劇場のキャラ達と、世代を越えて今なお多くのゲームや作品に登場してくるスーパーロボットのキャラ達のやり取りをどうか楽しんで下さい。



現政奉還記 温情の町と巨大SRM基地

[一泊してから]

 

 聖龍隊と赤塚組の激突、そして双方の宴の際に突如として現れた異国の忍 猿飛佐助との攻防戦および同盟への呼び込み。

 そんな色々と有った日の、それも様々な出来事が繰り広げられた酒宴の後、宴に参加した聖龍隊はそのまま赤塚組の巨大戦艦義賊要塞(ぎぞくようさい)百鬼命義(ひゃっきめいぎ)の一室で休眠を取らせて貰った。

 

 そして日が昇り、朝日が海原から顔を覗かせた早朝の頃合。

 聖龍隊の隊士らと赤塚組の子分達が協力しながら百鬼命義の両側に巨大な機体を取り付ける作業を行っていた。

「てめえら! そいつは大事な機体なんだ、丁重に扱いやがれッ!」

『オウッ、大将!』

 赤塚組の頭領/赤塚大作こと大将の掛け声に作業していた子分達が威勢よく応える。

「お前達、それはマーメイド部隊専用の水陸両用潜水艇なんだ。精密機械の塊でもあるんだから本気で気をつけろよ」

『はいッ!』

 聖龍隊総長バーンズからの掛け声に、赤塚組の子分達と一緒に作業している聖龍隊士が強く返答する。

 

 バーンズと大将、二人が見守る中一同が取り付けているのは、二機の大型潜水艇であった。

 二機とも大きな目が一際目立つ鬼にも髑髏(どくろ)にも似た深海魚のようなグロテスクな全貌の、180mもある白銀のボディと黒のボディの二つの機体。その二機を聖龍隊の隊士と赤塚組の男衆が一致団結して、全長320mの百鬼命義の両側にそれぞれ連結させていた。

「……これが、マーメイド部隊の専用機ディープ・アクア・マリーンか」

「ああ、そうだ。修司が発案したのを、ウッズやSRMの連中が総力を挙げて設計した水陸両用の潜水艇。両機とも全長180m、水中では時速90Kは出せる代物で、底部内部のキャタピラを突出させる事で陸上走行も可能。海中や海底でも作業が出来る補助アームも装備されていて海難事故や海上遭難などにも対応できるし、戦闘時にも適応する為に海中でも発射可能なミサイル等の多数の武装も装備されていて、マルチ・ロックシステム等も搭載されている。更にはSRMの基地でちょこっと改良や補助パーツを付け足せば宇宙空間でも自在に操縦できるから、用途が多くて重宝してんのよ」

「へぇ~~……」

 取り付け作業を指揮しながらバーンズは問い掛けてきた大将に二機の機体について詳細を説明すると、大将は感心しながら返事を呟く。

「なあ、ところでバーンズ。この二つの機体って、確かそれぞれ性能が少しばかり違ってるんだっけ?」

 大将が再度バーンズに訊ねると、彼は再び説明し出した。

「ああ、まず白銀のシルバー・マリーン号は主に救助や支援等の補佐的な役割を重点的に設計されてる。補助アームをより多く4つ装備され、更なる細かい作業も可能としている。それとは真逆で黒のブラック・マリーン号は戦闘向きで、海中ミサイルや魚雷をシルバーより多く装備でき、より戦闘に向いた設計となっている」

「シルバーは支援や救助といった作業、ブラックは戦闘に秀でた機体って事か。なるほど」

 バーンズからの説明に、大将は感服に満ちた表情で二つの機体を眺め続けた。

 

 と、その時。大将がある事に気付いて、バーンズに訊いた。

「んっ、そういや……おいバーンズ、他のHEADの面子はどうしてるんだ?」

「そういや……多分まだ寝てるなアイツ等。全く、俺達は朝早くから機体の取り付け作業に追われてるって言うのによ」

 思わず愚痴を零すバーンズの言葉を聞いた大将は、彼に言った。

「何だったら俺がアイツ等の様子見に行ってやろうか。ついでに俺ん処の連中にも声を掛けてぇしよ」

「おっ、そうか。そりゃ助かる……そんじゃ、後の作業の様子は俺が見といてやるから大将はオレとお前ん所の幹部連中に一声掛けて来てくれや」

「おう、解った」

 バーンズからの承諾も得た大将は、そのまま足を進ませた。

 

 船上を歩み続けていく大将、するとその前にセーラー戦士達の姿が視界に入った。

「おうッ、てめェら! ようやく目覚めたかい」

「っ、大将さん」

 何の躊躇いもなく威勢の良い声で言葉を掛けてきた大将に、サターンを始めとするセーラー戦士達は気付いた。

「どうでいッ、俺等の船で迎える朝はよッ! 潮風を受けながら一日の始まりを体感するってえのもオツなもんだろ?」

「ふふ、そうですね。早朝の潮風もまた気持ち良いですわ」

 プルートが大将に答え返すと、彼女に続いてウラヌスも大将に話し出す。

「海からの爽やかな風……そう、みちるの様な広大で美しい海原の潮の香りをボクの風が運ぶかのような」

「ふふ、はるかったら」

「……………………」

 天空/飛翔の戦士である爽やかなウラヌスの発言に朗らかな微笑みを浮かべる深海/抱擁の戦士ネプチューン。そんなカリスマ組の会話を目の当たりにして思わず唖然と冷ややかな目をしてしまう大将であった。

 と、そんなカリスマ組の会話に思わず唖然とする大将だが何とか気持ちを切り換えてはセーラー戦士達に話し掛けた。

「……あ、ああ、ところでよセーラー戦士。他のHEADメンバーはどうしてるんだい? まさか未だに寝てるって事は無いよな」

 すると大将の問い掛けにマーキュリーが答えた。

「あら、みんなならとっくに起きているわよ。これから揃って朝食なんだけど、私達も食事に向かうところなのよ」

「そっか。じゃ、じゃあ……アッコも、もうメシ食ってんのか?」

 マーキュリーの話に大将が訊き返すと、それにジュピターが話し返す。

「アッコちゃんなら、まだ一人で部屋でおめかししているよ」

「へっ? アッコだけまだ……そりゃまたどうして?」

 大将が不思議がっていると、それに対しセーラームーンと続けてマーズが訳を話した。

「へへ、実はアッコちゃんが一番最初に目覚めたんだけどね……私達を含む他のHEADメンバーを起こしているのに時間が掛かっちゃって、それでおめかししている時間が無かったの」

「まったく、うさぎや美奈子が中々起きなかったのがいけないのよ。昔っから其処だけは変わらないから困ったものよ」

『へへへ……』

 マーズの文句に茶目っ気たっぷりの笑みを零すセーラームーンとヴィーナス。

 そんな穏やかな風景のセーラー戦士達のやり取りに和んだ大将は、ふと戦士達に声を掛けながらその場を後にする。

「そっか……そんじゃ、ちょっくらアッコのところに顔覗かせに行ってくらぁ」

 すると、そんな大将の発言にエンディミオンが口を尖らせて言った。

「おい、女性の嗜みを覗くもんじゃない。そもそも着替えの真っ最中だったらどうすんだ」

 それに対し大将は口元を軽く笑んで見せながら歩み出す。

「なぁに、俺だってそれぐらい弁えてる。少しばかしアッコの寝惚けた面を拝んだら失敬するさ」

 そう言って大将は一人、加賀美あつこの元へと向かって行ってしまった。

 

 

 

 

[聖女の気構え]

 

 セーラー戦士一同と話をした大将は、そのまま加賀美あつこがまだ居ると言う一室に足を運ぶ。

「おーーい、アッコ。居るか」

 戸を叩き部屋に向かって声を掛ける大将、すると部屋の中から声が返ってきた。

「その声……大将なの?」

「お、おうそうよっ。ちょっと入って良いか?」

 戸惑いながらも返事する大将は、アッコに部屋への入室を訊ねてみた。

「あ、うん……ちょうど着替えも済んで、今髪を整えているところだし良いわよ」

 アッコの許しを得た大将は「お、おう」と戸惑いながらも部屋の中に入った。

「お、おはよう……アッコ」「おはよう大将」

 部屋に入るなり挨拶を掛ける大将に対し、アッコは直に床に置いたコンパクトの小さな鏡面を低い姿勢で覗き込み自分の髪を梳かしながら、背中を大将に向けたまま彼に挨拶を返した。

「よ、よぉアッコ……朝から女の嗜みかい?」

 挙動不審に感じられる口振りで話し掛ける大将に、アッコはコンパクトに顔を向けたまま話し返した。

「そうよ。女性は朝から大変なのよ、着替えて髪梳かして。特に私の髪型は特殊だから、服を着替えてからじゃないと梳かせないから大変で……男の人には分からないでしょうけど、女って身支度だけでも一苦労してるのよ大将」

 そう語りながら淡々と自分の髪を整えるアッコを大将は無言で見詰め続ける。

 と、そんな彼女に大将は酷く挙動不審な口調で再度話し掛けた。

「……な、なぁ……アッコ……」「ん、なぁに?」

 コンパクトに面と向かいながらアッコが訊き返すと、大将は話し続けた。

「そ、その…………お前はさ、その……修司とアレだ、その……」

「……?」

 ハッキリとしない物言いにアッコは不思議に思い始めたその時、大将が意を決して話し出した。

「そのよ…………ッ、アッコ! お前は、その……修司とその、関係を、その……持ったのか?」

「っ? 関係って?」

 再度訊き返すアッコ、そして大将は思い切って話した。

「だ、だからその…………大人の、関係と言うか、その……体の関係を、よ」

「! ……」

 思わぬ内容の問い掛けにアッコは驚愕し、大将は気恥ずかしさの余り思わずアッコに背を向けて顔を俯かせてしまう。

 そしてアッコは少しばかり沈黙すると、質問してきた大将に言った。

「え、ええっと……そ、そりゃまあ私も修司も、もう子供じゃないんだし、触れ合いという意味も兼ねて身体を重ねた事は、有るわよ……」

 頬を染めながら答えるアッコに、大将も恥ずかしながら言い返した。

「そ、そっか……」

 背中を向けたまま返事する大将は俯かせた顔を赤くしながら、更に続けてアッコに話し掛けた。

「い、いや済まない……お、お前ってその、あくまで聖女って事だから、その……やっぱり、純潔は守っているのかなって……修司とも関係持ってないのかなって思っちまってよ……わ、わりぃな変な事きいて……」

 すると、この大将の発言を聞いたアッコは顔をコンパクトに向けたまま真顔で語り返した。

「べ、別に純潔だから聖女って訳じゃないのよ。確かに聖女は純潔で処女ってイメージがあるわよ。でも私は修司と関係を持った事を恥ずかしいとは思っちゃいないし、むしろ極普通の交際だと認識してるのっ。そもそも聖女が純潔で処女じゃなくても別に問題じゃないわ。要は気構えなのよ、気構え」

「へ、へぇ……」

 堂々と毅然とした様子で力説するアッコの言葉に、大将は呆気に取られ唖然としてしまう。

 

 心意気/気構え/心構えをしっかりと胸中に持っていれば、人は十分に前を向いて堂々と生きられるのかもしれない。

 

 

 

 

[旅路の出来事]

 

 そして無事に二機の機体を百鬼命義に取り付ける作業を終えた聖龍隊と赤塚組の同盟は、幹部を筆頭に談話を始めた。

「バーンズ、これから俺達どうする?」「そうだな……」

 大将に問われたバーンズは、しばし考えると傍らのHEADや赤塚組の幹部衆らに厳つい真顔で語り始めた。

「……オレ達はこれから現政奉還による乱世を渡り歩いていかなきゃならねえ。その為にはまず下準備ってのが必要だ、そうだろ」

『…………』『…………』

 バーンズから問い返された面々は無言で彼からの問い掛けに反応する。

 そしてバーンズは皆々に力強い言動で説いた。

「みんな! オレ達が過酷な乱世を生き残るためには、先ずその準備をしなければいけない!」

「と、いうと……?」

 聖龍HEADのミュウザクロが問い返すと、バーンズは彼女を始めとした仲間達に言い放った。

「うむ、先ずオレ達がやらなければ成らないのが物資の調達だ! その為にオレ達は今から各異世界の交通が盛んな港まで向かう!!」

「バーンズ、その港って……もしや」

 何かしら気付いた大将に、バーンズが力強い言動で言い返した。

「うむ! 今や観光の名所としても名高い[世界名作劇場]の世界に向かう! 大将、お前達もちょくちょく足を運ばせているから馴染み有るだろ? 此処は一つ、現政奉還によって混乱している情勢の中、町がどうなってるか様子見も兼ねて行ってみようぜ」

 このバーンズの提案に傍らの皆も朗らかな表情で同意した。

「わあっ、そりゃイイね! 私も久々に、あの町に行ってみたい!」

 満面の笑顔で同意するセーラームーンに続き、七海るちあもバーンズの提案を快く受託する。

「うん、あそこなら色んな世界との交流が有るし、物資調達には打って付けですよ!」

 そして赤塚組の頭領である大将もバーンズの案に溌剌とした表情で承諾した。

「おおッ、そりゃ良いなバーンズ! 俺も久々にアイツ等の面を拝みてぇぜ」

 皆の同意の意思を受け、バーンズは即座に告げた。

「よし……みんな! 異次元亜空間移動装置を作動させろッ、オレ達は今より異世界[世界名作劇場]に向かう! 進路を取れッ」

『ハッ』

 各隊士および男衆らはバーンズに返答すると即座に行動に移った。

 穏やかな波間を進む百鬼命義のエンジンを緩やかな速度に保ち、同時に他次元や異世界に移動する事が出来る[異次元亜空間移動装置]を作動させる。すると巨大な船に光が包み込むように纏わり、次第に巨大船の実体が透けていく。

 やがて海原を進む木造船/百鬼命義は完全にその巨大な実体を消してしまった。

 

 一同は空間の狭間を通り、聖龍隊と赤塚組を乗せた巨大船は別世界へと移動していくのだった。

 

 

 そして聖龍隊と赤塚組の双方が並行世界である別世界へと向かう間、弱冠の時間軸のズレが生じ数日規模の時間が航行に掛かってしまう事が発生する。

 その数日の間、その頃のアニメタウンである出来事が起きていた。

「…………ハァ、ハァ……」

 夕暮れ時を過ぎ、辺りはすっかり暗くなってしまってた。そんな町中を息を切らしながら走り続ける人影。

「ハァ、ハァ……」

 まるで何かから逃げている様に、必死になって足を前へと踏み出し暗い夜道を一人駈け続けるのは、なんと少女であった。

「ハァ、ハァ……だ、誰? 誰なの、一体……っ」

 息を切らしながらも後方や周辺を見渡し、辺りを警戒しながら走る少女。

 そんな時、少女が曲がり角を急ぎ右折しようとした瞬間。

「イテッ」「きゃっ!」

 少女は誰かと正面から衝突してしまい、その人物共に激しく転倒してしまう。

「いてて……誰だよ、クソ」「ご、ごめんなさい……」

 尻を擦りながら顔を歪める相手に対し、少女は謝罪を述べようと顔を上げた。すると相手の顔を一目見た少女は驚いた様子で叫んだ。

「あ! ま、真鍋くん……?」「って、何だよ。琴浦だったか……」

 少女が名前を呟くと、相手の青年も少女の顔を見て唖然とする。

 共に知人の間柄である琴浦春香(ことうらはるか)真鍋義久(まなべよしひさ)の二人は、衝突した際に転倒してしまった腰を上げて面と向かい合った。

「どうしたんだよ琴浦、そんなに慌てて」

 真鍋が急いでいた様子の琴浦に訊ねると、彼女は切羽詰った様子で真鍋に事情を話した。

「ま、真鍋君。なんか解らないけど、さっきから誰かが私の後を付いて来てるみたいなの」

「な、何だって!? 本当か琴浦」

 琴浦の話を聞いて驚く真鍋に、彼女は一回頷くと再び不安そうな表情で話した。

「う、うん。誰なのか……何を考えているかまでは解らなかったけど、誰かがずっと私の事を狙っているのだけは感知できるの!」

 テレパスの琴浦の言葉に誰よりも彼女を理解している真鍋は、琴浦の不安交じりの言動に強い信憑性を感じていた。

 と、その時「あっ、何が来る!」「えっ?」突然声を上げる琴浦に真鍋が一瞬戸惑った、次の瞬間だった。

「危ない真鍋くん!」「え!」突然、琴浦が真鍋を押し退けた。

 そして琴浦が真鍋を押し退けた次の瞬間、なんと琴浦の首筋に何処からか飛んできた小さな矢が突き刺さった。

「こ、琴浦!」

 矢が琴浦に突き刺さったのを目の当たりにした真鍋が叫ぶと同時に、琴浦は眠る様にその場に倒れ込んでしまった。

「こ、琴浦……!」

 慌てて倒れた琴浦に駆け寄り、彼女を抱き寄せる真鍋が琴浦の顔を覗き込んでみると、琴浦春香は微弱ながらも寝息しているのが確認できた。

「よ、良かった。寝てるだけか……」

 琴浦春香の存命に胸を撫で下ろし安心する真鍋は、彼女の首に刺さっている小さな矢を指で摘んでは引き抜いた。良く見ると、それは羽の付いた吹き矢であった。

「こ、これは一体……」

 琴浦に向かって放たれた吹き矢に真鍋が愕然としている、その時。

「ウッ……!」

 なんと琴浦に刺さった矢を手に取り見詰めていた真鍋にも、琴浦に放たれたのと同じ吹き矢が直撃し、その瞬間真鍋は急激な眠気に襲われその場に倒れ込んでしまった。

 そして誰も居ない夜道で倒れ込む琴浦と真鍋の許に複数の人影が颯爽と現れては、意識を失った二人を抱えて人目を避ける様に立ち去っていく。

 そして人気のない道路の橋に停車している布張りのトラックまで二人を運んだ複数の人影は、手馴れた手付きで意識のない二人を袋詰めにしては二人が起きぬよう静かに車内に運び入れる。

 そのトラックの中には、同じ様な袋が他にも幾つも確認でき、時おりモゾモゾと動いたり、はたまた頭部が袋からはみ出ているのを人影が気付いては慌てて袋の中に押し込んだりしていた。

 その時、人影が腰に下げていた無線機が鳴った。

「はい、もしもし……」

 影が無線機に応答すると、無線機から声がした。

「俺だ、そっちの収穫はどうだ? どうぞ」

「はい、此方の首尾は上々です。いま最後のターゲット二名を捕らえました、どうぞ」

「うむ、こっちはもちろん他の部隊も全て作戦終了だ。先ほど本能寺学園の有力な生徒……其処に通う新世代型二次元人達を無事捕獲する事が出来た。これでリストに記載されている獲物は全て生け捕りに出来た、どうぞ」

「はい、それでは此方も生け捕りにしたターゲットが逃げないよう気を付けながら、町から撤退します」

「うむ、気を付けろ。いくら情勢が混乱していて逃げやすいと言えど、生け捕りにした獲物が見つかってしまっては騒ぎになる。此処は隠密に、速やかに撤退しつつ獲物を運搬しろ」

「イエッサーーッ」

 無線機を切ると、トラックはすぐさまその場から急発進しては夜の闇に姿を消した。

 

 

 

 

[温情の町]

 

 そして聖龍隊/赤塚組の同盟組は、無事異次元移動を終えて、別世界へと辿り着いていた。

 一行はそのまま大海原を突き進み、その航路の果てに船上から港町が映った。

「おっ、ようやく着いたな」

「そうだな。それにしても、いつ見てもホントに見栄えの良い町並みだな、オイ」

 船上から航路の先に在る美しい情景を眺めながら、バーンズと大将は町の美観を見据えていた。

「……美しいままだな、あの町は」

「ああ、心ん中が気持ち良いくらいスッキリとするぜ」

 次第に距離を縮めていく町を清々しい心持ちで見通すバーンズと大将は、心底目を奪われるのだった。

 

 そして町の港に船を着かせた一行は、続々と船を下りては町の美しい情景を見渡した。

 古きヨーロッパの面影を残しつつある欧州の片田舎に近い町は、その古風な造りと外見で今や世界中の人が観光に訪れる地として実に有名であった。

 と、その時。港に入港してきた赤塚組の巨大木造船を見た町の人々が船から下りてきた赤塚組の面々に駆け寄ってきた。

「赤塚組じゃねえか!」「いや~~久しぶりだな!」

 駆け寄ってきた町の人々は、まるで家族が帰って来た様な温かい面差しで赤塚組を出迎えた。

「はっは! 久しぶりだな、町の連中!」

 人々に大将は荒っぽい言動で陽気な笑みを浮かべながら挨拶する。すると人だかりの中の一人が大将に歩み寄っては声を掛けた。

「お久しぶりです、赤塚君」

「おおっ、わざわざアンタが出迎えてくれるとは光栄だね。トラップ大佐殿」

「はは、頼むから冷やかさないでくれよ。私はもう大佐じゃない……ご存知の通り、今ではこの町一番の歌唱一家の団長ゲオルク・フォン・トラップだよ」

 微笑みながら大将に手を差し伸べるゲオルク氏に、大将は冷やかし交じりの言葉で返しながら差し伸べられた手で握手すると相手のゲオルク氏は気持ちの良い笑みを浮かべながら大将に話し返す。

「聞いたぜゲオルクの旦那。この前、三次元界のアンタ達の子孫がこの町に公演しに来てくれたって言うじゃねえか。どうだ、二次元人とはいえ自分の子孫と一緒に歌った気分はよ?」

「実に気持ちの良いコンサートだったよ。確かに私達は二次元の人物であるが、自分達の末裔の歌唱団と一緒に歌えるというのは、不思議ではあったが素晴らしい経験だったよ。彼等も「いつかまた一緒に歌唱をしたいです」と言ってくれたから、此方としても機会があったら再び歌を披露したいと思ってるよ」

「そりゃ良かったな! 俺達もアンタ等一家の歌声、気に入っているから嬉しい限りだぜ」

「ありがとうっ」

 互いに笑顔で話し合う大将とゲオルク氏の会話を耳にした聖龍隊の新人達【DOG DAYS】組、【SAO】組、【アクセルワールド】組、【魔法少女まどか☆マギカ】組の面々が、HEADの面々に思わず訊ねてた。

「せ、先輩方……あの大将さんと話している外人さんって……」

「ああ、あの方はこの町では名の通った歌唱団一家の団長を務めているゲオルク・フォン・トラップ氏だよ。君達も耳にしているだろ。彼は三次元界でも有名な【トラップ一家物語】のゲオルク氏だ、この[世界名作劇場]の町でも彼等の歌唱に対しては上々の評判で名士としても名を馳せている」

 有田春雪の質問に参謀のジュニアが答えると、春雪に続いて黒雪姫が訊ねてきた。

「確か、その物語は創作ではなく史実なんですよね。現に三次元界には、そのトラップ一家の末裔が世界中でコンサートを開催しているって聞いていますけど……」

「おう、第二次世界大戦に巻き込まれたトラップ一家の波乱万丈の物語を、後にミュージカル映画さらには世界名作劇場でアニメ化もなって、今や世界の誰もが知っていると過言しても良い名作だ。そしてこの前、その末裔がこの町に公演しに来てくれてな……この二次元界のトラップファミリーと共演してくれたのは、二次元人としては鼻高々だ」

 黒雪姫の問い掛けに淡々と答え返す総長のバーンズ。

 と、聖龍隊の目の前で赤塚組の幹部と町の人々が楽しげに会話をしていると、一人の少女が話をしている大将の許へと駆け寄ってきた。

「大将のおにいちゃーーんっ」

「おおっと、ヨハンナじゃねえか。元気にしてたか」

 自分の足元にしがみ付いて来た少女ヨハンナ・フォン・トラップを見下ろして、大将は溌剌とした笑顔の彼女を自身の肩に抱き上げて仲睦まじい様子を見せ付けた。

 そんな自分の娘で三女のヨハンナと大将の戯れを朗らかな微笑みで見詰めていたゲオルクは、自分の娘を笑顔で肩に乗せる大将に微笑みながら問い掛けた。

「はは、ところで赤塚君。君と一緒に居るのは聖龍隊の方々では……一体全体、なぜ君たちと聖龍隊が一緒に居るんだい?」

 問い掛けられた大将は、ヨハンナを肩に乗せながらゲオルクに訳を話し始めた。

「おうゲオルク! 実は俺ら赤塚組と聖龍隊は、国連総長 足正義輝が起こした現政奉還でまた乱世に逆戻りに成っちまった世を渡り切るために同盟を組んだのよッ!」

「ほほぅ、聖龍隊と同盟を……」

 大将の話を聞いて納得する様子のゲオルクに、彼と同様に大将の話に頷いていく周囲の人達。大将はそんな彼等に話し続けた。

「そんでなゲオルク、それに町の野郎共! 俺等と聖龍隊は此処には様子見も兼ねて、物資を調達しようと遠路遥々やって来たってぇ訳なのよ! わりぃが、この港町で揃えられるモンは根こそぎカッぱらって行くつもりでいるから覚悟しとくれッ!」

 荒々しい言動で淡々と語っていく大将を前に、町の人々そしてゲオルクは満面の笑顔で大将に話し返した。

「はっは、相変わらず荒っぽい口振りだな、赤塚組の大将。ああ構わん! 私達の町で揃えられるモノなら存分に持って行ってくれっ。君達だったら大歓迎だよ」

「はっは! あんがとよ、ゲオルクの旦那!」

 大将の言動に対しても機嫌を損なわず、むしろ更に上機嫌で大将に思うがままにしてくれと言うゲオルクに、大将は粋の良い笑顔で礼を返した。

 実はゲオルクも町の人々も、赤塚組がいつも荒々しい言動を振舞いながらも、それに反して町では極普通にそれも温厚に自分達と触れ合ってくれているので、大将や男達の言動にも微動だに躊躇う必要がないほど赤塚組と信頼関係を深めていた。

 と、その時である。大将がゲオルクと和やかに話しながら肩に乗せていた彼の三女ヨハンナを下ろした瞬間、大将に何かが物凄い勢いで飛び掛かってきた。

 勢い余って地べたに腰を下ろしてしまう大将が自分に飛び付いて来たモノに目を向けてみると、それは一匹のコリー犬であった。

「なんだラッシーじゃねえかよ。はは、元気そうだなぁオイ」

 飛び掛かってきては嬉しそうにじゃれ付き始めるコリー犬の[名犬ラッシー]に思わず頬を緩ませ嬉しさ一杯の笑顔を浮かべる大将に、ラッシーはここぞとばかりに大将の顔を舐めまくり自身の喜びの感情を示し続けた。

 

 それから聖龍隊と赤塚組は、町の人々と触れ合いつつも物資等を購入し調達していった。

 根こそぎ奪うという大将の荒々しい言葉とは裏腹に、物資等の調達資金はちゃんと赤塚組の女性達が町の人々に払っているので問題なく事は進んでた。

 購入した物資を船内に運んでいく赤塚組の力自慢の男達に混じり、その中には町の住人達も快く彼等に協力せんと一緒に荷物を運んでくれていた。

「ふぅ~~、これで物資の調達は大体済んだな」

「うん、後は此処では入手できない機材等の調達の方だけど……」

 聖龍隊総長のバーンズと参謀のジュニアがこれからの事を話し合っていると、其処に赤塚組の幹部衆の一人で月野うさぎことネオ・クィーン・セレニティの旧友でもある海野なる、旧姓大阪なるが二人の許に駆け寄ってきた。

「ねえ、二人ともちょっと良い?」

「ん」「なんですか、なるさん?」

 声を掛けられ振り向くバーンズとジュニアに、声を掛けたなるは神妙な面差しで二人に問い掛けた。

「実は、さっきから大将の姿が見えないんだけど……いえね、船内に運んだ物資の置き場について相談したいんだけど」

 この問い掛けにバーンズとジュニアは答えた。

「そういや……さっきアッコと一緒に町の中に行ったの見たぜ」

「ああ、そう言えば……アッコさん、なんか町に来た序でに買い物もしたいって言って一人で行っちゃったけど、大将さんが後から付いていくの僕も見たよ」

「もう、大将ったら……っ」

 機嫌を損ねるなるに、バーンズとジュニアが宥める様に話し掛けた。

「まあまあ、最近アッコは新副長に昇進してから仕事が忙しくて中々休めなかったんだし、久々に買い物がてら大将を付き人に荷物持ちさせるのもアリじゃねえの」

「そう遠くには行ってないし大丈夫だよ。それに大将さんは、きっとアッコさんと二人っきりで過ごしかったんじゃない? 買い物に行くって言うアッコさんに大将さんが釣られて、それで一緒になって町の中を歩いていると思うよ」

「まったく……勝手に行動しちゃうのは、子供の頃から変わらないから困ったものよ」

 バーンズとジュニアの話を聞いても尚、大将の行動に不服を感じるなるなのであった。

 

 その頃、町の商店街では、ジュニアの予見通りアッコはショッピングを楽しみつつ、大将は町の住人達と和気藹々と触れ合いながらアッコの買い物に自分から付き合っていた。

 この時、アッコと大将は二人きりで石畳の道を歩きながら、街の雰囲気はもちろん美観をも更に引き立たせている昔ながらの美的な石畳の道をアッコは凛々とした笑顔で歩み、それに対し大将はアッコが購入した品が入った紙袋を後ろに組んだ片手にぶら下げながら彼女の後を付いて行くのだった。

「ルンルルン……あ、コゼット夫人こんにちわっ」

 石畳を歩みながら、道行く人に愛嬌を振りまいていくアッコ。

「……………………」

 そのアッコの後ろから大将が周囲に愛嬌たっぷりの笑顔を振り撒く彼女を無言の強面で付いていく。

「あ、ポリアンナ! 久しぶりっ」

「アッコさーーん、お久しぶりですっ。修司さんとの婚約おめでとう!」

「うん、ありがとう」

 先ほどの[少女コゼット]のコゼット夫人に続き、次にアッコが接した[愛少女ポリアンナ物語]のポリアンナ・フィティアに愛しの異性である修司からの婚約を祝されてアッコは偽りのない礼をジュディに返した。

 更に「アッコさんっ」「あら、あなた達は」と駆け寄ってきた数人の少女達にアッコは声を掛けた。

 そして少女達はアッコに各々と

「アッコさん、おめでとうございますっ」

「ようやく夢が叶いましたねっ!」

「やっと、あの気難しい小田原修司がプロポーズしてくれて。私達もこれで肩の荷がグッと下りましたよ」

「ふふ……みんな、ありがとう」

 自分の婚約に対し祝福の言葉を掛けてくれる[ペリーヌ物語]のペリーヌ・パンダボアヌ、[大草原の小さな天使ブッシュベイビー]のジャッキーの愛称で知られるジャックリーヌ・ローズ、[私のあしながおじさん]のジュディ・アボットの三人にアッコは微笑み返した。

 三人の少女と和気藹々とお喋りし合ったアッコは再び足を進ませ、石畳の道を歩いていく。そんなアッコの後ろから付いていく大将は、荷物を手に持ちながら彼女に話し掛けた。

「な、なぁアッコ……お前は、あの修司とも一緒に買い物とか付き合わせていたのか?」

 するとアッコは前を向きながら少し寂しげな声質で大将に答え返した。

「ううん、修司は仕事が忙しくて、こうして一緒に外出するなんて滅多に無かったわ。……普段から色々とやる事が多かったから、修司は」

「………………」

 楽しそうに振舞いながらも、その言葉から少しばかり感じられる寂しさに、大将はアッコの心の奥の心境に対し敏感に察した。

 

 と、アッコと大将が町を歩いていると、そんな二人に声が掛けられた。

「あっ、大将! それにアッコも!」

 その声に二人が視線を向けると、其処には昔から大将の子分を務めているギョロとゴマが店から続々と出てくる赤塚組の男達に混じって店内から荷物を運び出していた。

「おっ、ギョロ、ゴマ!」

「ギョロ、ゴマ。二人とも他の赤塚組の人達と何してんの?」

 二人に気付いた大将とアッコ、そしてアッコが訊ねるとギョロとゴマの二人は荷物を運びながら答えた。

「へいっ、俺たち今この店の中の商品を片っ端から頂戴して船まで運ぶ所で」

「大将喜んで下せえ。ドイツ産のフランクフルトにウィンナーなんかの肉はもちろん、ビールもたんまりと頂きましたぜ」

 と、ギョロとゴマの二人がアッコと大将に話していると、店の中から店主が顔を覗かせては運んでいる赤塚組の男達に笑顔で意気揚々と一言掛ける。

「おうおう、さぁドンドンかっぱらってくれやッ」

 その様子から店主が好意で赤塚組に酒や食料を差し出しているのを、アッコはもちろん他の町民達も察していた。

 そもそも赤塚組がこの[世界名作劇場]の町に来る度に、何かと強奪の名目で各店舗から様々な品を貰い受けているのだが、それにはちゃんとした理由があるのだ。

「おーーい、おっちゃん。屋根の修理終わったぜっ」

「おお、いつもありがとよ赤塚組」

 屋根の上から聞こえてくる声に、家主の男性が微笑みながら礼を返す。

 更には別の場所でも。

「壁の舗装、綺麗にしときやしたっ」「おうっ、いつも済まないね」

「雨樋の止め具、古くなっていたから序でに交換しておきました」

「相変わらず気が利くじゃねえの、赤塚組のあんちゃん!」

 と、町の至る所から赤塚組の人間と町の人との会話がちらほらアッコや大将の耳に入ってきた。

「さすが大将が鍛えているだけあるわね。この町のみんな、大将たち赤塚組の大工仕事に心から満足しているわ」

「へへ、当たりめえよッ! 俺たち赤塚組の仕事は、いっつも最上の出来栄えよ!」

 町の人々の赤塚組への賞賛の声を聞いてアッコが赤塚組の仕事振りに感心していると大将が鼻を掛けた調子で自賛する。その大将の発言にアッコは念を押すかの様に大将に言い聞かせた。

「でも当然よね。此処の町並みは今じゃ国連にも正式に認められた重要文化財だもの。下手に扱ったら、それこそ一大事よ」

 すると、このアッコの発言に大将がいきり立ちながら反論した。

「ば、バッキャヤローー! 重要文化財だか、有形文化財だか知んねえが、俺たち赤塚組はどんな仕事だろうとキッチリこなすのが本分よ!

そもそも手抜きなんてフザけた真似できっかッ!!」

「ふふ、そうね。大将は昔から、自分の仕事に……自分のする事に誇りと信念を持っているから、素敵よ」

「ッ!!」

 大将の反論に優しく話し返すアッコの穏やかで美しい微笑みに、大将は顔を赤らめるほど心を激しく動揺した。

 

 更に町の景観を観賞しながらアッコと大将の二人は皆の居る船へ戻ろうと海沿いの道を歩いていると

「ちょっと! アッコちゃんじゃないか」

 その声に二人が振り返ると、二人が通り過ぎた道沿いの店から一人の外国人女性が出てきて歩いていたアッコと大将に声を掛けてきた。

「あっ、ココットさん!」

 声を掛けてきた外国人女性を見てアッコは笑顔で彼女の名前を言い返した。

 アッコと大将二人の前に現れた女性はブラウンの肩まで伸びたパーマヘアーの迫力ある顔立ち、そして実に活き活きとした明るい70代半ばの女性であった。

 彼女の名はココット。この町で主に欧州料理を出す店のオーナー兼シェフであった。

 兼ねてよりアッコや大将と面識があるココットは、久々に町にやって来ていた二人を見て声を掛けたのだった。

「ガハハハ、久しぶりだね二人とも。元気そうじゃないか、ガハハッ」

 陽気で独特な笑い方で話すココットに、アッコも笑顔でココットに挨拶を返した。

「お久しぶりです、ココットさん。其方も変わらない素敵な笑顔ですね」

「ガハハ、そうかい?」

 アッコに挨拶を返されたココットは上機嫌に言葉を返した。

 そんなアッコの言葉に呆然としながらも、大将も続いてココットに話し掛けた。

「…………や、やあココットの婆さん。久しぶり……お、俺たちゃ実は同盟組んでよ、この町で物資とか調達している間に町中を観て周っていたところなんだよ」

「おやまぁ、そうだったの。でもアッコちゃん、あんたは今ちゃんとした人と結婚の約束してるんだし無闇に別の男なんかと一緒に居ちゃイケないわよ」

「ふふ、大丈夫ですよココットさん。大将とは単に幼馴染なだけなのは修司だって知っている事ですし、何より私が大将なんかに気が行く訳ないじゃないですか、もうっ」

〔ガーーッン……〕

 大将の話を聞いたココットがアッコに話し掛けると、それに対しアッコは満面の純粋な微笑みで話し返す。だが、そのアッコの発言に大将は人知れず心を痛めてしまった。

 そんな中、料理店を経営するココットは陽気な素振りのままでアッコと話し続けた。

「アッコちゃん聞いたよ。アンタ聖龍隊の副長に就任してスグ、あの小田原修司にプロポーズされて今じゃ晴れて彼と婚約者なんだってね。いや良かったね、長い事待った甲斐が有ったってモンだよ」

「ありがとうございます、ココットさん」

 ココットからの祝福に心から感謝の気持ちを返すアッコ。

 と、そんなアッコと大将にココットは身振り手振り言った。

「よし、そんじゃ二人とも。久々に町に来た序でにアタシん所でメシ食っていきな」

「おっ、良いのかい? ココットの婆さん」

 大将が嬉しそうに問い返すと、ココットは陽気な笑みで話し返した。

「ガハハハっ、なぁに、アッコちゃんの婚約を祝福する序でだ。ささ、二人ともウチの店に入った入った」

「うわぁ、ありがとうございます。ココットさん」

「ココットの婆さん、そんじゃ遠慮なく食わせてもらうぜっ」

「ガハハハ、腹いっぱい食っていきなよ」

 こうして町で料理店を経営するココットの計らいで、アッコと大将は店へと招かれ彼女が振舞う手料理を美味しく頂いた。

 

 その後もアッコと大将の二人は町の長閑(のどか)で美的な景観を眺めつつ、町の人々とも親しく触れ合い、思う存分満喫すると自分達の船が停泊している港に戻ってきた。

「みんな、ただいま~~」「あ、アッコさん。お帰りなさいっ」

「おうってめえらッ、今帰ったぜ!」「大将どこ行ってたのよ! もうっ」

 帰ってきた二人に笑顔で出迎える聖龍隊の隊士に反し、赤塚組の幹部衆である海野なるは好き勝手に歩き回っていた大将の行動に軽く立腹していた。

 更に二人が港に戻ってきた頃には船内への物資の運搬は殆ど終わっており、アッコと大将は船に運ぶ直前の積荷の前で寛ぎ始めた。

「いや~~、この町は本当に色々と手に入るからイイねえ。ベルギー産のチョコはもちろん、ドイツのソーセージなんかの肉も大量に仕入れられっから便利だし……でもドイツっていやぁ、何と言ってもビールが一番だな! ウグ、ウグ……ッ」

「本当に、ドイツ産のビールは美味しいわぁ。此処は何でも……特にヨーロッパの色んな特産品が手に入るから楽しいわ。ウグ、グ……ッ」

「お前等、昼間っからビール飲んでんじゃねえよ……特にアッコはイメージ崩れっからやめれ」

 町で入手した数多くの品々の前で、仕入れたばかりのドイツ産ビールを大ジョッキで飲み干しながら語り合う大将とアッコに、バーンズは愕然とした面差しで呆れ果てながら言った。

「ッ…………プハッ。いやいや、このキレの良さは本場の……ドイツ産だからこそ味わえる格別の、そして上等のビールだぜ。やっぱ、この町に来たらこのビールを飲まなきゃイケねえぜ、ハハハ、ハ……お、おおっとッ」

 その時、ドイツ産ビールの味に酔い痴れていた大将が足元をふら付かせ後ろへと下がった瞬間、堤防から足を滑らせそのまま海へと落下しそうに成った。

 と、海に落下しそうになる大将の動きが途中で止まり、周りの者達はもちろん海に落ちそうに成っていた大将自身も目を丸くして驚いた。

 そのまま背中を押し出されて堤防に戻された大将がふと後ろに振り向いては、背中を押し上げて自分を助けてくれた存在を確認してみた。すると其処には海面から上半身を出して落下しそうになった大将の顔を見詰める一頭のシャチが、つぶらな瞳を向けていた。

「おおっ、ティコじゃねえか久々だな! あんがとな助けてくれてよ、元気にしてたか、はは!」

 大将は海に落ちそうになった自分を押し上げて助けてくれた[七つの海のティコ]のシャチのティコに笑顔で礼を言うのだった。

 

 そして大将とアッコの二人と合流した聖龍隊と赤塚組は、物資等の荷物を全て船に積み終えて出航の準備を始めた。

「もう行ってしまうのかね」

「ああ、確保したい物資の調達は済んだからな。俺達自身も、これから各所へと足を運ばせなきゃいけないから、そう長居も出来ないんだよ」

 自分達を見送ってくれる町の人々、その内の一人であるゲオルクにバーンズは自分達の意思を伝えた。

「もう少しゆっくりできないんですか? せっかく皆さんで御越しに来られたのに……」

「そうしたいのは山々だけど、僕達も色々としなければいけない事が沢山あるから……申し訳ない」

 優しい気遣いを掛けてくれる[赤毛のアン]の主人公アン・シャーリーの言葉に、聖龍隊参謀長のジュニアは申し訳なさそうに彼女に頭を下げた。

「道中、お気をつけて」「御武運を」

「ありがとうございます。皆様の御心遣い、私達も心から感謝いたします」

 聖龍隊と赤塚組の旅路の無事を祈る[レ・ミゼラブル]のマリウスとその妻であり先ほどアッコに声を掛けられ彼女に微笑み返したコゼット夫人、二人の言葉に聖龍隊副長のミラー・ガールこと加賀美あつこは彼等を始め町の人々への感謝の言葉を述べた。

 

 そして聖龍隊と赤塚組、双方は町の人々との別れを惜しみながらも出港した。

「さよならーー」「お元気でーー」

「どうか御無理を為さらず、また元気な姿で起こし下さーーい」

 手を振りながら見送る町の人々からの声に、聖龍隊の隊士と赤塚組の男達も大きく手を振りながら彼等に声を返す。

「ありがとーー」「また来るぜーーッ」

「お、俺等みたいな半端モンに、いつも優しく接してくれて……! ありがとよーーーー!! グスっ」

 自分達を見送ってくれる町の人々を穏やかな表情で見据え続ける聖龍HEADと赤塚組の幹部衆。そして厳つくも優しい顔で町を見納めるバーンズと大将。

 

 こうして聖龍隊と赤塚組の同盟は[世界名作劇場]の町で物資を調達し、町を去って行ったのだった。

 

 

 

 

[巨大SRM基地]

 

 世界名作劇場の町を出航した百鬼命義の上では、聖龍HEADと赤塚組の幹部衆が今後の自分達の行き先を話し合っていた。

「いやぁ……に、しても大事無くて良かったなぁ」

「そうだね。現政奉還による情勢の乱れで町がパニックに成っている事も覚悟していたんだけど、何とも無くって良かった良かった」

 乱れし時勢の中でも、自ずと自分の了見を見定め混乱する事無く日々を過ごしていた町の人々に安心を覚える大将とジュニア。

 そして皆と話し合っていたミラーガールが総長のバーンズにこれからの自分達の活動について訊ねてきた。

「ねぇバーンズ、私達はこれから……」

 不安な顔色で訊ねてきたミラーガールにバーンズは自分の考えを彼女を始めとした同胞達に言い伝えた。

「みんな、オレが思っているのはだな……物資調達の次には、移動先でも色々と使える精密機械などの機材等を入手したい訳なんだよ」

「成る程な」

「レーダーや熱感知装置……今でも俺達の方では色々と揃ってはいるが、少しばかし機材が不足している様な気もするしな」

「何処かで仕入れるなり何なりしないといけませんね」

 総長バーンズの提案に納得していくエンディミオンに海斗そして蒼の騎士。そしてバーンズは皆に告げた。

「そう、そんなオレ達が今向かうべきなのは……SRMだ!」

「え、SRM……!」『!』

 バーンズの発した言葉に皆が驚き慄いていると、言い出したバーンズは更に語り続けていく。

「そうだ、あそこなら多種多様で様々な機材や道具などが入手できる筈だ。この船の脇っ腹に取り付けているディープ・アクア・マリーンの調整もしとかなきゃいけねえし、この百鬼命義の船体や構造も大幅に改良できる事だって可能な筈だ」

『…………』

「何より、SRM基地では機材の入手や機体のメンテナンスだけじゃない。各異世界の現状や政情などの情報も多く知る事ができる。この大型木造船の更なる改良と二機の機体の調整、更には現在の情勢情報把握も兼ねてSRMに直行するぞ! ……オレの意見に反論がある者は遠慮なく言え」

 厳つい表情で振り返りながら問い掛けるバーンズに、周囲の皆々は多少の戸惑いを感じながらもバーンズの意見に同意するのであった。

 

 しばし広大な海を突き進む事およそ二時間ほど、航路の先に精密機械仕掛けの様な施設が目立つ島が見えてきた。

「おお、基地が見えてきた。あそこで機材を揃えて、オマケに此方の機体やこの船の整備を整えて先の戦いに備えておこうじゃねえか」

 航路の先に見えてきた基地を遠視しながらバーンズが言っていると、彼の傍らに居た他の面々が喋り出した。

「だけど……基地のみんなも忙しいんじゃないのかな?」

「そうだな、現政奉還での情勢混乱は彼等の世界にまでも及んでいる……基地の誰もが、自分達の世界の事で手一杯かもしれないしな」

 参謀長のジュニアとエンディミオンが不安な心境で語る。

「全ての政権や権威の意味が無くなってしまえば、どんな世界であろうと混乱が生じてしまいますし……SRMの皆さんも御忙しい筈ですし、そんな時に御邪魔しても宜しいのか……」

「そうですよね……また自分の世界で戦争が起きてしまわれないかもしれませんし、忙しいかもしれませんよね」

 不安一杯の顔をする鳳凰寺風とミュウレタスが話していると、バーンズがそんな皆に平然と言い退けた。

「大丈夫だって。それにオレ達だって、その現政奉還で乱れた情勢を打破する為に活動してるんだぜ。どんなに忙しくってもアイツ等は協力してくれるさ。そもそも、例えスーパーロボットという異なる分類であろうと同じ聖龍隊には違いねえんだからよ」

「だ、だからってよ、バーンズ……少し無茶振りじゃねえか? おんなじ聖龍隊でも、こんな大変な事態の中SRMの連中に頼み事すんのはよ……」

「何を言ってやがるんだ。お前さんだってSRMの連中に無理言って、半ば強引に協同で百鬼丸を造り上げさせたんじゃねえか」

 バーンズの話に顔を渋らせる大将に、バーンズは真顔で反論した。

 

 そして船は基地が聳え立つ島へと着き、乗船していたバーンズ達が続々と船から島へと降り立つのであった。

「いやいや……なんか久しぶりだな、この島も。確か此処に最近来たのって、聖龍隊の総長に着任してから視察に来て以来だったからなぁ」

 島に降り立ったバーンズが目の前の基地を見渡しながら語っていると、初めて島へと足を運ばせた新人達が基地を見て愕然としていた。

「こ、これが……!」「SRM……聖龍ロボットメンバーズの巨大基地」

 初めてSRMの基地を目の当たりにした新人組は、その巨大な全貌に驚き慄き圧巻してしまう。

 聖龍ロボットメンバーズ通称SRM。その基地は島のおよそ半分の面積を占めている程の巨大な軍備施設であり基地である。内部には数多の著名な巨大ロボットを始めとするスーパーロボットが収納されており、いつ如何なる時も出動できるよう万全の状態で待機しているのである。更に基地では、そうして幾つものロボットが常に万全の状態で発進できる様に様々な機材が十分に補充され、修理やメンテナンスを行う為の設備も整っている。

 このSRMの面々は、聖龍隊の創設者にして前総長である小田原修司が様々な異世界や国々を周って勧誘していった勇猛武人な【鋼の精鋭】なのだ。

 

 島に降り立った聖龍隊と赤塚組、すると基地の中から続々とSRMの隊士達がバーンズや大将達を出迎えた。

「あらバーンズ、それに大将君まで……あなた達が揃って此処に来るなんて珍しいわね」

「おうッ、久しぶりだな。マリネ」

 出迎えて来たSRMの先頭に居たのは、金髪の緩やかなウエーブが掛かった肩まで伸びた髪型の眼鏡を掛けた知性的な女性だった。

 彼女の名はマリネ。聖龍隊創設者にして前総長である小田原修司が設立したSRMに所属する全ての隊士を束ねる二代目の総司令官である。

 と、バーンズと大将達を出迎えるマリネ達SRMが和やかな雰囲気で対話していると。

「おお、バーンズではないか。いやよく来たな」

「おっ、オーバーンの爺さん。アンタも引退しているとはいえ元気そうじゃないか」

 和気藹々と話し合っているSRMの人だかりの後ろから声がしたと思いきや、SRMの集団を押し退けてバーンズ達に顔を見せたのは40代半ばの鼻元に黒ひげを生やした無愛想な男性であった。

 彼の名はオーバーン。先代にして初代のSRM総司令官であり、現在は娘のマリネに総司令官の職務を譲り現役を退いてはいるが相談役や顧問に近い立場で娘やSRMの面々を支えている。

 

 と、その時。大将は目に入った[ガンダムSEED]のアスラン・ザラに声を掛けた。

「よっ、久しぶりだな。アヅラn」〔バキューーッン……〕

 大将が声を掛けた瞬間、声を掛けられたアスランは大将に向かって突如銃を発砲した。

 自分の頬に弾丸が掠め飛び、口をポカンと開け唖然とする大将に発砲したアスランが硝煙を上げる銃を構えたまま叫ぶ。

「ヅラじゃねえって言ってんだろうがッ!!」

「落ち着け、アスラン!」「気持ちは解るけどっ」

 怒り狂うアスランを必死に押さえるキラ・ヤマトと宥めるラクス・クライン。

 そんな光景に皆が唖然としていると、大将にヅラ呼ばわりされたアスランが泣きながら一人の隊士に歩み寄って声を掛けた。

「ううっ……なんで俺ら石田彰ボイスは、こう毎度毎度ヅラ呼ばわりされんだろうが……! なあ、星夜」

「い、いや……だからって俺に話し振らないでくれよッ! しかも同じ石田ボイスとはいえ、俺はヅラ定着キャラじゃないからッ」

 自分の腕を肩に乗せてきながら涙ながらに話し掛けてくるアスランに、同じ声優である聖龍隊隊士の宇崎星夜は物凄い形相で言い返した。

 

 そんな周囲が賑わっている最中、大将が徐に[ヱヴァンゲリヲン]の葛城ミサトにひっそりと御声を掛けた。

「おお、おお。久しぶりじゃねえか、葛城の姐さんよ。相も変わらず御美しい事で」

「な、何よ急に……っ。おべっか使っても、何もないわよ」

 だが当のミサトは否定しながらも強ち大将の言葉に内心嬉しく感じていた。

 そんなミサトの心中を察してか、大将は実に悪そうな顔でミサトに言うのだった。

「ああ、十分綺麗……と言いたいが、少しばかりシワとか目立ってきてるぜ。まぁ、もう四十路(よそじ)だし仕方ねえのかもしれねえな」

〔ガァーーッン〕大将の言葉に43のミサトは衝撃を受けた。

「ちょっと貴方! レディーに向かって歳の事は言わないで頂戴!!」

 と、ミサトに掛けた大将のヒソヒソ話を耳にした赤木リツコが大将に文句を言うと、そんなリツコにも大将は目を細めながら実に悪そうな表情で彼女にも言った。

「ちょっとちょっと。レディーって自分で言っちゃう訳っスかアンタも。ミサトより一つ年増なくせに」

〔ドォーーッン〕

 この言葉に44のリツコはミサト同様、心中衝撃を受けた。

「でも実際、歳とったわよねえ……」

「そうよね。フフフ……」

 一気に落ち込んでしまうミサトとリツコ。そんな気落ちする二人に大将は止めを刺すかの如くそっと話し掛けた。

「まあまあ、そう落ち込むなって。確かに二次元人は三次元人より老化の進み具合が遅いって言われるが、やっぱ迫り来る年波には勝てないのが人の実情……其処でだ、俺が一つお前等に良い物を紹介してやるよ」

『??』

 落ち込むミサトとリツコが大将の言葉に顔を向けると、大将はニコニコっとした顔で二人にある品を差し出した。

「ほれ、今なお世の女性達に愛され使われる至高の傑作……」

『……!』

 大将が差し出されたのは、女性の間では実に有名な某化粧品、に似た品物。

『おおぅッ!!』

 それを一目見たミサトとリツコは目を輝かせ、完全に目の色を豹変させてはその品に心を奪われてしまった。

「ま、あんた等SRMの連中には常日頃お世話に成っている訳だし……此処は特別、これくらいで取引しても」

 と大将は電卓を見せながら二人と値引き交渉し合った。

「そうよね、やっぱこの歳になるとこれくらい良いもの使わないと……!」

 目を輝かせて大将の商法に引っ掛かっていくミサトとリツコ。そんな二人に大将は追い討ちを掛け続ける。

「そうそう、この際ほかのSRMの女性の方々にも購入してみてはどうだい? 皆、揃いも揃ってホントにイイ歳なんだからなぁ」

 邪悪な笑顔で言葉巧みに誘っていく大将の語りに、ミサトとリツコは嵌っていくばかりであった。

「ありがとう大将くん……私、君がまるで仏様に見えてきちゃった……!」

「私達、エヴァ組はもちろん他のSRMの女性陣も心身ともに廃れて来ちゃって……」

 涙目で大将に恩を感じてしまうほど重症のミサトに、同じく涙目で疲労困憊の真情で語るリツコ。

 そんな二人の女性に大将は品を手に乗せ見せ付けながら更に売り込む。

「アレルギーテストもちゃんとクリアしているから安心して使ってくれよな」

「待ってましたァ!」

 歓喜しながら思わず手を伸ばしていくミサト。と、その時。

「待ったァ! お前等、マルチ商法に引っかかるんじゃねえッ!!」

「思いっきり偽物だから! どう考えても偽物なのは目に見えているでしょッ、冷静になって!」

 だがそんな彼女らを静止しようとバーンズとジュニアが必死になって叫び掛けた。

 しかしミサトとリツコは物々しい形相で反論した。

「うるさいわねッ! 私達は銀水晶(スターシード)も無ければ、人魚みたいに老化しない種族じゃないから必死なのよ!!」

「どうせ、あなた達HEADは殆ど老けないから良いわよねッ」

 ミサトとリツコ、二人の女性の目から溢れ出る必死な眼力にバーンズとジュニアは圧倒され何も言い返せなくなってしまう。

 と、そんな情景に呆れていた式波・アスカ・ラングレーが何も言い返せなく成っている二人に代わってミサト達に向かって怒鳴り散らした。

「クリアーーな素肌目指してる場合か!!」

 しかし怒鳴られたミサトとリツコは厳つい形相でアスカに言い返す。

「うるさいわよッ、アスカはニキビでも予防してなさいよ!」

「クレア○シルでな!!」

「ひどい」

 反論すると同時にアスカの前に化粧品を投げ捨てるリツコとミサトの言動に失意を感じるアスカ。このとき、彼女達には30才差という名のATフィールドが全開している様な光景であった。

 そんな中、マルチ商法に誘った大将にアッコが問い詰めていた。

「大将、そんな悪質な商売しないでっ。乙女の美貌をエサに阿漕な商品売っちゃいけないわっ」

 蒼褪めた面差しで問い詰めるアッコに対し、大将は尚も商売文句を並べる様に語り続ける。

「いやいや、俺は親切心で言っているだけだぜアッコ。ほら、今でも美女達の素肌に強烈な紫外線が……」

「きゃーーっ! 日光が、日光がァ!」

 大将の言葉に過敏に反応し顔を蒼褪めるミサトとリツコ。そんな状況下でミサトは紫外線を意識しながら悲痛な叫びを上げる。

「今日はSPP20PA++しかUVケアしてないのに~~!」

 ※戦闘機などの型式ではありません、化粧品です

「いきなり日光を怖がるなッ! あと一々わけ分からん化粧品の名称唱えるな!!」

 バーンズがミサトとリツコに向かって叫ぶと、それにリツコが反論した。

「なに言っているのよバーンズ! 私達か弱き女性にとっては紫外線ほど身近な脅威は無いのよ! UVケアを怠って紫外線に当たるという事はシミそばかすのトリガーとしてメラニン色素発生の危険性がまだあるという事なのよ!!」

「ご丁寧に長ったらしい説明ありがとうございますッ!!」

 リツコの反論にバーンズは遂に怒りまで感じてしまってた。

 そんな折、リツコは唐突にミサトに向かってチューブ容器を投げ付けた。

「ミサト! WSダーム・デフィニションUVローションを!」

 ※戦闘等ではなく顔面の話です

 そしてリツコからローションを受け取ったミサトは平然と堂々とポーズを構えて唱えた。

「四十路の独身女パワーー! メイクアップ! ヴィレに代わっておっしおきよ!!」

 ミサトは有ろう事か43才の女がドスのきいた声で華麗にポージングをとってしまった。

 そんなミサトを見てバーンズが叫ぶ。

「おいいいッッッ! 本人が側に居るのにすんじゃねえよ! 思いっきし本人呆然としちゃってるだろうがッ!!」

 バーンズの叫びが辺りに響く中、ミサトの台詞とポーズを目の当たりにしていたセーラームーンは愕然と口を開けたまま硬直していた。

 と、そんなミサトを見て大将が思わず近くに居た碇シンジに平然と訊ねた。

「お前はしなくて良いのか? シンジ」「なんで僕まで!?」

 大将に訊ねられたシンジは困惑してしまう。

 だが、そんな破天荒な会話を続ける面々を前にバーンズが怒り心頭で怒鳴り掛けた。

「いい加減にしろよお前達! さっきから訳分からん化粧品やらの話ばっかしやがって……!! まったく、たるんでやがるな……!」

 次の瞬間、このバーンズの台詞を聞いて女性達は表情を一変させて震え上がった。

「た、たるんでるですって……!? ヒィィィィ」

「恐ろしや恐ろしや」

「目元の話じゃねえよ!!」

 話を聞いて目元の弛みに怯え始める二人にバーンズは再び怒鳴った。そしてアスカもバーンズに続いて二人に文句を言う。

「バーンズの言う通りよ二人とも! ホンッと気にし過ぎて逆に呆れ果てるわ」

 しかしアスカに言われた二人も負けずに言い返す。

「顔の皮の突っ張ったクレ○ラシルは黙ってなさい!」

「プロア○ティブもあるわよ!」

 とリツコは再びアスカの目の前に化粧品を投げ捨てる。

「~~~~~~っ!!」

 再度化粧品を目の前に投げ捨てられ、同時に暴言も吐き捨てられたアスカは怒りの余り言葉を発する事も侭ならなかった。

 

 だが、そんな二人の女性にバーンズが思い切って言葉をぶつけたのであった。

「君達ッ、さっきから勘違いしている様だが……君達の場合はまず見せる男を作った方が良くはないのかねッ!?」

 このバーンズの一言に、二人を始めとした男不足の女性達が眼の色を豹変させてバーンズに厳つい末恐ろしい表情を向けた。

「ハッ」

 バーンズが女性達の只ならぬ殺気に気付いた、次の瞬間。

「ギャアアアうぉおおおっ」

 断末魔が非情にも島全体に響き渡ったという。

 

 と、そんなバーンズの惨たらしい情景を目の当たりにしたジュニアは思わず暗い顔で呟いた。

「バーンズ、それは言ってはいけない言葉だよ……」

 更にジュニアは話を持ちかけた張本人である大将にも暗い表情で言った。

「それに大将、君もさ、余り歳のこと聖龍隊では言わない方が良いよ。聖龍隊の人間って結構レトロな世代の二次元人も居るから、年齢に敏感になっているキャラも沢山居るから……ほら、ウチの人達の顔見れば分かるでしょ」

 そう言ってジュニアが指差した方を大将が見ると、其処には暗い面持ちのHEADメンバーが気落ちしていた。

 

 

 

 

[蒸発した者たち]

 

 かくして聖龍隊と赤塚組の双方は、巨大ロボットなどを完備しているSRMの基地で機材や資材等を手に入れ、自分達の機体を点検したり整備したりして、各地への進軍準備を整えていく。

 

 そしてSRMの基地内では、SRMの総司令官であるマリネとバーンズが此処で調達する資材や機材などについて話し合っていた。

「この資材は、これくらいで良いかしら? そして、この機材は……」

「ふむふむ……」

 マリネの話にバーンズは耳を傾けながら何度も頷いていく。

 

 更に別の基地内では、赤塚組の百鬼命義にマーメイドメロディーズの専用機体であるディープ・アクア・マリーン二機が基地の整備工場内まで運搬され、其処で機体や内部機材等を点検してもらってた。

「機体および内部の機器は全て異常ありません。後は予備のパーツを準備しておく事ぐらいですけど、他に何かご要望はありませんか?」

「そうだな……今後はおそらくアジア全域を移動していく予定だろうし、底部のキャタピラを更に重点的に調整してくれ。あと、移動中に何かトラブルが有った時のために陸上移動に関する機体パーツの予備を用意してほしい。あ、念の為に水上移動に関する機体パーツも一通り揃えておいてくれ」

「解りました」

 基地内で働く整備士に自分達の機体に関する注文を頼んでいく堂本海斗、それに相手の整備士も承諾しては準備を進めていく。

 と、整備士と話を終えた海斗に双子の兄であるガイトが駆け寄っては話し掛けて来た。

「海斗っ」「ん、アニキか。どうだ、そっちの機体の方は?」

 海斗は話し掛けて来た兄のガイトに其方側の機体について訊ねてみると、ガイトは真顔で弟の海斗に答えた。

「ああ、こっちのブラック・マリーンは調子いいぜ。水陸両方の移動装置は万全だし、ミサイルのマルチ・ロックシステムも問題は無い。後は微調整と、進軍先での応急処置に使う機材を準備しておけば大丈夫だ」

「そっか……」兄の話を聞き、海斗は突然表情に影を落とした。

 突然の弟の変わり様に気になった兄のガイトは思わず海斗に訊ねた。

「ん、どうしたんだ海斗……?」

 すると海斗はガイトに目を向けて語った。

「いや何……できれば機体を使わずに済めば良いのにな、と思って……」

「っ……!?」

 弟の言葉に一瞬戸惑ってしまうガイトに、海斗は更に語り続けた。

「だってそうだろ? アニキのは攻撃型、俺達の方は救助等の支援型で大分違うけど結局はおんなじ武力を秘めた機体だ。例え平和の為に使っているとしても、多くの命を一瞬で奪ってしまう兵器には変わらない」

「……………………」

「正直、此処の基地のロボット達も同じだ。今では聖龍隊管轄に納まって、無益な戦争には駆り出される事は無くなったけど結局は未だに争いの為に、武力そのものとして扱われているのが現状だ。俺は……俺は、前総長である修司さんが与えてくれたこの機体で、もう命を奪っていくのは嫌なんだ……! 命を奪うのではなく命を護る為に、このシルバーを使用して行きたい……もう、修司さんが与えてくれた貴重な力を、機体を血に染めたくは無いんだよ……!」

 海斗の口から語られる弟の悲痛な想いを聴いたガイトは、彼の辛い心境を間近で感じた。

 

 そして基地内部に運ばれ点検/整備を進められていく百鬼命義には、続々と基地で調達した資材や機材を運搬している最中であった。

 百鬼命義の船内に聖龍隊の隊士や赤塚組の力自慢の男達が次々に物資を運び入れ、一刻も早い出航の準備を着々と進めていた。

「ふぅ~~、まさかこんな力仕事までやらされるとは……」

「ほんと、現実空間での戦闘だけでもシンドイのに、まさか物資の運搬までやる破目になるとは……」

 やっとの事で船内に重い物資を運び入れた新人隊士のキリトと春雪は疲れ果ててしまい腰を下ろしては一息入れていた。

 と、二人が作業を休んでいるその時。

「コラッ、二人とも! 休んでないで動きなさい! 新人は少しでも鍛える為にも動いた動いたっ」

 二人の上官でルーキーズの総部隊長であるミラールが勝手に休んでいるキリトと春雪に注意する。

 そして注意された二人は渋々ながら束の間の休息を終わらせて作業に戻るのだった。

 

 その頃バーンズはマリネと一通り話し終えては、再び同じ組織の頭同士である大将と合流しては彼と話し始めていた。

「いやぁ、それにしても……いつ来ても此処はでっけえよなぁ」

「ま、巨大ロボットを幾つも収納しているんだからデカくて当たり前だけどな」

 基地内部を見渡しながら呟く大将に、バーンズは平常通りの態度で話し返した。

「……それでバーンズ。俺たちゃ、これからどうする? 此処で粗方の機体の調整や資材の調達をしてから進軍していく訳だが、まずはどうするよ」

 SRM基地を出た後の行動を訊ねる大将に、バーンズは厳つい面持ちで答えた。

「うむ、そうだな……まぁ、オレとしてはあの猿飛佐助との話も付けたいし、真っ先にモンゴルへと向かいたいってのが俺の意思だ。他のHEADの連中は俺等が直接いきなり行くのは何かと問題が有るし、まずは視察でも何でも使いの輩をモンゴルに送ってから俺ら本隊も向こうに行けば良いって言っているんだけどな」

「それなら先に視察として新人連中をモンゴルに送ってみたらどうだ? 奴等に取っちゃ良い経験にも小手慣らしにもなるしよ」

「だけどな……オレ自身、先の乱世で活躍していた上に最終的には聖龍隊とも親睦を深めてくれたモウ・コダイの見舞いと、そのコダイから将軍代理を継いで今のモンゴルを守護しているユキジが気掛かりでよ……お前だって分かってるだろ、ユキジは昔っから頭に血が上り易い熱血漢で一度突き進んだら曲がらない性分だって事をよ」

「ああ……そういやアイツ、猪突猛進な野郎だったからな。将軍代理になっても其処は変わってないと思うし、確かに気になるな」

 バーンズと大将はいづれ向かうモンゴルの軍事情勢を担っている若武者ユキジへの懸念を気にしつつ、今後の自分達の行動について十分に話し合った。

 

 

 そして各自SRM基地での資材調達と機体調整を全て終えて、ようやく聖龍隊は現政奉還による時代の荒波へと乗り出す準備が整い基地を出航するにまで至った。

「そんじゃ此処での下準備も全部終わったし、機体のチェックも済ませてもらったし、オレ達はこれから進軍していくわ」

「ええ、私達も何かの有事に備えていつでも発進できるよう待機しているわ」

 基地を出航する直前、SRMの総司令官であるマリネと基地での最後の対話をするバーンズ。

「……それじゃ、オレ達は一足先に戦地へと赴くぜ。できれば、お前達の様な強大な戦力になるスーパーロボットが出撃しない事態を祈ってるよ」

「それは此方も同じよ、できれば乱世そのものが一刻も早く終わる事を私は祈ってます。どうか御武運を」

「ああ、此方もな。それじゃ……」

 マリネと対話を終えたバーンズが船に乗り込もうとした、その時。

「伝令ーーッ、伝令でーーすッ!」

 その場に基地の隊士が叫びながらバーンズに駆け寄ってきた。

「どうしたっ?」

 掛け付けて来た隊士にバーンズが訊くと、隊士は額から汗を流しながら答えた。

「総長殿っ、只今アニメタウンに待機している同胞から緊急の伝達です! これを……」

 そう言うと隊士は切羽詰った様子でバーンズに伝令文を手渡した。

 渡された書類を見入る様にバーンズは黙読していく。すると彼の顔色は見る見るうちに変わっていき、バーンズは表情を一変させて皆に一声掛けた。

「みんな!」バーンズの一声に誰もが彼に顔を向ける。

 そしてバーンズは皆の前で衝撃の事態を報告するのだった。

「たった今、アニメタウンの聖龍隊士から伝達が来た……どうやら一晩の内に俺たち聖龍隊の監視下にあった新世代型二次元人がメインキャラを中心に突如として蒸発したらしい……!」

『!!』

 バーンズが言い放った報告を聞いて、聖龍隊の隊士も赤塚組の面々もSRMの皆々も一同に愕然としてしまった。

 

 この時、SRMや聖龍隊を含んだ者の中には、このような思案を人知れず想い更けている者達が居た。

(新世代型が居なくなった? まさか、また良からぬ事でも企んでいるんじゃないだろうな!?)

(突然消えてしまうなんて……彼等がまた私達や三次元人に牙を向けるとでも言うの?)

(何かしてくるのか、新世代……この現政奉還による情勢の乱れの中、何か企てて集団で人目から姿を消したと言うのか……!)

(そもそも、この現政奉還だって同じ新世代型の国連総長が起こした事だ。他の新世代が何かを目論んでいたって可笑しくない……!)

 誰もが乱世の渦中を引き起こした現政奉還を促した国連総長/足正義輝と同じ新世代型の二次元人が姿を消した事態に深刻な懸念と危機感を募らせていく。

 

 新世代型二次元人、彼等は一体どこに消えてしまったのであろうか。

 

 次回に続く

 

 

 

 

[今回のキャラ紹介]

 

 

 ココット

 出身:二次元界フランス

 現在の居住地:世界名作劇場の港町/其処で経営しているレストランオーナー兼シェフ

 年齢:70代半ば

 容姿:パンチパーマのかかった肩まで伸びたブラウンの髪に迫力のある顔立ち。活き活きとした明るい女性である。

 以前は国連軍管轄の軍事基地内で料理長を務めていた実績を持つ。

 その後は自分がオーナーである現在の店を[世界名作劇場]の港町に置いて、町の人や観光に来た人々に自分の手料理を振舞っている。

 彼女いわく、料理を美味しくするのは「愛という名のスパイス」だそうだ。

 

 

 

 マリネ

 出身:二次元界フランス

 所属:SRM総司令官

 年齢:20代後半

 容姿:金髪の緩やかなウエーブが掛かった肩まで伸びた髪型の眼鏡を掛けた知性的な女性

 人望もあり前総長である修司とは親しい間柄であったヨーロッパ将軍の孫娘で、修司がSRMを聖龍隊に増設した際は彼女の父親であるオーバーンにその役職を与え、彼女はその秘書官としてSRMではサポートに徹していた。

 そして近年、総長であった小田原修司の退任を機に父親から世代交代の如く総司令官の役職に就いた。

 

 

 

 オーバーン

 出身:二次元界フランス

 所属:SRMで隠居生活(時には顧問のような役回りに徹する事がある)

 年齢:40代半ば

 容姿:鼻元に黒ひげを生やした普段は無愛想な顔付き

 先代にして初代のSRM総司令官であり、現在は娘のマリネに総司令官の職務を譲っている。

 現役を退いてはいるが、相談役や顧問に近い立場で娘やSRMの面々を支えている。

 

 

 ※補足

 上記の三名は全員身内。ココットがヨーロッパ将軍の妻であり、その息子がオーバーンである。つまりココットとマリネは祖母孫の関係である。

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