運命の夜、それは一人の少年だけではなく、少女にもあった。
それはまるで閃光のようだった。
一閃、黒い光のように俺の命を絶つべく、それは突きつけられる。
────死ぬ。
俺は確かに悟った。
あの日、養父である切嗣に命を助けられ、今日まで生きてきた。それまでに失ってきた幸せを与えらながら、俺は笑顔で生きてきた。
こんなにもあっさり失っていいのか?
理不尽すぎる。どれほど努力しても、辛い想いをしたところで、失うのは一瞬なのだ。
俺はそれを知っていたからこそ、次は取りこぼさないようにと努力をしてきたはずだ。
悔しい。
涙が出るくらい悔しい。
何が悔しいか?
それはあの日助けられた命をここで失うこともある。
しかし、それ以上に守れなかったことが悔しい。
一つは切嗣との約束。
そしてもう一つは────
「……え?」
風が止む。
それを感じることができるということは、俺が生きているということ。
体中に激痛は走れども、命だけは助かっている。
これは間違いのないことであり、本来ならばありえないはずのこと。
だから俺は驚き、地面に尻を着きながらも敵を見ていた。
「────あ、」
言葉を失った。
それは目に映る光景があまりにも美しかったから。
月の光を受け、彼女は金色の髪の毛を揺らしている。
そしてまるで雪のように白い肌と、それとは対照的な程に黒い鎧を纏っている。
綺麗だった。
まるで湖に住んでいる妖精のように神秘的だ。
それこそ童話の中からそのまま現れたんじゃないかと思ってしまう。
ほんの一瞬だけ、本当に一瞬だけ死への恐怖や悔しさ、様々な気持ちが消えた。そして、いつか見た光景とこの一瞬を重ねていた。
そう、たった一つの奇跡を求めて、共に戦った彼女との運命の夜を。
私にとっての出会い。
それはあまりにも運命的なんて言えるものではなくて、きっと漫画にしたらコメディーのようなものだと思う。
お風呂に入っていたら、お空に流れ星を見つけた。ここまではまだロマンチック。
すると、お風呂の電気を消していたせいでお兄ちゃんが間違えてお風呂に入ってきてしまった。この時点できっと少女マンガというよりも青年誌、ライトノベルの類。
次の瞬間、一本のステッキの闖入。これにより完璧にコメディー化。
これとの様々なコメディーの末、私は魔法少女となってしまった。
ちょっと前までの私ならきっと喜ぶことができたのだろうけど、理想が現実になってしまうと、どうしても受け入れられない自分が生まれてしまう。
そう、ここまでは運命の夜の序章。
不思議で特に性格が歪んでいるステッキとの出会いよりも、私にとって運命的だったのは一人の魔術師との出会い。
彼女は私よりもずっと綺麗な黒い髪の毛をなびかせて、一つの奇跡を見せてくれた。
「私と契約してサーヴァントになりなさい」
そのピンと張った背筋のまま、私に指を指して彼女はそう言った。
これより始まる。私にとって一生忘れらない彼女たちとの物語が。