魔導戦記   作:数の子三等陸士

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第十話・入院Ⅲ

 和人にとって退屈すぎる入院生活もまもなく終わりを告げようとしていた。折れた背骨は完全に治り、肉体の後遺症もなく、始まったリハビリも順調にこなす事が出来ていた。管理局の力を以ても半年近く入院を余儀なくされた彼は同じく辛いリハビリを熟すなのはと順調に交流して暇を潰していた。

 結局、彼女からは自分が魔導師になるきっかけをくれた次元航行部隊に恩義を感じているようで地上部隊へのスカウトは断られていたが何かあれば力になるとなのはは答えており、状況次第だが和人は強大な力を持つ魔導師を味方につける事に成功したのだ。とはいえ、彼は彼女を戦闘面で頼る事はないと考えていた。まだ10代前半の彼女の力を借りないといけない状況なんて作らせないし、そうなったとしても彼女以外の力を頼ると考えていた。

 

「しかし、やはり海の連中は狂っている」

 

 いくら人員不足でも少年少女を平気で使い倒すやり方に和人は憤りを感じずにはいられなかった。とはいえこの問題は最近になって出てきた者ではなく、管理局創設時から付きまとう問題だった。当時から人員不足だった管理局は各世界の魔導師の素質を持つ子供を誘拐しては洗脳教育を施し戦力としていたのだ。現在でこそそのような行いは禁止されているが高町なのはのように管理外世界で魔導師と出会い、引き抜かれる事は未だにある話だった。

 

”年端もいかない少年少女を戦闘に駆り出すなど人間のする事ではない!”

 

 レジアス中将はかつてそのように演説し、管理局内での一定数以下の年齢の子供の入局を禁止するべきだと主張したがそれが通る事はなかった。陸海両方で賛同する者は多数いた物の「武闘派のレジアス中将の意見だ。何かあるに違いない」と海を中心に反対意見が発生したためであった。そして、地上部隊では10代前半の子供の入局を禁止するように動いている一方で次元航行部隊はそうして入れなくなった子供たちを積極的に引き抜いており、地上部隊の行動を無意味にしていた。

 

「結局のところ、魔導師に頼り切っているせいだ。魔導師に頼らなくても良い世の中になれば……」

「そうなればよろしいですがだからと言って直ぐにできる者ではありませんよ」

 

 和人の強い願いをギーゼラ副官はぴしゃりと受け流した。ここまで完治すれば問題はないだろうとギーゼラ副官は少しづつだが彼の仕事を回すようにしていた。無論、簡単且つ直ぐに終わるものを中心に回しており、負担にならないように気を使っていた。そのせいで未だに暇を持て余す事があるのだが。

 

「まぁいい。戦闘機人についての報告があるんだろ? 言ってみろ」

「はい。戦闘機人、識別名チンクから蒐集した技術は素晴らしいと言っていいものばかりです。しかも今回はあの姉妹の時とは違い、何をしても問題ありませんのでありとあらゆるデータを取る事が出来ました」

「それは良かった。……で? レジアス中将には全て話したのか?」

「勿論です。とはいえレジアス中将は地上部隊、それも佐官以上の者のみに後悔するだけで本局には一切提出しないと判断されましたが」

「だろうな。海に渡せばどうなるかをレジアス中将は俺たち以上に良く知っているからな」

 

 最悪の場合非人道的行為としてレジアス中将が批判される可能性もあるだろう。たとえそれが人の形をした機械と断定されていたとしても。

 

「現在はこれらのデータをもとにギガントのアップデートを行っています。実戦を行ったおかげでいくつかの改良点が発見できたのでそちらと共に実行予定です。それと軍需工場が完成し、魔導兵器の量産が開始されました」

「もうか? 随分と早いな」

「レジアス中将が予算を多く回してくれましたので。非魔導師の入隊希望者が続出したのでそれに合わせてという事ですね」

「成程。だが早く完成したのは良いことだ。これで魔導兵器の損耗に気を張る必要はなくなるだろう」

 

 実験部隊の武器の損耗はそのまま命に直結する。そう隊員には叩き込んで常に兵器に不備がないようにさせていた。それは実戦で使用不可能にならない為という理由の他に予備をなるべく使用したくなかったためである。量産が難しい状態にあったためになるべく壊さないように気を使っていたのだ。

 

「それと第2世界ガラド、第3世界ヴァイゼンでも魔導兵器の導入を進めているようです。そのため、いくつかのデータを要求してきています」

「同じ地上部隊だが管轄が違う以上海と変わりはない。先ずは()()()を受諾する事が先だと伝えろ」

「それについては既に同意すると返事をもらっています。それ以外にもいくつかの管理世界も賛同の声をもらっています。やはり現状に不満があるのは何処も同じなようですよ」

「それは良かった。見返りにまずは初期の魔導兵器のデータを渡せ。信用するに値すると判断したのち、最新のデータを渡すと返答してくれ」

「了解しました。レジアス中将にはミッドチルダ地上部隊との連携及びこちらの設計図で生産された魔導兵器を使用する事を条件としたと報告します」

「そうしてくれ。実際、嘘は言っていないからな」

 

 地上部隊それぞれで規格の異なる魔導兵器を使用するよりも同一の兵器を使用する方がいざという時に補給や修理が容易に出来る。和人はそう考えている為に嘘は言っていなかった。本心も、語っていなかったが。

 

「それとチンクという戦闘機人を得られたんだ。可能か? 戦闘機人の生産は」

「劣化版なら可能でしょう。流石はスカリエッティ製です。我らよりも高度な技術が使用されており、同等の性能を有する期待の生産は不可能です」

「分かった。……犯罪者のくせに生意気だな」

「むしろ犯罪者だからこそこれだけの技術を持っているのでしょう。犯罪を厭わず、倫理も捨ててこその技術と言えます」

「そうまでして技術を得たいか。理解できんな。まぁいい。犯罪者である事に変わりはない。見つけ次第抹殺してやるだけだ」

「……管理局の法では犯罪者でも殺すことは許されていませんが」

「逮捕する際に戦闘になり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「そうですね。わかりました」

 

 実際、逮捕時に事故で死亡する件は幾度となく発生している。そのほとんどが逮捕できない、する意味がない凶悪犯相手に発生が多発している事からもその意味が分かるだろう。そういった場合、逮捕できなかったことで何かを言われる事があるかもしれないがそれ以上に処罰されるような事はないため、犯罪ではなかった。

 

「俺はもう少し入院する事になっている。あと少しだが部隊の方もだが任せたぞ」

「了解しました。隊長が完治するまで完璧に業務を熟して見せます」

 

 自身の副官でなければ1部隊は率いていてもおかしくはない優秀な副官の頼もしい発言に和人は満足げに頷くのだった。

 

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