魔導戦記   作:数の子三等陸士

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第三話・魔導兵器部隊Ⅰ

「総員! 傾注!」

 

 闇の書事件より半年後。和人はその功績をたたえられ、魔導兵器の運用部隊の隊長となっていた。元々役職だけの存在だった肩書は力ある権力となり、彼に対して確かな武力を手に入れたことを現していた。

 

「諸君! 2年間にわたる訓練、ご苦労であった! 半年前より行われた魔導兵器の使用訓練も問題なく熟すことが出来たことを私は嬉しく思っている!

諸君らは既に周知の事実であるが我ら魔導兵器実験運用部隊は日々後手後手に回る事件に対し、迅速に行動することを目的としている。そのために……」

 

 実験部隊という事もあり、この部隊に所属するのは僅か100名。それもリンカーコアすら持たない者ばかりであった。だが、彼らの顔に悲壮感はない。自信あふれるその表情には確かな意思が宿っていた。

 魔導兵器が運用許可される前までは大規模事件時の民間人の避難誘導を目的とする災害救助部隊として運用できるように訓練をしていたが半年前からは魔導兵器を実際に運用して訓練が行われ、その実力を知った彼らは魔導師相手でも戦える強い意志を獲得することに成功したのだ。

 

「では諸君らの今後の活躍を期待する! 以上! 解散!」

 

 そして、部隊運用の式は滞りなく行われ、彼らは地上本部から離れた、スラム街となっている通りに宿舎を設置した。これは治安の悪い地域に常駐する事で周辺の治安向上を目的としているが実際は、和人の狙いは別にあった。

 

「状況はどうなっている?」

「はっ! 既に周辺地域の孤児の引き取りに成功しています。今から訓練を行えば10年以内に戦力として運用できます」

「それは素晴らしい。だがやっていること自体は違法すれすれの行動だ。決して海には知られないように」

「了解です」

 

 部隊の運用よりさらに半年後、つまり闇の書事件より1年が経過したころ和人は副隊長であるギーゼラ・パルテル3等陸佐より報告を受け、その内容に満足した。

 

 和人がこの地を選んだ理由は単純であった。地上本部からも増してや海からも状況把握が難しい地域だからだ。地面はひび割れ、人々の暮らしは困窮し、犯罪者が兵器で大通りを闊歩する。そんな地故に戦力に乏しい地上本部はこの地を事実上見捨て、次元航行部隊は一々このようなスラム街を気に掛ける事はしなかった。

 それ故に和人は実力でこの地域の有力者を黙らせると孤児たちを引き取り始めたのだ。当然ながらその目的は善意ではなく、彼らを優秀な戦力とするためであった。年齢は上は20、下は0歳児まで幅広く確保し手織り、年齢ごとに彼らは訓練を行う事となった。15歳以上には管理局局員の地位を約束し、部隊と同等の訓練を施した。それ以下の子供には教育から訓練まで幅広く行い、事務からオペレーター、戦闘員と様々な地位に立てる準備を行い始めたのだ。その数は増え続けており、既に100人を超える孤児が集まっていた。

 

 当然そういった戦闘には向かない子もいるがそういった子には和人が懇意にしている、言ってしまえば魔導兵器の製造を委託する工場に作業員という形で送り届け、無駄がないようにしていた。そういった事が嫌なら引き取りを拒否することになっているが明日生きれるかもわからない彼らに選り好みする余裕も気力も存在しなかったため基本的に彼らは和人の庇護を受ける事になった。

 因みに、管理局から見て和人の行為は違法かと問われれば違法ではないと答えるしかない。精々が局員以外に機密に値する魔導兵器を触らせ、それを用いた訓練を施しているくらいだが彼を批判する事は孤児を助ける事を批判する事にもっていかれる事も可能な為、たとえ知られても批判する事は難しい状態になっていた。勿論、それを理解している為に和人も違法と取れる行動は基本的に取らないようにしつつ行動していたが。

 

「では治安の方はどうだ? 改善しているか? していないか?」

「急速に改善に向かっています。魔導兵器の運用は順調に行われており、特に不備も報告されてしません。やはり携行武器だけではなく、戦闘車両の導入もいい方向に向かったようです」

 

 魔導兵器の運用部隊は隊員の数は増えていないがその武装は強化されていた。

 そもそも、隊員たちの武装は実験部隊という名に相応しいといえる程重装備だ。先ず、リンカーコアを持たない彼らを保護するために着用するアーマーは対魔力仕様の特注品であり、物理には弱いが魔法には強い仕組みが施されていた。これは後に管理局を苦しめる()()()()()が用いられているがそれを和人含め把握できている者は皆無であった。

 そして、ファルケンと呼ばれる銃型魔導兵器はリンカーコアを持たない隊員たちに確かな力を与えており、犯罪者の魔導師相手に互角以上の戦いを行う事が出来るようになっている。非殺傷を前提としたこのファルケンは二つの弾丸を発射する事が出来た。一つは実体を持たない魔力弾。もう一つが実体弾だ。実体弾はたまに合わせて臨機応変に戦う事が可能であった。

 

 だが、それだけでは部隊の戦力は高いとは言えなかった。何しろ捕まらない犯罪者は総じて実力が高いことが多く、魔導師の場合は最低でもAランクの魔導師と同等の者が多くいた。当然ながらそんな相手に対して魔力を持たない者では戦いになるわけがなかった。

 そこで、一月前より戦闘車両ナースホルンが配備された。重装甲重火力を極限まで極めたと言えるこの戦闘車両はその実力から戦車並みの戦闘能力を有していた。

 対魔力仕様の鋼板は並の質量兵器の攻撃すら防ぎきり、車体上部に沿懐けられた武装取り付け部には様々な武装を取り付ける事が出来、マシンガンから誘導弾まで様々であった。これらは配備初日よりAAランク級の犯罪者を一方的に叩きのめす戦果を挙げ、現在でも部隊を支え続けている。

 

「近日中にもう一両が配備できる。それまでは1両目の使いどころを見極めて運用してくれ」

「分かりました。それともう一つ、実はいい拾い物をしたと報告が上がっています」

「拾い物? 人か?」

「ええ。名はディーダ・ランスター。AAランク級のリンカーコアを持っています。年齢は18歳。妹がおり、管理局に入る事を考えていたそうですが私たちの存在を知り、直接仕官しに来たそうです」

「それは良い拾い物だ。本人が望むようなら妹も引き取れ。魔導師の場合、兄妹間で必ずしも優秀になるわけではないがそうじゃなかったとしても問題はないからな」

「そういうと思い、勝手ながら既に局入りを認め、正式な人事を行っている最中です」

 

 優秀なギーゼラ副官に和人は満足げに頷き、彼女の独断専行を許した。あまり褒められた行為ではないがそれだけの権力をギーゼラは有している為和人は特に何かを言う事はなかった。

 

「では後の事は頼むぞ。俺はレジアス少将に部隊運用の報告書を提出する。あちらも報告書を今か今かと待ち望んでいるようだしな」

「確か地上本部のトップが引退間近でしたね。トップになるためにも絶好調の我らの戦果はより良い宣伝になりますね」

「ああ。レジアス少将は少し直情的な部分があるが管理局内でも優秀な人だ。少将にもトップになった際には部隊の増員を考えてくれている」

「そしてゆくゆくは全地上本部の隊員を魔導兵器を運用する者達に。これなら5年以内には完了しそうですね。……ですが、()()()()()()()()()の事を少将は?」

「……レジアス少将はああ見えて管理局を好いておられる。賛同いただけない場合、()()()()()()()()()()()()()

「……そうならない事を祈りましょう」

 

 和人は少し悲し気な表情でそういった為に、彼との絆を把握しているギーゼラも同様に悲し気な表情のままそう答えるのだった。

 

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