魔導戦記   作:数の子三等陸士

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第六話・突入作戦Ⅱ

 時は少し遡る。ラボに向かう直前に和人の姿は宿舎の真下、地下に存在する巨大な武器庫にあった。ここには隊員達の武器やその予備がずらりと並んでいるが今後も隊員を増やすことを想定しているのか武器庫はまだまだ好いている状態だった。

 そんな武器庫の最奥には厳重な扉で封印されるように保管されている武器が存在した。和人は迷いなくその扉を開けると中には3mはあろうかという人型のロボットが鎮座していた。そして、これだけの厳重に保管する理由が一目でわかる程にその姿は異様だった。

 全身は分厚い装甲で覆われ、魔力弾はおろか実弾すら通さない頑丈さを誇っている。両肩にはミサイルランチャーのような発射装置を取り付けており、後方にはジェットブースターが取り付けられている。両腕にはガトリング砲を持ち、実弾も装備しているのが弾薬が背中から垂れ下がっていた。前腕の中心部には魔力を雷に変換し、それを発射する武装が右に左には炎に変換して放つ火炎放射器がつけられている。腰からは魔力弾を連射するファルケンの改良型を装備し、足には両肩とは違うミサイルポッドを装備している。背中には両肩のミサイルランチャーと合わせて計4機のジェットブースターを装備していた。

 まさに重装甲銃火力を体現するような武装を持っていた。しかし、これだけの武装ゆえに量産の許可は予算の都合的に下りず、試作機としてこの1体が作られるにとどまっていた。とはいえさすがのレジアスもこれを実戦投入する事は難しいとこれまでは使用許可を出していなかったが今回に限り使用許可が下りていた。

 

「まさかこれの使用許可が下りるとはな」

「動力には最新型の魔力枦を備え付けています。更に装甲には魔力吸収機能も装備している為、敵の放った魔法さえこの兵器の前ではエネルギー源として補充されます」

「魔導師にとっては厄介な相手となるわけだ。いずれは対魔導師兵器に仕上げたいが今はこれで十分だろう」

 

 ギーゼラ副官の説明に和人は少し物足りなさそうにしつつも起動シーケンスに入る。魔力枦を稼働し、全身に魔力を行き届かせることで頭部の広範囲センサーが起動。全身をゆっくりと少しづつ動かし、操作の確認をしたのちに立ち上がった。そして和人に視線を向けると無機質な機械音声が部屋に響き渡った。

 

【マスターカズト。ギガント1号機起動しました。ご指示を】

「よろしい。ならばゆくぞ。お前の初陣だ。尤も、お前を使う程の相手が出てこない事が一番望ましいがな」

「ですが今回のデータを入力するには時間がありません。命令すれば別ですがもしそれが出来ない場合……」

「問題はない。ギガントには基本的な情報は入力済みだ。たとえこいつだけで戦う状態でも敵味方をきちんと判別する事が可能だ。まぁ、徹底して攻撃する可能性はあるがな」

 

 そう言って和人は笑う。実際に使う事はないと思いながら。

 

 

 

 

 

【敵と思わしき反応を確認。状況把握完了。敵を掃討します】

「くっ!」

 

 そして、使うとは想定しなかった和人に代わり隊員たちによって起動したギガントは僅か1秒にも満たない時間で周囲の状況を把握。敵と認定したチンクに全方向を向けて発射した。チンクは慌てて回避に入るが放たれたそれらは非殺傷ではなく、殺傷状態となっていた。

 

「馬鹿な!? 管理局が殺傷兵器を使用するだと!?」

【敵は体内スキャンから機械と判定。機能停止を目的とする破壊攻撃を続行します】

 

 ギガントはそのサーチ能力の高さゆえにチンクが戦闘機人、肉体の半分が機械で出来ている事を突き止めていた。そして、ここで機械と人間の差が明確になる事となった。人間ならたとえ機械でもその見た目から殺傷設定で確実に破壊するという行動はとらないだろう。しかし、ギガントは違う。戦闘機人はギガントにとって人間ではなく機械だと断定したのだ。人間は肉体の半分以上を機械にして生きられるはずがない。それも義手などとは明確に違う為にチンクは見た目は人間でも機械だと判断したのだ。そして、命令を受けていない以上破壊を躊躇する意味がなかった。ギガントは近くで戦う味方と思われる人間(クイントとメガーヌ)に当たらないように気を付けながらチンクを攻撃する。

 

「くそ!」

 

 チンクが少しでも気をそらせようとナイフを放ち、爆発させるがギガントはそれを無傷で受け止めて見せた。重装甲の前にチンクの攻撃ではダメージを与えるには至らなかった。遠い未来ではチンクは防御機能を備えたコートを持っていたが現状では稼働から時間がないためにそんなものは持っていなかった。そして、唯一の武器であるISは相手にダメージを与える事は出来ない。そして敵の砲火を逃れるには素早さが足りなかった。

 

「ぎっ!」

 

 故に、チンクが砲火に捕まるのは時間の問題であり、不運にもチンクはガトリングの弾幕を足に受けてしまう。そして、それはチンクの足首を易々と貫き、大穴を開けた。骨を粉砕し、歩けない致命的な一撃を受けチンクの体は倒れこむ。そして、そんな明確な隙をギガントは見逃すはずはなかった。

 

「があぁぁぁっ!!!」

【命中を確認。敵の抵抗能力が失われたことを確認。攻撃を中断します】

 

 ギガントが途中で攻撃を止めるがそのころにはチンクの体は酷い状態になっていた。うつ伏せで倒れこんだために背中はえぐられるように破壊され、右腕は消失、左腕は焼き爛れいた。綺麗な銀髪は真っ赤に染まり、耳を済ませればウィーンという機械の駆動音とヒュー、ヒューという荒い息遣いが辛うじて聞こえてくる。

 チンクは完全に瀕死であり、あと一秒でも攻撃を止めるのが遅ければ肉塊となっていたであろう重傷だった。それでもまだ生きているのはさすがは戦闘機人というべきだろう。

 

「チンク!? くっ! これ以上は無理か……!」

「逃がさない!」

「待ちなさい!」

 

 チンクが倒れたのを見てトーレはこれ以上の戦闘は危険と判断した。チンクを一方的に倒して見せたあの巨人が自分に向けばかなり厄介だと判断しての事だった。彼女は自らのISであるライドインパルスを発動するとクイントやメガーヌでは追い付けない速さでその場を離脱した。チンクを置いていくことに心のざわめきはあれど自分では回収不可能とおいていくことを決めたのだ。

 

「(おのれ……! この借りは必ず……!)」

 

 稼働して初とも言える悔しいと感じるほどの敗退にトーレは感情を高ぶらせながら再戦を誓い、合流地点に急ぐのだった。

 

 

 

 

 

「ふ、フハハハハハ!!! 見ていたかいウーノ?」

「ええ。勿論ですドクター」

 

 そして、そんな戦いの一部始終を見ていたジェイル・スカリエッティは狂喜乱舞という言葉がぴったりなほど喜びの笑い声をあげていた。

 

「Sランク魔導師と1対1で戦えるチンクは想定内だがそれ以降が想定がばかりだった! まさか実験部隊があのような兵器を持っているとはな!」

「実験部隊という事でマークはあまりしていませんでしたがこれから動向を遂次確認した方がよさそうですね」

 

 ウーノとしてはまさかたかが実験部隊にここまでの戦力があるとは思っていなかった。レジアス中将とは懇意である為にそれなりの戦力はあると想定した。実際、彼らの魔導兵器はジェイル・スカリエッティの技術が一部流用されている事もあり高性能である。だが、最後に出てきた巨大な兵器、ギガントは完全に想定外であった。まさかあれだけの兵器を運用しているとなればガジェットでは相手にならないだろう。

 

「チンクに関してはどうしますか?」

「残念だが彼女を助ける事は出来ない。クアットロのシルバーカーテンなら気づかれずに奪い返すことは可能かもしれないがそこまでの危険を冒す必要はない。今は彼らに預けるとするさ」

「……」

 

 ジェイル・スカリエッティの言葉はウーノが期待したものではなかった。確かに戦闘機人同士ではあるが姉妹であるのだ。妹の安全を願わないはずがなく、チンクの状態は何時死んでもおかしくはない状態にあり、ウーノは管理局程度の医療技術でチンクを治せるとは思えなかったのだ。ジェイル・スカリエッティの言葉はウーノにとってチンクを見殺しにすると言っているようにしか聞こえなかったのだ。

 

「ふ、安心しなさいウーノ。チンクは助かるさ。管理局は意外と技術力はあるからね」

「……そう、ですか」

 

 ウーノの心配を理解していたのかスカリエッティは落ち着かせるように穏やかな口調でそういった。そして、その言葉を否定する証拠もないためにウーノは心配しつつもその言葉を信じるのだった。

 

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