転生神メルンは激怒した。必ず、この現代の転生環境を変えなければならぬと決意した。
メルンには若き転生神達の感覚がわからぬ。メルンは、古い時代の転生神である。

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最近の神様転生

「最近の神様転生には問題がある!」

 

 転生神であるメルンは突如、大声を張り上げた。

 

 メルンは透き通るような白い長髪と瞳を持つ転生神である。そして胸は実りの大地のように豊満であった。

 汚れを知らないような白いローブを着こなした見た目は儚い雰囲気がある。だが、大きな声を上げた今の状態では儚げ要素が打ち消されている。

 

 

 メルンの声に反応したのは、転生業務の助手である天使の少女。名はウロナ。見た目は金髪で青目で白き羽を持った天使のオーソドックスとも言えるタイプである。

 ウロナは下界のコンテンツを堪能できる端末から目は離さずに声をかけた。

 

 

「ハァ……今度は何ですか? 前みたいに、神なら清楚っぽい恰好をするべきだとかの時代遅れな愚痴ですか」

 

 メルンは転生神の一柱として長く勤めている。それ故に感性が古く、たまに近年のノリや文化などに愚痴ることが度々あった。

 

 そして転生神は特に若い神が多く、メルンが吐く愚痴の対象になる確率が高い。

 転生神が多い理由としては、人は毎日どこかで亡くなっており、転生先の世界や細かい世界線も多岐にわたるので多くの転生神が必要とされているからだ。

 

 

 

 面倒くさい様子を隠さないウロナが持つ端末に、メルンはサッと最近の転生者データを強制表示させた。

 

「うわぁ……愚かな人間が作り出したポップアップ広告式の挟み込みは止めてくださいよ」

「いいから、それを見ながら聞いて!」

 

 仕方なくウロナが見るとデータには、メルン以外の転生神による転生者数や転生時の処理などの情報がまとめられていた。

 

「他の若い転生神は、転生者と会話すらせずに流れ作業で別世界に送り込んでいるのが殆どだったの。これじゃ『神様転生』ではなく、ただの『転生』よ」

「ですが、転生の処理が早くて良い結果の総数も業務期間で見れば高いですよ。下界にあるコンテンツの消費速度と同じで、転生のファスト化が進んでいるって感じですね」

「早ければ良いって話でもないのよ」

 

 

 メルンは眉間にしわを寄せて、深く息を吐いた。

 

「神々の行動は下界にも影響があるわ……。他の転生神のせいで、私の名前が入っている素敵な小説サイト"ハーメルン"では『転生』タグ作品ばかりで『神様転生』タグ作品の新規投稿が減っているの」

「メチャクチャどうでもいいです」

 

 

 

 ウロナの冷めた反応をあえて無視して、メルンは熱を込めて言葉を続ける。

 

「何よりも適当な仕事で送られた転生者たちは難儀することが多い! 特に、どんな世界なのか気付くのに遅れた転生者が困った様子で嘆くのよ。『もっと早く知れたなら違ったのに』と!」

「あー、出だしが大事な作品世界とかありますよねぇ。初動で対処できていたら、あっさりと解決するタイプでのラスボスとか病気とか……」

 

 思っていたよりも真っ当な話だったので、ウロナは素直な感想を口にしながら改めて転生者データを眺める。

 

「メルン様が事前に転生先について教えたり、ここの新生空間で転生チートの使い方を含めて特訓させた人間たちと違って、他所の転生者は死亡率が高いですね。加えて、世界への貢献度も平均すると低い……。送り出す数でカバーされているから成功数は多いですが、質が悪いです」

「フフフ、私が送り出した子たちは質が良いものね。たっぷり“身体の使い方”も教えたかいもあるわ」

「あー……ハイハイ」

 

 メルンの場合は一人一人、対話と特訓で時間をかけて送り出している。成果の数は一定期間でみれば低くとも、成果率は良かった。

 

 

 

「とにかく、転生する人間がいくら溢れていても、転生神は送り出す者として人間の顔を見てちゃんと見て対話するべきよ。手間でも生存率を上げるためにも、尊い命を数字と認識しないようにするためにもね。それに……」

 

 メルンは口元を歪ませて、ニチャリと粘度のある笑顔を作りあげた。

 

「転生先は身体から鉱石が生える病気がある世界や、地球外生命体に人類が何十億と殺される未来がある世界や、ゾンビウイルスが蔓延する世界だとか教えられた時の青ざめた表情って見物だし!」

「着眼点が最悪ですね」

 

 

 悪辣な表情だったが、すぐにクシャクシャと泣きそうな顔つきで嘆く。

 

「そんな風に楽しむようにしないと私がムリなの。転生先は魂と世界の相性の問題だから、私の力でどうにかできるわけじゃなくても罪悪感で潰れてしまいそう……」

「理由が切実ですね」

 

 ウロナは人間が生み出すコンテンツは好きだが人間自体には思い入れがないので、痛む心をどうにか保つメルンに共感は覚えなかったが、軽く同情はした。

 

 

 

 メルンは顔を上げるとキリっとした凛々しい表情で想いを告げる。

 

「ただの人間は存在として格が低い……。だからこそ、格上である自分たち神々がキチンと導き、教えを与えるべきよ」

「そんな考え方を持っているのは、メルン様の美点です」

 

 他の……特に若い転生神は人間に限らず天使など含めて、神以外の存在を軽んじる。

 他と違い、慈しみを向ける心がある転生神メルンを天使ウロナは神として好ましく想っていた。

 

 

 

「あと、自分よりも圧倒的に格が低い下界の人間に土下座して媚びを売る快感は他では味わえないというのに……他の転生神は勿体ないと思うわ!」

「そんな性癖を持っているのは、メルン様の汚点です」

 

 メルンに好意は持っていても、独特な性癖への理解は無かった。

 

 

 

 話が落ち着いたところで、ウロナが質問を投げかける。

 

「結局の話しとして、メルン様はどうしたいんです? 愚痴を吐いて満足なら、この話は終わりですが」

「そうね……他の転生神が行っている転生業務の雑さはどうにかしたいわ」

「では、行動をしなければ変わりようがないかと」

「……決めた。可愛い人間たちのためにも、神様転生の状況改善を上神に訴えかけてくるわ!」

 

 

 

 どうにかメルンの訴えは通り、転生者には最低でも転生先について説明することが義務付けられた。

 希望が叶ったメルンだが、その表情は暗く沈み込んでいた。

 

「改善は出来たのに、なぜ悲しんでいるのですか?」

「参考資料として私のデータとか全て渡したら……特訓の一環と称して、転生前の人間とエッチしていたのがバレて以後禁止されたの。今後やったらバレる監視システム付けられたわ……」

 

 メルンが転生者に教える“身体の使い方”にはベッドの上での所作も含まれている。大事な技術と言えばそうだが、どちらかといえばメルンのお楽しみ要素である。

 

 

「バカですね。神様なんだから自制して下さい」

 

 ウロナは呆れつつも、息抜きとしてメルンの発散は今後も必要だと認識はしている。それに、なんだかんだメルンの欲に正直な部分が好きだった。

 なので、ウロナは手を貸すことにした。

 

「でもまぁ、たまになら……メルン様の秘め事がバレないように私が監視システムを誤魔化してあげます」

「流石ね! ウロナは話がわかる!」

「ですが、頻度は自重して下さい」

「うぐぅ…………わかったわ」




【後書き】
 ハーメルン投稿7作目です。


 最近の異世界オリジナルやオリ主モノって、神様との転生会話がある新規作品が少数派になっていますよね。

 転生空間で神様が土下座し、謝ったりする下りもしばらく見てない気がします。

 読者としての視点だと神様転生は
「仲間にならず、本当にそこでしか出番がない神様とのやり取りは不要じゃない?」
 感が強いですが、転生者の視点ならば事前情報はやっぱり欲しいんじゃないかなーと。


【お気に入り】、【評価】、【感想】、【ここすき】等、よろしくお願いします!
作者が喜びいっぱいになります!


気が向いたら、作者の『他作品』もよろしくお願いします。この作品以前の物は全て完結済みです。

あなたが転生するなら

  • 『転生』の方がいい
  • 『神様転生』の方がいい

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