世界初にして唯一のフルダイブ式VRMMO、【ガーベッジ・サガ】。

現実の体と遜色なく動かせるアバター。中の人が居るとすら思える高度なAIが搭載されたNPC。派手なものから地味なもの、果ては意味不明なものすら存在する千差万別のスキルや魔法。武器防具のフルスクラッチすら当たり前のようにできる、どこぞのライトノベルから引っ張り出してきたとしか言いようのないゲーム。

しかし、一見完璧に見えるこのゲームにも欠点があった。
極々一部のプレイヤーが恩恵を受け、その他大勢のプレイヤーは気にしないよう努めるか諦める欠点──ユニークジョブ、ユニークモンスター、ユニーククエストにユニークアイテム!
オフラインゲームならともかくMMOとしてはありえない1点ものの数々は、彼に一つの感情を抱かせた。

──ユニーク、殺すべし──

この話は、そんなユニーク嫌いの彼の活動記録の一端である。

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某サーバーでの日常

 

『しょ、勝者! ファッキンダム宮殿選手ぅぅぅ!!』

 

 ついに、ここまで来た。これまでの長いようで短い道のりを振り返る。

 苦難があった。挫折があった。

 たが、その全てを乗り越え、糧とし、この場に立つ事が出来た。

 俺は万感の思いと共に──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くたばれクソ運営!!!」

 

 ──天高く中指を築き上げ、優勝賞品であるユニークジョブ【決闘王】を破棄した。

 

 この物語は正統派主人公が歩む王道物語(サクセスストーリー)ではない。俺がユニーク濡れのゲーム内で不平不満を垂れつつ好き勝手遊び歩く物語(スピンオフ)だ。

 

 

「うはははは!! で、また隔離鯖に飛ばされたって訳か! あんたも懲りないな、先生!」

 

 対面の牢屋で胡座をかく、作務衣を着たガタイの良い男がこちらに話しかけてきた。

 プレイヤー名、ダバダバダバダ。罪状──プレイヤーに対する詐欺行為及びMPK。レアアイテムを高値で売り付け、その後MPKで相手の財布ごと回収する事を生業とするカスだ。

 

「んお? お! センセイじゃーん。おひさー。見てたよPvP大会! いやー、胸が空くとはまさにこの事って感じ!」

 

 今度は斜向かいの牢屋で寝転んでいたライダースーツ姿の女が話しかけてきた。

 プレイヤー名、一億万石まんじゅう。罪状──窃盗及び不法侵入。まぁ、ようは強盗だ。NPC・プレイヤー問わず住居に忍び込み、金目の物を根こそぎ奪う事に生き甲斐を見出すカスだ。どうでもいい事だが、ネカマという噂も聞く。

 

「今先生って言ったか?」「聞こえた聞こえた」「大会見てたでござるよFD氏!」「アンスレの希望は伊達じゃねぇ! ドラガキざまあwww」「ところでなんで先生って呼ばれてんの?」「用心棒したり雇われ刺客やったりしてるからやぞ」「お祝いの脱獄祭りしようぜ」「いつもやってるじゃん」「一番最初に鍵開け成功した奴が押収品総取りな!!」「……! 出入り口を押さえて皆殺しにすれば安全に漁れるのでは?」「名案にごつ! 牢から出たらまずお前からチェストしもす!!」

 

 先の2人を皮切りに、蜂の巣を突いたような勢いで他のプレイヤー共が牢屋の中で騒ぎ出す。

 

 罪状は千差万別。PK、放火、粘着行為、密輸、詐欺、違法品製造、爆破テロ、要人拉致……およそこのゲーム内で設定されている犯罪行為のオンパレード。

 どいつもこいつも一級品のカス共だ。

 そして、苦楽を共にしてきた誇るべきフレンド達でもある。

 

「お、脱獄王のユニークジョブ取れた」

 

「おいバカ黙ってろ!」

 

「ユニーク、殺すべし……!」

 

 残念ながら俺のフレンドリストから名前が一つ消えることが確定した。地の果てまで追い詰めて肥溜めにぶち込んでやる」

 

「こえーよ先生、情緒どうなってんの?」「心の声ダダ漏れで草」「うーんこの実家のような安心感」「いつも通り、何回かリスキルしたら落ち着くっしょ」「それはそれとして、ユニークジョブとかメチャ許せねぇよなぁ!?」「隔離鯖十ヶ条! ユニーク関連取得者は囲んでボコるべし!!」「バカめ! 既に手枷足枷拘束衣、全て解除し終えたわ!!」「うわ何その動き、キモっ」「隣の牢で見えないんだけど、なんでその状態から抜け出せてんのそいつ???」

 

 カス共が喚いてる間に檻の材質・強度は調べ終わった。どうやらこれまでと一切変わらないようだ。有難いことに、運営の防犯意識は未だバカンス中らしい。檻の前に立ち、手枷を付けられたまま腕を構えて集中する。

 このゲームの異常なまでに正確な、現実と遜色ない物理演算。これまで積み上げてきた検証とステータス。精密機械に匹敵する身体操作。それらが揃えば──!

 

「オラァ!!」

 

 気合いと共に叩きつけられた手枷は檻と衝突し、その双方が甲高い音をあげ砕け散った。

 

 数度手首を振り、調子を確認──問題無し。

 ステータス画面を開き、確認──問題無し。

 俺は悠々とした足取りで牢の外に出て脱獄王(裏切り者)が収監されている牢の前で仁王立ちした。

 

「あ、その……お疲れ様っス。やっぱ自分にはここが性に合ってるなって思っててぇ……。ほら、個室じゃないですかここ?」

 

「辞世の句はそれでいいか?」

 

 牢屋同士の間に設置されている燭台をへし折りながら、壁際で正座しているカスに問いかける。プレイヤー名は確か、ベンタブラックだったか……? まあいい、これから死ぬ奴の名前なんぞ覚えていても記憶領域の無駄だ。

 俺は石壁を使いへし折った燭台の先端を研ぎながら、最後にもう一度問いかける。

 

「辞世の句は?」

 

 全てを諦めた表情でベンタブラック(ゴミカス)が檻の前にゆっくりと歩いてくる。

 どうやら潔く(デスペナ)を受け入れるようだ。刺突武器として生まれ変わった燭台の射程まで後3歩……2歩……1歩──

 

「掛かったなアホが!! <死毒の──あぺっ」

 

スキル発動の予兆を感じ取った瞬間、反射で燭台を投擲。狙い違わずベンタブラック(間抜け)の額に突き刺さり、その命を刈り取った。

 

「顔見知りのよしみだ。一回で勘弁してやる」

 

 キッカリ10秒後、牢屋内で復活(リスポーン)したベンタブラック(死に損ない)が這いつくばり、恨み言を呟き始める。

 

「覚えてろファッキンダム宮殿……地べたを這い泥水をすすってでも復讐して──あふん」

 

 一時的に記憶から消したことで知らないゴミとなった男に向けて2本目の燭台を投擲。脳天から燭台を生やした死体(燃えないゴミ)に背を向け、押収品室に向けて歩き出す。

 

 この物語は正統派主人公が歩む王道物語(サクセスストーリー)ではない。ユニーク濡れの似非MMOを犯罪者プレイヤー(俺達)が好き勝手遊び歩く物語(ピカレスクロマン)だ。

 

 

「不覚……!」

 

 その後、うっかりクソ強衛兵と鉢合わせした俺は抵抗虚しく死亡(床ペロ)し、牢屋に死に戻りした。

 クッソぉ……HP残り1割まで削れたんだけどなぁ……。

 

 訂正しよう。この物語は王道物語(サクセスストーリー)でも悪漢小説(ピカレスクロマン)でもなく、二束三文の笑い話(ギャグコメディ)だったかもしれない。

 





尻切れトンボですが、ご拝読ありがとうございました。

勝手にQ&A

Q:なんでMMOなのに一点ものが実装されてるの?
A:製作者がゲームそのものに疎かった事と、製作者の幼馴染が「こんなゲームやってみたいんだよねー」と話題として振ったのがなろう系VRMMOだった結果こうなったそうです。

Q:ゲームに詳しくないなら、ゲームタイトルは幼馴染が付けたの?
A:製作者が付けました。彼女は幼馴染以外、総じて塵芥と思っているので不特定多数の他人を指してガーベッジ(ゴミ共)、幼馴染を指してサガ(英雄譚)としたそうです。

Q:なんでこいつら垢BANされてないの?
A:運営AIが指示されているその辺の対応が「迷惑プレイヤーは隔離鯖に送り込む」だけだから。
製作者的には「ゴミはゴミ箱に入れておけば十分でしょ」との事。

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