地球が異なる次元の世界、通称異世界と繋がって数十年、少なくない数の人やモノが世界を結ぶゲートを通ります。
異世界との交流にはルールがあり、それは厳格に適用されなければ双方の世界に大きな混乱をもたらすでしょう。
これは異世界とのゲートキーパーとして、地球の側からルールを守らせる人々の物語。
異世界との交流にはルールがあり、それは厳格に適用されなければ双方の世界に大きな混乱をもたらすでしょう。
これは異世界とのゲートキーパーとして、地球の側からルールを守らせる人々の物語。
地球が異なる次元の世界、通称異世界と繋がって数十年、少なくない数の人やモノが世界を結ぶゲートを通ります。
しかしそれら全てが合法とは限りません。ルールを知らず、あるいは知った上で破る人々もいます。
Trans World Agency、通称TWAはそういったルール違反を見つけ出し摘発することが任務の一つです。
カンザス州ウィチタ、異世界と繋がる次元ゲートの一つがここにあります。ティディ・ノーマンはこのゲートを担当するTWA職員の一人です。
「異世界ゲートの管理業務は様々な業務が組み合わさった複雑で大変な仕事です。簡単な仕事ではないですがだからこそやりがいもあります」
彼の本日の業務はアメリカから異世界へ向かう人々の出国手続き。ゲートを通ってアメリカから異世界へ「認められていない品物」が持ち出されないように検査することです。ウィチタのゲートでは入出国合わせて年12000人以上が通ります。
「基本は空港で行われる税関検査と同じです。X線で危険物が無いことを確認し、問題がなければ荷物を本人の目の前で手作業で開きます。空港と違う点を挙げるとするならばゲートを通る全員の全ての荷物を手作業でチェックしなければならない点でしょうか」
全ての荷物を検査するのは、一度異世界に認められていない道具が持ち出されると追跡が困難になるためです。
「ここに三つの道具があります。
右のは我々のよく知るジッポのライター、残り二つは異世界でのライターに相当する魔法の道具です。
ジッポはオイルがある限り火をつけることが出来ます。
真ん中の物はスイッチを押しても火がつきません。
左の物は火花が出ますが一瞬で消えてしまいます。
これはこの二つの道具が異世界のマナの存在を前提としているためです。
このように我々の世界の科学文明の道具は世界が変わっても確実に動作するという利点があります」
世界を跨いでも確実に動作する科学の利器には異世界でも安定した人気があるものが多数あります。
特に銃と麻薬は規制をくぐってでも手に入れようとする者が後を絶ちません。
現に10年前、違法に密輸されたライフル銃が、異世界の国王の暗殺に使われています。
「手荷物検査では荷物を渡航者自身に開けさせることがあります。
また渡航者の荷物に触れる際は手袋が必須です。
これはフェンタニルへの対策が主な理由です」
フェンタニルをはじめとする違法薬物には特に注意しなければなりません。彼自身は中毒に陥ったことはありませんが、TWA全体では年に数件フェンタニルのオーバードーズで搬送される事案が発生しています。
料理人を自称する渡航者の手荷物検査の途中、ティディ・ノーマンは荷物の中から怪しい結晶を見つけました。
渡航者自身は食塩であると主張しますがそう言っている間にも結晶の包みが荷物から次々と出てきます。
「検査にかけよう」
渡航者を別室に移動させたうえで結晶のサンプルを取ります。
この時結晶が舞い上がらないように慎重に行動しなければなりません。
結晶を簡易検査キットに入れてよく振ります。規制薬物であれば色が変わるはずです。
「一般的な薬物ではないですね。より精密な検査にかけてみましょう」
簡易検査キットには反応がありませんでした。
念のため専用の機械を利用して詳細な検査を行います。結果は……
結晶は麻薬ではなく本当に食塩でした。渡航者は本当に料理人であることの確認も取れました。
しかし別の理由でこれらの食塩は全て没収になります。
「地球では何の変哲もないものだったとしても異世界では大きな影響が出る場合があります。
特に塩、香辛料の類は地球世界ではありふれた調味料ですが異世界では貴重な交易品として取引されています。
異世界ゲートでは異世界の経済関係を維持するため地球では規制されていないものも没収、廃棄の対象となることがあります。
塩がその代表格だったことを彼はよくわかっていなかったようです」
料理人の渡航者は塩を没収されただけで渡航そのものは認められました。ただし口ぶりと表情は不服そうです。
異世界とのゲートキーパー、TWA。彼らの活動は今日も地球と異世界の双方を守っているのです。
某ドキュメンタリーを見ていたら思いついた一発ネタです。
続く予定はありません。