こんなんだったらいいなぁ、という作者の願望から生まれた作品兼長らく離れていた執筆のリハビリです。独自解釈、展開が多々ありますので読む場合はお気を付けを。

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 帝具の独自解釈、設定を含みます。気になる方は先に後書きをお読み下さい。タツミファンの方は忌避感を抱くかもしれませんが、すみません。タツミくんは私も好きです。大丈夫だよ、という方は読んで下さると嬉しいです。では、どうぞ。


波の願い

 帝都が燃えている、叫びが聞こえる。打ち合う剣戟の音が、放たれる砲弾が風を切る音が幾重にも重なり響き渡る。反乱軍の蜂起、異民族と協力した攻勢は今、千年続いた国を、歴史を焼く。腐って腐って、様々な人を巻き込み飲み込み、その身に沈めて来た国が、栄えあれと願われて、けれども歪んでしまったこの国が、その身を劫火で覆われている。報いだと言う人がいるだろう、悪夢だと嘆く人がいるだろう、早く過ぎ去ってくれと祈っている人もいるだろう。けれど様々な人間が、全ての人々が理解しているだろう。これが、この戦いが帝国という国を変えるモノとなると。それが今よりも良いか悪いか、分からないにしてもだ。国が変わる、それはとても大きなものなのだろう。バカな俺にだってそれくらいは分かる。けれど今、この時この場所にいる俺にとっては問題じゃないんだ。いくらそれが重要な事だろうと、他の事に気を取られていてはダメなんだ。そんな余裕は欠片もない。

 

「オオォォォオオッ!!」

 

 鋭い拳打が連続して放たれる。俺を撃滅せんと向かってくるそれらを払い、交わし、受け止め、逸らす。逸らしたことにより崩した相手の力の流れを読み、反撃の拳を撃ち出す。

 

「シャァアアアァァアアッ!!」

 

 細かく疾く、相手の芯を狙い、時にフェイントを織り交ぜる。フェイントと言っても、空撃ちのような出しただけの拳ではなく、当たればそれを起点とした連撃に繋げられる攻撃だ。何度も何度も、繰り返し繰り返しやり続けた動作。力を伝え、余すことなく拳に乗せる。願いも祈りも迷いも理想も思いも全て、一滴残らず絞り出し、断ち切るように動き続ける。

 

 

 俺が戦っている相手、ほんの少しだけだけど一緒に過ごした同僚と言える相手。才能があって未来があって、持つべき道徳も帝都の闇と言えるものを見ても染まらず屈せず自分を貫ける強さもある人間。完成された強さを持っていると言われた俺に対して、コイツは帝国が誇るエスデス将軍に認められるほどの逸材だった。

 こうして戦っている間にも俺の動きに、思考に対応していく。さっき効いた動きに今はカウンターすら入れようとしてくる。ドンドン強くなっていくコイツに対して他に思考を裂く暇はない。立場が違えば無二の親友のようになれたかもしれないと思う。だけどコイツは俺の前に立ち刃を振り上げ、拳を握っている。白く雄々しい鎧、初代皇帝が造らせた超兵器の一つ【悪鬼纏身インクルシオ】を身に付け挑んできている。

 

 白い鎧は、今は所々欠け顔の一部が覗いている。インクルシオの副武装である槍はもうない。俺が身に付けているインクルシオの後継帝具である【修羅化身グランシャリオ】の副武装と共に砕け散ったからだ。インクルシオだけでなくグランシャリオも所々欠け、ダメージを負っている。後継型とプロトタイプとはいえ、インクルシオは持ち主と共に進化する能力がある。負荷が懸かるとはいえ、才能により今でも強くなり続けているアイツと、進化するインクルシオは、相性としてはアイツの為に造られたと言われても問題ない程に破格の適正だろう。近しい実力の相手には脅威以外のなにものでもない。

 だけど、それが俺の負ける理由には、負けて良い理由にはならない!

 

「ガグァッ──はああぁぁああ!!」

 

「ヅッ、らあぁっ!」

 

 受け切れず数発被弾したアイツは、そこからねじ込むように拳を入れてきた。互いに退かず、距離を取る事もなく打ち合いを続行する。正確には距離を取る隙もないのだ。

 

「しまっ」

 

 打ち合いを続ける中で拳を打つために踏み込んだように見せかけ、相手の足を苅る。打つことと打たれることに意識を裂き過ぎた相手は見事に体勢を崩し転倒する。ここで、仕留める!

 

「貰っ────かッ、ハ!?」

 

 相手に致命的な一撃を叩き込もうとしたとき、側頭部に衝撃が走った。狙撃かと思ったけど、俺の勘は違うと告げている。こういう自分の感覚は大事にしていて実際に、こと戦闘においてはほぼ間違いはない。つまり狙撃以外の要因だ。相手の手も足も注視していて見逃してはいない、ならなんで? 其処まで考えたとき視界の端に細い紐のような物が見えた。……なるほど、そういうことか。折角のチャンスを逃がして、仕切り直しと言わんばかりに距離を取られてしまった。こんなんじゃまた隊長にお仕置きされるな。やだなぁ。

 

「油断、だよな。帝具が、超兵器であるそれが鎧であるだけなんて、勝手に思い込んでた俺の油断だ。インクルシオは進化する。知っていたのに分かってなかった。反省しないと」

 

 視界の端で捉えたソレは今はしっかりと見えている。パシリと獲物が狩れなくて不満だとばかりに地面を叩くソレは尻尾だった。さっきまでは確実になかったものが、所有者の危機に現れた。手も足も出せないならそれ以外を。単純にして明快、そして非常識で理不尽なそれ。これこそが帝具が帝具である理由、千年経っても越えられず、並ばれすらしなかった超兵器の真骨頂だ。鎧の形が変わるなんて生易しい物じゃねぇ。なかったものが作り出され、しかもそれが付け焼き刃ではないのだ。視界に映る尻尾は規則正しく細かい刃が付いていて、俺もグランシャリオを装着してなかったら、首を斬り飛ばされていただろう

 

「俺もこんなのが急に生えてくるなんて知らなかったよ。……なぁ、ウェイブ」

 

「なん、だッ! よ、タツミィイ!」

 

 俺の相手、殺し屋集団の組織ナイトレイドの1人タツミが息を整えながら話し掛けて来るが、構わず近づき蹴りを放つ。一応返事をするが、意識はタツミを打倒する事に集中している。出した蹴りと鏡合わせのようにタツミも蹴りを出してくる。さっきまでなら此処からまた、殴り合いになったのだろうが、今は違う。タツミの蹴りの軌跡に合わせるようにインクルシオの尻尾がしなり、向かってくる。狙いは頭、首を曲げて避けようとするが尾は急に方向を変え、肩に当たるよう軌道を変えた。ビキリッと避けられなかった肩から軋むような音が聞こえた。バック転繰り返して、距離を離す。意識的に操っているのか、自動的に動くのか、はたまたその両方か。情報が足りない。

 

「ぐッ、便利だなそれ、羨ましいぜ。よく尻尾なんて、生まれたときから付いてなかったもんを、其処まで動かせるな。前世は猿か何かか?」

 

「誰が猿だ! 俺が動かしてんじゃねぇよ、勝手に動くんだよ」

 

 ナイトレイドとして今まで戦ってきたタツミが、素直に情報を吐くとは思わない。この戦い、いや戦争がどれだけ重いのか理解しているアイツが、今更そんなヘマをする訳がない。だからこそ想定するのは最悪でなければならない。さっきの攻撃は自動で動いた後、タツミが自分で方向を変えたと思っておく。今の口振りから恐らく自動で動くのは確実だ。それらを勘定に入れて戦わないとな。

 

「ウェイブ、あんたは何で戦ってるんだ」

 

「そんなもん決まってるだろ? 俺が軍人で────お前が帝都を脅かす凶賊だからだ」

 

「そういうことを聞いてるんじゃねぇっ!! ウェイブはおかしいと思わないのかよ、今の帝国が間違ってると感じないのか! 人が大したこともない理由で簡単に殺されて、地方は重税に喘いで、帝都に出稼ぎに来たら金持ちや貴族のオモチャにされる。裁くべき軍人が結託して罪を隠す。決定に異を唱えれば濡れ衣を着せられて処刑される。正しいことが暴力と権力にねじ曲げられて、弱い立場の人が一方的に虐げられて! 泣いてる子がいる、泣くことも出来なくされた子が沢山いる! そんな国に、守らなきゃならないモノなんて──どこにあるって言うんだよォォオオオオ!!」

 

 弾丸のように飛び込んできたタツミは、激情しながらもしっかりとした攻撃をしてくる。怒りに振り回されるんじゃなくて、怒りも力に変えて自分を奮い立たせている。避けきれず当たる拳が、蹴りが、尾がグランシャリオと俺を削っていく。正しく猛攻という言葉が当てはまる動き。心の底から発せられているだろうその言葉と想いが俺に叩きつけられる。そうか、と納得する。タツミは真っ直ぐ前を見つめている。見知らぬ誰かのために本気で怒って、泣いて、喜ぶことができるんだ。だからこそ、今の帝国が赦せないんだろう。本当の本当にいい奴だ。

 

「あっちの方にな、美味いパン屋があるんだよ。気の良いおばちゃんがやってる店でな、良くおまけを付けてくれてた。噴水の近くには服屋が建ってる。店主がさ、俺の服装が田舎っぽいって馬鹿にするんだぜ? 地元じゃ絶賛されたんだけどなぁ。素材は良いんだからもっとセンスを磨け、高い給料貰ってんだからうちで買え。せいぜい良い人ができるよう見繕ってやるからって、余計な御世話だよ。広場の中に花を歩き売りしてる女の子がいてさ、近くで両親が店を構えてるんだけど『出張販売だー』ってバスケットにいっぱいの花を持って、どうですかー? って笑顔で勧めてくれる。みんなに可愛がられて、名物みたいになってた。たまたま警邏してた俺に、お兄ちゃん元気ないけどどうしたの? これあげるから元気出して! って花をくれた。仕事でミスして落ち込んでたんだけどさ、元気出た。その後、お礼代わりに花屋で買い物したら女の子が、まいどありー! だって、しっかりしてるよな。花を持って帰ったら帰ったで似合わないって隊で笑われたし」

 

 一つ一つ、噛みしめるように言う。打たれながら、防ぎながら、打ち返しながらも伝える。俺の拳がタツミの顔を叩く。タツミの蹴りが俺の脇腹を捉える。折れそうになる体を無理やり支え、タツミの足が離れる前に、掴んで地面に叩きつける。地面が放射線状に割れ、タツミの体が一瞬跳ねる。もう一度叩きつけようとするが、手に尾が絡みそこを軸にした蹴撃を頭に喰らう。ぐらり、と視界が揺れるが海で鍛えられた俺の体は、すぐさま正常な視界を取り戻す。嵐の時の船上に比べたらなんてことはない。尾を掴み引き寄せて腹部を殴りつけた。ミシミシという音が手から伝わるが、そのまま腕を振りぬいて吹き飛ばす。

 

「それが――」

 

「それをお前たちが燃やした(・・・・・・・・・・)」

 

 ググっと倒れた体を起こし、喋ろうとするタツミの言葉に被せるように言う。

 

「必要な事だったんだろうよ。帝国っていう巨大な相手に挑むために、確実な勝利と目的を達するためには。内と外から引き裂いて、戦力を分散させる。理に適ってる、現に今まさにこういう状況になってるんだから、よく準備して慎重に慎重を期して決行された作戦なんだろ。すげぇよ、軍人(俺たち)だって遊んでた訳じゃねえのに対応は後手に回った。その結果がコレだ(・・)。パン屋のおばちゃんは逃げ遅れて異民族の兵に刺し殺された。服屋の店主の店は市街地戦での砲弾が当たって壊れて燃えた。花売りの女の子の母親は、流れ弾に当たって死んだ。他にも町のみんなが沢山死んだよ。軍人(俺たち)が後手に回ったせいで、一番守らなきゃいけなかった人たちよりも、保身に走った金持ち連中の護衛が優先させられた。庶民の避難などより儂らを守れ! 幾らでも居るゴミより俺たちの命が重要だろう! だとよ。民の命を守りたかった、家族の命を救いたかった、友人の命を助けたかった。だけど、俺たちは軍人だった。規律を重んじ、自己を律し、己を鍛え、国の為に滅私奉公して、上司の命令は絶対だ。歯を食いしばって握りすぎた手から血を流して声が震えようとも、上からの命令に従うんだ。今の腐った軍にどれくらいそんな人たちがいるか分かんねぇけど。それでもそれが――――俺が教えてもらった軍人の姿だ」

 

 踏み抜くように地面を蹴り、タツミの前まで移動する。反応し殴りかかって来るが、俺はそのままの勢いで突っ込む。胸を打たれるが、代わりに頭突きをかます。今まで拳と足で戦ってきたから、タツミは対応が遅れ、防げず命中する。のけ反って無防備になった腹へ、下に叩きつけるように肘を入れる。ごほっ、と堪え切れずに洩れた声がタツミから聞こえる。ズダンと音を立てて跳ねるタツミ。そこから尾が伸びて俺の手に絡もうとする。過程は違うがさっきと似た光景。甘いぜ、タツミ。向かってくる尾をすり抜けるように避け、左の拳で腹を打つ。今度は跳ねる隙間もなく地面と俺の拳に挟まれる。威力を殺そうにも背にしてるのは大地だ、受け身を取るにしても限度があるし、力を逃がすのも難しい。確実に芯を捉えている感触がする。くの字に体が曲がり浮いてきた顔を全力で踏み潰す。尾が伸びようとする。もう一度。タツミの頭が少し地面に減り込む。苦しげな呻き声が聞こえる。もう一度。弱弱しく足を掴もうとしてくる。掴まれそうな足と逆の足の踵を鳩尾に落とす。欠けた顔の鎧の隙間から胃液らしき液体が飛び散る。それを目にしながら思い切り飛び上がり、最高点でグランシャリオの背部パーツからの噴射で加速し、タツミ目がけて蹴りを繰り出す。『グランフォール』と自分で呼んでいる技。ただの飛び蹴りとどう違うのかと聞かれ、しどろもどろになる俺を笑ったり、フォローしてくれたりしたみんなは、もうほとんど居なくなっちまった。

 

 爆発したように地面が抉れ、砂塵が舞う。地面に刺さった足を引き抜き、グルリと視線を巡らす。向けた視線の先に苦しそうに息を乱し、咳き込みながら腹を押さえるタツミの姿があった。グランフォールが当たる前に、鈍く動く体で思い切り地面を右手で殴りつけ、浮いた体の下で尾をバネみたいにして跳ねてかわしたみたいだ。本当に、猿みたいなやつだな。

 

「俺は帝具使いで将軍の直轄部隊だから、ある程度の自由があった。護衛よりも民の救助を優先できた。それでも、それでもな。ナイトレイド(お前たち)を見つけた……見つけちまった。最優先事項であるナイトレイドの対処は何に置いても優先しないといけない。全力でその場の敵を殲滅して、お前たちを、お前を追いかけた。母親が死んで、泣いてる女の子の革命軍は正義の味方じゃないの? なんでお母さんを守ってくれなかったの、なんでお家をこわすの? っていう言葉に返事をすることもなくな。笑っちまうよな、あんな小さな子でも正義の味方は軍じゃなくて、革命軍だって言うんだぜ。そんな頼りねぇ、軍人(俺たち)だってな。守らなきゃいけないモノ、守りたかったモノなんてそこら中にあったよ、あったんだよタツミ」

 

 一番守りたかった日常は、もうないけれど。取り戻すために戦おう。眼前の敵を滅し、帝国に攻めこむ賊徒を殲滅し、それから始めよう。死んでしまった人たちを供養して、家を作り直して、みんなで国を良くしていこう。時間がかかるだろうけど、それでも精一杯頑張ろう。約束を果たすためにも、勝つんだ。

 

「だからさ、意味がないことは分かってても、考えちまう。なんで、今日だったんだよ。明日じゃダメだったのか? 明後日じゃ、一週間後じゃ、一か月後、一年後はってさ。こんな苦しい事が、今日じゃなきゃいけなかったのかよって。まだまだ未熟なんだろうな、俺は。だから、こんな苦しい事はそろそろ終わらせよう。今日を終わらせて、明日を迎える為に。特殊警察イェーガーズが────帝国に仇なす凶賊を狩るぞ」




 ここまで読んで下さった方、ありがとうございます。前書きから飛んでここを最初に読まれる方にはここから原作との差異を書きます
 はい、まずインクルシオに尻尾なんかありません。グランシャリオの副武装なんて、原作では語られていないどころか、影も形もないです。ウェイブくんとタツミの口調がおかしいかもしれません。
この作品はアニメアカメが斬る! のボルスさんとチェルシーさんの最期を見て書こうと思いました! ……はい、ボルスさんもチェルシーさんも出てきませんね。ごめんなさい。私はクロメちゃんが好きです、ウェイブくんも好きです。中途半端ですが、取りあえずここまでです。
続きは書く……かもしれません。最後にもう一度、読んで下さった皆様、本当にありがとうございました!!

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