ずっと昔から温めていたFate/stay night基準の第六次聖杯戦争ものになります。
独自の設定やキャラ、ストーリーが多いので、苦手だな、という方以外は楽しんでいただければ幸いです。
プロローグ 舞台は幕を開ける
――月の銀光が辺りを照らす。
埃がその衝撃に従って重力を失い、粒子が光を吸って宙に舞い踊る。
ガラクタの中に広がる、人が二人か三人立っていられるような空間の中に、少年は座り込んでいた。
いや、どちらかと言えば青年に近いだろう。しかしそのがっしりとした体躯からは連想できないほど、呆然としている彼の表情は幼い。
――風が渦を巻く。
それが単純な自然現象ではなく、非自然的なモノ……〝魔術〟の働きによるものだと、彼は知っている。
だって今眼の前に、その非自然的な存在がいるのだから。
その女性は、鎧を身に纏っていた。
鎧と言うにはまるでドレスのような形状をしていたが、その装甲と内包している魔力から、舞踏のものではないと察せられた。
剣を薙ぎ、銀髪の髪は魔力の流れのせいで銀糸の一つ一つがうねり、彼女の美貌をより彩る。
「っ、ここに来て、
少し離れた男の怒声も、青年の耳には入らなかった。
眼の前に、絶対的な完全を見た時、人は何も出来なくなる。
ただその存在に圧倒され、言葉を失い、視線も呼吸も止まって、ただそれを甘受するモノになりきってしまう。
彼女は、それほどの〝完璧〟である。
青年には、それが分かってしまったのだ。
それはもう、明星を見て、方角が分かるように。
「……まったく、呼び出されるような願いなんてなかったんだけどね。ほら、私ってなんだって自分で叶えられちゃう自立した女だからさ。
でも、可哀想な男の子を放っておくほど、冷めてるつもりもないのよね」
外見の流麗さと反した、少しハスキーで、言葉遣いの荒い言葉をこぼしながら、女性は眼の前に立っている存在――つまり青年を見つめる。
「――ねぇ、貴方が私の相棒、マスターって事で、合ってる?」
――こうして、運命は目覚めた。
――極東に、【聖杯戦争】と呼ばれる儀式が、かつて存在した。
七人の魔術師が集い、それぞれが歴史に偉人と称された英霊……
万能の願望機【聖杯】を作り出すことこそが、この儀式の目的。俗にサーヴァントと呼ばれる英霊は、それぞれ
これをそれぞれ討ち果たし、残った一陣営のみ、聖杯を使用する権利を得る。
先程、蠱毒の概念といったが、ああ、少し訂正しよう。
蠱毒というより、それぞれを貶めながら行う生贄の儀式と言った方が、むしろ正しかったかもしれない。
――しかし、極東の冬木市にて行われた聖杯戦争は、十年前、五度目の挑戦の失敗により叶わなかった。
聖杯は結局生まれなかった。
……いや、冬木の聖杯戦争のみではない。どの平行世界、どの世界線を覗いたとしても、聖杯が真の完成を見た例は非常に少ない。
外典は潰え。
偽物は混沌と化し。
至上の命題はもはや聖杯戦争の様相を無視した。
なら、夢想の聖杯戦争は?
この闘争は、本物へと至れるだろうか?
本日はあと二話更新します