Fete/Breaking Down   作:鮭漉 鎌太郎

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改めて、ここで一つ宣伝をさせていただきます。
少し前から、BOOTHにて自分の通販ページを作成しました。
ページ名は『塵取書房』です。

また、そのページ内で現在、『Fete/Breaking Down』書籍版の第①巻を発売中です。
長年の友人であるwakkaron氏(https://www.pixiv.net/users/39852280)が絵を担当してくれました。
現在は電子版のみになっておりますが、今後の状況次第でちゃんとした書籍にしたいと思いますので、応援よろしくお願いします。

サイトはこちら↓

https://chiri-tori.booth.pm/





03 呪炎の兆と遁走 A

 

 

 

 

 

 ――加速する。

 

 

 

 自動する骸が群れ、闇を象るように蠢き、加速をするバイクを追走する。

 骸はサーヴァントと同じく魔力で構成されている。身体能力は常人を凌駕し、その速度は人の目で追いつけない程だ。

 

 それでも。

 その速度でもなお、セイバーと自分には追いつかない。

 

 振動と排気音が体を震わせる。

 その風圧と重圧は体を軋ませる。

 それが強ければ強いほど速度は上がる。

 

 追走する屍達を引き離しこそしないが、追いつかれる事もない。

 一進一退ではなく、一進と一進。

 どちらも一歩も引かず、前だけを進み続ける。

 

「――っ、左だ、セイバー!」

「あいよ!」

 

 豪風の中で何とか道を確認し、叫ぶ。

 その言葉に、セイバーの操縦する手が即座に反応した。

 後輪が滑るように流れ、そのまま車体は斜めに自分の示した進路に向ける。

 

「ぐっ」

 

 維持された速度の影響で、身体は外側に重圧をかける。

 吹き飛びそうになる身体を力づくで支え、身体を低くする。

 

「あとどれくらいで着きそう⁉」

 

 セイバーの大声が、風の中でも不思議とハッキリ聞こえる。

 

「っ、聖杯の知識で、ここら辺の地理くらい、貰ってないのか⁉」

「アハハ! いやぁ、多分貰ったと思うけど、好みじゃない所為か、すんなり出てこないのよねぇ!」

 

「なんでそんなに軽いんだ君は⁉」

「アハハ、やっと堅苦しさが抜けてきたね! 良いじゃない!」

 

 セイバーの言葉は、こちらの想定以上に明るい。

 ――これくらい、自分も危機に明るく立ち向かえれば良いのかもしれないが。

 

「さ、そろそろ目的地よ! 衝撃に備えて!」

「っ、おう――?」

 

 考え事を遮るようなセイバーの言葉に、反射で答えて――そこで疑問に思う。

 

 

 

 いや、衝撃ってなんだ?

 停車に衝撃なんてそれほどないだろう。

 

 

 

 脳内の言葉が終わらないうちに、言葉通りの衝撃が体を走る。

 

「げっ⁉」

 

 肺が握り潰されるような悲鳴を喉があげると同時に、奇妙な浮遊感が体を包んだ。

 ――不思議だ。

 視界が回転している。

 足元にある筈の地面が、前方遠く(﹅﹅﹅﹅)にある。

 

「……ああ、なるほど、」

 

 思わず呆けた声を上げる。

 

 

 

 自分が浮いているんだ(﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅)

 

 

 

「あらよっと、」

 

 不意に聞こえたセイバーの声と共に、身体の浮遊感は地面に引き寄せられる重力によって落下感を覚える。

 

 

 

 ――衝撃、

 

 

 

「――カハッ」

 

 身体がひしゃげる程とまでは言わないが、それでも再び感じた体重の影響で、腹から空気を根こそぎ奪い取られた。

 

「ふぅ……無事かしら、マスター」

「……ああ。急停車で吹き飛ばされた事以外は、な」

「ふふっ、珍しい皮肉が出てくるくらいだったら、まぁ大丈夫でしょ」

 

 明るい笑い声を尻目に、自分は周囲を見る。

 自分達が乗ってきたバイクの姿はどこにもなかった。

 焦げ付くゴムの匂いと、そのブレーキ痕、そして破壊されている川側の柵を見る限り、そのまま勢いを殺さずに川に落ちていったのだろう。

 

 車体はそもそも、走っている段階で無事ではなかったのだ。

 ご丁寧に駐車している時間もなければ義理もない以上、ある意味で合理的ともいえるだろう。

 自分達がダイナミックな下車をする事を考えれば、だが。

 

「けほっ……それでセイバー、いったいどういう考えがあってこの場所なんだ?」

 

 ゴムの臭気と衝撃で吐き出された呼吸の影響でひりつく喉を、何とか動かして話す。

 水音が聞こえる。

 敷地内も、近くを通っていく巨大な鉄橋にも、街と同じで人気はない。

 無機質な灯りに照らされているこの場所は、昼間であれば人が憩う場所なのだろうが、その印象もあってか夜の居間は一層暗く不気味に感じる。

 

 ――冬木大橋近くの、公園広場。

 災害時の氾濫防止に造られた、名も無き公園だ。

 セイバーが逃げている最中に提案した場所がここだった。

 

「ん~、勘、かなぁ」

「勘、か」

 

 呆気らかんとした言葉に、自分はすんなりと納得した。

 セイバーも、何か考えがあってそのように言っている事を、ここまでの流れで分かっているからだ。

 

「そ、勘。まぁ、こういう勘は外れた事ないんだけど。

 

 

 

 ――それよりも、警戒して。そろそろ今日の大一番よ」

 

 

 

 セイバーの言葉と共に、静まり返っていた空気が揺れる。

 神経を逆撫でするようにざわつき、視覚に入る前から気配を齎す。

 

「――逃げ足だけは一人前だな、女戦士」

 

 闇の中から声がする。

 自分が頂点である事を一切疑わない声色と、こちらを人間として見ていない目線。

 骸の群れは拝謁するように身を屈め、ただ王が往く道を整え、開く。

 

「草原で野兎を追いかけていた頃を思い出したわ。ちょこちょこと草原を駆けまわり、こちらの矢を掻い潜る。

 ――全く、不遜よな」

 

「なぁにが不遜よ。それはこっちの台詞だってのよ」

 

 剣を正眼に構え、彼女は敵を睨みつける。

 

「こんな風に乙女とその同行者を追い掛け回して、随分趣味の良い話しよね」

 

 

 

「――然り」

 

 

 

 セイバーの言葉にライダーは笑みを浮かべる。

 野獣のような――それこそ、餓えた草原の狼の様な笑みを。

 

「奪う者は、高貴な者はそれが許される。

 獲物を、弱者を狩り、追い立てる事を許されているのだ。むしろ、朕(ワシ)がそれを行わんとしてどうするというのだ」

 

 もし、本当にアイツが狼だったならば。

 牙を剥き、体勢を伏せ、口の端から涎を垂らす。

 ただただ目の前の獲物が、既に自分の物だと言わんばかりな表情。

 

 心の底からソレを感じている敵に……自分も心の底から、吐き気を催した。

 

「貴様は確かに、強いのだろう。ここまでの立ち居振る舞いは確かに、強者のソレだ。

 逃げ回ってばかりの割に、我が死兵を多く屠ったのだからな。

 

 

 

 だが、それは数十程度の話だ。

 どのような英雄豪傑でも数百、数千の兵士には敵わない」

 

 

 

 言葉と共に、ライダーの背後の骸が蠢く。

 群れていた骸の兵士は不自然にまとまり、膨れ、人間の構造を超えて集う。

 

 破城槌。

 

 当然自分は現物を見た事はない。しかしそれを見て唐突に、その言葉が浮かんだ。

 しかし想像しているモノよりも、遥かに巨大で悍ましく、異常な強さを醸していた。

 

 

 

「喰ろうてみよ――我が軍勢の一撃を」

 

 

 

 

 







読んでいただけて幸いです。
次回の更新は1/4㈰の17時頃を予定しています。
よろしくお願いいたします。




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