ようやっと始められました、第四章です。
第二巻の改稿作業も相まって、更新途切れ気味になるかもしれませんが、出来るだけ更新していきたいと思います。
よろしくお願いします。
では、本編をどうぞ!
プロローグ 狂気の胎動
……闇の中で、泡沫が静かに弾ける音がする。
そこには家具どころか灯りすらない。
建物の基礎がむき出しになっている状態は、人間を生かす最低限の住環境すら保っていない。
そのただ広いだけの空間の中に、一つの容器がある。
中に満たされているのは、見た目では成分も分からない液体だ。その容器の中で、少女が一人浮かんでいる。
銀髪の少女は無数の管に繋がれ、身動ぎ一つせずに揺蕩う。僅かに動く胸部が、彼女が生きているという事を証明する。
ただ、それだけだ。
生きているという事実だけが存在する。
彼女には、役割とそれに伴う生存しか、存在しないのだから。それ以外を削ぎ落した結果が、ただ水槽の中に浮かんでいるという現象だった。
――その少女を、見つめる影がった。
巨大。
上背は元より、その体に纏われた鎧がそう思わせるのだろう。
古代の城塞に手足があるような様相は、見る者全てに威圧感を与える。
これが動けるどころか、人間を凌駕する速度と威力を持って破壊をもたらすとは、所見ではだれも思わないだろう。
「――■■■」
巨人の声は、言葉にならない呻き声だった。
怒りなのか。
悲しみなのか。
苦悶の声なのか。
あるいはその全てを内包しているのか。
一度聞いただけでは理解出来ない複雑な唸り声は、伽藍の中に響く。
『――もう直ぐだね』
不意に声が聞こえる。
巨人の声ではない。
少女の口も動いていない。
ただ空間の中に、可愛らしさすら感じさせる少女の声が、ただただ部屋に木霊する。
『もう直ぐだよ、バーサーカー。
もう直ぐ貴方が活躍する場面だよ』
巨人は答えない。
ただその正体の分からない声に、身動ぎもせずに息をし続ける。
啓示を受ける信徒にも似た恭しいモノにも、ただ黙しているだけにも見えるその姿を誰も注視しない。
ここには彼と、容器に入った眠れる少女しかいないのだから。
『貴方に私は同情できない。
貴方を私は理解できない。
貴方を私は応援できない。
――でも見届けるよ。傍にいるよ。支えるよ』
その声を聴いた者が他にいるならば、きっと聖女と言い現わしたかもしれない。
……いいや、その言葉に混じった慈愛の度合いから、聖母と言ったかもしれない
その声が、天真爛漫な少女を思わせる若々しいそれだったとしても。
『――貴方は私の
それでも私だけは、貴方の味方でいてあげる』
「――■■■」
言葉はない。
ただその節が合っただけの唸り声が一つ、部屋の中に残る。
それが受容だったのか、それとも拒否だったのか。
分かるのは、狂える戦士ただ一人だった。
ありがとうございます。
次回の更新は、6/5㈰の17時頃行います。
よろしくお願いします。