アークナイツ サイドストーリー ~源野落陽~   作:丸・ぱそ男

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第十二話 もう少しのドルの為に

「黄金を探すのを手伝ってやるよ」

 

 そう嘯いたガンマンの宣言にリスカムは唖然としてしまった。

 リスカムだけではない。部屋にいる全員が驚きを隠せずにいて、エラフィアの女盗賊に至っては色違いの瞳を白黒させている。

 

「あの、それはどういう意味で──」

 

「それはそれは……とってもありがたいけれど、そちらからも同じ内容の取り引きを提示してくれた訳を聞いても?」

 

 我を取り戻したリスカムが信じられない思いで彼を問い質そうとするが、ナイジェラに遮られてしまう。そのループスの女リーダーにしてもガンマンの申し出に意外な喜びを滲ませながらも、真意を測りかねているようにも見えた。

 

「あんたら、何も当てずっぽうでここいらを掘り返してる訳でもないだろう?」

 

 窓の外を一瞥してからガンマンは言った。彼の問いに対してナイジェラは上品な微笑を浮かべるだけで答えない。

 ガンマンはその沈黙を肯定と捉えたようで細巻き葉巻を口から離し、プッと口内に混じった煙草葉を吹き出す。

 

「住民を攫ってまで探してるってことは、あんたたちが山ん中を掘り返すだけの確かな情報がある。だが目的のブツはまだ見つからない……焦れったくもなるな」

 

 彼は髭に覆われた口元に薄い笑みを浮かべて瞳を細めた。

 

「それに、あんたらの首には賞金がかかってるそうじゃないか」

 

 何を言い出したかと思えば、ガンマンはおもむろに右手をホルスターへと伸ばした。

 

「──っ!」

 

「てめぇ何を──!」

 

「まあ待って」

 

 その動作に反射的にエラフィアの女盗賊とウルサスの盗賊が身動ぎしたが、リーダーであるナイジェラが手で制す。

 警戒する彼らの様子を確認し、ガンマンは自身に攻撃の意図がないことを示すようにゆっくりとリボルバー拳銃を引き抜いた。

 

「俺としちゃあ、あんたたち()()()()()()()()()()()()()()()んだが……コイツに撃たれて『痛い』で済む連中を相手にするのは、ちと良い考えとは言えないな」

 

 敵対することも厭わない彼の発言で、室温が僅かに下がったようにリスカムは感じた。

 だというのにリボルバーを頭の横に掲げる当の本人といえば、今にも腰に下げた鉈の柄に手を掛けるウルサスの盗賊に視線を送りながら、おどけたように肩を竦めている。

 

「だったら、あんたたちに黄金を手に入れされて、とっととおさらばした方がお互いのためになるとは思わないか?」

 

 殺意のこもる視線を浴びながらガンマンはリボルバー拳銃をホルスターへ納め、改めてループスの女リーダーを見据えた。

 

「なるほどね……それはあなた個人の考えかしら? 見たところ、傭兵のお嬢さんたちは納得していないって顔をしているけれど」

 

 思案する素振りを見せ、ナイジェラはチラとリスカムの方へ視線を投げ掛けた。呆気に取られていたリスカムはその眼差しを無視しつつ、声を抑えてガンマンへ食って掛かった。

 

「彼らの仕事に協力するなんて……いきなり言い出したかと思えば何を考えてそんな──!」

 

「言い出すも何もない。犬の爺さんは生死を問わないって言ってたろう」

 

 しかし、サラリと返ってきた言葉に言葉を詰まらせてしまう。

 確かに彼を雇う際、ナイジェラ一味の処遇に関しては条件を設けなかった。

 だが、それが捕縛するでもなく、実力をもって排除するでもなく、盗賊たちがこの場所に居座る理由を潰し、自主的に立ち去らせようとする方法を用いるためとは流石にリスカムも想定していなかった。

 

「それにだ。誰も在処の知らない黄金をくれてやったところで痛む懐も無い」

 

「……確かにそうかもしれません。ですが」

 

 一理あるかもしれない。だが、彼の言うことはアーチーズタウンの人々への不義理に他ならないのではないか? とリスカムは納得が出来ないでいた。

 何より、現在進行系で彼らの受けている仕打ちに対する報いを盗賊団が受けずに済むことを、リスカムの正義感が見過ごすことは出来なかった。

 

「その方法では彼らの犯している罪を見逃すということになります。見過ごすことは出来ません」

 

「……保安官みたいなことを言うな」

 

「私は保安官ではありませんし、そもそも警察権を担っている訳でもない一介の傭兵です。ですが、私は私の良心に沿って今回の件を対処する覚悟です」

 

 少し呆れたように指摘する、自分よりも背の高い大の男であるガンマンを真っ直ぐに見上げながらリスカムはなおも食い下がる。

 

「ですから、あなたの提案には賛同出来かね──」

 

 

 

 突然。ムニッ、と。

 

 

 

「──まひゅ」

 

 頬肉が口の中に押し込まれた。

 一瞬思考が停止するリスカム。すると軽い調子で横から声が飛んできた。

 

「隊長さん。ちょっと落ち着いたらどう?」

 

「……今。真面目な話の途中なんだけど」

 

 水を差され、オマケに噛んでしまったせいで間の抜けた感じになってしまい、リスカムはなおもツンツンと頬をつついてくるフランカを思い切り睨み付けた。

 

「あら、顔が怖いわよ〜」

 

「こっちが真剣に考えてるっていうのに──っ」

 

「もうっ、リスカムったら」

 

 すっとぼけた笑顔を浮かべる相棒へ思わず食って掛かろうとしたリスカムだったが、何を思ったかフランカが肩に腕を回してきて抗議を封じられてしまった。

 

「落ち着いて。あたしたちが今、優先するべきことは何?」

 

「!」

 

 しかし、ガンマンと盗賊団に背を向け小声で語り掛けてきた彼女の真面目な面持ちにリスカムはハッとする。

 

「相手の誘いに乗った挙げ句、犯罪行為へ手を貸す形になるのは真面目で優等生なあなたは認められないでしょうけど──あたしだって本当はイヤよ? でも、こっちにとってもこれはチャンスになるわ。逆手に取るのよ」

 

 火照っていた頭が冷えてフランカの意図がスッと入ってくる。

 チラ、とリスカムは目線を背後へと向ける。ナイジェラはクスクスと口元を抑えて笑っており、女エラフィアとウルサスは訝しげな表情を浮かべている。

 ガンマンはというと、無表情で細巻き葉巻をふかしたままこちらを観察していた。

 

「彼、ここまで考えて提案したと思う?」

 

「どうかしら。ま、ここで乗っかっておくには越したことないわ」

 

「……彼の提案に乗った私たちも町の人たちに不義理を働くことになるけど」

 

「そうね。でも、人の命には変えられないでしょ?」

 

 「あとは上手く纏めてね、隊長さん?」とポンと背中を叩いて離れていく。

 フランカの言わんとすることを理解したリスカムは俯いて小さく息を吐く。そして顔を上げてガンマンへと向き直った。

 

「……すみません、少々取り乱しました」

 

「別は構わないが、お宝探しはしたくないんだろう?」

 

「いえ。私たちもあなたの、あなたたちの案に賛同します」

 

 不本意ではあるが、と顔をしかめることは忘れずに付け足す。

 特段大きな反応は見せなかった彼に対してナイジェラはあら、と意外そうな声を漏らしつつも歓迎するように両腕を広げた。

 

「ブラックスチールのようなお硬い企業にも柔軟な人はいるものね」

 

「……私の相棒が特殊なだけですよ」

 

「そうなの? まぁいいわ。それじゃあ交渉は成立したということで、信頼の証明の握手──」

 

 

 

「ただし()()()()()()()()()()()()()()()()()()となります」

 

 

 

 交渉を纏めようとしていたナイジェラの話を打ち払うように決然とリスカムは宣言した。

 

「住民の解放?」

 

 中途半端に差し出されたナイジェラの腕を無視し、彼女の微笑を見据えたままリスカムは先を続ける。

 

「私たちがあなたたちの黄金探しを手伝うんです。であればあなたたちが労働力として攫った人々は不要になります。彼らを解放し、帰路に着かせ安全が確認出来次第、我々もあなたたち一味の()()に取り掛かります」

 

「馬鹿言うんじゃない」

 

「ありえねぇ」

 

 女リーダーが口を開く前に女エラフィアとウルサスが直ぐ様異議を唱える。

 

「ボス、こいつら住民を家に帰らせた途端に俺たちを一網打尽にするつもりだぜ」

 

「マリオの言う通りだよ。大体町の男手を連れてきて見つけられてないっていうのに、たった三人だけになって見つけられるはずがない!」

 

 手下の反対意見に耳を傾ける内ジェハ。

 なおも口元の微笑は消えていないが、彼らを見やる黄金色の瞳には計算の色が浮かんでおり、損得を測っているように思えた。

 

「ん〜、でも結構厳しいんじゃない?」

 

 そんな取り込み中の盗賊たちへ調子良く割って入るフランカ。

 彼女の乱入に対し、エラフィアの女盗賊が色違いの眼差しで睨み付けた。

 

「何だと?」

 

「黄金を探し始めてからもう一ヶ月も経ってるんでしょ? それだけの時間住民たちを拘束して、働かせるのって相当な負担になってるんじゃないかしら?」

 

「それは……」

 

「人的にも、資金的にも、ね?」

 

 どうかしら? と片眉を吊り上げたフランカの指摘は図星だったらしい。

 エラフィアの女盗賊があからさまに口ごもっている。

 

(ナイスアシスト)

 

 自身も気にしていた疑問点を突いた相棒のファインプレーに胸中で喝采を上げ、リスカムは彼女の後を継いでもう一押しをする。

 

「この提案はそちらにとっても悪い話ではないと思いますが?」

 

「知ったような口を……」

 

 ウルサスの苦々しげな虚勢の後の、重苦しい沈黙の中暫し睨み合う。

 

「……アリサには表に感情が出ない方法を教えておくべきだったかしらね」

 

「リーダー……」

 

 肩を竦めたナイジェラが苦笑を投げ掛けると女エラフィアがばつが悪そうに顔を背ける。

 

「本気ですかい?」

 

「ええ……ヴイーヴルの傭兵さん、あなたの条件を飲んであげる」

 

「では──」

 

「あなたたちの要求通り住民たちは解放するわ。でもこっちからも条件を提示させてもらうわね」

 

 言葉を遮るように声を張ったナイジェラが、それまで浮かべていた微笑みを引っ込めた。

 

「条件は二つ。一つは隠された黄金を必ず見つけ出すこと、それまでは一味への攻撃を控えることへの保証」

 

 それからと、指を順番に立てながら要求を続ける。

 

「それと解放する住民に関して。何人かはここに残させてもらうわ」

 

「それだとこっちの要望に反してると思うんだけど?」

 

 それでは交渉の前提が崩れる。

 そう異議を唱えようとしたリスカムより先にフランカが声を上げたが、ナイジェラは驚いたように両手を広げた。

 

「あら、でもその隊長さんは()()()()()()()なんて言ってないわよ? それとも私の聞き間違いだったかしら」

 

「それって揚げ足取りじゃない……」

 

 意に介した様子のない彼女の態度にフランカも歯噛みした様子である。

 確かに住民全員の解放を前提として話していたが、明言しなかった自分に非があると自分の失態に恥じながらリスカムは相棒を見やった。

 こっちの意図を察してフランカもそれ以上の追求は控えたが、あからさまに眉毛を寄せている。

 

「私たちにはね、あなたたちを抑止するための枷が必要なのよ」

 

「……分かりました。ですが、ここに残る住民の人数、彼らの処遇については人道に則った対応することを前提とするのなら、その条件で同意しましょう」

 

「聞き分けの良い人は好きだわ。あ、あともう一ついいかしら」

 

「なんですか」

 

 思い出したように再び条件を付け足そうとする女ループスへ流石のリスカムも苛立ちが募り始める。

 つい声を硬くして返してしまうが、意にも介していない様子である。

 

「黄金を見つけるっていう約束が口約束にならないよう、担保をいただける?」

 

「担保?」

 

「ええ」

 

 担保だと? リスカムは思わず眉を潜める。

 

「これに関しては、あなたたちの誠意を見せて貰うためのものよ。こっちが担保を受け取っていればあなたたちも真面目に黄金を探すでしょうし」

 

 「なんでも良いわ」と軽い調子で付け加える。

 しかしリスカムはムムと唸ってしまう。担保になるような価値のあるものなど持ち合わせているはずもない。

 担保ときたか、とついフランカを振り返るが彼女も思案した様子で頬を掻いている。

 

(こっちの装備は渡したくはないけど……)

 

 この場で担保となるものを残していかねば交渉も破綻しかねない。だが、ここで命を預けている愛銃を渡せば相手の言う『誠意』にも応えたことになるだろう。

 苦渋しながらもリスカムはホルスターに収まる愛銃へ手を伸ばし──

 

 

 

()()()でどうだ」

 

 

 

 ピィン、とガンマンの声と共にリスカムの頭の横を煌めく何かが放物線を描いて飛んでいった。

 ナイジェラの目掛けて飛んできた()()を彼女は両手でキャッチし、目を見張った。

 

「これは──」

 

 掌に収まった()()──自分の瞳の色と同じ煌めく円盤状の物体をマジマジと凝視するループスの女リーダーへ、ガンマンは言い放った。

 

「ソイツ一枚で額面二十ドル、それを十枚だ。これならあんたも、あんたの手下も納得するんじゃないか?」

 

 驚いたのは彼女だけではない。リスカムもナイジェラの手に収まった黄金色の輝き……金貨を信じられない思いで見つめてしまう。

 自分だけでなく、フランカも目を白黒させており、女エラフィアとウルサスの二人も自分たちが欲している黄金が突然目の前に現れたことに理解が追い付かないようで固まってしまっていた。

 

「……一ついいかしら」

 

「不服か?」

 

「まさか……何故金貨(これ)を私たちに? 傭兵さんに手を貸す理由は何? 私たちの提案に乗る理由は?」

 

 まさしくリスカムも感じていた疑問をナイジェラが呈した。

 

「なぁに。簡単なことさ」

 

 その質問が投げ掛けられることが分かっていたようにガンマンは細巻き葉巻を摘むと、プッと煙草葉を吹き出す。

 

「金の重みは同じ重さの契約書よりも価値がある。それに」

 

 口元に笑みを湛えて彼は嘯いた。

 

 

 

 

 

「黄金を探す手間分の()()()()()()()()()()()()()()()。それくらいは必要経費だよ」

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

「これも全部計算通りか?」

 

 窓の外。BSWとガンマンの跨る駄獣を先頭とする車列が敷地外へ向かって行くのを窓辺で窺いながら、アリサは背後のナイジェラへと問い掛けた。

 

「そうね。全部ではないけれどそれなりにはね」

 

 弾んだ調子の返事に混じって聞こえる金属同士の擦れ合う軽い音にため息を吐き、アリサは彼女へ向き直る。

 

「金貨を受け取るところまでがそれなり?」

 

 机の上には幾つかの積まれた金貨──あの素性の知れないガンマンが担保として寄越してきたものだ──の内の一枚を手に取り眺めるナイジェラの姿は、随分と機嫌が良さそうだった。

 

「正直に言えば、金貨については想定外ね。でもこういう想定外なら大歓迎」

 

 「私のアーツも万能じゃないから」と言ってナイジェラは金貨の一枚を投げてきた。

 アリサは放られた金貨を反射的に掴み取り、改めて観察する。

 金貨の表面には女性の横顔が、反対側には羽を広げた羽獣が刻印されている。

 刻印のデザイン自体は特段気にはならなかったアリサだが、『UNITED STATES OF AMERICA』と羽獣を囲むように刻まれたという文字列が目を引いた。

 

「……()()()()()()()なんて聞いたこともないな」

 

「でも質感は本物。その大きさの金貨に対しての重みからして相当の金が含まれてるわね。額面は二十ドルって話だけれど、実際はそれ以上の価値があるわよ」

 

 贋金なんじゃないかという疑念を感じ取ったのか、ナイジェラが苦笑しながら払拭するように言った。

 アリサは彼女へ金貨を弾き返し、何時ぞやの疑問を再び繰り返した。

 

「……姉さん。今までカタギには手を出してこなかったのに、どうして」

 

 今は部屋には自分とナイジェラしかいないので、アリサは二人のときだけの呼び方で彼女を呼ぶ。

 

「どうして住民を攫ったのかですって?」

 

「そりゃあ多少脅すことはあったけど、誘拐なんてしてこなかっただろ。それも黄金を掘らせるために強制労働をさせるなんて」

 

 所詮、自分たちは真っ当に生きることを諦めた無法者。

 悪事に手を染めてはいるがそれでも一般人を巻き込むような真似は避けてきた。なのに、どうしてこんな真似をというのがアリサの率直な意見だった。

 ……正直に言えば、ブラックスチールの傭兵が住民の解放を訴えた時にホッとした自分がいない訳でもなかった。

 

「何を言ってるのアリサ」

 

 ナイジェラが驚いたように振り向いて立ち上がった。

 

「私たちの夢のためじゃない」

 

「姉さん……」

 

「ここでの仕事を終えれば、大金が手に入る、文字通りのね。手に入れ次第ボリバルのドッソレスへ向かう計画でしょう? そうすればクルビアの荒野からもおさらば。無法者でいる必要も無くなるし、何不自由なく暮らせるのよ」

 

「姉さん……」

 

「あなたが民間人を巻き込むことに抵抗があるのは分かってるわ。でも、ここが踏ん張れば後の人生ドッソレスのテキーラと葉巻(シガー)を嫌という程堪能出来る生活が待ってるのよ」

 

 それに、と彼女は両肩に手を置いて諭すように話を続けた。

 

「ドッソレスで暮らすのはあなたの夢でもあるでしょう? その夢が今眼の前まで来てる。ここで逃すことはあり得ないわ」

 

「…………」

 

 ドッソレス。内戦で血濡れたボリバルの大地で唯一享楽を矜持するリゾート都市。

 見たことのない空想の中の移動都市を脳裏に浮かべ、頷くナイジェラから目を離し、アリサは窓の外を見やる。

 見れば丁度、車列の最後尾が金鉱の敷地から出ていくところだった。

 

「……ドッソレスでのバラ色人生がおじゃんにならないよう、奴らが変な動きをしないか他の連中も使って見張らせておくよ」

 

「流石。本当に頼もしいわね」

 

「話した感じからしてブラックスチールの傭兵の方は約束を守るだろうけど、あの得体の知れないガンマンがネックだな……」

 

 ブラックスチールの傭兵は優秀だと聞いているが、その分規律は厳しいとアリサは耳したことがある。なら、そこまで警戒する必要はないだろう。

 問題はあの素性も分からないガンマンの方だ。マリオたちが手を出す間もなく狙い撃つ早撃ちだそうだから、事を構えることになれば自ずと自分が対峙することになるだろう。

 それに──黄金を見つけたら分け前をもらうだと? なんてふざけた奴だろうか。

 

「寝首を掻いてくるかもしれないから、あいつは俺の方で目を付けておくよ」

 

「万が一そうなったとしてもあなたがいるわ」

 

 横を見ると、ナイジェラが隣に佇みこちらを見つめていた。

 

「その時は()()()()()()()()に頼むわよ?」

 

 信頼のこもった黄金色の眼差しに見つめられ、アリサは目を逸らす。

 一度鉱石病に侵された右目に手を翳し、降ろしたその手を幾度か開閉を繰り返す。

 

「……そういう状況が起こらないよう、あいつらのお人好しさと誠実さが嘘っぱちでないことを祈っとくよ」

 

 そしてアリサは視線を落としたまま小さく呟いた。

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