ようこそ騎士王がいる教室へ   作:笹杭L

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なんだかんだで連続投稿。

評価ありがとうございます〜。


第11話 須藤の審議

 

「では、これより審議を始める……橘」

 

 最高判決者。

 生徒会長・堀北学の言葉で幕を開けた暴行事件の審議。

 

「はい。司会進行を務めます生徒会書記の橘です」

 

 司会進行

 生徒会書記・橘茜による進行で動き始める。

 

「6月28日に発生した暴力事件。Dクラスの須藤健がBクラスの柴田颯に対して暴行を加えた一連の事件について、本来であれば須藤健に掛けられた嫌疑を話し合う予定でしたが──」

 

 コの字型で配置された机。

 向かう合うように座るのは、暴行事件の発端となったBとDの生徒たち。

 

 上座には生徒会が佇んでおり、会長のみ座っている。

 

 書記・アルトリア・ペンドラゴン。

 庶務・一之瀬帆波。

 

 私たち二人は、生徒会長の後ろに控えて、彼らを補佐しつつ推移を見守ることになりました。

 

 机の向こうには二つのクラスに所属する生徒、そして担任が座っています。

 

 Bクラス

 

 柴田颯

 本事件の被害者。

 イケメンと言われていた端正な顔には、ガーゼを付けており、非常に痛々しい印象を与えます。

 

 神崎隆二

 須藤の暴行に憤り、訴えを起こした原告。

 帆波が言うには頼りになる参謀で、帆波不在時のクラスのまとめ役を務めているのだとか。

 

 浜口哲也

 事件発生時に柴田と共に行動していた目撃者。

 中性的な顔立ちをしていて、男性らしさを感じません。

 

 

 以上の三名に加えて、担任の星之宮知恵。

 酒癖は悪い。

 

 

 Dクラス

 

 須藤健

 事件を起こした容疑者。

 自らの過ちを理解しているのか、以前見た横柄な態度は鳴りを潜めています。

 

 堀北鈴音

 会長の妹にして、本事件の弁護人。

 先の件から成長でもされたのでしょうか。しっかりと前を見据えています。

 

 綾小路清隆

 容疑者の友人。

 これと言った特徴は無いです。強いて言うなら、()()()()()()()()()()()()()()でしょうか。

 

 最後に担任である茶柱佐枝。

 中間テストの件から非常に愉快な人であると予想。

 

 以上のメンバーで行われる、須藤の暴力が本当であったか否かを定める審議…………。

 

 の、はずであった。

 

「審議までに設けた1週間で、須藤健が自らの容疑を認めました。よって、今回はどのような罰を与えるかについて話し合ってもらいます」

 

 

 そう。なんとDクラスは暴力事件について自らの罪を認めたのです。

 

 内々で既にBDの間で謝罪は済ませており今回の審議もほどんと形だけらしい。

 普通に考えれば、殴ってその場で謝罪からの和解ルートなのだが、須藤が逃げだした事が発端の審議であることを加味すれば、致し方ないだろう。

 

 須藤が柴田に謝罪したことで、一之瀬は訴えの取り下げを提案したが、けじめはつけるべきだとして神崎は訴えの内容のみを変更したようです。

 

「改めて、認識のすり合わせも兼ねて今回の経緯を説明します。当日の夕方、須藤君はストレスの発散として学校設備に対し、損壊させかねない程攻撃していた。動機は中間テストの不振や他クラス他学年からの煽りで精神が乱れていたから。間違いないですね?」

 

「っ…………はい。間違いね──ないです」

 

 須藤は苦虫を潰したかのような顔で頷いた。

 

 あっ、煽りを入れたのはCクラスも関与してますね。中間テスト以降、赤点の彼が生き残った理由を把握するために、龍園くんは煽れそうなら煽って情報抜いてこいと命令がありましたので。

 まさか、このような事態になるとは。

 

「結構。次にそんな状態の須藤君を心配して駆け寄ってきた柴田君に対して、掛けられた声が今までの煽りと同じような皮肉に聞こえてしまい、咄嗟に手が出てしまった。我に返るもどうすればいいか分からず、その場を逃走」

 

 精神的にも辛いですよね。必死になって頑張った中間テストの勉強が無駄になり、赤点退学という恐怖から一転救われるも、他者からの必要以上の煽りで精神錯乱、そこに善意の人を殴ってしまう。

 

 いやー、大変だ。(棒)

 

「訴えは起こりましたが、両者の間では既に謝罪は済んでいます。改めて、この場では須藤君から柴田君への償いの裁量を決めていただくことになります。柴田君たちBクラスから提案はありますか?」

 

 橘先輩がBクラスへと視線を向けながらそう言うと、柴田くんは顔を神崎くんへと向け、神崎くんはそれに対して頷いている。恐らく、彼らの中で既に回答は用意してきているのだろう。

 

「はい。私たちBクラスは須藤君に対して、部活動の練習時間を減らすことを求めます」

 

「なっ!? それ「須藤くん、落ち着きなさい」っ……」

 

 柴田くんから告げられた罰の内容。

 一見すれば、非常に優しい提案だ。

 

 しかし、須藤に関しては異なるのでしょう。つい言葉を荒げそうになったところを堀北さんに窘められています。

 

 ふむ。見事に調教されていますね。

 

「償いである以上、須藤君にとって一番辛いことは何か考えました。須藤君のバスケに対する想いは本物です。実力もいずれプロの世界に行けるほどです。そんな彼にとっての大事な時間を減らす。これが須藤君に対する罰になると判断しました」

 

「分かりました。それではDクラス。何か意見はございますか?」

 

 Bクラスから提示された罰に対して橘先輩は問題なしと受け入れ、Dクラスに対して意見は無いか確認した。

 これに答えたのは当事者の須藤ではなく、控えていた堀北さんであった。

 

「温情あるご対応をして戴きありがとうございます。私達としても問題ありません。しかし一点、期限について詳細を教えて貰えればと」

 

 一も二もなく了承しますか。もう少し粘るのかと思いましたが意外と従順ですね。

 

「提示条件の受理を確認しました。では暴力事件を引き起こした須藤君への罰として、部活動の練習時間の減免という内容になります。何か追記事項や変更はありませんか?」

 

 否定されることなく受け入れられた罰の提示。

 橘先輩による、質問に対して手を挙げる人物がいた。

 

「少しいいですか」

 

「はい。神崎君。発言を許可します」

 

「ありがとうございます。減らされた時間を用いて、須藤へ課外授業をお願いしたい」

 

 手を挙げたのは、柴田君と同じBクラス。

 内容は減らされた時間の活用法。

 

「課外授業、ですか?」

 

「はい。今回発生した事件の一端として、彼の挑発等に対しての心理的自制心の低さがありました。これらの煽りや挑発は、プロの世界では珍しくありません。彼の将来の為にも、検討していただければ」

 

 なるほど、妥当ですね。

 確かにまた同じようなことが繰り返されたら、Bクラスとしても不満でしょう。だから、学ばせるんですね。

 

「そうですね。会長、いかがなさいますか?」

 

「……アルトリア。お前の意見を聞かせろ」

 

 おっと! 会長は橘先輩からのパスを受け取ることは無く、後ろに控えていた私へと流してきました。

 

「私ですか?」

 

「ああ、お前は既に、プロの世界を経験している。答えられるだろう?」

 

 まぁ、別に隠していることではないですし、メディアにも載っていますから、知られていますよね。

 

「確かに総合格闘技を含め、幾つかのタイトルで王者として君臨させてもらっていますが、この容姿ですからね。一般人や対戦相手すら侮る人は多いです。外的ストレスも計り知れない。これに耐えようと思うなら圧倒的強者として立つか、精神面での成長が必要かと」

 

 私の発言にギョッとした顔を出す人がちらほらいますね。既に私の経歴は知られていると思ったのですが、まだまだ有名人には程遠いのでしょうか。

 

 というか帆波、貴女には私が色々と教えたでしょう。

 何驚いているんですか。

 

「そうか、ならば精神面での成長を施すとしよう」

 

「承知しました。では、神崎君の追加提案を受理します。他に意見等がない場合は、期限の確認に移りますがよろしいですか?」

 

 橘先輩の問いに対しての返答はなく、皆が受け入れているのが分かりますね。

 

「無いようですね。それでは期限の確認に移行します。Bクラスから希望はございますか?」

 

「いえ、ありません」

 

「…………Dクラスからは?」

 

「法外でない限り従います」

 

 B、D共に指定は無い。

 この場合は過去の事例を用いた判断が生徒会より提示され、改めて両者からの意見を聞くことになる。

 

「分かりました。では過去に起こった暴力事件の判例より、基準を設けます」

 

 橘先輩はそう言ってぺらぺらと幾つか紙をめくり、望む資料を把握していく。

 

「これですね、5年前に起こった暴力事件。被告側はサッカー部のエースを担っていた生徒で、負わせた怪我の内容も似通っています。この事件で決定された罰則は、数週間の自宅謹慎と1ヶ月に及ぶ部活動の禁止です」

 

 資料の内容がスラスラと読み上げられていく。

 確かに似通ってはいますが、罰則事項については少々違いがありますね。

 

「此度の事件に合わせますと半年間の部活動時間の減免、それと該当時間を用いて学校側から感情面での外的刺激に対する指導の実施が妥当でしょう。何もなければ今提示した罰則となりますが、意見はありますか?」

 

「その内容でお願いします」

 

「私達も問題ありません」

 

 両方から否定の声は挙がらず。

 

「分かりました、それでは改めて確認します」

 

 

 審議内容──対象者が受ける罰則。

 

  対象者──須藤健。

 

 決定事項──部活動練習時間の減免。

    └──感情制御の課外授業。

 

   期間──半年。

 

 

「以上で記録させていただきます。須藤君には、自らが犯した罪を反省し、粛々と罰を受け入れるように」

 

 

 

 特に波風の立たない、イレギュラーな審議は終わりを告げました。

 

 

 

 いや、ホントに何だったんですか!?*1

 

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 Side 綾小路

 

 

「よく我慢したわね、須藤くん」

 

 審議が終わり、生徒会室から退出したオレたち。

 堀北は審議中に須藤が大声を出しそうになった一回を除いて、我慢を貫いた須藤を褒めた。

 

「いや、今回は俺が普通に悪かった。部活削られんのも勉強が増えんのもイヤだが、受け入れねぇと」

 

「そうね。してしまった事は決して赦されないわ。でも、反省することも次に活かすことも出来る。まぁ、貴方次第ではあるけど」

 

 茶柱先生はもう居ない。オレたちと一緒に退出してすぐに何処かへと行った。Bクラスは、改めて謝罪した須藤に罪を償うようにと諫言を預けた。

 

「ていうか、オレ何も言ってないな」

 

「当たり前よ。枠が余っていたから呼んだだけで、何かしてもらうつもりは毛頭なかったわ」

 

「ははっ! 綾小路がいたおかげで俺は嬉しかったぜ!」

 

 そう言ってもらえると素直に、コッチも嬉しくなる。

 

「…………はぁ、今回はBクラスが優しい人たちだったからスムーズに進んだわ。次は、そう上手くは行かないでしょうね」

 

「Cクラスか……って、そう言えば金髪ブロンドの奴。図書室の時からヤベェ感覚はあったけどよぉ」

 

 金髪ブロンド……アルトリア・ペンドラゴンのことか。

 

「そうね。私も以前調べて愕然としたわ。あの若さで世界を獲ってるなんて、兄さんが生徒会に所属させるのも納得よ」

 

 堀北も腕を組み、唸るように須藤の発言に追随した。

 確かに、字面だけ見ても凄まじいものだ。

 

「兄さんから頼られるなんて…………羨ましい」

 

 堀北は小さな、それこそ隣にいる須藤にすら聞かれないであろう小さな声でボソリと呟いた。

 ブラコン拗らせてるな。

 

「取り敢えずはCクラスよ。櫛田さんから聞けた情報だとアルトリアさんがリーダー格としてクラスを率いているらしいわ」

 

 アルトリア・ペンドラゴン。

 彼女が法廷で原告側に立つだけで、こちらは不利だ。

 

 今の審議で分かったと思うが既に生徒会の一員として動き、生徒会長から答えを託されるほど信頼を得ている。

 生徒会も人間だ。どうしたって印象というものはある。

 

 日頃からロクな噂を持たない山内のDクラスと、被害者が女性でアルトリアもいるCクラスとなれば完敗は必定。

 

「彼女が審議に原告として参加するか否か。それだけでもだいぶ変わるわ」

 

 しかし堀北の考えはオレとは少し異なるようだ。

 

「さっきの審議で一之瀬さんは生徒会として参加していて、Bクラスとして参加していなかった。アルトリアさんと違って意見を求められてもいない。生徒会所属だからこそ、中立の立場として見なくてはいけないのかしら? もしそうだとしたら、アルトリアさんもCクラスとして参加できないかもしれない」

 

 確かに、その可能性は考えられる。

 

「彼女相手だったら難しかったかも知れないけど、それ以外が相手なら問題ないわ。誰が来ようと私が説き伏せてみせる」

 

 軽くながらも、腕を上へと伸ばす。

 普段の堀北からは考えられないようなポーズだ。

 

「必ず──クラスポイントだけは守るわ」

 

 

 

 そもそも、何故今回の審議で堀北が選ばれたのか。

 それは非常に弁が立つからだ。

 

 彼女の豊潤な知識から繰り出される毒舌具合はDクラスでは周知の事実だ。溢れる知識と話術を今回の二つの審議では期待されている。

 堀北自身もAクラスにあがるのにクラスポイントを下げるわけにはいかない為、張り切っている。

 

 

 須藤の暴力事件も、山内のわいせつ未遂もDクラスは非常に劣勢に立たされている。

 それこそ9割は負けのようなものだ。

 

 だが負けは負けでも、負け方は選べる。

 なるべくクラスへ被害が出ないような負け方を選ぶ。

 

 それが事件が発覚した後にDクラスが放課後で話し合って決めたことだった。

 

 Bクラスとの一件も先んじて相手方と接触し、ある程度内容を擦り合わせることが出来た為、クラスポイントなど全体に影響が出るような罰則を免れることが出来た。

 

 最初はCクラスにも接触しようとしたが、相手が完全に徹底抗戦の構えを取っていた為に不用意に近づくことができなかったのだ。

 だから、次の真偽はかなり荒れるとだろう。

 

 

 話を戻そう。

 

 夜の一件や図書室の出来事で堀北はアルトリアを苦手としている。人間的に嫌っているのではなく、嫉妬や憧憬といった様々な感情が入り混じった視線を向けており、複雑な想いを持っていることが伺える。

 

 そんな堀北がアルトリアと真っ向から話し合えば、砕け散るというもの。そう言った面からも彼女が審議に参加しない方が有利に進められる。

 

 

 しかし、堀北。

 

 

 必ずしもリーダーがアルトリアだけだとは限らないぞ。

 

 

◇ ◇

 

 

「何とか無事に終わりましたね。会長」

 

 BDの審議が無事に終了し各クラスが退出した後、生徒会室には会長と橘先輩、それと帆波と私が残りました。

 

「ああ、実に簡単な審議だ。俺が出るまでもなかったな」

 

「審議というよりは罰則の内容決めでしたからね。一応、生徒会は推移を見守るために調停役となりましたが、両者の間で済ませても何も問題ない案件です」

 

 まぁ、会長はバレないようには努めていましたが、堀北(妹)さんへバリバリに意識していましたからね。

 

 例え、これより簡単な審議だったとしても妹さんが参加するなら、会長も見守りに来たのでは?

 

「でも無事に終わって良かったと思います」

 

「ええ、揉めたり長引いたりすれば、こちらの負担を大きくなったでしょうし」

 

 時間にして20分も使っていないと思います。

 橘先輩と違って私は基本的に立つだけ、一度会長に質問された程度でしたが、この疲労感です。

 

 明日行われるであろう山内の審議は、未だ本人が認めていないこともあり、大変になるでしょうね。

 

「明日もアルトリアさんと一之瀬さんは審議に参加するんですよね?」

 

「はい。南雲先輩と桐山先輩が主体で私達は補佐ですが」

 

 明日は私のクラスであるCが参加します。

 会長のように質問されても、中立の立場がある以上今回のようには発言できません。

 代わりに帆波に質問が飛ぶのでしょうか?

 

「間違いなく、今日よりは難しいモノになるだろう。最悪の場合、再審すらあり得る。可能性だけは考えておけ」

 

「承知しました」

 

「はいっ!」

 

 会長の忠告は素直に聞いておきます。

 

 それにしても再審ですか。

 被告側が審議の決定を納得出来ずに、翌日以降に引き延ばす行為。

 

 山内が黒と噂されている中で、そんなことすればDクラスは他学年や他クラスの生徒から非難轟々になりそうですよね。

 

 さてどういった結果になるのでしょうか。

 

「では今日は解散するとしよう。明日の備えて休め」

 

 その号令で私たちの一回目の審議が幕を閉じました。

 

 

*1
作者が須藤の制御を誤ったせいです。ゴメンナサイ





堀北(兄)
作者の文章力が無いせいで、特にこれといった描写はしていないけど、アルトリアの影響で若干マイルドになった人。
綾小路の存在は把握しているが、原作よりかは知らない。

堀北(妹)
そんな兄の変化を最も喰らった人。
原作より成長が早い。

須藤
そんな堀北が傍にいたせいで、上方修正された人。
赤点から助かったのが、堀北と綾小路のおかげだと知っている為、彼らに対しては忠犬並みに従う。


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