数珠丸提督、神戸鎮守府に着任す   作:神谷京介

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プロローグ1 「刀剣男子」vs「深海棲艦」

私の名前は「三日月宗近」。「刀剣男子」と呼ばれている者たちの一人である。

 

「刀剣男子」とは、人の世を乱す様々な怪異を打ち払うために、古くから伝えられている刀剣などの武器から生まれてきた、一種の付喪神のようなものだ。

その中でも「天下五剣」と呼ばれる太刀の一振り、「三日月宗近」から生まれた存在、それが私である。

 

我々のような存在がなぜ生まれたのか、それは誰もわからない。

ただ、人の世を乱す怪異を倒すために生まれてきた存在であることは、皆が承知している。

 

 

現在、我々が戦わねばならない怪異は、全部で三種類存在している。

 

一つ目は「歴史修正主義者」と呼ばれる者たちだ。

彼らは遥か未来から「時間遡行軍」を率いて歴史に介入し、改変しようと目論む集団で、本来我々が最優先で立ち向かうべき相手である。

 

二つ目は「検非違使」と呼ばれる者たちだ。

特に人の世を乱すわけではなく、「歴史修正主義者」を駆逐する存在だが、我々にも牙をむいてくるので、出会えば排除しなければいけない者たちである。

 

そして三つ目、今我々が最も頭を痛めている敵が「深海凄艦」と呼ばれる者たちである。

 

「深海凄艦」は、昭和初期に全世界を巻き込んだ戦争、「第二次世界大戦」で沈められた船の亡霊だといわれているが、詳しいことは分かっていない。

遥か海の彼方から突然来襲し、砲撃や艦載機による空襲で、人類に無差別攻撃を仕掛けてくる厄介な存在である。

ボスクラスの存在が全て女性の形態をとっているため、微妙に戦いにくい相手でもある。

 

「深海凄艦」自体はだいぶ前から確認されていたが、つい最近までは我々が戦うべき相手では無かった。

「深海凄艦」の相手ができる存在が他にいたからである。

 

その存在は、「艦娘」と呼ばれた少女たちであった。

 

彼女たちもまた、我々と同様、謎の存在である。

恐らく我々と同様、付喪神に似た存在だと思われる。

 

我々が刀剣に宿る付喪神であるのに対して、彼女たちは「第二次世界大戦」で活躍した軍艦から生まれたものだと言われている。

彼女たちは「深海凄艦」と同じく海上を移動できる能力を持ち、大砲などで遠距離攻撃が可能であるため、「深海凄艦」の相手にはうってつけの存在であった。

 

その勢いは素晴らしく、一時期は「艦娘」の方がやや優利に戦いを進めていたといわれていた。

 

しかし、ある時期を境に急に勢いがなくなってしまったのである。

新たな「艦娘」が急に出現しなくなり、次々と増殖する「深海凄艦」の勢いに対処できなくなったとのことだった。

 

我々もうわさを聞き、支援をしたかったのだが、彼女たちの主戦場は遥か海の彼方であり、どうすることもできなかった。

 

結局、我々の与り知らぬ遥か海の彼方、「レイテ」と呼ばれる海域で、大半の「艦娘」が轟沈し、壊滅したとのこと。

 

生き残った「艦娘」たちは、「横須賀鎮守府」や「呉鎮守府」、「佐世保鎮守府」などの拠点にたてこもり、敵の攻撃に必死に耐えている状況である。

 

こうした経緯で我々にお鉢が回ってきたのである。

 

関東にいた我々が急遽集められた時には、既に「大本営」と呼ばれている拠点が「深海凄艦」の総攻撃によって瓦礫と化してしまい、人類にとどめを刺すべく、「深海凄艦」が日本に上陸してくる直前であった。

 

あの時のことは、今でも鮮明に覚えている。

 

海から這い上がってくる異形の軍団。

 

我々は「深海凄艦」の砲撃から身を守るため、物陰に隠れて接近し、至近から急襲する作戦をとった。

 

幸い、敵は我々のような存在を想定してはいなかったようで、敵の索敵にとらわれることなく問題なく接近することができ、至近から不意を突くことができた。

 

戦いは意外にあっけないものだった。

「深海凄艦」は砲撃や雷撃、艦載機による攻撃など、海上での遠距離戦に特化しており、陸上での接近戦に特化した我々に対処することができなかったのである。

こうして、「深海凄艦」の上陸部隊は思いのほか簡単に殲滅することができたのだった。

 

こうして日本の破滅は一応回避することができたのだが、我々が「深海凄艦」に勝利したのは、その時だけだった。

 

あれ以降、「深海凄艦」は地上に上がってこなくなった。

遥か彼方の海上から砲撃や艦載機で攻撃するだけになったのだ。

 

これには我々も頭を抱えた。

我々「刀剣男子」は、基本的に刀や槍などの近距離用の武器しかなく、海の上を移動するスキルも遠距離戦に対応できるような武装も持っていない。

遥か彼方の海上から飛び道具で攻撃されると、なすすべが無いのだ。

海岸近くに行ってもただの的にしかならないため、結果、海岸線周辺は、我々も深海棲艦も近づかない緩衝地帯となった。

 

結局、我々が「深海凄艦」上陸の抑止力となることで、人類への致命的な打撃は阻止できているものの、

「深海凄艦」に海上を閉鎖された状態で他国との交易ができなくなったため、我が国はゆっくりと破滅に向かっているのが現状である。

 

「歴史修正主義者」や「検非違使」との戦いも続いているため、まことに厳しい状況と言わざるを得ない。

 

 

 

そういえば、我々の仲間の一人で天下五剣の一振り、「数珠丸恒次」が関西に派遣されたおり、「テイトク」という役職に就任し、「深海凄艦」に対応することになったという噂を聞いたことがある。

 

願わくば、現状の閉塞感に風穴を開けてくれるとよいのだが・・・。

 

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