数珠丸提督、神戸鎮守府に着任す   作:神谷京介

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2.深海熊野との遭遇

 敵艦発見。

 瑞鶴の艦載機、彩雲からの知らせに三人は色めき立った。

 

「榛名、摩耶、彩雲からの映像を送るから確認してみて。」

 

 瑞鶴から送られた映像を見て榛名が答える。

 

「これは、確かに見たことのない深海棲艦ですが完全に人型になってますね。 明らかに姫級か鬼級です。」

 

 解説する榛名の隣で摩耶が動揺した様子で話す。

 

「お、おい。 こいつ、熊野じゃねぇか?」

 

「「え?」」

 

 摩耶に言われて榛名と瑞鶴はあわてて映像を再確認する。

 

「うーん。 艤装は全然見た目が違うけど、ポニーテールにまとめた髪形を見ても確かに熊野っぽいわね。 胸もないし。」

 

「おい。」

 

「ず、瑞鶴さんその表現はちょっと…。」

 

 瑞鶴の余計な一言に対して榛名が軌道修正しようとするが、二人の脱線は止まらない。

 

「てか、お前が言うんかい。」

 

「あ゛? 言っとくけど私の胸が小さいっていうのはただの風評被害で、普通にBはあるんだからね。」

 

「どっちみち俺たちの中では一番小さいけどな・」

 

「ぬゎんですってぇ!」

 

「いいかげんにしてくださーーーい!」

 

 終わらない脱線にとうとう榛名から突っ込みが入る。

 

「二人とも重要な任務中に何やってるんですか。 こんな会話、提督に聞かれたらどうするんですか。」

 

「うっ、それは嫌かも。」

 

「と、とにかく、遠くから見ただけだと判断できないし、近づいてみましょう。」

 

 

 

 そのころ神戸鎮守府では・・・。

 

「提督、どうかなさったんですか?」

 

 提督室に昼食を持ってきた間宮が数珠丸恒次に声をかけると、彼は通信機の前で固まっていた。

 

「ああ、何でもない。 ところで・・・。 Bってなんだ?」

 

「さあ、前提条件がないと何のことか判りかねますが?」

 

「そうか。 ならいい。」

 

「???」

 

 なお、数珠丸恒次はこの時のことは誰にも語らなかったため、彼女たち三人の内輪話は誰も聞いていなかったことになったのだった。

 

 

 

「榛名、摩耶、深海棲艦にかなり近づいたけど判る?」

 

 深海棲艦を有視界内にとらえると、瑞鶴は二人に話を振ってみる。

 

「艤装は艦娘の物とはだいぶ違うけど、真ん中の人影はどう見ても熊野だよな。」

 

「これだけ近づいても一向に攻撃も警戒もしませんね。 索敵能力が低いのか、それともこちらを攻撃する意思がないのかどっちかなんでしょうね。」

 

「うーん。 確かにこれだけ近づいても何もしてこないのは不自然よね。」

 

 瑞鶴の意見に対して、榛名が作戦を具申する。

 

「でもこのまま遠くから見ていても埒があきません。 深海棲艦の前方に回り込んでみましょう。」

 

「え、前方に? いきなり敵の攻撃の矢面に立つのは危なくない?」

 

「危険かもしれませんが、どのみち一当たりして相手の攻撃力を見なければなりません。

 それに根拠はありませんが、彼女をこのまま進ませると何か良くないことが起こるような、そんな予感がするんです。」

 

 榛名の意見に摩耶も同調する。

 

「面白そうだな。 俺も前に出るぜ。 榛名一人だけじゃ危なっかしいからな。」

 

 二人の意見に瑞鶴は溜息を吐きながら答える。

 

「了解。 万が一を考えて私は遠くから探索を続けるわ。」

 

 こうして瑞鶴を残し、榛名と摩耶は深海棲艦の前に回り込んだのだった。

 

 

 

「しっかしここまで近づいても何もしてこねえんだな、あいつ。」

 

「ええ。 とっくに私たちのことが判っているはずなのに何もしてきませんね。 不気味です。」

 

 そういいながら二人が深海棲艦の前に回り込み、深海棲艦の進路を塞いだ途端、彼女は驚くべき変化を見せたのだった。

 

『ワタクシノマエニタチフサガルノハダレダァァァ? ワタシガニッポンニカエルノヲジャマスルナダレダァァァ!』

 

 深海棲艦は進撃を止めると、他の姫級の深海棲艦と同じように片言で威嚇してきた。。

 

「うっ、あいつの喋り方、いつもの似非お嬢さまのような話し方と全然違うぞ。」

 

「摩耶さん落ち着いてください。 おそらく急速な深海化によって艦娘のときの記憶などが全て吹き飛んでいるのでしょう。」

 

 榛名は動揺する摩耶を落ち着かせると、二人で敵深海棲艦に対峙する。

 

「日本に帰るっつっても深海棲艦を近海に近づけるわけにはいかねぇだろうが。」

 

「申し訳ありませんが、私たちにも深海棲艦から日本を守る使命があります。 これ以上先に進めるわけにはいきません。」

 

 二人は深海棲艦にこれ以上先に進ませない意思を見せたが、それに対する深海棲艦の反応は極めて単純だった。

 

『ジャマヲスルナァァァ。 ワタクシノキカンノジャマヲスルナァァァァ。』

 

 叫び声とともに発射される砲撃。 それは極めて正確で高威力な弾丸だった。

 

「な、何ぃぃぃ。」

 

「キャァァァァ。」

 

 深海棲艦の砲撃の威力はすさまじく、二人は一瞬で中破に追い込まれてしまった。

 

「うそ、何この威力。 榛名と摩耶が一瞬で中破状態に。」

 

 遠くで状況を見ていた瑞鶴も驚きの声を上げる。

 そして即座に榛名と摩耶に撤退を指示した。

 

「榛名、摩耶、全力で深海棲艦の前方から離れて。 あんな砲撃何回もくらったら、あっという間に轟沈してしまうわ。」

 

 榛名と摩耶は瑞鶴からの指示を受け、即座に左右に分かれて深海棲艦の前方から離れた。

 前方に障害物が無くなったことを確認した深海棲艦は、左右に分かれた榛名達を完全に無視して先に進んでいったのだった。

 

 深海棲艦が先に進んだ後、追いついてきた瑞鶴に二人は合流したのだった。

 

「いつつつ、なんちゅう威力だよ。 あれ、本当に熊野か?」

 

「本体を見た限りでは確かに熊野さんでした。

 それにあの砲撃の威力、スペック以上に日本に帰るという意志の強さと、妨害する相手に対する容赦のなさを感じました。

 かつての戦いでレイテから帰還するとき、熊野さんは再三の敵襲に見舞われながら決死の思いで日本に帰ろうとしたそうですが、

 その時の熊野さんの意地もあんな感じだったんでしょうか。」

 

 深海棲艦と対峙した感想を言っている二人に瑞鶴は指示を出した。

 

「とにかく、榛名と摩耶は最速で鎮守府に戻って傷を治して。 私はここに残って敵深海棲艦の足止めとモニタリングを続けるから。」

 

「ええっ、危険です瑞鶴さん。 たった一人であの深海棲艦に対峙するなんて。」

 

 心配する榛名に瑞鶴が答える。

 

「大丈夫よ。 相手の射程外から艦載機を飛ばしてチクチク妨害するだけだから。

 それに、私たち神戸鎮守府の戦闘メンバーはたった七人しかいないのよ。

 あの強敵に伊勢たち四人だけではかなり厳しい。 榛名と摩耶が鎮守府に戻って傷を治して六人で挑まないと迎撃は難しいと思うわ。」

 

 瑞鶴の意見に摩耶が賛成する。

 

「確かにな。 悪いが瑞鶴、私たちが鎮守府に戻って迎撃態勢を整えるまで、足止めしててくれ。

 ほれ、榛名、グズグズしてたら深海棲艦の方が先に神戸についちまうぞ。 なる速で鎮守府に戻ろうぜ。」

 

「判りました。 摩耶さん、行きましょう。 瑞鶴さんも十分気を付けてください。」

 

 そう言うと、二人は最速で鎮守府に戻っていったのだった。

 

「さあて、神戸のメンバーが迎撃態勢を整えるまで足止めしますかね。」

 

 一人残った瑞鶴は深海棲艦を足止めするための方策を考えるのだった。

 

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