数珠丸提督、神戸鎮守府に着任す   作:神谷京介

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第一章 榛名は大丈夫です
1.目覚めない榛名


私は刀剣男子の一人、数珠丸恒次である。 現在、私はかつて呉鎮守府と呼ばれていた所にいる。

 

つい先日神戸鎮守府の提督になり、無暗に遠出できないはずの私が何故ここに来たのか、それには理由がある。

 

 

 

 

 

神戸鎮守府の提督になって最初にやった仕事、それは「建造」であった。

 

私が着任した時点での神戸鎮守府のメンバーは、私と給料艦の間宮の二人だけ。 これでは何もできない。

 

そこで工廠が完成するや否や、魂の宝玉を装着し、新たな艦娘の建造を開始したのであった。

 

最初に建造されたのは、高速戦艦の榛名であった。 私と神戸鎮守府を結び付けた艦娘である。 しかし、完成と同時に問題が発生した。

 

本来なら目覚めて私たちの仲間となっているはずなのだが、彼女が目覚めなかったのである。

 

「どういうことだ。」

 

「わ、わかりません。 私は建造などにあまり関わったことはあまりありませんが、このようなケースが発生したことは、人伝てにも聞いたことはありません。」

 

状況が理解できずおろおろしている間宮を見ても、今回の件はレアケースであることが判る。

 

当然、その対策も講じられてはいないであろう。

 

「どうしましょうか。」

 

「とりあえず、残りの六人も建造してみよう。 このようなケースが榛名だけなのか、他の艦娘でも発生するのかを確認するだけでも、対策のヒントは掴めるかもしれない。」

 

混乱しながらも訪ねてきた間宮に対して、私はそう答えた。

 

現時点では具体的な解決方法は見つからないが、他に同様の問題が発生した艦娘が出てきたなら、彼女たちの共通項から何か対策が見つかるかもしれない。

 

私はそう思いつつ、続けて他の艦娘の建造も行ったのだった。

 

 

 

 

 

現時点で建造可能な七人の艦娘の建造が全て終わった。

 

結果、榛名以外にも目が覚めない艦娘が出現した。 超弩級戦艦の伊勢だ。

 

間宮は今までに発生しなかった現象が二度も起こり混乱しているようだが、彼女たち以外の航空母艦の瑞鶴、重巡洋艦の摩耶、足柄、衣笠、駆逐艦の初風は目覚めているので、当面、近海を警戒する程度なら問題ないだろう。

 

後は、榛名と伊勢をどうやって目覚めるかということだが、この二人の共通項については、私にも一つだけ心当たりがある。

 

それは、かつて榛名のポールが置かれている神社で宮司さんから聞いた話のなかにあったものだ。

 

戦争末期、燃料不足のため榛名は浮き砲台として呉を守っていたのだが、同じ状態で浮き砲台になっていた艦船に伊勢も含まれていたのだ。

 

私はかつての戦争の詳細は知らない。 しかし、宮司さんから聞いた話の中で榛名と伊勢が一緒に戦ったのはその時だけであり、間宮や他の艦娘に確認しても、それ以上の情報は見つからなかったのである。

 

ならば呉に行ってみれば、何か判るかもしれない。

 

そう思った私は、間宮と目覚めたばかりの艦娘五人に後事を託し、呉に向かったのであった。

 

 

 

 

 

呉鎮守府、正しくは、かつて呉鎮守府があった場所。

 

そこは深海棲艦の総攻撃に会い、既に廃墟になっていた。

 

遠距離からの砲撃や爆撃にさらされ、あたり一面瓦礫の山になっている。 見渡す限り、生きて動いている人間は誰もいない。

 

深海棲艦に襲われた大本営の惨状を無線を通して三日月宗近殿から聞いていたため、深海棲艦に襲われればどうなるかはあらかじめ予想していたが、これは想像以上だ。

 

我々刀剣男子が歴史修正主義者と戦った際に周囲を破壊することはままあるが、どんなに暴れてもここまで一帯がが破壊されることにはならない。

 

改めて深海棲艦の恐ろしさを認識せずにはいられない。

 

ともあれ驚いてばかりではいられないので、取り合えず周囲に生存者がいないかを調べてみる。

 

周囲を見渡してた限りでは生存者は見つからなかったため、五感を研ぎ澄ませて周囲の気配や魂の有無を確認したところ、西のはずれの建物に微かに複数の生者の魂の気配が感じられた。

 

「ん?」

 

生存者の有無を調べるために建物に近づいてみると、不意に魂の一つが建物から離れていく気配を感じる。

 

足を止めてその気配をたどってみると、瓦礫の影に身を隠してこちらの背後に回り込もうとしているようだ。

 

「なるほど。」

 

どうやら向こうもこちらの気配を感知したようだ。 相手も相当な手練れと見える。

 

このように追い詰められた状況であれば、近づく者がいれば警戒するのは当然だ。 だからと言って、いきなり背後から襲い掛かられてはたまったものではないが。

 

手加減できるかは判らないが、向かってくるならば対応しなければなるまい。

 

幸いこちらの背後に回ってきたところで様子をうかがっている様子なので、取り合えず相手の隠れているところに向いて声をかけてみる。

 

「私は刀剣男子の一人、数珠丸恒次と申す者。 そなたがもしも艦娘と呼ばれるものならば、話を聞いていただけないだろうか。」

 

すると、相手は物陰から姿を現し、話しかけてきた。

 

相手は年齢は20前後の女性で、白い道着のようなものを上半身に着込み、茶色のミニスカートを履いている。 右手に日本刀を持っており、その鞘は腰に差されている。

 

「流石だな。 気配を消して近づいたつもりだっだが、まさか完全に見透かされていたとは。」

 

「仕方ないだろう。 こうも周りに何もない状態で我々刀剣男子に奇襲をかけるのは無理というものだ。」

 

「むう、やはり刀剣男子と呼ばれる者たちは只者ではないということか。 東京で深海棲艦から町を守ってくれていることは聞いている。 貴方も我々の味方ということでいいのか。」

 

どうやらいきなり戦闘に入る事態は避けられたようだ。 相手が話を聞く体制に入ったので私の現在の状況を話し、神戸鎮守府の提督になったときにもらった身分証を提示した。

 

「驚いたな。 まさか新しくできた鎮守府の提督に刀剣男子がなっていたとは。」

 

相手は提督の身分証を確認し、驚くとともに彼女のいた場所に案内を申し出てくれた。

 

「いきなり攻撃を仕掛けて申し訳ない。 私は艦娘の一人、日向だ。 この先に伊勢と榛名がいる。 呉鎮守府のたった三人の生き残りたちだ。」

 

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