ぼっちエルフは転生者に狙われてる   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第14話『エルダー! 私だよー! エルフリアだよー!』

 何という事だ!!

 色々な事があってすっかり忘れていたが、そうだ! 王太子殿下に危機が迫っているのだ!!

 私はとても大事な事を思い出し、子供たちの事をお父様達にお願いして、王都へとエルフリアさんに転移して貰おうとした。

 しかし……。

 

「えー」

「そこをどうか」

「やだ! 先にエルダーくん達を治して!」

「殿下に危機をお伝えしたらすぐにエルフリアさんの家に向かいますから」

「やだ! 先にエルダーくん!」

 

 エルフリアさんは首を横に振りながら、強く拒絶する。

 私はエルダーくん達。という言葉に時間が掛かる事を想定して、お父様に殿下へのご連絡をお願いした。

 本来であれば、私が伝えるべきなのだけれど、こうなってはしょうがない。

 

 エルフリアさんの力があれば私を転移魔法で移動させる事は容易いのだから。

 無理に王都へ行っても、エルフリアさんの家へ行くことになるだけだろう。

 

「わかりました。ではまずはエルダーくんさんを治しましょう」

「わぁーい!」

 

 そして、エルフリアさんは喜びのままに私の手を握り、一瞬でエルフリアさんの家まで転移した。

 つい先日まで居たのだけれど、少しだけ懐かしいエルフリアさんの家である。

 

「えっとねー。えっとねー」

「ゆっくりで大丈夫ですよ」

「あ! あったー! エルダーくん! ようやく君の怪我が治るよ~!」

「そうなの!? それは嬉しいね!」

「そう! アリーナが治してくれるの!」

「ありがとう! アリーナ!」

「いえいえ」

 

 楽しそうにエルダーくんとお話しするエルフリアさんを見ながら、私はエルダーくんに合う糸を裁縫箱から探して、準備をする。

 それから両手で大事そうに抱えてきたエルダーくんを受け取り、私はエルダーくんの治療を始めるのだった。

 

 エルフリアさんは最初楽しそうに私の裁縫を見ていたが、少ししてから不満を口にした。

 

「アリーナ! たりない!」

「足りない。ですか?」

「そう! ほら! あの子のお友達を治してた時はお歌を歌ってたじゃない!」

「そういえば、そうでしたね」

 

 私はエルフリアさんの指摘に、コホンと軽く咳ばらいをして、音を奏で始めた。

 

「魔法の魔法のお医者さん~♪ 魔法の糸でなんでも治してあげましょう~♪」

「あげ~まーしょー」

 

 私は左右に体を揺らしながら、慎重に針を通し、そんな私につられてエルフリアさんも左右に揺れながらニコニコと笑う。

 とても可愛らしい姿だ。

 

 それから。

 長い年月をエルフリアさんの友達として頑張ってきたエルダーくんを何とか治し、私はエルフリアさんにエルダーくんを手渡して一応の注意事項を伝える。

 

「一部、布が弱くなっている場所がありますので、大切にしてあげて下さいね。乱暴にしちゃうと、腕が取れちゃいますよ」

「えぇー!? わ、わわ、分かった! 大事にする!」

「はい。それが良いかと思います」

「じゃ、じゃあ! 次、次をお願いしても良いかなぁー!」

「はい。勿論ですよ」

 

「魔法の魔法のお医者さん~♪ 魔法の糸でなんでも治してあげましょう~♪」

「あ~げましょー」

 

 エルフリアさんは一人、また一人とお友達が治る度に嬉しそうで、大切に抱きかかえて頬を寄せる。

 その姿を見ていると、とても暖かい気持ちになるのと同時に、ちょっとした疑問も生まれるのだった。

 

「そういえば、エルフリアさんのご家族はこの森に居ないのですか?」

「いないよー」

「そうなのですね。では別の森に?」

「ん-ん。お父さんとか、お母さんが居ないの。私は森で生まれたから」

「森で、生まれた……?」

「そう。私もよく知らないんだけどね。森の奥に大きな木があってさ。その木が色々と教えてくれたんだー」

「……なるほど」

「あ! そうだ。アリーナにも紹介するよ! この子と同じ、エルダーって名前なんだ!」

 

 エルフリアさんは笑顔で立ち上がると、座っている私の手を引っ張って、楽しそうに森の中を駆けてゆく。

 以前、少しの間だが、ここで生活していた時には入らなかった場所だ。

 

 深い、深い森の奥へと進み、人が入れば二度と帰れないのではないかと思う程に深い森の奥に、その木はあった。

 

 幹は私が十人いても足りないくらいに太く、どこまで伸びているのかと上を見上げても頂点は見えず、どこまでも高い場所まで伸びている様に見える。

 そして、広げた枝も広く、私の家の屋根よりも大きく見えた。

 

 だが、葉が無い。

 そして、木の幹には大きな空洞が出来ており、大樹の息づかいは感じなかった。

 

「エルダー! 私だよー! エルフリアだよー!」

「……」

「あり。今日も寝てるみたい。お寝坊さんだなぁ。まったくもう。私には早寝早起きをしろー! って言うのに、自分はずっと寝てるんだから!」

「……あの、エルフリアさん」

「んー? なぁに?」

 

 私はかつて本で見た古代樹によく似た木を観察しながら、何でもない事の様に笑っているエルフリアさんに問うた。

 震えそうになる声を何とか抑えて、冷静に、落ち着いた音で言葉を紡ぐ。

 

「こちらの、エルダーさんは……いつから眠ってらっしゃるのでしょうか」

「ん-。いつだったかなぁ。最後に話したのはー、あー! そうそう! エルダーくんと友達になった時だね!」

「エルダーくんと?」

「そう! 森でね。エルダーくんが落ちてるのを見つけてねー。エルダーにお名前つけてあげたいねーって話してたら、エルダーって名付けたら良いって」

「……そう、ですか」

「これからちょっと長い間眠るから、私の代わりにエルダーくんとお話しなさいって言ってた!」

「……」

 

 私はエルフリアさんに許可を貰ってからエルダーさんに触れ、やはり命の脈動は感じないと目を閉じた。

 エルダーさんは、既に死している。

 が、エルフリアさんはその事を知らぬまま、楽しそうに話をしているのだった。

 

 どうするべきか。

 真実を伝えるべきか。

 伝えてはいけないか。

 

「でも、良かったなぁー」

「……?」

「へへ。エルダーはさ。いっつも、エルフリアを一人にするのは心配だ―って言ってたから、お友達が出来て良かった!」

「……そうですね」

「ニシシ。エルダー。今日はねー! お友達を連れてきたんだ! アリーナって言うの!」

 

 両手でエルダーさんに触れながら叫ぶエルフリアさんを見て、私も大きく息を吸い込んでから言葉を放つ。

 ここには居ないかもしれない。

 でも、きっと今でもエルフリアさんを見守っているであろうエルダーさんに告げる。

 

「エルダーさん。はじめまして。私、アリーナと申します。エルフリアさんのお友達になりました! これからもエルフリアさんと一緒にいます。だから、どうか心配しないで下さい!」

 

 声は届いただろうか。

 分からない。

 けれど、届いたら良いなとは思う。

 

 きっとお父様みたいにエルフリアさんを見守っていたエルダーさんに。

 

「んー? 駄目だね! 今日も眠ってるみたい!」

「それはしょうがないですね」

「もー! お寝坊さんなんだから! せっかくアリーナが来てくれたのにぃ!」

「私は大丈夫ですよ。またいつでも会いに来ますから。今はゆっくりと眠らせてあげましょう」

「ん-。そうだね! エルダーもお爺ちゃんになって、大変だ―って言ってたし! じゃ、帰ろうか!」

「そうですね」

 

 私はエルフリアさんの手を取って、歩き始めた。

 エルダーさんに背を向けて、一歩二歩と森の中を進んでゆく。

 

『……』

「っ!?」

「どうしたの? アリーナ」

 

 エルフリアさんと共に歩いていた私だったが、不意に風の中から何か、声の様なものが聞こえ振り返った。

 しかし、そこには何もおらず、声も聞こえない。

 

 でも……。

 

「アリーナ? 何かあったー?」

「いえ。ちょっと声が聞こえた様な気がして」

「ホント!? エルダーが起きたのかな!」

「どうでしょうか。まだ眠っている様な気もしますね」

「そっかー! もー、ホント、しょうがないんだからー!」

 

 エルフリアさんはどこか嬉しさを隠しきれていない様な笑みで、エルダーさんを見上げて、笑う。

 そして私も、先ほど聞こえた声が、エルダーさんの物であれば良いなと想いながら遥かな空を見上げるのだった。

 

「では……また」

「じゃ、行こうか! アリーナ」

「そうですね」

 

『……』

 

 私たちが立ち去った後には森を通り抜ける風の音だけが残っていた。

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