ぼっちエルフは転生者に狙われてる   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第23話『わたし……この世界に居ても、良いのかな』

 エルフリアさんが泣き始めたことで、村の人たちは気を遣って私たちをそのままに、畑の方へと向かっていった。

 おそらくは畑の状態を確認したり、直したりするのだろう。

 

 そして、私はエルフリアさんが泣き止むまで抱きしめて、空を仰いだ。

 エルフリアさんが起こした初めての奇跡。

 村の人たちの生活を支える巨大な畑を復活させたこと。

 それはとても素晴らしい物だった。

 

 別にエルフリアさんの魔法でなくても、土砂崩れはどうにか出来ただろう。

 しかし、それでは多分遅すぎた。

 だからこそ、お父様は村の人たちにお金を送ったのだろうし。

 

 でも、お金では救えない心もあるのだ。

 自分たちの糧を、自分たちで作り、生きる。

 そんな生活が不意に崩されて、ただお金だけを受け取っても、自分たちのこれからが不安だっただろう。

 

 今年はとりあえずお金があるけれど、来年は、その次は。

 いつまで助けてもらえるのか。

 財政の負担だからと切り捨てられるのではないか。

 

 そういう不安は強かったはずだ。

 しかし、復活した。

 半年も過ぎてしまったから作物は難しいかもしれないが、それでも復活した。

 その事実は村の人たちに大きな希望を与えた事だろう。

 

 全てエルフリアさんのお陰だ。

 エルフリアさんが彼らを救ったのだ。

 本当にありがたい。

 

「……ありーな」

「はい」

「わたし……この世界に居ても、良いのかな」

「勿論です。少なくとも私は、エルフリアさんに居て欲しいと願っています」

「それは、魔法が使えるから?」

「違いますよ。エルフリアさんがエルフリアさんだからです」

「私が、わたし……」

「はい。私に甘えてくれるエルフリアさんや、誰かの為に頑張ろうって思ってくれるエルフリアさん。私と同じ夢を見てくれるエルフリアさん。こうして道に悩んで相談してくれるエルフリアさん。その全てが私は大好きなんですよ」

「そっか……アリーナは優しいね」

「エルフリアさんほどではありません」

「ふふっ、私なんか別に優しくはないよ」

 

 エルフリアさんはまるで消えてしまいそうなほど儚い笑みを浮かべてから目を閉じた。

 閉じた目元から一筋の涙が流れて、落ちる。

 

 私はこのままエルフリアさんが消えてしまうのではないかと思い、強く抱きしめてしまった。

 

「わぷ、くるしいよ。ありーな」

「あ、ごめんなさい。つい……!」

「アリーナも甘えん坊なんだね。しょうがないなぁ」

 

 エルフリアさんはクスクスと笑いながら私を抱きしめて背中を撫でてくれた。

 そんな姿を見ていると、先ほどのアレコレは幻であったかの様に思え、私はホッと安堵の息を漏らすのだった。

 

 

 そんなこんなで落ち着いたエルフリアさんと共に、私たちは村の中を歩き回る事にした。

 巨大な畑では大きな男の人たちがせっせと畑を耕していて、女の人たちはおそらく種を蒔いていた。

 

「あれ、なにしてるんだろー」

「きっと畑に種を蒔いているんですよ」

「種?」

「そうですよ。アレが育つと食べ物になるんです」

「へーすごいー」

 

 エルフリアさんは畑の周りにある策に両手をついて、楽しそうにゆらゆらと揺れていた。

 私はそんなエルフリアさんの隣に立って、畑仕事を見ていたのだが、ふとこちらに気づいたのか女性の一人が歩いて来た。

 その姿を見て、エルフリアさんは柵を離れて私に抱き着いてきたが、隠れてはおらず、顔はジッと女性を見ている。

 

「あぁ、お嬢ちゃん。元気になったんだね。良かったよ」

 

 エルフリアさんは無言のままコクリと首を縦に振る。

 

「いやいや。姫様に人見知りだーって聞いてたのに、みんなでわーっと来ちゃって悪かったね」

 

 女性の言葉にエルフリアさんはフルフルと首を横に振っていた。

 何とも微妙な会話であるが、女性は気にした様子もなくケラケラと笑って、エルフリアさんとの会話を楽しんでいるのだった。

 

「……姫様。お嬢ちゃん。本当に今回はありがとうね。冬には間に合わないかもしれないけど、一応収穫まで早い奴を作るからさ。足しにはなると思う」

「はい」

「まぁ、取れなくても領主様からお金はいただいてるし……って、そういえばこのお金は返さないとだよね!?」

「いえ。そのままお使いください。私たちが来たのはただの偶然ですから」

「そうかい。じゃあありがたくいただくよ」

「是非そうしてください」

「あぁ」

 

 女性は畑の方へと顔を動かして、小さく息を吐いた

 ずっと背負っていた重い物を下ろした時の様な、そんな雰囲気だった。

 

「噂には聞いていましたが、やはり姫様はとても聡明な方だったのですね」

「……何の話でしょうか」

「ご存じだったのでしょう? 領主様へ何度も手紙を送っていたのを。私たちの気持ちを」

「私はただ、皆さんの生活が安定して下さり、幸せになって下されば、それ以上いう事はありませんよ」

「……」

「私はただ偶然ここへ来ただけですし。皆さんを助けて下さったのもエルフリアさんです。どうか感謝はエルフリアさんに」

「っ! ち、ちがうよ! 私は、ただ、アリーナについて来ただけで、転移先もアリーナに教えてもらって、それで!」

「こう仰ってますが?」

「私はただ傍にいただけですよ」

「なるほど。ではエルフリアちゃんにはお礼をしないと。是非我が家で食事をしていって下さいな」

「えっ! えぅ、ぅ!」

「しかし、エルフリアちゃん一人では、やはり難しいご様子。どうか姫様にはエルフリアちゃんへのお礼の為にご一緒していただきたいですね」

「あ、あり~な~」

 

 泣きそうな顔で私を見上げるエルフリアさんと、穏やかな顔で笑う女性に、私は分かりましたと両手を上げた。

 優しい方だ。

 何もしていない私にも何かお礼がしたいのだという。

 ならば、エルフリアさんとご一緒させて貰おう。

 

「分かりました。ではエルフリアさんと一緒に伺わせていただきますね」

「ありーな! 良かった! 良かった!」

「ありがとうございます。姫様。では腕によりをかけて夕食を用意させていただきますね」

 

 元気よく笑う女性に私も笑みを返しながら、申し訳ない事をしてしまったと反省する。

 上手くかわす事が出来なかったため、夕食をいただく事になってしまった。

 私は何もしていないし、このまま食事をいただくのも申し訳ない。

 

 うーん。どうしようか。

 

「アリーナ。何か悩み事?」

「はい。お食事を貰ってしまうのは申し訳ないなと」

「うーん。そっかー。じゃあさ。じゃあさ。お食事を私たちも持っていけば良いんじゃない?」

「お食事を持っていく……? はっ! その手がありましたか! エルフリアさん。ありがとうございます! ではそうしましょう!」

 

 私は畑仕事をしている方々の元へ走って向かい、畑で育てている野菜以外に村で食べている物は何があるのかと問うた。

 結果、狩猟で大型の獣を仕留め、山に山菜を取りに行くという話を聞く。

 今の時期、この辺りで採取できる山菜なら覚えている。

 

 という訳で、私はエルフリアさんと一緒に山へ山菜を取りに行く事にした。

 村の人へせめてもの贈り物だ。

 

 と、エルフリアさんと二人で行こうとしていたのだが、どこから話を聞いて来たのか。クロエさんとニールさんも付いてくる事になった。

 二人は宿で休んでいると思っていたのだけれど。

 

「いやいや。二人だけで山に行くなんて危険よ。護衛としてついていくわ!」

「そうですよ。プリンセス。獣に襲われるかもしれません」

「……ですが」

「良いから。ほら。私たちだって村の人に何か食料を贈りたいの。このままだと何だかんだ私たちもご一緒にーなんて言われるかもしれないからさ」

「た、たしかに!」

 

 クロエさんの言葉に納得して、私たちはクロエさんやニールさんと共に山の中へと足を踏み入れた。

 

 とは言ってもだ。

 村に近い場所の山菜は村の人が育てているか、今度採ろうとしている物だろうし。

 私たちは少し離れた場所へ探しに行く。

 

 整備されていない道を歩き。背の高い草むらの向こうに、美味しいキノコを見つけ、私は駆けだして……!

 

「危ない! アリーナちゃん!」

「アリーナ!」

 

 私はエルフリアさんとクロエさんの声に、えっ? と振り返ろうとしたのだが。

 それよりも前に、何か大きな声と共に私の前に現れた存在によって尻もちをついてしまった。

 

 とても大きくて、黒い、巨大な生き物がそこに居た。

 

「「く、クマだー!?」」

「アリーナ!」

「やばいぞクロエ! クマだ! 車並に足が速くて、重装甲の戦車みたいな、クマだ!」

「クマって、魔法効くのぉ!?」

「とりあえずやってみるしか無いだろ!」

 

 背中の後ろでクロエさんとニールさんが騒いでいて。

 私のすぐ隣にはエルフリアさんが駆け寄ってきてジクジクと痛い私の腕を持ち上げた。

 どうやら血が出ているみたいだ。黒い生き物に傷つけられたのだろうか。

 

 なんて、考えていた私の思考は、すぐ隣で膨れ上がった大きな気配に飲み込まれた。

 

「アリーナを! 傷つけたな!?」

「っ! エルフリア、さ……」

 

 エルフリアさんは膨れ上がった気持ちをそのまま魔法にして、生き物に向かって撃ちだした。

 黒い生き物と、その周囲にあった木や草むらを全て一瞬の内に焼き払って、体は何とか形を保っているが、既に息はないであろう黒い生き物は大きな音を立てながら地面に倒れて、動かなくなってしまった。

 

 凄い、力だった。

 これが、もし人に向かって放たれれば、その人は容易く死んでしまうだろう。

 

『彼女の持つ魔力が強すぎたのだ』

『人間にとって大きすぎる事件なのだ』

『歴史に詳しい者であれば警戒するかもしれない』

 

 私は今になって、お父様の言葉を正しく理解した。

 そうか、これが……エルフなんだ。

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