ぼっちエルフは転生者に狙われてる   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第3話『兄貴ィ! 見つけましたぜ! 例の女!』

 エルフリアさんと出会ってから二日ほどの時間が経過した。

 私はと言えば、二日前から変わらずエルフリアさんの家にお邪魔している。

 

「あのー。エルフリアさん」

「な、なにかな!? ごはん!? それとも、水浴び!?」

「いえ。そろそろ私も森を探索したいなと」

「……探索して、どうするの」

「えー。魔女の書を見つけて」

「見つけて……?」

「森を出て世界中を旅しようかと……思うのですが」

 

 不満そうな感情を一切隠すことなく私をジーっと見つめるエルフリアさんに、私はどうしたものかと考えてしまう。

 彼女はどうも、私がこの森を出る事が気に入らないらしい。

 友達。だからだろうか。

 

 しかし、私もまた会いに来ると言ったのだけれど、それでは駄目な様だった。

 難しいものだ。

 

「アリーナは、私が嫌いなの?」

「そんな事はありませんよ。エルフリアさんは大切なお友達」

「だよね! だよ。でも、なら、なんで出ていこうとするの?」

「うーん。そうですねぇ」

 

 なんと説明したものか。

 私は一言一言考えながらゆっくりと言葉を紡いでゆく。

 

「私はエルフリアさんの事を大切なお友達だと思っています」

「うん!」

「ですが、それと同じくらい、この世界の事も大切なのです」

「……うん」

「だから、私はこの世界を変えたいのです。現状ある多くの問題を解決したい」

「そんなの! 別にアリーナがやらなくて、いい……って、おもう」

「そうですね」

「っ!」

 

 私がエルフリアさんの言葉に頷いた事で、エルフリアさんはとても嬉しそうな顔をした。

 しかし、私がこれから向ける言葉はエルフリアさんの想いとは真逆のものだろう。

 

「ですが、この役目は私にしか出来ない事なのです」

「なんでっ……! せっかく、お友達になれたのに」

「私が『真実を見極める目』を持っているからです」

「しんじつ……?」

「はい。人であればその心を。大地であればその力強さを、植物であればその命の輝きを、動物であればその息遣いを視る事が出来るのです」

「……」

「私のこの力は神様に授かった物だと考えております。そして、力は力としてだけでなく、世界を救う使命も、悲しみの中で眠りについてしまった方を救う事も、私の……」

「使命なんてないよ。そんなの」

「エルフリアさん?」

「誰かがやらなきゃいけない使命なんてない。人は長く生きられないんだから、やりたい事だけやれば良いじゃない」

「エルフリアさん」

「だからさ。私は、アリーナがやりたい事をやれば良いと思うんだ」

「私のやりたい事、ですか」

「そう」

「私のやりたい事は……」

「うんうん」

「世界を救う事ですね」

「んにゃー!」

 

 私が告げた言葉に、エルフリアさんは地面に転びながら奇妙な声を上げた。

 そして、地面を転がりながら「やだやだ」と繰り返す。

 なんとも困ったものだ。

 

「どうしてそうなっちゃうの!」

「私がやりたい事と聞かれたので」

「もっと私と遊んだり、私とお昼寝したり、私とご飯食べたり、私と水浴びしたりすれば良いじゃない」

「まぁ、それも楽しそうなんですけど」

「でしょ!?」

「でも、それは後でも出来ますから」

「んにょー! んもー!」

 

 エルフリアさんはドタバタと暴れ、大忙しだ。

 私はそんなエルフリアさんを見ながらどうしようかな。なんて考えていたのだが……ふと外から妙な音が聞こえて立ち上がる。

 

「もう行くの!? まって! もっとお話ししようよ!」

「いえ。外から妙な音が」

「音!? なになに!? こわいやつ!?」

「分からないです。ちょっと見てきます。お話はまた後で」

「ま、まままま、まって、一人にしないで!」

 

 私の左腕にギュッと抱き着いたエルフリアさんは震えながら目を閉じて、ゆっくりと歩いていた。

 そんなエルフリアさんをこれ以上怖がらせない様に気を付けながら私は土で出来た洞窟の外へ出て、付近の様子を伺う。

 

「お! 兄貴ィ! 見つけましたぜ! 例の女!」

「そうか! よくやったぞ!」

「アレが兄貴の言っていた、エルフって奴ですかい! 一緒に誰か居るみたいですが」

「何ィ!? 俺様が先を越されたってんのか!? まだ本編は始まってねぇってのに! 気の早い奴がいたもんだ!」

 

 やや離れた場所で大声を出していた三人の男性は、小走りに私たちの元へ近づいてくると、私とエルフリアさんを観察するような視線を向ける。

 その姿は以前冒険者組合で見た冒険者の方に良く似ているが、確証はない。

 あちらこちらへと飛び跳ねている硬そうな短い髪の毛と。

 探索するのに適しているのだろう、厚手の服には色々な道具が取り付けられていて、そのどれもが使い古されていた。

 

「んー? お前は?」

「あー! あ、あああ、兄貴ィ! ヤバいですよ! この女は! あ、いや、この御方は!」

「あん? どうした。バッソ」

「ミンスロー伯爵家の! アリーナ様ですよ!」

「アリーナ? ミンスロー?」

「アリーナ様って! ミンスロー家の妖精姫か!? や、やや、ヤバいっすよ! 兄貴ィ! アリーナ姫様に手を出したら」

 

 三人いた男性の内、両側に立っていた二名の男性が震え始め、後退しようとした時、空から声が落ちてきた。

 良く見慣れた姿と共に。

 

「手を出したらどうなるのか。聞きたいものだね」

「ゲェー!? ミンスローの悪魔!!」

「お義兄様!」

「やぁ。アリーナ。久しぶりだね。無事でよかった。そちらの子も、ね」

 

 ニッコリと微笑むお兄様はいつもと何も変わらない姿で、私の頭を撫でて下さり。

 黒いコートの下から細長いレイピアを抜き、それを自然な形で下へ下ろしたまま一歩ずつ彼らの方へ歩いて行った。

 コートの下から見える服は社交場へ向かう時と同様に整えられており、私とは違う大人な雰囲気の黒髪も、茶褐色の目も、いつもと変わらない様子である。

 一緒に居るだけで安心できるお義兄様の姿そのものだった。

 

「君たちには二つの道がある。牢屋の中で生涯を過ごすか。木々の栄養となるか、だ。まぁ私としてはあまりアリーナに汚い所を見せたくないからね。自ら牢の中に入って欲しい訳だが」

「なんだ、この野郎! なめやがって! この俺様とやろうってんのか!?」

「ふむ。面倒な事だ。こちらとしてはお前なんぞに構っている暇は無いんだがな」

「へっ! なら消えろ! 俺様も、お前なんぞに構っている暇はねぇんだ!」

「それほど大した目的を持っている様には見えないが」

「へっ! モブが! お前には一生関係のねぇ話だ! 俺様はこの世界の攻略法を知ってるんだ!」

「……攻略法、だと?」

 

 男性との会話の中で、お義兄様のまとう空気が変わる。

 先ほどまでとは違い、何かを強く警戒するような気配に。

 

「まさかお前……転生者か」

「っ!? なんだ、お仲間かよ! はっ! そういう事か! だからテメェもエルフリアを狙いに来たって訳か! チッ! 面倒な事になったぜ!」

「エルフリア……?」

 

 エルフリアさんの名を呟いて、お義兄様は私にしがみついて目をキュッと閉じているエルフリアさんへと視線を向ける。

 そして、難しい顔をしたまま再び視線を正面へ、男性へと向けた。

 

「そうか! 思い出したぞ! アリーナ! アリーナ・エル・ミンスロー! 救国の聖女のアリーナか! くははは! こりゃあ良い! 最強ユニットが二人も居るのか! 運まで俺様の味方をしてきやがった!」

「救国の聖女!? 何を言っている! アリーナは!」

「テメェこそ何言ってやがる! 隠そうったってそうはいかねぇぜ! 俺はこのゲームを極めてんだからなぁ! 隠しキャラだって! 全部知ってんだよ!」

 

 お義兄様の正面に立っていた男性は、右手を大きく振りかぶりながらお義兄様に向かって飛び込み、その拳を振り下ろした。

 お義兄様はどうやら当たらなかったらしいが、お義兄様が立っていた地面は大きく削れ、地面に大きな穴が開いてしまった。

 

「アリーナが居れば、どんな面倒なキャラだって、一発で仲間になる! エルフリアが居ればどんな状態異常にもならず、魔法攻撃は無効! そして、俺様の究極の一撃(ラストワン・インパクト)があれば! タイマンじゃ絶対に負けねぇ! 最強の国が出来るって訳だ!」

「……!」

「さぁ、見せてみろよ! お前の力を! 手に入れたんだろ!? この世界に生まれて! お前だけの力を! 力によっちゃあ手下にしてやっても良いんだぜ!?」

「……一つ。確認をさせてくれ」

「あん? なんだよ」

「お前はこの世界がゲームと言った。そしてアリーナが救国の聖女だと」

「あぁ」

「この世界の聖女は、クリスタ・メル・ピューリスじゃないのか?」

「何言ってやがる。クリスタも聖女キャラだろ。まぁ、自軍ユニットにするには面倒なキャラだがな」

「クリスタも……? まさか、俺は勘違いをしていたのか。この世界は……」

「なーにも知らねぇんだな。じゃあ教えてやるよ。この世界はな……」

「乙女ゲームの世界じゃないのか!?」

「戦略シミュレーションゲームの世界なんだよ」

 

 男性とお義兄様の言葉が重なり、二人は互いの顔を見ながら怪訝そうな顔をする。

 何がどうなっているのか。

 私には全く分からないが、ただ二人の間に静かな風が通り抜けた事だけは確かだった。

 

 そして、私は流れ、移り変わっていく状況の中、エルフリアさんを守るべく、彼女の手をキュッと握りしめた。

 自らの恐怖を飲み込むためにも。

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