ぼっちエルフは転生者に狙われてる   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第42話『しかし、困りましたね……まさか火で燃えない木とは』

 深い眠りの中に居た私は、夢の中で酷く懐かしい声を聞いた。

 それは子供の頃に聞いていたお友達の声であった。

 

『アリーナ』

「その声は……」

『私よ。シルヴィア。忘れちゃった?』

「……っ! シルヴィアさん! 覚えてますよ」

『良かったわ。最後に話したのはずっと前だものね。もう忘れられちゃったかと思ったわ』

「ごめんなさい。最近はお話する事も少なくなってしまって」

『良いわ。私も、色々な場所に意識を割いていたから。多分アリーナの声に応えられなかった事もあるだろうし』

「……シルヴィアさん」

『でもね。だから、こうして久しぶりにお話出来るのは凄く嬉しいわ』

「はい。私もです」

 

 私は久しぶりに話すお友達の声に、頬が緩むのを感じながら、言葉を重ねた。

 色々な事があって疲れていた心が安らいでゆくのを感じる。

 

『なんだか、疲れているみたいね。アリーナ』

「……分かりますか?」

『分かるわ。何年もお友達をやっていたんだもの』

「ありがとうございます。実は、今ミンスロー家の周りが大変な事になってまして……」

『そうなのね……私にも何かできれば良いのだけれど。お人形の体じゃあ出来る事はないし。悔しいわ』

「いえ! そのお気持ちだけで嬉しいです!」

 

 久しぶりにお話しするシルヴィアさんは以前と変わらずお優しい方で、私は暖かくなる心を感じながら、微笑んだ。

 しかし、シルヴィアさんにご心配をかけるのも違うかなと思い、別の話もしてシルヴィアさんがあまり気にならない様にと気を付けるのだった。

 

「そういえば、シルヴィアさん。一つシルヴィアさんに謝らなければいけない事がありまして」

『謝らなければいけないこと? 何かしら』

「そのですね。実は魔女の書について、森へ探しに行ったのですが……見つからず、お義兄様が言うには森の外へ持ち出された後だったと」

『……』

「せっかく教えていただいた物なのに、申し訳ございません。手にする事が出来ませんでした」

『魔女の書なら、まだ森にあるわよ』

「え!? そうなのですか!?」

『えぇ。森の奥深くにある大樹の下で眠っているわ。きっと、アリーナのお義兄様が言っていた物は、別のものね』

「そ、そうだったのですね! では、森へ行けば!」

『えぇ。アリーナの望んでいた力が手に入る』

 

 私はシルヴィアさんの話に思わず飛び上がってしまいそうな程の喜びを感じた。

 しかし、ここは夢の世界である為、実際に飛び跳ねる事はない。

 

 だからそういう気持ちだよ。という事だけ全身で示してシルヴィアさんに笑いかけるのだった。

 

『あの本は私にしか見つけられない場所にあるから。アリーナが森へ行けばすぐに手に入るわ』

「そうだったのですね。ありがとうございます」

『いつ行く? 森へ。すぐに必要なんでしょう?』

「あ、いえ、そうですね。すぐに行きたい気持ちはあるのですが……」

『ですが?』

「今、森へ行く事はお父様に禁止されているのです」

『何故?』

「その、今、ミンスロー家の領地では木々の魔力喪失事件が起きているのですが、それを仕掛けた存在が森にいる可能性が高いから、なんです」

『そう……』

「なので! 行くのは全てが解決してからで……!」

『でも、そこに居ても危ないわよ? アリーナ。家だって、もう安全な場所じゃないわ』

「え?」

『目を覚ましなさい。アリーナ。もう敵に見つかっているわよ』

「そんなっ!」

 

 私はシルヴィアさんの言葉に急いで目を覚まそうと自分の意識を叩いた。

 そして、水底から浮上するような気持ちで目を覚ました私は、部屋の中に蠢く多くの枝に目を見開く。

 

「エルフリアさん!」

「……ぷぇ?」

「火の魔術!」

 

 私やエルフリアさんに向かって伸ばされる大きな木の枝を火の魔術で焼き払い、私はエルフリアさんを抱きしめて、ベッドから飛びのいた。

 そして、手のひらを木にかざしながら周囲の様子を伺う。

 どうやら私達が寝ている間に、部屋の中には木の枝が根の様に壁や床を張っている様で。

 部屋のどこにも安全地帯は無いように見る。

 

『今のは何の音ですか!? アリーナ様!? アリーナ様!』

「カーラさん! 何者かの襲撃です! 騎士さんへ連絡をお願いします!」

『襲撃!? 誰か! 誰か! お嬢様が! アリーナお嬢様が大変です! 騎士を呼んでください!』

 

 外でカーラさんが走り回る音や、扉をこじ開けようとする音が聞こえるが、扉は木の根が張っており、おそらく開けるのは難しいだろう。

 そして、窓の方も太い木の枝がガラスを割りながら入ってきている為、入る事は困難な様に思える。

 

「しかし、困りましたね……まさか火で燃えない木とは」

 

 更に最悪な事は、私が先ほど燃やそうとした木は何ごとも無かったかの様に炎を打ち消して、変わらずそこにいたという事だ。

 生半可な炎では燃やせないという事だろう。

 非常に厄介だ。

 

「むにゃむにゃ。ありーな? どうしたの?」

「エルフリアさん。起きて下さいましたか。実は大変な事になってまして」

「たいへん~? って、わ!? な、なにこれ!?」

「分からないですが、私が起きた頃には、窓から太い木の枝が入ってきて、根の様な枝が部屋中に張り巡らされている所でした」

「た、たた、たいへんだ。転移!」

 

 周囲の状況に慌てたエルフリアさんがいつもの様に右手の人差し指を天に突き刺して転移と叫んだ。

 しかし、何も起こらない。

 

「あれ?」

「どうしたんですか? エルフリアさん!」

「そ、それが、転移出来ないの! 転移! 転移! てーんい!! だめだぁー」

 

 エルフリアさんはフニャフニャとしながらその場にへたり込んでしまう。

 絶体絶命であった。

 窓の外、中庭の方からは騎士さん達が剣で部屋の中に入ってきている枝を切ろうとしていたが、どうにも出来ておらず。

 扉の方も破ろうとしている声が聞こえるが、扉はビクともしていなかった。

 

 そして、私たちの前にはジワジワと部屋を支配しながら迫る太い木の枝がある。

 どうすれば……せめてエルフリアさんだけでも逃がさないと。

 魔力喪失事件を解決出来なくなる!

 何か、何か手段は……!

 

『アリーナ!』

「この声!」

「ど、どうしたの? アリーナ?」

「いえ。今声が……」

 

『私が脱出の為の道を開く。だから、その道を使ってエルフリアと一緒に脱出して!』

「わ、分かりました!」

「え? なに? アリーナ? 何と話をしてるの!?」

 

『エルフリアの手を握って、転移の魔法を使うのよ』

「で、でも、私、転移の魔法なんて」

「ねぇ、アリーナ! 何の話をしてるの!? ねぇ!」

『大丈夫。私が導くから!』

「でも」

『このまま死んでも良いの!?』

 

 シルヴィアさんの声に私はハッとなってエルフリアさんを見た。

 このままエルフリアさんが傷つく、命を落とす事だけは絶対に避けなくてはいけない。

 私は覚悟を決めた。

 出来るか分からないけど、エルフリアさんとシルヴィアさんを信じる!

 

 転移の魔法を使おう!

 

「エルフリアさん。失礼します」

「わ、え? え? アリーナ? なに? どういうこと?」

 

 私はエルフリアさんを抱きしめて、シルヴィアさんの言う通りに転移の魔法を使うイメージをした。

 今まで何度も見てきた魔法だ。イメージだけなら私でも出来る。

 私は気持ちを集中させて、エルフリアさんの力を借りながら転移の魔法へと意識を繋げた。

 

『それでいいわ』

「え? コレ! 転移の魔法!? アリーナ!?」

『さぁ! アリーナ!』

「駄目! アリーナ!」

 

「……転移」

 

 瞬間、部屋は金色の光に包まれて、私はいつも慣れた転移の感覚を受けたまま、部屋からどこか開けた場所へと転移するのだった。

 地面に転がり出る時に、エルフリアさんの体を強く抱きしめながら地面を転がる。

 

 そして、衝撃が落ち着いてから私は、ゆっくりと目を開くのだった。

 

「ここは……エルフリアさんの森の中……?」

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