ぼっちエルフは転生者に狙われてる   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第5話『私は壁。そう。ただの壁で良い』

 エルフリアさんとのお話の最中に、私とエルフリアさんを狙う方々が現れ。

 そんな方々を止めるべく、お義兄様が現れ。

 何故か壁になる事が出来る女性も現れ。

 

 状況は非常に混乱していた。

 その為、私たちはひとまず状況を整理しましょうと、話し合いをする事になった。

 のだが……。

 

「エルフリアさん」

「……!」

 

 私の言葉にエルフリアさんは凄い勢いで首を横に振る。

 嫌なのだろう。

 言葉にしなくても良く分かる。

 

「申し訳ございませんが、エルフリアさんの家は入れませんので、お外で話しましょうか」

「私は全然構わないわ! 汚れない様に壁になって地面に倒れようか!? フンス! フンス!」

「あ、いえ。結構です。踏みつけるのは申し訳ないので」

「あら、そう……」

 

 優しさから? 汚れない様にと提案して下さった女性に断りを入れると、何故か女性は酷く残念そうな顔で落ち込んでいた。

 よく分からない人だ。

 

「アリーナ。この変態は放っておきなさい。教育に悪い」

「は、はい」

 

 私はひとまずエルフリアさんと共に、やや開けた場所まで歩いてゆき、そこでお義兄様と女性が話す話を聞く事にするのだった。

 一応お二人の心を視ながら。

 

「それで? 先ほどの話の続きをさせて貰おうか」

「えぇ、でもその前にやるべき事があるんじゃないかしら!?」

「やるべき事?」

「自己紹介でしょうが! はじめまして~。から始めるのが人間関係ってモンよ!」

「……まぁ、確かに。これは失礼をした。私はヘンリー・エル・ミンスロー。アリーナの義理の兄だ」

「これは丁寧にどうも(義理の兄、ねぇ。そんな設定無かった気がするけど。まぁ、転生者だし。アリーナたんに近づこうとしたって可能性もあるか)」

 

 お義兄様のご挨拶に女性はニッコリと内心の疑惑をまったく表に出さない様にしながら、微笑んで、言葉を続けた。

 

「私はクロエ。ただのクロエよ。冒険者をやっているから、二つ名は色々あるけど。ここでは省かせてもらうわ」

「分かった(クロエか。家に戻ったら調べるとするか)」

 

 お義兄様はどこか冷たい目でクロエさんを見ながら目を細める。

 二人の間に沈黙が流れ、私はハッとなり、自分の胸に手を当てながら、自己紹介をした。

 

「あ、私は、アリーナです。アリーナ・エル・ミンスロー。ミンスロー家の長女です。そして、お義兄様の妹です」

 

 私は何とかご挨拶出来たとホッとしながら、エルフリアさんの肩を叩く。

 お義兄様、クロエさん、私と続いたのだから、最後はエルフリアさんだ。

 

「……!」

「いやいや、では無くてですね」

「……!」

「えー、あー。では私から紹介させていただきますが、よろしいですか?」

「……!」

「分かりました。では私から……こほん。お義兄様。クロエさん。この方はエルフリアさん。エルフのエルフリアさんです」

「……なるほど(やはりエルフリアなのか。しかし、エルフリアがアリーナと関わるとは、どういう状態なんだ)」

「助かるわ。アリーナた……いえ、アリーナさん(ファー! ファー!! これはもはや実質姉妹百合! 甘えん坊で妹ちゃんが居ないと何も出来ないお姉ちゃんエルフリアたん! と! しっかり者のアリーナたん! ハァー! ハァー! 神ィ!)」

 

 微笑んだまま私たちを見ているクロエさんの、心の叫びを見て、思わず私は笑顔を崩しそうになってしまうが、何とか抑える。

 がんばれ! アリーナ!

 

「では自己紹介も済んだことだし。情報の共有をさせて貰おうか」

 

「えぇ。構わないわよ。とは言っても、私が持っている情報はさっき全部言ったけどね。ここはゆりパラ。いわゆる百合ゲーの世界よ。ゆりパラは主人公の見た目、年齢、職業、生まれ! あらゆる要素が自由にカスタマイズ出来て、好きな子と百合百合出来るんだけど、主人公が攻略しない子同士でもカップリングが生まれるっていう……世界全てが百合に包まれている伝説のゲームよ。ちなみに私はクリ×アリ推しよ。でも自然に出来たカップリングを否定するつもりは無いわ。百合は全て、尊いから……!」

 

 キリッとした顔で放たれたクロエさんの言葉の意味は殆ど分からなかったけれど、どうやらそれはお義兄様も同じな様で、私は少しだけ安心した。

 しかし、お義兄様もまたよく分からない話をし始めてしまったため、やはり私は頭が混乱してしまうのだった。

 

「俺も前に話した通りだ。この世界は前世で妹がやっていたゲーム。【白に染まる乙女の花】と非常に酷似している。アリーナの存在も、エルフリアの存在も。だから俺はこの世界が、そのゲームの世界だと認識したんだが」

「私とか、例の荒っぽい彼が違うゲームの話をしているから、どういうこっちゃねん! ってなってるって話でしょ?」

「そうだ」

「勘違いしてるって可能性はないの?」

「三人の内、二人がか?」

「まぁー、無いか。その可能性は薄いよね」

「同時に嘘を吐くという可能性も薄い。意味も無ければ必要さも感じない」

「そりゃそうだ」

 

 二人はうーんと腕を組みながら考え始めてしまった。

 私は今のところ、お話にはまったく付いて行けていないので、聞いているだけである。

 

 が、そんな私と同じ様に、話に付いて行けていないエルフリアさんが私の服をちょいちょいと引っ張る。

 

「どうしました? エルフリアさん」

 

 エルフリアさんは大きな声で話したくないのか、私の耳元で私にだけ聞こえる声で話しかけてきた。

 

「ね、ねぇ。もうお家に帰ろう? わたし、疲れちゃった」

「それも良いですけれど。もう少しだけお話聞きましょう? 私たちにも関わる話みたいですし」

「でも……」

「ほら、眠いなら、私の足を枕にして寝ていても良いですから」

「……うん」

 

 エルフリアさんはモソモソと動いて、私の足に頭を乗せながら横になった。

 当然と言えば当然だが、視線はこちらに向いている。

 

 エルフリアさんは恥ずかしがり屋さんなのだ。

 

 私はそんなエルフリアさんが可愛くて頭を撫でながら笑いかけるのだった。

 何だか妹が出来た様な気持ちである。

 

「えへへ。ありーな」

「はい。エルフリアさん」

 

「……っ!(てぇ……てぇー!!! やばーい!! ヤバイでーす!! アカーン! これは死ぬゥ! い、意識が持っていかれる。魂が、ぐはっ! この私がァ! クリ×アリ派の私がァ! アリ×エルに萌えているだとぉ!? 良いだろう! 構わん! もっと来ーい! 世界を萌えで満たせ! 我が生涯に一片の悔い! ……ぐぎぎ、まだある。悔いあるよぉ!? もっと萌えを見るまでは死ねん! この魂、燃え尽きるまで! 私は死なん!!)」

 

 ……本格的に、クロエさんが怖くなってきたため、私はこれ以上視ない様に、目を閉じた。

 そして、小さく息を吸って、吐いてを繰り返して、微笑みを浮かべたままお義兄様とクロエさんへと視線を戻す。

 甘える様に私の手をにぎにぎしているエルフリアさんをそのままに。

 

「……に、にこ?」

「はぁー。とにかくだ。これ以上貴女と話をしていても平行線だと分かった。この世界の事はもう良い」

「まぁ、そうね。私は嘘を言ってないし。貴方も嘘を言っていないと言っている。なら、この話は終わらないわ」

「あぁ。だから、世界の事は置いて。一つだけ確認したい事がある」

「何かしら」

「貴女の目的はなんだ。アリーナをどうするつもりだ」

「どうもしないわ。私はただの壁。今日も明日も変わらず百合を見守るただの壁」

「干渉するつもりはない。という事か?」

「そうね。触れるつもりはないわ。芸術品を触ってみたいなんて、子供じみた考えは持っていないもの」

「なら……」

「だから、ね。私はたった一つの信念で動くわ」

「信念?」

「そう。これは宣戦布告と言っても良いかもしれない」

「……」

「私は百合の守護者。例え過激派だ、百合厨だと罵られても変わらない。自然な形以外で、百合を踏みにじろうとする者が居るのならば、私はその全てから彼女たちを守る。ただそれだけだわ」

「……そうか」

「話は以上よ。じゃあ私は行くわね。これ以上は私が百合の間に入るお邪魔虫になってしまう」

「……」

「私は壁。そう。ただの壁で良い」

 

 クロエさんは空を見上げながら切ない声で呟き、どこかへ消えていった。

 転移魔法では無いと思う。

 お義兄様と同じ、私には見えない速度で走り去ったのだろう。

 

 そして、お義兄様もまた、深いため息を吐くとその場で立ち上がった。

 

「じゃあ私もそろそろ行くよ。アリーナ」

「は、はい。お気をつけて」

「アリーナも。無茶をしてはいけないよ」

「わかりました」

 

 私はいつもの様にお義兄様へと微笑みながら頷いた。

 この後、お義兄様はどうするのだろう、なんて考えながらお義兄様の言葉を待っていたのだが。

 飛んできた言葉は衝撃的な物だった。

 

「そういえば、アリーナ。君が探していた魔女の書だけど」

「はい」

「どうやら何者かに盗まれたようだ」

「えぇ!?」

 

 お義兄様は酷く残念そうな顔で私の頭を撫でる。

 

「おそらくは魔女の書を利用しようとした者が持っていたのだろう」

「……そんな」

「魔女の書は私の方で探しておくが、アリーナはどうする? もうこの森に居る理由は無くなっただろう?」

「私は……」

 

 魔女の書が森にないと聞いて、私はどうするべきかすぐに答えが出せずグルグルと頭の中で思考を巡らせてしまうのだった。

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