ぼっちエルフは転生者に狙われてる 作:とーふ@毎日なんか書いてる
森へ来た目的である魔女の書が行方不明になったという事で、私はやるべき事を見失ってしまった。
これからどうするべきか。
そんな事を考えつつ膝の上に頭を乗せながら気持ちよさそうに寝ているエルフリアさんの頭を撫でる。
「困りました」
私はうーんと考えながら、撫でている私の手をにぎにぎとしながら笑うエルフリアさんに視線を落とす。
エルフリアさんは何だかとても楽しそうにしていた。
「エルフリアさん」
「んー? なぁに? ありーな」
「一つ相談をしても良いでしょうか」
「そうだん? うん。相談!!?」
「わ」
エルフリアさんは体をガバっと起こすと、私の手を握ったまま私に迫る。
酷く興奮している様子で、目がキラキラと輝いていた。
「相談! 知ってるよ! 困ったなーって事を聞いて! 解決すると、とっても仲良しになれる奴だよね!」
「えぇ。そうですね」
「むふふ。いいよいいよ。聞く聞く! 私がぜーんぶ解決するよっ!」
「それは頼もしいですね」
自分の胸を叩きながら、自信満々な顔で頷くエルフリアさんに私は微笑み、今の悩みを打ち明けた。
「実はですね」
「うんうん」
「私の求めていた魔女の書がこの森から無くなってしまった様なのです」
「魔女の書? ってなぁに?」
「えと、魔女の書はですね。様々な魔法を生み出した魔女様が書き記した魔法の本でして、その本を読めば多くの魔法を使う事が出来る様になるのです」
「ふーん」
「……エルフリアさんはあんまり興味無さそうですね?」
「うん」
まぁ、エルフリアさんは色々な魔法が使えるから、あまり魅力的に思えないのかもしれない。
なんて考えながら私は続く言葉を口にするのだった。
「そんな魔女の書なのですが、私にはとても必要な物だったので、それが無くなってしまい、困ってしまっているという訳です」
「アリーナはなんで、その本が欲しいの?」
「私には、問題を解決するだけの力が無いからです」
「……」
「このままでは食糧危機が起きると分かっていても、回避する事も、皆さんが食べる食料を確保する事も出来ません。争いが起きると分かっていても、止める事も、傷ついた人々を癒す事も出来ません。ですが、私は……! むぎゅ!」
「駄目だよ、アリーナ」
「エルフリアさん……?」
私が訴えようとした言葉は、エルフリアさんが私の頬を両手でむにゅむにゅとした事で中断されてしまった。
そして、真剣な眼差しで私を射抜きながらエルフリアさんがゆっくりと言葉を紡ぐ。
「人はね。そんなに多くの事が出来る訳じゃないんだよ、アリーナ。出来ない事もいっぱいあって。だから色々な人と協力しながら生きていくんじゃないかな」
「……エルフリアさん」
「だから、さ。ま、まぁ……私は、その……アリーナのお友達だから? アリーナがどうしてもって言うのなら、協力するけどね? 出来る事だけだけど!」
前は嫌だと言っていたのに、私の事を想って、そんな風に言ってくれるエルフリアさんが優しくて、嬉しくて。
私は思わずエルフリアさんに抱き着いてしまった。
「エルフリアさん!」
「はっ!? わ!? わ!!? なに!?」
「ありがとうございます。私、嬉しくて」
「そ、そう? まぁ、アリーナが嬉しいなら良いけどね? ほら、私とアリーナは、友達だしさ? へへ、えへへ」
「はい。そうですね。お友達。ありがとうございます」
「と、当然だよ」
どこか浮いている様な声を発するエルフリアさんをさらに強く抱きしめながら、私はエルフリアさんにお願い事をする。
もう一度だけ。
エルフリアさんにお願いしてみよう。
「エルフリアさん」
「な、なにかな? へへ」
「私、世界中の困っている方々に、支援がしたいのです」
「え、あー、いや、それは」
「お願いします。エルフリアさん、私、その代わりに。エルフリアさんのお願いを何でも聞きますから」
「な、何でも!?」
「はい。だって、お友達ですもの」
「お、と、も、だ、ち! そ、そうだよね! お友達だもんね! 良いよ! 全然協力しちゃう! 何でも言って! 私も何でも協力するよ!」
「ありがとうございます」
こんなに嬉しい事があるだろうか。
エルフリアさんも嬉しそうに笑っているし。
この出会いはきっと神様が与えてくれた運命なのだろう。
「えへっ、えへっ、お友達……!」
「はい。お友達です」
そして、その日はずっと嬉しそうなエルフリアさんと一緒に水浴びをして、ご飯を食べて、眠り。
次の日、私は改めてエルフリアさんに今後についての相談をした。
「では、エルフリアさん。早速ですが、まずはミンスロー家に行きましょう。領地を回るのに、お父様とお母様に許可をいただきませんと」
「え? 何の話?」
「昨日話した話ですよ。ほら、世界中の困っている人を助ける為に協力して欲しいです。っていうお話です」
「あ」
「もしかして、気が変わってしまいましたか?」
少しだけ、不安になり、エルフリアさんに問う。
エルフリアさんは人とお話するのが、嫌だと言っていたし、もしかしたら嫌になってしまったかもしれないと。
「……そ、そんな訳ないよ! うんうん。世界中を旅するんだよね? 分かってるよ。エルフリア。ちゃんと覚えてる」
「それは良かった!」
私は両手を小さく叩きながら安堵し、笑みを浮かべた。
私一人では出来ない事も、エルフリアさんが協力してくれるなら、これ以上に心強い味方は居ないだろう。
「あ、あはは、と、トーゼンだよ。ハハ」
「……本当に大丈夫ですか? ご無理は」
「大丈夫! 大丈夫だよ! だって、アリーナは友達だもんね! ね? エルフリアの友達! ね!?」
「え、えぇ。はい。エルフリアさんは大切なお友達です」
「そう! なら! だから! 私はダイジョーブ! 安心して欲しい!」
「そういう事でしたら、分かりました」
私はこれ以上は何も言うまいと口を塞いだ。
そして、不安そうに視線を彷徨わせているエルフリアさんを呼び、エルフリアさんが大好きな膝枕をして、落ち着く様にと祈りながらその頭を撫でるのだった。
「ありーな」
「はい。なんでしょうか」
「何か。お話して。面白い話」
「面白いお話ですか。では、以前お義兄様に伺ったお話をしましょうか」
私は幼い頃にお義兄様が何度も話してくれた話を思い出しながら語る。
「むかしむかし。あるところにお爺さんとお婆さんがおりました」
「ふんふん」
「お爺さんは山へしばかりに、お婆さんは川へ洗濯に行きました」
「しば?」
「火を燃やす為の小枝の事だそうです。寒い冬を乗り越える為に、火を燃やす為に必要な小枝を拾ってきたという事ですね」
「ふーん。魔法を使わないんだ。なんでだろ?」
「うーん。もしかしたら、火の魔法が上手く使えなかったのかもしれません」
「ナルホド。大変そうだなぁ」
「そうですね」
エルフリアさんの指摘は確かにと頷く物だった。
この後、桃太郎という名前の騎士さんが、鬼という魔物を倒しに行くという話だったが。
もしかしたら、桃太郎さんも魔法があまり得意では無かったのかもしれない。
だから、魔法を使わず、剣だけで戦っていたのだろうか。
そう考えると、魔法が世界に広まる前のお話という可能性もあるのかなぁ。なんて思ったりもする。
「そして、そんな日々を送っていたお爺さんとお婆さんですが、ある日、川で洗濯をしていたお婆さんのもとに川の上の方から大きな桃が……」
「どんぶらこっ!」
「どんぶら、こぉー!」
「っ!?」
どこからか突然響いた声に私が顔を上げると、その声の主を私はすぐに発見する事が出来た。
エルフリアさんの家の入口に、腕を組みながら立っている。
「その物語はぁー! 我らの故郷に伝わる伝説のぉー! 物語っ!」
「桃太郎を知っているとは、アリーナ・エル・ミンスロー! やはり転生者かっ!」
「テンセイシャ?」
「アリーナ、テンセイシャってどういう意味?」
「……私もちょっと分からないです」
「えぇい! 誤魔化すでない! お主の正体は既に見破っているぞ!」
「ロリの体に成人の魂が宿れは、もはやそれはロリではない! エセロリめ! 正体を明かせ!」
どうすれば良いのだろうか。
言っている言葉の殆どが分からない。
が、何か誤解があるならば解かなくてはいけないと、私は口を開こうとした。
しかし。
私が動くよりも前に、エルフリアさんが男性二人に手を向けながら怒ったような声を出す。
「アリーナは私のお友達! ひどい事を言うなら、許さないよっ!」
「え、エルフリア殿! 誤解でゴザル! 我らは真なるロリの護り手で……」
「うるさい! うるさい! どっか行っちゃえ!」
「ぬわー!? なんだ、この突風はー!?」
「拙者! うるさいより、うるちゃいの方が萌え……るっ!」
大騒ぎしていた男性方はエルフリアさんの魔法により家の外へと飛ばされた。
そして、エルフリアさんは私の手を握り、「逃げるよっ!」と短く言って、ここではないどこかへと転移するのだった。