ぼっちエルフは転生者に狙われてる   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第9話『まさに天を照らす神。天照大御神よ……!』

 無事挨拶も終わった私とエルフリアさんはそのまま部屋に戻り、同じベッドで寝ることになった。

 

「え!?」

「どうしたんですか?」

「お嬢様と、エルフリア……さんが同じベッドで?」

「はい。エルフリアさんのベッドはありませんし。エルフリアさんも一緒の方が良いみたいですし」

「……」

 

 驚き、目を見開いているメイドのカーラさんに視線を返しながら私はエルフリアさんへと視線を移した。

 

「エルフリアさんはどうですか?」

「私はアリーナと一緒で良いよ」

「で、いいよ? だぁ?」

「カーラさん?」

「なんでもありませんよ。お嬢様」

 

 ニッコリと微笑むカーラさんはいつもと何も変わらなくて。

 エルフリアさんはもうベッドの上で横になりながらまどろんでいる様だった。

 

 今日は移動も多かったし、色々な人にもあったし、しょうがないよね。

 

「では、私もそろそろ寝ますね」

「はい。お嬢様。何かあればすぐにカーラをお呼びください」

「わかりました」

「少しでも違和感があればすぐに! すぐに呼んでくださいね! いつでも駆けつけますので! 触れた様な感触とか! 舐められた様な感触とか!!」

「あーもー、うるさい」

「うわっ! お嬢様! お嬢様ぁー!」

 

 エルフリアさんは、ねむいねむいと言いながらカーラさんを魔法で外に追い出し、扉を閉めてしまった。

 扉は開かない様になっている様で、外からカーラさんの声が響いているが、扉は少しも動かない。

 

「カーラさん。ではおやすみなさい」

『お嬢様! お嬢様! そこは危険です! お嬢様ぁー!』

「大丈夫ですよ。このお屋敷にはたくさん騎士さんがいらっしゃるんですから」

 

 私は心配性のカーラさんに言葉を返し、そのままベッドの方へ歩いて行った。

 そして既に半分くらい眠り始めているエルフリアさんの隣で横になる。

 

「ねもい」

「ふふ。では寝ましょうか」

「ね、つかれた」

「そうですねぇ。今日は大冒険でしたね」

「……うん」

 

 ウトウトと重い瞼を何度も持ち上げようとしているエルフリアさんに微笑んで、私はエルフリアさんの手を握った。

 そして、ここに居ると言葉を掛けて、私自身も目を閉じる。

 

 長い、長い旅をしてきた様な気持ちだ。

 しかし、これからもっと長い旅が始まるのだろう。

 明日からの世界が少しでも良い世界になる事を願って、私は眠りの世界へと旅立った。

 

☆☆

 

 いつもよりもずっと深く眠れた朝。

 私はベッドで目を覚まし、隣で寝ているエルフリアさんを起こさない様にしながら上半身を起こして伸びをする。

 疲れもなく、スッキリとしている朝だ。

 

「良い朝ですね」

 

 ベッドを降りて、窓に付いている白い大きなカーテンを開ける。

 まだ薄暗いが、外は少しずつ陽の光が差し込んでおり、穏やかな空気が流れている様だった。

 

 私はそのまま大きなガラスで出来た窓を開いて、外へと出る。

 以前は出来なかったが、今は裸足で外に出る事もためらいは無かった。

 エルフリアさんの家で過ごした経験が、私から小さな恐怖を消し、大きな勇気を与えた様だ。

 

 一歩ずつ慎重に、芝生の上へと足を踏み出す。

 地面は私が想像していたよりも柔らかくて、私の足をそっと受け止めてくれた。

 

「ふふ。気持ちいい」

 

 エルフリアさんはまだまだ眠っている様だし、使用人さん達も今は忙しくしているか、眠っている事だろう。

 私は誰にも迷惑をかけない様に寝間着のまま、庭を一歩一歩と楽しみながら踏み歩くのだった。

 

「な、なな、何という事だ!?」

「っ! どなたですか!?」

「幼女に名乗りを求められている! ならばぁー!」

 

 見上げるくらい高い家の屋根から二人の男性が私の前に飛び降りてくると、右腕を空に向けながら叫ぶ。

 

「我はぁー! 幼女が大剣振り回しているのを見るのが好きなサムライィィィイ! 義によって助太刀いたす!」

「拙者! 幼女が刀を武器として、強者と渡り合っているのを見るのが好きなサムライ! 義によって助太刀いたす!」

 

「ぎ?」

「義とは魂の事でゴザル!」

「なるほど。魂、命ですか」

 

 私は自分の胸に手を当てながら正解を問うた。

 だが、男性二人は何故か地面に倒れ、転がり始めてしまう。

 

「だ、だいじょうぶですか?」

「構わないで下され! 悶えているだけでゴザルぅ!」

「うぇっ! うえっ! 命が削られる感触がするぞぉー! きもてぃぃぃいいー!」

「い、命が削られている!? 大丈夫ですか!?」

 

 私は痛い所でもあるのかと、ひとまずうつぶせで倒れている人の背中を撫でた。

 だが、その人は跳ねながら再び勢いよく転がって行ってしまう。

 

「こ、これは! やはり! 兄者!」

「あぁ、間違いない。アリーナ殿は、転生者ではない!! 本物の! 天然もののロリだ!」

「なんたる! なんという失態! この罪、切腹程度では贖えぬぞ!」

「しかしまぁ、それはそれとして切腹はしよう」

「せやな」

 

 先ほどまで勢いよく地面を転がっていた二人は地面の上に座り込み、姿勢を正したままキラリと輝く刃物を取り出した。

 そして、お腹に対して横に刃物を持つと、自分に対して向けようとする。

 

「ちょ、ちょっ! ちょっと待ってください! 何をしようとしているのですか!?」

「何って、切腹でゴザル」

「そう。アリーナ殿を傷つけようとした罪を贖わねば」

「いりません! いりません! 私は何もされていませんから!」

「おぉ……! 何という慈悲」

「まさに天を照らす神。天照大御神よ……!」

 

 たまにいる暴走しがちな街の人と同じような反応だなぁと思いながら、何とか自分を傷つけるのは止めてもらった。

 一瞬心の中でごめんなさいをしながら、心の中を覗いてみたが、特に喋っている言葉に嘘は無いらしく。

 ミンスロー家やエルフリアさんに何か悪い事をしにきたという事では無いらしい。

 一安心だ。

 

「それで、お二人はどうしてこの家に?」

「無論。世界の闇から幼女を守る為でゴザル」

「幼女は世界の宝ゆえ」

「なるほど? よく分かりませんが、誰かを守る為にここへ来たと」

「左様」

「命に代えても」

 

 私は聞きたい事を聞き終えて、独特な話し方をする方々にお礼を言った。

 そして、そろそろエルフリアさんが起きてくるかもしれないし、お部屋に戻ろうと男性方に別れを告げた。

 しかし。

 

「お待ち下され」

「はい。なんでしょうか?」

「アリーナ殿はこれから何を?」

「えと、エルフリアさんが起きてきたら朝ごはんでしょうかと」

「あー、これは聞き方が悪かった。これからアリーナ殿はエルフリア殿と何を目的として旅をする予定でゴザルか?」

「あ、そういうお話ですか。それでしたら、まずはミンスロー家の領地を巡って今起こっている問題を解決するつもりです。その先は、順番に範囲を広げて、いずれは世界を回りたいと思っていますよ」

「なるほど」

「で、あれば! レスター王子にはお気をつけを」

「レスター王子殿下に、ですか?」

「はい。レスター・リ・パウダはおそらく転生者であると思われます」

「テンセイシャ。以前もその名前は聞きましたね」

「はい。この世界に来た侵略者の様な者たちです。彼らはエルフリア殿を狙っています」

「エルフリアさんを……!」

 

 ビックリして声を出してしまったが、少し考えればわかる。

 エルフリアさんは伝説の魔女様と同じくらい魔法が使えるのだ。

 あの力を求める人が居るのはおかしな事じゃない。

 

 それに、もしかしたら魔女様と同じ様に世界の中心にエルフリアさんを封印しようとする人が現れるかもしれない。

 それはとても怖い事だ。

 

「はい。ですので、レスター王子には近づかれぬよう」

「しかし、レスター王子殿下はこの国の王子殿下ですし。会わないというのもまた難しい話ですね」

「あ、そういえばそうじゃん。おい。どうするんだよ」

「どうするって言われてもなぁ。どうする? やっちゃう?」

「アリ寄りの……アリ! やっぱ暗殺すっか。アイツ」

「暗殺!?」

「あ、ヤベ」

「バカ! アリーナちゃんの前でポロリしてんじゃねぇよ!」

「いやー。スワンスワン」

「何が白鳥やねん!」

 

 アハハと明るく話しているが、とんでもない事を考えている人たちだ。

 流石に王子殿下のお命を狙っている人を見過ごす訳にはいかない。

 エルフリアさんを狙っているとしてもだ。

 

 命を奪うというのは駄目だと思うのだ。

 

「も、申し訳ありませんが! お二人を捕まえます! 騎士さん! 誰かいませんかー! 騎士さーん!」

「アリーナ様の声がしたぞ!」

「どこだ!」

「中庭だ!」

 

「ウゲー! なんと迷いのない行動!」

「これなら安心してエルフリアさんとの二人旅を見守れるな」

「言ってる場合か! 逃げるぞ!」

「アイサー! ではアリーナ様! レスター王子にはくれぐれも気を付けて下さい。あのロリコン野郎は貴女も狙っているのです! どうか気を付けて―!」

「あっ!」

 

 私が呼んだ騎士さん達が来るよりも前に、男性二人は人間離れした跳躍力で屋根の上まで飛び移り、そのままどこかへ走り去っていった。

 私は少ししてからやってきた騎士さんに事情を話し、彼らの行方を捜索して貰ったが、結局捕まえる事は出来ないのだった。

 

 王子殿下が暗殺されるかもしれない。

 その言葉は私の心に一つの影を落とし、私は殿下にお話をしに行こうと心に決めるのだった。

 彼らの言っていた言葉を気にしながら。

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