You got a mall!
は・・・ちょっと違うか?
それはともかく日曜日。
今日、4月18日は自由行動日である。
毎朝恒例のランニングから戻ると、郵便受けの中に手紙。
内容は生徒会から回された仕事である。
もっと細かく言えば、その中の生徒会宛の依頼。
依頼は学院内だけでなく、街の人々からもあるようだ。
数は3つ。
もうちょっと多くても大丈夫なんだが・・・。
と思ったら、何か妙な依頼がある。
一言でいえば『旧校舎に異変』ということ。
やっぱあれか。
俺の中の鬼がざわめいていたことと関係があるのか。
旧校舎の調査は午後一杯かかると見た方がいいだろう。
導力器の配達なら町全体が範囲と見るべきか。
となると学生手帳の捜索を最初に持ってきた方がいいな。
学院内で済む確率が100%ではないが高い。
さて、そうと決まれば早速学院へレッツゴーだ。
確か学生会館1階で待っていると書いてあったな。
学生会館に入ると、学食の椅子に一人の女子が座っていた。
他の生徒が誰も居ないということは・・・。
「1年Ⅳ組のコレット・ブルーム、で、合ってるよな?」
まずは確認。
「うん、そうだけど・・・貴方は?」
「生徒会代行で来た。依頼は学生手帳の捜索、でいいよな?」
「うん、あってる・・・けど、代行? 生徒会に入ったわけじゃなくて?」
「只の手伝いさ。生徒会の負担を減らせれば、と思ってね」
もっと言えば生徒会長の、だけど。
「へぇ、そうなんだ・・・。凄いね、特科クラスって。同じ1年なのに全然違うね」
「そんなことは無いと思うぞ。さて、早速始めよう。詳細を聞かせてくれ」
「うん。手帳を失くしたことに気付いたのは昨日の放課後で・・・」
話を聞いて、とりあえず本校舎の方面を捜索開始。
1年Ⅳ組の教室は捜索済み。
かつ他の教室には入っていないということで、廊下や休憩スペースを捜索。
結果、2階の談話スペースに学生手帳を発見。
勝手にだが、中も確認して名前も一致していることを確かめた。
「というわけで、これ。念のため確認してくれ」
学生手帳を手渡し、本人の確認を待つ。
「・・・うん、間違いない。私のだ。ふぅ、本当に良かったぁ」
「なら良かった。依頼は無事完遂って会長に伝えておくよ。コレットは自由行動日を楽しんでくるといい。まだ午前中だし、十分取り返せるさ」
「ありがとう。でも、あそこって落としやすいのかなぁ? 前にも落としたことがあったんだけど、その時は音がしたからすぐに気付けたの」
ズボンやスカートのポケットに入れていたのなら、座った時に落としやすいな。
だから多分・・・
「学生手帳ってスカートのポケットに入れてるのか?」
「うん、そうだけど・・・?」
やっぱりか。
「制服の上着に内ポケットがあるのには気付いたか? そこなら滅多に落とすことは無いだろう。俺もそこに入れているしな」
「え!? ・・・あ、ホントだ。こんなところにポケットあったんだ」
気付いていなかったようだな。
だが、これで一応は大丈夫だろう。
「ありがとう。あ、そうだ。世話になりっぱなしっていうのもあれだし、お礼に、これを貰ってくれないかな?」
コレットが差し出してきたのはシルバーのアクセサリだ。
唯でもらうにはちょっと高すぎる代物だと思うんだが・・・。
「いや、受け取れないよ。これはちょっと高価すぎる」
「気にしないでいいよ。間違えて2個同じのを買っちゃったものだから。自分で二つ持っているのもあんまり意味がないし、受け取って貰った方が私も気が楽だから」
「そうか、そういう事ならありがたく受取るよ。サンキュな」
「それはこっちのセリフだよ。今日は本当にありがとう。それじゃあね」
「おぅ、じゃあな」
依頼完了。
さて、次の依頼は・・・技術部か。
ジョルジュからかな?
「やぁ、リィン君。今日も来てくれたんだね」
彼の台詞からもわかるように、俺はよくここを訪れる。
1~3日くらいに1回の頻度でだ。
「実は、今日は別件なんだ。生徒会長から依頼の一部を回してもらってね」
「トワが? そうか、リィン君がだったのか。いやね、昨日、トワから聞かされていたんだよ。仕事を手伝ってくれる後輩ができて、代わりに修理品の配達をやってもらうってことになったから、依頼の文書を簡単にでいいから書いてくれって。多分、トワは僕たちが既に知り合っていることを知らないと思うよ」
確かに。
知っていたら俺かジョルジュのどちらかに話は通ってるはずだ。
「会長とは親しいんだ?」
「まぁね。実は、僕とアン、それにトワとあともう一人で君達Ⅶ組の試験版のようなものをやっていたんだよ。だから僕らは親友なんだ」
「ああ、アンジェが言ってたⅦ組の前身か。もう一人ってクロウ・アームブラスト先輩?」
「あれ? クロウのことも知ってるのかい?」
「まぁね。会長と凄く仲良さげに話してたから」
なるほど、と頷くジョルジュ。
さて、そろそろ本題に入らせてもらおうか。
「それで、配達する修理品ってのは?」
「ああ、この3つだよ」
彼が出したのは3つの小さな箱。
それぞれに機械の名前が書かれた紙が貼ってある。
「まず、導力計測器は本校舎2階の家庭科室へお願いするよ。調理部部長のニコラス君に渡してくれ。二つ目はアンティークの導力灯。トリスタの街、中央商店街の南東のはずれの質屋《ミヒュト》の店主、ミヒュトさんに届けて欲しい。三つ目が導力腕時計。場所は中央商店街の南西にあるラジオ局《トリスタ放送》で、渡す人はディレクターのマイケルさんだ。まず受付の人に言ってマイケルさんを呼んでもらうといい。さて、これで全部だけど、何か質問は?」
「特に無いな。んじゃ、今すぐ行って来るよ」
愛用のウエストバッグに荷物三つを入れる。
よし、準備完了!
「ちょっとまって! 他二つはともかく何でアンティーク灯がそのサイズのバッグに入るの!?」
そういえば、まだ教えてなかったな。
ちなみにバッグはある程度大型だ。
いざって時に何かを取り出しやすくなる。
「このウエストバッグは中が四次元空間になってるんだよ。ほら、ジョルジュにも教えただろ? 俺が魔導異端技術を使えること」
「そうか、魔術でか。じゃあ、そのバッグはリィン君の自作ってことかい?」
「まぁ、そうだな。でも魔術って呼ばないで欲しいんだけど。術式技術、もしくは魔導異端技術っていってくれって最初から伝えただろ?」
「ゴメンゴメン。魔術って言う名前の方が聞きなれてるからね」
全く・・・。
「んじゃ、早速行って来るわ。終わったらもう一度来る」
「うん、頼んだよ」
いざゆかん、レッツ配達!
まずは本校舎2階へ。
家庭科室は入ったことは無いが場所だけは知っている。
いずれ遊びに行ってみようとも思うが今日は配達だ。
遊びに行くのは次の機会ってことで。
「失礼します。調理部部長のニコラス先輩は居ますか?」
家庭科室に入りそう言うと、一人の平民男子が反応した。
「僕がニコラス・ケリオだよ。君は調理部への入部希望者かな?」
「違います。お届け物があってきました」
「届け物? 僕に?」
「技術部より、修理された導力計測器になります。どうぞ」
バッグから箱を出して渡す。
「なるほどね。うん、彼は本当に仕事が速いね。どうもありがとう」
「いえいえ」
「君が届けに来たって言うことは・・・生徒会か技術部の新参者ってところかい?」
「いえ、生徒会の仕事を手伝っているだけです」
「手伝いか。しっかりしているね」
「ありがとうございます」
褒められるのは悪い気はしない。
「ところで、君は料理はするのかい?」
「ええ。高級料理店の手伝いもしたことがあります」
「それは凄いね。じゃあ、せっかくだからこれを持って行ってよ」
ニコラス先輩が出したのはチーズとハーブ。
それぞれ、種類も幾つかある。
「いいんですか?」
「もちろんだよ。これで新しい料理でも作ってみるといいよ」
「ありがとうございます」
「それじゃあ、ジョルジュ君によろしくね」
「はい。それでは失礼します」
さて、質屋ミヒュトってのはここか。
入ったことは無いが・・・。
とりあえず入るか。
「なんだ? ここは学生が遊びに来ていいような場所じゃないぞ」
「お届け物です。技術部より、アンティーク灯の修理が終わりましたので」
「ああ、ジョルジュに頼んでいた奴か。あれがもう直ったんだな」
「はい。こちらになります」
ミヒュトさんにアンティーク灯の入った箱を渡す。
「・・・よし、確かに受け取った。しかしお前さん、今どこから出した?」
「このウエストバッグですが?」
「どう見てもこれが入るようには思えんのだが?」
「中見てみます?」
バッグを彼の目の前で開け、中を見せる。
ちなみに、バッグの中は無重力かつ衝撃なしだぜ。
「お前・・・これをどこで手に入れた!?」
「内緒です。自分で調べてみてください、“情報屋さん”」
「!? ・・・なぜそれを?」
「守護騎士第一位から聞きました。『カーネリア』の作者だってことも」
「そうか・・・」
少し安心したようだ。
あ、そうだ。あれを言ってみよう。
「彼女とはアーティファクトを巡って殴り合ったことがありますよ」
「はぁ!?」
あ、仰天した。
アイン曰く、彼の無表情以外の表情は珍しいらしい。
しっかり覚えたし、後で絵に描いて騎士団宛に送ろう。
「えっ、おまっ、な、何で生きてる!?」
「ちなみにそのアーティファクトは勝ち取ってきました」
「そうか・・・はぁ!? お前何者だ!?」
「リィン・シュバルツァーです♪」
「っ・・・《龍の剣聖》か・・・」
納得頂けた様で何より。
「いいだろう。ならお前にも情報屋として情報の提供はしよう。それから、いくら剣聖クラスの超人とはいえ、学生の身分であるお前にはミラの貸し出しはしない」
「わかってますよ。そもそも金なら十分すぎるくらい持ってます」
「そうか。ああ、それと、ここでは学生向けに物々交換や掘り出し物の売買をしている。そちらの方も、興味があれば利用してくれ。無理にとは言わんが」
「了解。んじゃ、また来ます」
俺は質屋を後にした。
最後はラジオ局。
この世界、ラジオはあるがテレビは無い。なぜだ。
とりあえずレッツゴー。
「トリスタ放送へようこそ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「ディレクターのマイケルさんに、腕時計の修理が終わりましたのでお届けに上がりました」
「かしこまりました。すぐに呼んで参りますので少々お待ちください」
待つこと2,3分。
彼は現れた。
「待たせてすまん。技術部から腕時計を持ってきてくれたようだな。いきなりで悪いが、早速渡してもらえないか?」
「はい、どうぞ」
腕時計をマイケルさんに渡す。
「おお、完璧に直っているし早いな。プロ顔負けの仕事ぶりだぜ。2週間前から新番組が始まっているんだが、今日は手元に時計がないと思うと不安でしょうがなくてな。だが、これで安心して放送できる。届けてくれてありがとうな」
「どういたしまして。新番組ですか。何時からですか?」
「ああ、毎週日曜の夜9時からだ。メインパーソナリティが開始直後から大人気になってな。このトリスタ放送の知名度も一気に上がった。番組名は《アーベントタイム》って言うんだ。意味は“夕べの時間”だな。お前も今夜から聞いてくれよな」
「はい。是非聞かせていただきます」
ラジオなら自作のがあるからな。
前世でも良くあった手回し充電器&ライト付き。
そう、電気式である。
導力波もちゃんと拾えるようにはしてあるけどな。
充電がめんどくさい時は導力電源に切り替えることも可能だ。
つまり、電気式と導力式を切り替えられる。
「それじゃ、ジョルジュ君にもよろしく言っておいてくれ」
「了解です。それでは」
さて、報告報告。
技術棟へ戻ろう。
実は今話と次話、元々1話分で済ませる予定だったんですが、1万字を超えてしまうという誤算が発生したため分割したという経緯があります。
と、いうわけで、今話の反響によっては明日に次話をUPするかも。
既存キャラに勝手に苗字をつけたのは苗字なしだと違和感があるためです。
こうしたほうがいいんじゃないかという意見があれば教えてください。
次回は明日か来週か。
UP後の反響を見て決めます。
それでは!