機動戦士ガンダム Gemini Saga   作:木星市民

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12話 天撃作戦

U.C.0079.01.09 道東某所 マスドライバー地下施設

 

連邦軍の航空機が昼夜問わず、防衛網を維持するように上空を旋回していた。その監視網は厳しく、ツキモリ重工業の地下施設にも強い圧力をかけていた。

 

上空の旋回は単なる監視ではなく、ツキモリ重工業の活動そのものを抑制する意図を持っていた。補給機の発着は制限され、必要な物資の搬入すら滞る——まるで、戦う前に息の根を止めようとしているかのようだった。

 

天撃作戦の情報が連邦軍に漏れたようで、ツキモリ重工業の介入を良しとしない一部の派閥からの妨害を受けていた。

 

「既に第4艦隊は壊滅的な被害を受けているにも関わらず、何故邪魔をする! このまま時間ばかりが無駄に過ぎれば、迎撃のタイミングを失う——それがわからないほど連邦の上層部は鈍いのか!」

 

既に天撃作戦に参加する兵員はこの地下施設に集合を完了しており、カズヤは拳を固く握りしめ、歯を食いしばっていた。

 

作戦の準備は整っている、それなのに目の前の政治的障害のせいで無駄な時間が過ぎていく——それが何よりも許せなかった。

 

「お父様に確認しているけど、どうしても頷かない連中が居るみたい」

 

リリアの言葉に、カズヤは忌々しげに舌打ちした。

 

「連邦の奴らは何を恐れている?このまま何もしなければ、アイランドフィッシュは地球に落ちるんだぞ!」

 

管制室のモニターで上空を確認しているカズヤの後ろから普段なら冷静に現状分析を述べるリリアだったが、今はいつもの余裕がない。

 

彼女の視線は不安を滲ませ、声もわずかに震えていた。彼女自身、この作戦の遅れにただならぬ危機感を抱いていることが、カズヤにはよく分かった。

 

ジャブローでレビルが天撃作戦に反対する者たちと連日、会議を行っていたが状況は芳しく無かった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

U.C.0079.01.09 ジャブロー 連邦軍司令部

 

「この作戦を容認すれば、軍の統制が乱れる」

 

「ツキモリの独断は許されない」

 

そんな言葉が飛び交う会議室では、レビル将軍が反対派閥との対立を続けていた。彼は苛立たしげに資料を机に叩きつけると、鋭い視線で各将校を睨みつけた。

 

「軍の統制が乱れる?馬鹿を言うな!すでに第4艦隊は壊滅し、我々の戦力では迎撃不可能だ!ツキモリの作戦を阻止すれば、その先にあるのは地球への大惨事だけだ!」

 

室内に静寂が広がる。誰もがこの言葉の重みを理解しながらも、政治的な立場に縛られ、身動きが取れずにいた。

 

「……いいか、作戦中、日本駐留軍は一切の介入を行わず、待機せよ」

レビルは低く、しかし力強く告げた。その瞬間、反対派の数人が息を詰めた。

 

彼らの目には、ただの命令ではなく—— 作戦を黙認する意図がはっきりと映っていた。

 

彼の指が端末から離れると、誰もがその行動が決定的なものであることを悟った。

これでツキモリ重工業は動ける——だが、すべては時間との戦いだった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

U.C.0079.01.10 道東某所 マスドライバー地下施設

 

日付を跨いだ時間帯からあれだけ、空を飛び交っていた連邦軍の航空機は4時を迎えると、それまで昼夜問わず上空を旋回していた連邦軍の航空機は影を潜めた。

 

レーダーや低空警戒網にも、何の反応もない——それはただの撤退ではなく、明らかな意思表示だった。

 

静まり返る空。ツキモリ重工業の地下施設には、異様なほどの静寂が広がった。まるで戦場が、一瞬だけ息を潜めたかのようだった

 

管制室のオペレーターたちは数秒の沈黙の後、ようやく動き始める。

 

「……確認完了。連邦軍の動向、停止」

 

施設内にも、抑圧されていた緊張がわずかに緩み始めた。

 

「8時方向! ツキモリ所属の輸送機です!」

 

報告の声が響くと、管制室のスタッフが一斉に画面へ視線を向けた。

 

各部隊の士官たちが瞬時に動き出し、出撃準備の最終確認を行う。機材チェック、武装システム起動、各指揮官への指令——それらが無言のうちに、しかし着実に進んでいく。

 

カズヤはわずかに息を吐いた。

 

「搬入作業を急がせろ!!」

 

カズヤの声が響く。

全員が息を飲み、一斉に動く。物資補給、機体点検、出撃準備——すべてが滞りなく進行する。

カズヤはモニター越しに輸送機を見つめ、わずかに息を吐いた。

 

「…ようやく動き出せる。マスドライバーの解放開始!!」

 

地下施設の可動式天井が開き、月光がマスドライバーを淡く照らしていく。 その瞬間、格納庫の機械が一斉に起動し、スサノオをはじめとする部隊の機体が闇の中からその姿を現した。

 

カズヤは管制室を出ると、スサノオへ向かった。

 

その足取りは軽やかだが、内心は決して落ち着いてはいなかった。 ——この戦いは決定的なものになる。もし失敗すれば、すべてが終わる。

 

彼の表情は険しく、冷たい夜気の中、月光がその影を長く引き伸ばしていた。

 

マスドライバーの解放開始とともに、施設内の空気が変わる。

誰もが無言だった。期待と緊張が混じり合い、ただ機器の起動音だけが響いていた。

 

カズヤがスサノオへ向かう頃には、整備士たちの動きはさらに加速し、まるで嵐の前の静けさがすべてを包み込むかのようだった。

 

カズヤが艦橋へ向かう通路は、戦闘前特有の静けさに包まれていた。 艦内の照明は淡く光り、低く響くシステム音が次々と起動していく。

 

乗員たちは必要な準備を進めつつも、彼の足音にわずかに反応を示していた。 まるで嵐の前の静けさのような空気が、艦内全体を支配していた。

 

「すまない、艦内と施設の俺の声が聞こえるようにしてくれ」

 

カズヤが艦橋に足を踏み入れると、乗員たちは無言で彼に視線を向けた。

 

戦闘準備が着実に進行していることが、一目でわかる。コンソールには最新の敵部隊の動向が映し出され、各機器の作動音が低く響いている。

カズヤは艦橋中央へ進み、通信クルーへ静かに指示を出した。

 

カズヤは静かに息を整え、目を閉じる。

 

周囲は一切の音を失い、艦内の乗員も、地下施設の兵士も、彼の言葉を待っていた。

 

この瞬間、誰もが理解していた——ここからが本当の戦場だ。

カズヤは目を開き、ゆっくりと口を開いた。

 

そして――彼の声は、全ての者へと響いた

 

「諸君、一部の連邦軍人からの妨害はレビル将軍のご尽力により、終わりを告げた。そして、天まで届く道は開かれた」

 

その声は鋭く、しかしどこか冷静だった。

 

「過去の三度の世界大戦、その後の統一戦争で、我々ツキモリは日本を護るために傷を受け、血を流し、それでも戦い続けた。何故だ!?」

 

彼の声が空間の隅々まで響き渡る。

 

「それは、皆が愛する故郷を守りたいという、純粋な気持ちがあったからこそ、今日(こんにち)の日本が存在している!」

 

艦内と地下施設に張り詰めた沈黙。

 

クルーは息を詰め、技術員たちは手を止め、整備員たちは拳を握る。

 

カズヤの言葉が、彼らの胸に深く突き刺さっていく。

 

「先人たちに出来て、我々に出来ないわけが無い!」

 

鼓動が高鳴る。

 

カズヤの視線は、誰か一人ではなく――そこにいる全ての者たちを見据えていた。

 

「諸君ら、愛する郷土を、己の愛する者たちを、この戦乱から護るために征くぞ!!」

 

最後の言葉が放たれた瞬間、すべての音が消えた。

 

沈黙――長い沈黙。

 

空間が息を止める。

 

---

 

艦橋では、誰もが立ち尽くしていた。

 

通信機から漏れる、誰かの浅い呼吸。

遠くで補給ポートが軋む音。

微かに聞こえる金属の震え――しかし、人々はただ沈黙していた。

 

カズヤはじっと待った。

 

この沈黙こそが、彼の言葉が深く浸透している証拠だった。

 

そして――

 

「隊長……!」

 

静寂を破ったのは、艦内のクルーの一言。

 

それは感嘆なのか、興奮なのか――確かに士気が燃え上がる音だった。

 

次の瞬間、凍りついた空気が一変する。

 

「了解!すべてのシステム、戦闘準備へ移行!!」

「機関部、エンジン稼働率上昇!出撃準備完了!」

「武装管制、全ユニットチェック済み!」

 

次々と響く報告。

 

スサノオ全体が、戦闘態勢へと切り替わる。

 

巨大な駆動音が低く響き、鋼鉄の骨組みが軋むような音が艦内に伝わる。モニターには各ユニットのステータスが次々と変化し、システムが作戦遂行モードへと移行していく。

 

その様子はまるで、巨大な獣がゆっくりと目を開き、牙を剥く瞬間のようだった

 

そして――

 

誰かが、静かに言葉を漏らした。

 

「俺たちの戦争が始まる……」

 

その言葉は、まるで時代の胎動のように空間へ溶けていった。

 

「マンゲツ、マスドライバー接続完了。発射シークエンス開始!」

 

オペレーターの報告が艦橋に響くと、整備員たちは最後の点検に取り掛かる。重厚な機構が作動し、巨大な接続アームがマンゲツへと固定される。艦内の振動が徐々に増し、駆動システムが始動する。

 

「マンゲツ、発進!」

 

次の瞬間、護衛艦隊の1隻目が凄まじい加速度で射出された。

 

「シンゲツ、ミカヅキ、ギョクゲツ、発射シークエンス同期確認!」

 

モニターには発進順序が示され、連続発射が進む。艦内のオペレーターたちは次々とコマンドを入力し、軌道補正の微調整を続ける。

 

視界の奥へ次々と護衛艦が飛び立ち、カズヤはその様子をじっと見つめた。

 

「スサノオ、発進まで120秒――レビル艦長、発進準備を」

 

アイハスXの内部には、整然としたデータの流れが映し出されている。

 

カズヤは手元のコンソールに触れ、スサノオの全システムを最終確認した。

 

「カズヤ、そっちはどうや?」

カズヤは視線を画面に向け、僅かに眉を寄せる。

 

「護衛艦隊の発進は順調だ。マンゲツ、シンゲツ、ミカヅキ、ギョクゲツ——全艦、軌道に乗った」

 

「こっちはコンテナの誘導プログラムを最終調整中やが、敵の動きが気になるな」

 

テッペイの声にはわずかに緊張が滲んでいた。カズヤはモニターに映る戦術データを睨み、短く息を吐く。

 

「敵部隊の展開速度、予測より早い……スサノオ発進後の迎撃タイミングを調整する」

 

「集中してるジブンは怖いわ。後、アイハスΧは完全にワレ用に調整してる。そして、I(アイ)Veil(ヴィル)は完璧や……生きて帰ってこいよ!!」

 

カズヤはわずかに苦笑する。

 

「テッペイ、言われなくても分かってる」

 

カズヤはモニターの発射カウントを見つめながら、深く息を吐いた。

 

アイハスXのスクリーンには、次々と軌道へ乗る護衛艦の映像が映し出されている。 戦場はすでに動き始めている――あとは、スサノオが続くだけだ

 

「スサノオ、発射!」

 

次の瞬間、リリアの号令と共にスサノオが重力を振り切るように発進し、戦場へ飛び出した。

 

「全武装コンテナ、発射シークエンスに入る!」

「各コンテナ誘導データ送信完了。自律航行、システムチェック開始」

 

オペレーターが戦闘用装備を最終確認し、武装コンテナ12個の発射プログラムを起動した。

 

「武装コンテナの軌道調整は完了。予定通り発射します!」

 

「了解。マスドライバー、最終フェーズへ移行——発射開始!」

次の瞬間、12個の武装コンテナが高速度で射出され、迎撃戦の準備は整った。

 

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