機動戦士ガンダム Gemini Saga   作:木星市民

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13話 天撃作戦②

U.C.0079.01.10 周回軌道上 6時30分

 

マスドライバーが唸りを上げ、護衛艦隊を戦場へと解き放った。

 

マンゲツ、シンゲツ、ミカヅキ、ギョクゲツの四隻は高速で軌道へ滑り込み、アイランドフィッシュを守るための戦域へと突入した。

 

迎え撃つジオン軍の陣形はコロニー前部に半月状に展開されている。左右にチベ級戦艦とムサイ級巡洋艦、前面には迎撃態勢のMS隊。

 

だが、ツキモリ側は躊躇しない。

 

短距離通信リレードローン(スクード)、MS隊を発艦させろ! 敵は目の前だ!」

 

護衛艦隊旗艦マンゲツの艦橋で、イズモ艦長が鋭い声で命令を下す。 スクードが展開され、各MS隊と即座に戦術リンクを確立。

 

護衛艦隊MS隊、発艦開始。

 

側面のカタパルトハッチが開くと、機影が次々と飛び出した。

推進機の閃光が空間を切り裂き、アイハス部隊が敵陣へ向かう。

 

「戦術AI、リンク完了!」

「メガ粒子砲、全門展開!」

「目標、敵艦隊前列のムサイ級!」

 

護衛艦隊、砲撃開始。

 

マンゲツ、シンゲツ、ミカヅキ、ギョクゲツが一斉にメガ粒子砲の砲口を開き、エネルギーが収束されていく。狙いはジオン側のムサイ級巡洋艦。

 

「撃て――!」

 

艦橋が振動し、一斉射撃の閃光が宇宙を駆け抜ける。

 

高エネルギー弾が直撃し、ムサイ級の艦体を灼いた。装甲が崩れ、爆発が艦尾を包む。

 

「ムサイ級、4隻損傷!続け――!」

 

しかし、ジオン軍は迎撃態勢を維持。 損傷した艦を下げつつ、後方から穴を埋めていく。

 

チベ級戦艦が主砲を旋回させ、ツキモリ艦隊へ砲撃を開始した。

 

「衝撃に備えろ――!」

 

直撃。

マンゲツの艦首に粒子砲が炸裂し、艦体を焼いた。だが、装甲が一部溶けたものの、船体は持ちこたえた。

 

「損傷軽微!推進系統、異常なし!」

「システム維持、砲撃を続行!」

 

迎撃戦は激化していく。

 

「敵MS隊、距離450――間もなく交戦!」

「迎撃開始!アイハス部隊、突破を図れ!」

 

だが、その時だった――。

 

「スサノオ、戦闘エリアに到達――!」

 

モニターの警告音が鳴り響く。

 

スサノオは護衛艦隊と軌道を合わせながら加速し、戦場の中心へ突入する。

 

カズヤは操縦桿を握りしめ、視界の先を睨んだ。

 

「……時間がない。アイハスΧ、カズヤ・ツキモリ、出る!」

 

戦場は砲火に包まれていた。ツキモリ艦隊のメガ粒子砲が閃光を走らせる一方、迎撃態勢のジオン軍も負けじと砲撃を展開。

その狭間を縫うように、スサノオは推進機を吹かし、戦場へと突入する。

 

ムサイがスサノオを捕捉し、砲門を展開――

 

「簡単には通してはくれないよな……ならば」

 

カズヤは一瞬の判断で、アイハスΧの背部に搭載された2枚の盾――I・Veilを前面に展開させた。

 

I・Veilの中央が青色に輝く。

 

敵艦から発射されたメガ粒子砲がI・Veilと衝突し、拡散する。

 

「試験無しでやってみたが、砲撃でも成功して良かったわ」

 

I・Veilは合金シールドの上にIフィールド制御装置(I・Flex)を配置し、更にI・Flexを合金で保護することで安定性を向上、ビームと実弾に対応した試作型の盾であった。

 

カズヤは冷静に機体を旋回させながら、腰部のレールガンを起動した。

 

「じゃあ、次はこちらの番だ――」

 

一閃。

 

アイハスΧの腰部レールガンが閃光を放つ。その弾丸はムサイの艦橋へと直撃し、制御不能となったムサイは陣形から外れ始める。

 

「突破する!」

 

カズヤは一騎当千の活躍を見せながら、戦場を駆け抜ける――

 

敵MS隊が迎撃へと動くが、アイハスΧの機動力に追いつけない。

 

砲火が四方へ走り、戦場は混乱していく。

 

マスドライバーから射出された武装コンテナも戦闘エリアに到着した。一部のコンテナは自律機動を開始し、追加のスクードを展開。 更に戦域のデータリンクが強化され、ツキモリ側の統制が盤石となる。

 

「戦術AI、リンク拡大完了!」

 

「MS隊はスクードを防衛しつつ、戦域を維持せよ!」

 

ツキモリ艦隊のMS隊が展開し、スクードの防御へ移行。ジオン軍の反撃を抑えつつ、突破したカズヤとコンテナを支援する。

 

「ミサイルコンテナ、射程内到達!」

 

「ミサイル、撃て!!」

 

リリアの号令によりコンテナ内のミサイルが一斉発射され、アイランドフィッシュへ殺到する。そして、爆風が広がり、迎撃態勢のジオン艦隊が動揺が走る。

 

カズヤは視界の奥にアイランドフィッシュを捕らえた。

 

「クソ、丈夫過ぎるだろ!!」

 

多数のミサイルが直撃したはずのアイランドフィッシュは健在し、地球へと移動を続けていた。

 

「カズヤ、ミサイルの効果は軽微! アイランドフィッシュの破壊するには、核パルスエンジンを狙うべきだわ!」

 

「核パルスエンジンを破壊して、その爆発でコロニーを破壊するんだな。スサノオに繋いでくれ」

 

ツクヨミは、戦況解析の結果、ミサイル攻撃ではアイランドフィッシュに十分な損害が与えられないと判断した。ツクヨミは即座に核パルスエンジンの破壊作戦を提案した。

 

カズヤはその報告を受け、冷静に頷くと、速やかにスサノオ艦長リリアに伝達した。

「リリア! アイランドフィッシュを破壊するには、核パルスエンジンを狙うしかない。俺の機体だけなら辿り着ける!」

 

「分かったわ。私たちは、敵艦隊を引きつける。頼んだわ、カズヤ。全艦に通達! 全艦の攻撃を敵艦に集中! MSはMS隊に任せなさい、ここが踏ん張りどころよ!!」

 

ツキモリ艦隊はMSの迎撃をMS隊に託し、自身は攻勢を一層強め、偽りの前線としてジオン軍を引きつけるよう指令を下す。

 

ツキモリ艦隊が攻勢を展開して敵艦隊を引き付ける中、カズヤは隙を突き、アイランドフィッシュの後部に向かって突入を試みる。しかし、その進路は紫のザクⅡと複数のザクに固く塞がれていた。

 

ツキモリ艦隊が猛烈な攻勢を展開し、ジオン軍の主力艦隊を巧妙に引き寄せる混沌の中、カズヤはチャンスを窺い、アイランドフィッシュの後部線へと滑り込む決断を下す。

 

だが、その突破路は、邪悪な紫色に輝くザクⅡと、それに随伴する複数のザクが、鉄壁の防壁のごとく固く塞いでいた。

 

「……邪魔をするなァァ!!」

 

カズヤの眼は鋭く戦況を捉え、全身から噴出する覚悟と火力を一点に集中する。

 

『カズマお兄ちゃん、僕も頑張るよ!』

 

その瞬間、全ての光景がスローモーションに見え、ザクの動きだけでは無く、ムサイから放たれるメガ粒子砲、銃弾の行先が残像のように現れた。

 

「……ありがとう、カズヤ!!」

 

随伴していたザクはカズヤの猛攻に為す術もなく、一瞬のうちに堕ちていく。しかし、その奥にいる紫のザクⅡだけは違った。

 

「こいつ……!?」

 

一瞬、紫のザクⅡの動きに違和感を覚える。

 

まるで、シャア・アズナブルのような軌道変化と機体制御――

「シャアみたいな動きをしやがって、誰だよお前は!?」

 

紫のザクⅡは銃撃の合間に突如として反転し、推進機を吹かしながら機体を傾けた。通常のザクならありえないほどの旋回軌道――視界から一瞬消え、次の瞬間には真横へと移動していた。

 

再度、瞳に映る紫のザクの行先が次々と変わっていき、攻撃は当たらない。そして、高精度な射撃が寸分の狂いなくカズヤを狙ってくる。目前のザクのパイロットに苛立ちを覚えていた。

 

「お前がしているのはシャアの猿真似だッ」

 

『動きを見切って! 撃つのはなく、追い詰める――!』

 

怒りの熱が一瞬込み上げるが、聞こえてきた声のおかげでカズヤは即座に思考を切り替える。そして、紫のザクの行先にレールガンを撃ち、新しい予想地点にビームライフルを放った。

 

カズヤのレールガンとビームライフルが次々と発射され、紫のザクⅡは回避を続ける。

 

だが、カズヤは完全に敵の機動を見切っていた――。

 

紫のザクⅡが旋回する瞬間、カズヤは狙いを変え、予測地点へ向けてビームライフルを放つ。

 

「……決める!!」

 

ビームライフルの閃光が紫のザクⅡの右腕を焼き、続いて右足を撃ち抜く――

 

衝撃が機体全体を貫き、紫のザクⅡは制御を失いながら旋回する。カズヤは敵を完全に制圧したと思ったその瞬間――

 

「くっ……!」

 

後方からの射撃がカズヤの機体を狙うが、彼は即座に機体を反転させ、攻撃を躱す。

 

「後方に……もう一機いるのか!?」

 

カズヤの視界に映ったのは――

赤色の装甲を纏ったザクⅡ。

 

その赤色の機影は躊躇なく機動を切り替え、負傷した紫のザクⅡへと近づいていく。

 

「……シャア。お前が助けるということは重要なヤツなのか?」

 

紫のザクⅡはすでに戦闘不能。

 

シャアが搭乗しているであろう赤色のザクⅡは一瞬だけカズヤを見据えたあと、負傷した機体を確保し、急加速した。

 

「カズヤ、大気圏突入まで残り20分!」

 

「追撃してる余裕は無いな。核パルスエンジンへ向かう!」

 

カズヤは即座に判断し、アイハスΧを再加速させ、アイランドフィッシュの最後部へと全力で向かった。

 

「カズヤ、重要区画をロックオン済み!!」

 

「狙い撃つ!!!!」

 

ツクヨミの指示のもと、アイハスΧの全武装がアイランドフィッシュに取り付けられた核パルスエンジンの重要区画を撃ち抜いた。

「……コロニー内で爆発を確認したわ」

 

ついにエンジンの制御部が一瞬の沈黙の後、壊滅状態に陥る。

激しい爆発とともに、核パルスエンジンの内部で暴走が始まり、エネルギーが膨張する。

 

「爆発が始まる、退避して!」

 

その衝撃により、アイランドフィッシュの全体構造が大きく揺らぎ、核パルスエンジンの一部が破壊されたことが確認される。

 

エンジン破壊により、アイランドフィッシュは予定より早く大気圏突入に向かう。だが、内部の核パルスエンジンの爆発は完全な壊滅には至らず、残骸は分裂。

 

「今の爆発でアイランドフィッシュが分裂したけど、残骸が加速したわ! ヤバい、残骸の一部が日本に落ちるコースに入ったッ!」

 

爆発の余波がアイランドフィッシュの構造を揺るがし、コロニー全体が不安定になる。

 

モニターに映し出された計測によれば、アイランドフィッシュは約3分の1が破壊されたものの、残骸は4つに分裂した。そのうちの一つはダブリン方面へ、もう一つはシドニーへ、三つ目は北アメリカへ。

 

そして、残る一片が日本に向かうことがツクヨミの解析により明らかになった。

 

「スサノオにデータを送信しろ! 俺たちは単独で大気圏突入するぞ」

 

「分かったわ、サポートは任せて!」

 

日本へ落下する残骸の情報がツキモリ艦隊内に共有されると、リリア率いる艦隊は直ちに反転作戦を指示し、残骸破壊のために大気圏内への進入を試みる。しかし、ジオン艦隊もこれに気付き、追撃を開始。

 

「あの艦隊は何処から来た……?」

 

リリアのモニターに、突如として連邦軍の信号が浮かび上がる。

 

「彼らは待っていたのか……この瞬間を」

 

緊迫の状況下、連邦軍の艦隊が突如として現れ、ジオン艦隊の砲撃を真正面から受けつつ、突撃していく。光学センサーで連邦軍を認識したカズヤは敵MSを撃破しつつ、疑問を口にしたが答えられる者は居なかった。

 

「こちら連邦軍第四艦隊のゴメスだ! 後は任せろ、我々でジオンを食い止める! 行け!」

 

その中で、唯一通信が確保されていたマゼラン級戦艦のゴメス艦長からリリアへ指示が伝えられる。

 

「ありがとうございます、ゴメス艦長」

 

「若い声だな、良い艦長になれよ」

 

これを受け、ツキモリ艦隊は迅速にMS隊を収容し、戦域から撤退、そして大気圏への突入を開始する。

 

アイハスΧも青白く輝く地球の縁を目前に捉えながら、大気圏の境界へと突入した。

 

空の青が深く広がり、宇宙の漆黒との境界が眼前に迫る。

 

機体外装の表面温度が急上昇。警告音が鳴り響き、熱対流の圧力が徐々に増す。

 

「耐熱ジェル、散布開始――!」

 

ツクヨミの制御により、アイハスΧの装甲へと特殊耐熱ジェルが均一に散布される。

 

瞬間、装甲が鈍い銀色に変化し、表面を覆うジェルが光の波動を受けて粘性の層を形成する。

 

機体の周囲を取り巻く空気が加熱され、赤熱したプラズマの奔流が外装に沿って流れ出す。

 

推進機は精密な出力調整を行いながら、降下の姿勢を微調整しつつ、揺らぐ炎の帯の中を突き進む。

 

視界は激しく揺れ、警告音が鳴り続ける。

 

しかし、機体は安定を保ち、あらかじめ計算された降下ルートへと乗っていく。

 

「耐熱ジェルの効果……想定通り!」

 

ツクヨミの計算通り、ジェルの熱分散が機体を保護し、装甲の表面に異常はない。

 

一方、アイハスΧの機体全体を包む火球は、さらに激しさを増していく。

 

機体周囲の空気が光の尾を引きながら流れ、燃え上がる大気圏の壁を切り裂いていく。

 

「大気圏突破まで、あと十秒――」

 

振動がコックピットを揺らし、警告音が断続的に鳴り響く。外装にまとわりつく熱の波動が視界を歪ませ、カズヤは機体の制御を維持しながら、炎の壁を突き破る――彼は深く息を吸い、視線をまっすぐ前へ向けた。

 

日本上空でツキモリ艦隊は反転し、堕ちてくるアイランドフィッシュの残骸と相対する。

 

「各艦、砲門展開!目標、アイランドフィッシュ残骸――!」

 

リリアの鋭い声が艦隊に響く。

 

スサノオの艦橋に座する彼女は、全艦の砲撃タイミングを見極めながら素早く指示を飛ばしていた。

 

「マンゲツ、ギョクゲツ、右舷防衛!ミカヅキ、迎撃準備!

シンゲツ、砲撃開始までカウントダウン――全砲門、最大出力!」

 

リリアの指示を受け、各艦は照準を合わせる。

 

だが、その瞬間――

 

無数のミサイルが艦隊の横を掠めるように突き抜けていった。

 

「ッ!?地上からの迎撃か!?」

 

リリアがモニターを見上げる。

 

日本防衛軍と連邦駐留軍が、残骸迎撃のために地上からミサイルを放っていたのだ。

 

ミサイル群が残骸へと殺到し、激しい衝撃が広がる――

しかし、それだけでは落下の勢いを止められない。

 

「艦隊、砲撃開始――撃て!!」

 

スサノオを中心に、艦隊が一斉射撃。

 

砲身が焼け、溶けるまで撃ち続ける――。

 

一方、カズヤは戦場の混乱の中でも冷静だった。

 

彼の眼はアイハスΧのモニターへと釘付けとなり、機体を精密に制御しながら突破口を探る。

 

「ツクヨミ……解析、頼む!」

 

「完了。最終迎撃ルート、表示――!」

 

モニターに落下軌道が映し出される。

 

カズヤは息を飲む。

 

ここで決めなければ、日本への落下を止める術はない――。

 

「これで最後だ――!!」

 

アイハスΧの推進機が閃光を放ち、重力に逆らうように残骸へと突進。

 

全武装が展開され、アイハスΧのモニターには多くの迎撃ポイントが表示される。

 

リリアがスサノオの艦橋でカズヤの機体を見据え、低く呟く。

 

「カズヤ……決めなさい!」

 

砲撃、発射――

閃光が走り、残骸の中央部に直撃した。

 

爆発――

 

高温の炎が瞬時に膨張し、爆風が空に広がる。

ツキモリ艦隊の砲撃とカズヤの一撃が決定打となり、残骸は完全に崩壊――

 

「成功したわ……!」

 

リリアが息をつく。

 

アイハスΧの機体は僅かに揺れながら、スサノオの甲板へ降り立つ。

 

その瞬間、カズヤの意識が薄れていき――

 

静寂が訪れる。

 

『お疲れ様、カズマお兄ちゃん。またね』

 

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