機動戦士ガンダム Gemini Saga   作:木星市民

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14話 ツキモリ戦術開発機構

U.C.0079.01.11 ジャブロー 連邦軍本拠地 会議室

 

ジャブロー連邦軍本拠地では、ツキモリ重工業が主導した天撃作戦の賛否を巡り、軍上層部の間で激しい議論が交わされていた。

 

アイランドフィッシュの迎撃を完全に成功させることができなかった連邦軍に対し、ツキモリの独断による介入が被害を大幅に抑えたことが、軍内で亀裂を生じさせていた――

 

「今回のツキモリの動きは、一企業としての範疇を完全に超えている! 更にはMSを保有し、軍の指揮系統を無視して作戦を遂行したなど、言語道断である!! 今すぐにでも、徴発すべきだ!」

 

会議室の一角で、保守派の将校が憤りを露わにする。

 

「何を言っている? ツキモリが介入しなかった場合、各地の被害は倍以上になっていたのは明白だ。

 

ジオンの脅威を侮り、迎撃体制の整備を怠ったのは我々の責任だ。彼らを讃えることはあっても、罰を与えることはない」

 

反対側では、戦場を知る指揮官たちが冷静に事実を突きつける。

 

連邦軍上層部の中でも、慎重派と実戦派の間で意見の対立が鮮明になりつつあった。

 

戦場の現実を知る者たちはツキモリ艦隊の功績を認め、彼らの戦術を今後の防衛計画に組み込むべきだと主張する。

 

一方で戦略本部の保守派は、軍規を優先し、民間企業が独断で軍事作戦を遂行する前例を容認すべきではないと強硬な姿勢を崩さない。

 

「諸君が言いたいことは理解した。私もジオン公国の戦力を侮っていたことを認めよう。しかし、ツキモリの今回の行動は目に余るものであるが、彼らが行動しなければ、被害は計り知れなかったであろう」

 

議論が白熱する中、ある将軍が両派閥の発言を制した。レビルも意外な人物の発言だった為、彼は腕を組んだまま、議論の行方を静かに見守っていた。

 

「ツキモリ艦隊にはレビル中尉が派遣されていた。更に中尉は艦隊旗艦スサノオの艦長を勤めいた。ならば、天撃作戦は第四艦隊が壊滅した後に我々が計画した迎撃作戦となる。

 

それでツキモリの今回の行動については不問にしよう。我々の面子も守られ、ツキモリの関係も維持できる」

 

ゴップ大将の言葉が響いた瞬間、慎重派の将校たちは互いに視線を交わし、実戦派の者たちは微妙な表情を浮かべた。

 

この決定は、軍の面子を守りながら戦局を安定させる――だが、誰もがそれが最善だったのかを問う視線を隠せなかった。

 

レビルはゴップの言葉を聞きながら、視線を僅かに落とした。

この決着は軍の統制を保つための選択だった――だが、彼の胸の奥には、何か釈然としない感覚が残っていた。

 

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U.C.0079.01.13 道東某所 ツキモリ重工業本社

 

天撃作戦の後、気絶したカズヤはすぐさま病院に運び込まれ、精密検査を受けて、翌日には退院した。そして、駐留していたギョクゲツに乗り込み、北海道へと戻った。

 

ギョクゲツを降りるとゲンジロウから派遣された車があり、乗り込むと本社へと向かった。

 

カズヤは窓の外を眺めた。夜の北海道は静かで、戦場の喧騒とは別世界のようだった――だが、心の奥に残る戦いの感覚は消えなかった。

 

「よく戻った。お前が寝ていた間の話をしよう」

 

「はい、父上」

 

ゲンジロウは淡々と連邦軍の交渉の内容をカズヤに告げた。

 

「天撃作戦は連邦軍が立案した作戦となった。その代わり、今回の独自行動については不問とするそうだ」

 

「……なるほど。我々の功績を掠め取る代わりに罪には問わないと」

 

カズヤはゲンジロウの言葉を聞いた瞬間、僅かに眉をひそめた。天撃作戦は連邦軍が主導した迎撃作戦――それが公式の決定となる。

 

「世界の人々には天撃作戦の功績は、連邦軍のものになってしまった。しかし、我々はあの戦いの功績はスサノオを始めとした艦隊とMS隊のものだと強く信じてる。

 

そこで、前々から提案されていたPMCの代表をカズヤ、お前に任せる。好きに暴れて来い、ケツは拭いてやる」

 

「かしこまりました、父上」

 

ゲンジロウの顔は、何時もの厳格な企業家のものではなかった。そこにあったのは、鬼のような決意を秘めた表情――戦場を知る者の鋭い目だった。

 

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U.C.0079.01.15 道東某所 ツキモリ戦術開発機構 本社

 

「……死にそう。開発に戻りたい」

 

「駄目ですよ、代表。貴方の決裁が必要な書類は山のようにあります」

 

ゲンジロウは、たった一日でPMCであるツキモリ戦術開発機構(TTDO)を設立させ、必要なメンバーを揃えた。

 

TTDOはマスドライバーが眠る地下施設を開発拠点として、地上に本社ビルを構えている。社長室では、代表であるカズヤと副代表のユウゴ・セナが事務仕事に追われていた。

 

「ユウゴさん。俺って、神輿じゃあないの?」

 

「なわけ無いでしょう、貴方も優秀なツキモリ家の人間です。戦闘や開発だけでは無く、今後の為にこういった事務仕事も覚えて貰います」

 

TTDOの副代表を務めているユウゴは、連邦軍の兵站部門出身であるが腐敗していく軍に見切りをつけた所で、ゲンジロウにその能力を買われて、引き抜かれた。

 

「宇宙では、連邦軍とジオン軍が大規模な戦闘を行っているようです」

 

「知ってるよ、連邦軍が負ける。レビル将軍が死なないかが心配だね」

 

「まるで未来を見てるような言葉ですね。ゲンジロウ様もそうでしたが、ツキモリ家の方々は末恐ろしい才覚の持ち主ばかりです」

 

現在、宇宙ではルウム戦役が始まっている。しかし、ツキモリ重工業は宇宙で活動可能な戦艦やMSは天撃作戦の被害もあり、介入せずに各地の復興支援を行っていた。

 

「さて、この書類の山を攻略するかァ……」

 

ツキモリ戦術開発機構(TTDO)の闘いはこの書類の山から始まったのであった。

 

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U.C.0079.01.19 ツキモリ戦術開発機構 本拠地

 

カズヤの目の前には、TTDOに所属するすべての隊員が整列していた。

天撃作戦に参加した者たちの姿もあったが、彼らはほんの一部に過ぎない。

新たに加わった隊員たちは、緊張した面持ちで彼の言葉を待っていた。

 

スピーカーに電源が入ると、微かなノイズが響く。

カズヤは一瞬だけ目を閉じ、息を整えた。

この言葉が、今後のTTDOを決定づける——

そう思うと、胸の奥にわずかな重圧が生じた。

 

「天撃作戦の成果は、我々の手によって生み出された。だが、その功績は奪われ、世界に知られることはない」

 

彼はゆっくりと隊員たちを見渡しながら言葉を紡いだ。

それぞれの表情が引き締まり、静寂が場を支配する。

 

「だからこそ、今こそ我々自身の力を世界へ示す時だ」

 

一部の隊員が、ほんのわずかに前のめりになる。

そのわずかな変化をカズヤは見逃さなかった。

 

「連邦軍は我々にとって、一顧客に過ぎない。しかし、地球、ひいては日本を脅かす者には決して容赦はしない」

 

まるでその言葉が地面を叩くかのように、重い沈黙が落ちる。

新兵たちはまだ何かを測りかねている様子だったが、古参の者たちの目はすでに戦士のそれだった。

 

「ここに集まった諸君らは、家族を愛し、友人を想い、故郷を守る者たちだ」

 

カズヤは短く息をつき、手をゆっくりと握り込む。

彼はただPMCの代表ではない——

 

彼もまた、戦場に立つ者であり、この隊員たちと共に戦う存在なのだ。

 

「ならば、私も、私の力を持って、その愛するものを守ろう。その代わり、諸君らの力を私に貸してくれ」

 

その言葉が空気を震わせる。

古参兵が口元を引き締め、若い隊員たちが息を呑む。

 

「すべては、我々の未来を守るために!」

 

瞬間、静寂が崩れ去る。

一人の古参隊員が拳を突き上げた——

その動きに続くように、次々と隊員たちが拳を掲げる。

掛け声が次々と響き、士気が最高潮に達する。

 

カズヤはその光景をじっと見つめていた。

自分の言葉が、彼らに火をつけたのだ。

それを実感しながら、彼はゆっくりと口元を引き締めた——

戦いはすでに始まっている。

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