機動戦士ガンダム Gemini Saga   作:木星市民

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19話 日本防衛戦

U.C.0079.03.11 道東某所 TTDO地下基地

 

警報が鳴り響く。司令室のモニターは警告表示へ切り替わり、赤い文字が点滅している。

 

「カグヤ基地より通達。ジオン軍艦隊、日本降下地点に到着」

 

「来たか、第一種戦闘配備」

 

基地司令官タケシ・ナガモリは、月面のカグヤ基地からの情報を聞き、即座に指示を出す。

 

兵士たちは武器庫へと駆け込み、次々に装備を取り出していく。ラックに整然と並べられたアサルトライフルとロケットランチャーが手早くチェックされ、弾薬が装填される。

 

「行くぞ!」という叫びと共に、防衛部隊が拠点へ向かい始める。

 

MS部隊の整備区画では、アイハスの冷却装置が稼働し、白い蒸気がゆっくりと排出される。技術員たちは最終チェックを行いながら、スラスターの出力調整を急ぐ。

 

「メインジェネレーター、安定稼働確認!」

 

機体の外装が起動時のエネルギーを帯び、発光する。

 

基地の防衛砲塔が動き出す。

 

冷却ガスが噴出し、レールガンの長い砲身がゆっくりと旋回して宇宙へ向けられる。発射準備完了の報告と共に、技師たちはコンソールの操作を急ぐ。

 

「ミサイル発射システム、起動完了!迎撃モードへ移行!」

 

格納庫の巨大な扉がスライドし、航空隊の戦闘機が次々と出撃態勢に入る。噴射口が赤く灯り、ジェットの振動が床を揺らす。

 

静寂の空が突如として裂ける。

 

成層圏を突破した無数のHLVが、日本各地へ降り注ぐ。その光景はまるで彗星の群れが大地へ落ちるかのようだった。

 

北海道、東京、大阪、九州、四国……各地の空が炎に染まる。

HLVは赤熱しながら大気を突き抜け、軌道を描きつつ地表へと接近していく。

 

「敵降下ユニット多数確認!迎撃態勢を維持せよ!」

 

防衛部隊は迎撃を開始。対空砲が旋回し、ミサイルがチャージされる。

 

しかし、幾つかのHLVが異常な動作を見せた。

 

「……待て、あのHLV、降下していない!?」

 

予定降下地点の上空で急停止し、外装が展開し始める。

 

「敵、空中で展開!発射機構を持っている可能性あり!」

 

次の瞬間、HLV内部のハッチが開き、無数のミサイルが射出される——

 

HLVが放つ誘導ミサイルが、防衛拠点やレーダー施設へ向かって一斉に発射される。

 

「敵ミサイル多数接近!迎撃態勢へ移行!」

 

防空ミサイルが次々に発射され、空中で爆発が巻き起こる。

しかし、すべてのミサイルを迎撃できるわけではなく、一部が都市防衛ラインを突破。

 

爆炎が各地で巻き上がり、地表が揺れる。

 

「……くそ、まさかHLVに発射機構が組み込まれているとはな」

 

司令室ではナガモリが歯を食いしばる。

ジオンは迎撃態勢そのものを崩す計算をしていた。

 

「迎撃部隊、ミサイルが止んでもすぐに油断するな!敵MSの降下が始まる——」

 

「こちら防衛拠点、敵影確認——くそっ、ノイズが——」

 

突然、基地内の通信端末が異常な断続ノイズに覆われた。

 

「対地通信が不安定になり始めています!大規模な妨害が発生!」

 

通信オペレーターが混乱する回線のデータを分析し、焦った声で報告を上げる。

 

「……ミノフスキー粒子が散布されています!」

 

「対地通信、ミノフスキー粒子の影響を受けている!有線通信へ切り替えろ!」

 

ナガモリの指示が瞬時に基地内へ伝えられる。

 

オペレーターたちは速やかに無線システムから有線リンクへと接続を変更し、地上部隊との連携を確保する。

 

「有線通信にて戦況を伝達!敵MS降下開始を確認——!」

 

基地内のオペレーターが報告を上げる。

 

「敵影多数、拠点周辺に接近!各部隊、持ち場を維持!」

 

「全戦力を展開——迎撃態勢に入れ!」

 

有線通信による指揮系統が復活し、防衛部隊は即座に対応を開始する。戦場は混乱しながらも、冷静な指揮のもと迎撃戦へと移行していく。

 

「こちら、テッド0。HQにスクードの展開を要請」

 

「こちら、HQ。スクードを展開する」

 

格納庫でカズヤは司令部にスクードの展開を要請した。指示が出たのであろう整備士がスクードが格納されているコンテナを押し出していた。

 

「テッド01からテッド0へ。このコールサインは好きじゃないな。熊が出ていた西暦の映画を思い出す。後、部隊章がシマエナガなんだ、殺る気あんのか?」

 

「これはツキモリ会長が決めたことです。後、私的な会話は控えて下さい」

 

アゼルからカズヤに通信が入る。カズヤたちが乗るアイハスの左肩にはシマエナガが描かれており、PMCの部隊章とは思えない可愛さであった。

 

「テッド部隊、出撃準備完了!」

 

地下格納庫内で、カタパルトが作動を開始する。

 

動力装置が駆動し、アイハスの機体がランチャープラットフォームへ固定される。

 

「圧縮システム稼働——射出パワー安定化!」

 

カタパルトのロックが解除され、機体の足元で赤い誘導灯が点滅する。

整備員たちは最後の確認を済ませ、発射機構の準備完了を報告する。

 

「こちらテッド0、カタパルト準備完了」

 

カズヤのアイハスが巨大な発射プラットフォームへ接続される。 頭部のセンサーが起動し、HUDの表示が戦術モードへ切り替わる。

 

「出撃カウント開始——5、4、3、2、1」

 

「テッド0、出る!」

 

カタパルトのエネルギーが解放され、アイハスXが一気に加速する。圧縮された推進力が機体を押し出し、地下から飛び出すように地表へと射出された。

 

「テッド01、射出開始!」

 

カズヤの後方、次々とテッド部隊のMSが射出されていく。

地表に到達した瞬間、各機のスラスターが展開され、着地姿勢へ移行。

 

「全機、地上に展開——作戦開始!」

 

爆炎と衝撃波が地表を覆い、部隊は戦場へと突入する。

 

HLVから降りたザクII部隊が陣形を整え、防衛線へと進撃し、背後ではマゼラ・アタックが砲塔を旋回させ、砲撃準備に入る。

 

「敵MS、歩兵ライン突破!装甲部隊へ接近!」

 

76式戦車の砲弾が発射され、ザクIIの装甲を叩く。

しかし敵機はシールドを構え、進撃を止めない。

 

マゼラ・アタックが砲撃を開始した。砲弾が地表をえぐり、土砂が巻き上がる。戦車の装甲が砕け、爆風が広がった

 

爆発とともに、76式戦車が次々と炎上する。

 

「防衛部隊、損害拡大!敵MS、進撃中!」

 

爆発の連鎖が続き、地表に燃え上がる炎が広がる。

76式戦車は次々と撃破され、後方の迎撃陣も混乱する。

 

防衛軍所属のアイハス部隊がザクを迎え撃つ。

レールガンが火を噴き、敵機に反撃を加える。

 

しかし、数の差が圧倒的だった。

敵MSの連携が精密で、集中砲火がアイハスに降り注ぐ。

 

一機、二機——アイハスが爆風とともに沈む。

 

「テッド部隊、戦場に到達!」

 

テッド部隊が急速展開し、防衛ラインの後方から迎撃態勢に入る。アゼルは戦況を確認し、敵陣へ向けて攻撃を開始。

 

彼らの動きは迷いがなかった。狙いを定めた瞬間、ビームライフルの光が敵機の装甲を貫く

 

「敵影捕捉——各個に撃破せよ」

 

アイハスのビームライフルが火を噴き、ザクIIの脚部へ直撃。

爆光が走り、機体のバランスが崩れる。

 

ザクIIは回避行動を取るが、次の狙撃が胴部へと突き刺さる。

装甲が焼け焦げ、機体が崩れ落ちる。

 

マゼラ・アタックが砲塔を旋回し、アイハスへ砲撃を開始。

砲弾が地表をえぐるが、アゼルの機体は即座に回避。

 

再びビームライフルを構え、マゼラ・アタックの主砲へ照準を合わせる——

 

「遅いぞ、宇宙人」

 

砲塔へ直撃し、爆炎が巻き上がる。

戦場は一瞬、閃光に包まれる。

 

敵機は反撃の間もなく沈んでいく。彼らの動きは、まるで計算されたかのように完璧だった

 

最後のザクのモノアイが迷うように揺れた。

 

戦場に散らばる仲間の残骸が映り込む。

崩れたマゼラ・アタック、沈黙する機体——この戦いは、もはや負けている。

 

ザクIIはゆっくりと後ずさりしながら、スラスターを吹かした。

脚部から噴射炎が吹き上がり、撤退のためにHLVへ向かった。

 

しかし、逃げる間もなく、アイハスXの影が視界に映る。

 

鮮やかな光が走る。

それはビームソードの軌跡だった。

 

閃光が瞬く。

 

ビームの刃がザクIIの機体を切り裂く。

胴体が焼け焦げ、内部の駆動系が分断される。

 

切断された機体は爆発を起こし、跡形も無く消え去った。

 

硝煙がゆっくりと空へ消えていく。

撤退すら許されない——それが戦場の現実だった。

 

「なんだ、あの部隊は!?」

 

「あれじゃないか、ツキモリの特殊部隊とか」

 

戦闘が終息しつつあった。

 

硝煙がゆっくりと空へ消え、地表には破壊されたザクIIの残骸が散乱している。

 

そのモノアイはすでに輝きを失い、傾いた機体の外装には深い焼け跡が刻まれていた。

 

その傍らに立つのは、テッド部隊のアイハス。

 

装甲は戦火を浴びた跡を残しながらも、沈黙の中に佇んでいる。陽光が微かに照らし、機体の輪郭を際立たせる。

 

周囲には撃破されたマゼラ・アタックの砲塔が転がり、焦げ付いた金属の臭いが漂う。

 

地表は無数の足跡と爆撃の痕に覆われ、戦場の爪痕を物語っていた。

 

アイハスの動力炉が静かに唸りを上げる。

スラスターの微細な振動が、まるで次の戦いに備えているかのように感じられる。

 

遠方ではまだ戦闘の余韻が残る——だが、この地点はすでに制圧された。

 

ここは、テッド部隊の支配下となった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「北海道エリアの敵MS部隊は壊滅、残兵は防衛軍と駐屯軍が対応しています」

 

「そういえば、駐屯軍は見えなかったがどうしてたんだ?」

 

「駐屯軍基地は真っ先に潰されたらしく、部隊の再編成に時間がかかったようです」

 

担当していたエリアの迎撃に成功したテッド部隊は、ロールアウトしたばかりのツキノワ級5番艦ライゲツへ搭乗を開始していた。

 

戦場に現れなかった連邦駐屯軍は、ジオン軍のミサイル攻撃で被害が出ており、部隊の再編成に手間取っていた。

 

「もとから連中には期待してないからな」

 

「良い知らせと悪い知らせです。東京、神奈川、愛知、広島は撃退に成功しました。しかし、長崎、鹿児島の拠点との連絡が2時間前から取れていないようです。上層部は陥落したと判断し、山口、愛媛に防衛拠点を防衛軍と共に構築すると通達が来ております」

 

「……裏をかかれた。第1次降下作戦で被害が少ないエリアに主力部隊を送り、制圧か。長崎はうちの工廠がある。だが、鹿児島は何故だ?」

 

ライゲツの艦長モリタから知らせれた情報は、決して良いものでは無かった。造船所のある長崎を襲撃する理由は分かるが、鹿児島は工廠も無く、あると言ったら半導体工場くらいであった。

 

「カズヤ様、鹿児島には連邦軍の宇宙基地があります。ジオンは宇宙基地の施設を利用して、宇宙に帰るつもりではないでしょうか?」

 

「なるほど。ありがとう、ナガモリ司令。では、我々は山口に向かうとしよう。本部に連絡を頼む」

 

北海道及び本州の迎撃に成功したテッド部隊であったが、防衛網が薄かった九州がジオンの手に落ちた。戦場は北海道から九州に移るのであった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

同時刻 ??? ???

 

「急げ! ザクやマゼラは破棄していい、早く船に乗り込め!!」

 

白髪の男が怒鳴る声が、撤退を急ぐ兵士たちの背中を押すように響いた。

 

しかし、乗り込む者たちの表情は一様ではなかった。

 

彼らの目には恐怖の色が濃く滲んでいた。

一部は必死に動き、階段を駆け上がる者もいる。

しかし、その足取りは不安定だった——まるで今にも崩れ落ちそうなほどに。

 

「……俺たちは生きて帰れるのか?」

 

そう呟いた兵士の声は、誰にも聞こえないほどかすれていた。

それを聞いた仲間の肩が微かに震えたが、誰も返事をする余裕はなかった。

 

目の前の船に向かって走る彼らだったが、時折振り返る者がいた。

——港には燃え上がる機体の残骸、沈黙したザクIIの姿があった。

 

「……使えない連中め。カズヤ・ツキモリを仕留めなければ」

 

白髪の男は、乗り込む兵士たちを急かしながら低く呟いた。

その言葉に、怯える者たちの背筋がさらに凍り付く。

 

撤退のために船に乗ることしか頭にない者たちと、まだ戦いを終わらせていない男——

 

この船は、本当に無事に宇宙へ帰れるのだろうか?

 

その問いに答えられる者は、ここにはいなかった。

 

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