機動戦士ガンダム Gemini Saga   作:木星市民

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20話 日本防衛戦②

U.C.0079.03.15 大阪 日本防衛軍基地

 

「各地のジオン兵が消えた?」

 

「はい。正確には海岸線近くまで撤退していたジオン兵が消えたそうです。また、同じ地点でMSの残骸も発見されております」

 

テッド部隊は大阪に来るまでに5回の戦闘を行い、東日本に降下したジオン軍残党を尽く、殲滅していた。

 

補給で立ち寄った大阪の防衛軍基地で、海岸線まで撤退に成功していたジオン軍が兵器の残骸を残し、忽然と姿を消していることを情報交換に出ていたモリタから報告を受けた。

 

「日本海側か?」

 

「いいえ、太平洋側とのことです」

 

テッド部隊が通って来たのは日本海側であった。しかし、会敵した部隊は撤退より施設やインフラの破壊を優先的に破壊していた。

 

「長崎、鹿児島の様子は?」

 

「両軍共に通信を取れた部隊は無いようです。また、確定情報ではありませんが、連邦軍の鹿児島宇宙基地が落ちた可能性があるそうです」

 

「……そうか」

消えたジオン軍、陥落したと噂の連邦軍基地。カズヤはこの二つが何か、繋がっているような気がし、腕を組んで考え込んでいた。

 

大坂防衛軍基地での補給と情報交換を終えたテッド部隊は、次なる拠点へ向かう。

 

目的地は山口の前哨基地——防衛網を強化するため、新たな布陣が求められていた。

 

「太平洋側でジオン兵が消えた……」

 

カズヤは報告を思い返しながら、山口へ進むルートを慎重に選ぶ。日本海側を経由して移動するが、海岸線近くでの異常事態に警戒を強める必要があった。

 

「敵の行動が読めない以上、迂回ルートも視野に入れるべきだ」

 

山口の前哨基地では、連邦軍と防衛軍、ツキモリ重工業の共同でジオン軍への迎撃態勢を整え始めていた。

 

「迎撃準備はどこまで進んでいる?」

 

「現在、防衛線を再編中。ジオン軍の動向次第で戦術を変える必要がある」

同日の夕方には、山口の前哨基地に到着したライゲツは上空で待機し、今後の行動について会議を行っていた。

 

「最前線は福岡の筑後川と大分の番匠川の付近です。情報によると……」

 

「どうした?」

 

「申し訳ありません、続けます。敵編成はザグⅡ、マゼラ・アタック、アイハスとのことです」

 

「「…………」」

 

報告を受けたライゲツのミーティングルームの空気が一瞬止まる。誰もが、敵編成に含まれるアイハスの意味を測りかねていた。

 

「カズヤ、アイハスは補助AI(ツクヨミ)で鹵獲は出来ないんじゃないのか?」

 

アイハスはツクヨミの補助が前提に作られており、起動させたところで搭乗者として、登録されてなければ操作することは出来ない。

 

「アゼル隊長の言う通り、TTDO(・・・・)のアイハスはその機能があります。しかし、連邦軍と防衛軍に卸したアイハスは不特定多数の人員が乗ることを想定している為、オミットされています」

 

「ということは、連邦軍と防衛軍に配備されていたアイハスは鹵獲され、ジオン兵が使ってるってことか」

 

「そういう事になりますね。福岡と大分を除いた九州地方に配備されたアイハスは簡易的なツクヨミが搭載されています。ですが、その他の性能は私たちのアイハスと同じです」

 

カズヤの発言でミーティングルームの更に重い沈黙に支配された。MSの性能でアドバンテージを得ていたテッド部隊にとっては、敵が同格となり、猛威を奮ってくる。

 

更には敵はアイハス計画の原点となったザク(MS)を作り上げたジオン。MSの操作などにはあちらに一日の長がある。

 

「で、我々はどうするんだ?」

 

「アイハスが鹵獲されようとも、やることは変わりません。ジオン軍をこの日本から叩き出すことです。

 

今の状況を見るに筑後川を突破し、長崎を目指すより大分を突破し、宮崎から鹿児島を目指しましょう。

 

敵は施設を破壊後に鹿児島の宇宙基地から宇宙に逃げる気でしょうが、そんなことは認めない。

 

()たちの故郷を荒らしたんだ。ジオン(ゴミ)にはその命で対価を払って貰う。絶対にだ」

 

先程とは違う沈黙がミーティングを支配した。カズヤから発せられる強烈なプレッシャーに似た何かの影響で、その場に居た全員が口どころか指の1本も動かせない状況に陥っていた。

 

そして、彼の声とは別の声が重なって聞こえてきていた。

 

誰かが息を詰まらせる音だけが微かに響く。視線すら交わすことができないほど、場は張り詰めている。しかし、漸くアゼルが声を発した。

 

「……カズヤ、準備をしよう」

 

「そうですね。今日は解散して、明朝に大分へ向かいましょう」

 

アゼルの発言により、カズヤからのプレッシャーは消えた。まるで嵐が過ぎ去った後のように、誰もがようやく息を吸い込んだ。カズヤの言葉の圧から解放された瞬間だった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「で、テッペイは俺について来てるん?」

 

「当たり前やろ。アイハスが敵の手に落ちたんや、アイハスを超えるMSを開発するしかないやろ? それでそれを担当するのはワイとジブンや」

 

「なるほどね」

 

2人はカズヤの自室を入るとドアの二重ロックをかけると、タブレットを取り出した。彼らは月が空を登り、降り始める頃に解散した。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

U.C.0079.03.16 大分 番匠川付近

 

「テッド0が突破口を開いたぞ!」

 

テッド0が突破口を開いた瞬間、轟音が響き渡る。

番匠川の橋梁が振動し、砲撃の閃光が川面に反射する。

 

スラスターが火を噴き、アイハスXが一気に加速した。

背後には続く隊列——防衛軍のMS部隊、支援機の砲撃が後方から展開される。

 

「全機、突撃! 敵陣を突破する!」

 

橋梁の向こう、ジオン軍のザクIIが構えを取る。

マゼラ・アタックの砲塔が旋回し、番匠川を挟んで迎撃態勢へ移行する。

 

「敵機、接近! 防衛ラインを維持!」

 

砲撃が解き放たれる——衝撃波が戦場を揺らす。

 

ザクIIのシールドが砲弾を弾き、アイハスの機体が狙いを定める。

ビームライフルの光が走り、敵の装甲を焦がす。

 

マゼラ・アタックが砲撃を開始——衝撃波が地表をえぐり、爆炎が広がる。

川岸が崩れ、橋の一部が黒煙に覆われた。

 

「敵の砲撃が激しい! 防御陣形を維持!」

 

カズヤのアイハスXが前方へ躍り出る。

ビームサーベルが閃光を放ち、敵のザクIIと激突——

 

刃が装甲を貫く。

 

「撤退するな! 陣形を維持!」

 

オープン回線で聞こえてくるジオン側の通信は味方を引き止める声であった。しかし、他のザクIIのモノアイは迷うように揺れている。

 

一機、二機——テッド部隊の猛攻により、敵陣が崩れ始める。

 

戦場の中心、番匠川の水面が爆炎を映し出し、戦局は激化していく。

 

「……故郷の為に戦う気持ちは分かる。だが、お前たちは早すぎたんだ。未来の礎となれ!!」

 

U.C.0079.03.17 宮崎東部 日向灘

 

番匠川を突破したテッド部隊は、日向灘沿岸へと進撃。

 

ジオン軍は沿岸防衛を強化し、砲撃陣を展開——しかし、テッド部隊の機動力を活かした包囲戦術によって、敵防衛網が徐々に崩れ始める。

 

「敵砲台を破壊しろ!海岸線を奪還する!」

 

アイハス部隊が前進し、ジオンの野戦基地を制圧。

日向灘の戦線は激しく揺れながらも、確実に南へと押し進められる。

 

山間部に撤退したジオン軍は、えびの高原に拠点を設置。

機動戦の得意なザクII部隊が奇襲攻撃を仕掛けるも、テッド部隊のレーダー解析による迎撃で撃退される。

 

U.C.0079.03.19 宮崎県西部 えびの高原

 

「敵影確認——迎撃態勢に入れ!」

 

森林地帯での戦闘が展開され、近接戦闘が激化。

 

ビーム兵器の閃光が樹木を裂き、山間に爆炎が広がる。

最終的にジオン軍は拠点を放棄し、鹿児島方面へ撤退。

 

九州の戦線は最終段階へ——川内平野での決戦が始まる。

ジオン軍は戦車部隊とMSを組み合わせた防衛ラインを構築。

ここで、防衛軍とテッド部隊の連携が最大限に発揮される。

 

「敵防衛ライン、突破準備完了——総攻撃開始!」

 

一騎当千の活躍をするカズヤが駆るアイハスXとテッド部隊は、日本におけるジオンへの反抗の象徴であり、勝利の使者であった。

 

「破滅のヤタガラスだ! 逃げろ!!」

 

アイハスXは近づいてくる敵を薙ぎ払い、離れた獲物は一撃で沈めていく。左肩に描かれた部隊章はザクのオイルで黒くなり、シマエナガを知らないジオン兵からは黒い鳥の代表であるカラスに見えた。

 

誰が言い出したのかは分からないが、テッド部隊は日本神話に出てくる導きの神である八咫烏を宿した部隊。ジオンを破滅に導くカラスの部隊だと言われるようになった。

 

U.C.0079.03.21 鹿児島 川内平野

 

激しい砲撃とMS戦が展開され、川内平野全域が戦場と化す。

防衛網の突破に成功したテッド部隊は、ジオン軍を鹿児島市街へと押し込む——戦局は、鹿児島宇宙基地へと繋がる最終決戦へ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

基地周辺には砲台が展開され、ジオン軍は宇宙への撤退を狙いながらも最後の抵抗を準備している。

 

連邦軍鹿児島宇宙基地の司令室で、カズヤの活躍をモニタリングしている白髪の男は呟く。

 

「やっと来たか……カズヤ・ツキモリ。俺はここに居るぞ」

 

 

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