U.C.0079.03.28 鹿児島 連邦軍宇宙基地
テッド部隊が連邦軍宇宙基地前に到着してから、既に1週間が経とうとしていた。攻勢の為にツキモリ重工業、防衛軍、駐屯軍で前哨基地を作り上げていた。
「もう1週間が経っているぞ!! 連邦軍の外交官は何をしている!?」
「我々も確認しているが、交渉中の為、待機せよとしか返答が無いのだ……申し訳ない」
陣地構築中に小競り合いは起きていたが、テッド部隊の到着する前に連邦軍本部の外交官が現れ、宇宙基地を占拠しているジオン軍と交渉を始めていた。
基地の武力制圧を考えていた
「駐屯軍の外交官では無く、
今は、警戒態勢を解かずに何時でも動けるようにしておきましょう。かの外交官が何を考えているかは分かりませんが、戦闘は必ず起きます」
カズヤの一言で、三軍の連絡会は終了した。彼は今回の戦いにおいて、一介のPMCの長では無く、戦局を左右する重要人物だと誰しもが認識していた。
「カズヤ、
「アゼル隊長もだいたいは理解されているでしょう。
現在、ジオンの降下作戦は日本を除き、成功しています。各地で敗戦が続き、バイコヌール宇宙基地も占拠された今、更に鹿児島の宇宙基地まで占拠もしくは破壊などをされたら、宇宙への入口を失ってしまいます。
アゼル隊長が言うモグラたちは空への玄関を失いたくない為、ジオン軍が撤退する際に我々が攻撃しないことを条件に基地を無傷で確保したいのでしょうね」
連絡会に出席していたカズヤとアゼルは、ライゲツへの帰り道に連邦軍本部の意思を予想していた。
宇宙へのアクセスを失いたくない連邦軍本部、1日も早く日本からジオン軍を叩き出して、復興を行いたい連合軍。2つの異なる考えが不安定な休戦状態に陥っていた。
しかし、双方の設置された砲門はお互いに銃口を向き合っていた。
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U.C.0079.03.29 ライゲツ 艦橋
「初めまして、敵軍諸君。私はエグゾ・ファタムの隊長、アベル・イクスだ。先の戦いであるルウム戦役の功績で紫の閃光と二つ名をギレン総帥から頂いた者でもある」
「連邦軍の緊急事態回線を使い、こちらの回線に割り込んで来ています!」
ライゲツの艦橋モニターには、白髪の青年が金色の瞳で睨みつけるように己が誰かを語り始めていた。突然の出来事により、艦橋に居たクルーはモニターに釘付けになるが、カズヤは別の意味で困惑していた。
「……髪や瞳の色は違うがシャアに似ている。何故だ……?」
モニターに映るアベルの顔はシャア・アズナブルの素顔に瓜二つであり、カズヤに混乱を齎していた。
「さて、我々と君たちが行っていた交渉の返答だが、これだ」
カメラがアベルの後ろを映すと連邦軍の制服を着た外交官たちの死体が椅子に座っていた。その映像を見た女性クルーの小さな悲鳴と共にカズヤが叫ぶ。
「第1種戦闘配備!! 砲塔は敵基地の砲台を狙え! MS隊は準備が出来た者から出撃! 甲板にて、防衛態勢を保ちつつ待機せよ!」
映像に釘付けだったクルーたちがカズヤの声で動き出し、艦内のランプが赤くなり、回りだす。ライゲツの砲塔はすぐさま、宇宙基地の砲台に標準を合わせて、砲撃を開始した。
「モリタ艦長、後は任せます」
「申し訳ありません、カズヤ様。ご武運を」
モリタはカズヤに謝るとクルーたちに更なる指示を出し始めた。
「流石は我が同胞を葬ってきたカズヤ・ツキモリが率いるテッド部隊だな。反応が速い。だが、貴様らの活躍もここまでだ。覚悟しろ」
砲撃を受けたアベルであったが、不敵な笑みを浮かべ、カズヤたちに名指しで宣戦布告を行った。
「ジブン、かなり恨みを買っとるで」
「これは戦争だよ。殺し殺され。明日は我が身かも知れない。恨みを清算する時は、死ぬ時か戦後の裁判だけだ。彼の恨み節を聞いてる時間は無い」
ライゲツの甲板が震える。機体ハンガーの支柱がゆっくりと後退し、カズヤのアイハスXがその影から姿を現した。スラスターが点火され、推進制御系が緊張に満ちた駆動音を発する。
「テッド0、アイハスX、出る!」
機体が跳ねるように甲板から飛び出した瞬間、メガ粒子砲の閃光が所狭しと放たれていた。そして、コックピット内は、一瞬で戦場の喧騒へと飲み込まれた。
アイハスXのセンサーが索敵範囲を拡張。ライゲツの甲板上に待機していたテッド部隊の機影が次々に飛び立ち、編隊を組む。
「作戦は変わらない。エレメントを組みつつ、敵を撃破せよ」
カズヤが部隊に指示を出す。エンブレムを刻んだ機体が上空を走り、戦場の火種に近づいていく。
遠方で、宇宙基地の格納庫から炎が噴き上げた。赤々と燃え上がる光が、朝日に照らされた地上に力強く浮かび上がる。
「クソッッ! HLVが発射された!迎撃を優先せよ!」
スラスターを全開にし、テッド部隊がHLV迎撃へ向かう。だが、その動きを読んでいたかのように、基地内部から新たな機影が飛び出す。
「敵機、接近!」
モノアイが光る。ザクII——いや、それだけではない。隊列の中にジム、ガンキャノン、そしてアイハスの姿が紛れている。
「……鹵獲していた機体をここに集めていたか」
カズヤの息が詰まる。敵編隊に連邦軍機が混じっている事実が、戦場の混乱を極限まで高める。
「面白いじゃないか! お前がここまで描いんだろ、アベル・イクス!?」
混戦が始まる。閃光が走り、ビームライフルの光跡が空間を裂く。
カズヤのアイハスXが急旋回。ビームライフルが飛び交う中、戦場の空気を切り裂くように加速した。
「最優先目標をビーム兵器持ちに変更!」
「了解したわ!」
アイハス、ジム、ガンキャノンが迎撃に向かう。しかし、テッド0の動きはすでにそれを見越していた。
ビームライフルが火を噴く。
アイハスXの照準がジムの胸部へ突き刺さる。一瞬の閃光、爆発——機体が崩れ落ちた。
「次、ガンキャノン!」
カズヤはスラスターを開放し、旋回する。砲撃の熱風が機体をかすめる中、アイハスXが地面を滑るように進み、ビームサーベルを振り抜いた。
「突破した!HLVを破壊する!」
テッド部隊がザクの防衛線を突破し、宇宙へ向かう発射施設を狙う。しかし——
「待て、敵増援!紫のアイハスと……ガンキャノン!?」
敵機が戦場の煙を切り裂き、滑るように現れる。
紫の閃光が走る。
ガンキャノンが砲撃を展開し、その隙を縫うようにアイハスが機動を繰り出した。完全な連携——まるでテッド部隊の動きを読んでいるかのような精密な戦術だった。
「この連携……!」
アゼルは歯を食いしばりながら部隊に指示を飛ばす。
「損傷機、退避!」
「テッド0、合流する!」
損傷機たちと入れ替わるタイミングでカズヤは到着した。そして、アゼルとエレメントを組む。部隊が再編され、二機の敵エース機に対し迎撃態勢を整える。
「俺の動きについて来れますか?」
「舐めんじゃねぇぞ、糞ガキ。誰がお前に戦場のイロハを教えたと思ってやがる」
一騎当千のカズヤとテッド部隊総隊長のアゼルの即興のエレメント。通常では有り得ない突出した矛と矛の組み合わせ。
「待ちに待ったぞ、カズヤ・ツキモリ! 宇宙で受けた借りをここで返す!!」
「アベル隊長、作戦時間にお気をつけてください。それまでは、私もお付き合い致します」
無双を誇ったテッド部隊の大半を撤退させた連携を見せた紫色の敵機はカズヤとアゼルと相対する。
燃料庫の爆発をゴングにして、3機はスラスターを解放し接近した。そして、カズヤはスラスターを全開にしながら、敵の紫の機影を睨んだ。これが、宿命となる戦いになることを知らずに——