U.C.0076.01.13 道央某所 ツキモリ家本邸
降りしきる雪は、札幌の街を白く染め上げていた。ツキモリ家本邸の玄関前に滑り込んだ黒塗りの車から降り立ったのは、疲労の色を隠せないゲンタロウ・ツキモリだった。
威厳のある顔立ちに、白髪が混じり始めた短髪。北海道の厳しい冬にも負けない、厚手のコートが彼の愛国心を物語っているようだった。
出迎えた使用人たちに軽く頷き、ゲンタロウの後ろには、黒髪短髪で蒼い瞳を持つ次男、カズヤが立っていた。その隣には、落ち着いた雰囲気を漂わせる長男、シンもいた。
「レビル将軍、テム・レイ殿。こちらは私の息子たちです。長男のシンと、次男のカズヤです。」
シンとカズヤは二人に向き直り、深く頭を下げた。ゲンタロウの眼差しには、息子たちへの期待と、その並外れた才能がもたらすかもしれない危うさへの懸念が入り混じっていた。
後ろから現れた威圧感のある白髪の男と、知的な光を宿す眼鏡の男は、地球連邦軍のレビル将軍とテム・レイ技術大尉である。
応接間に通された五人は、燃え盛る暖炉の前に腰を下ろした。暖かい空気が、外の寒さを忘れさせる。ゲンタロウは、連邦との会議の概要を報告し終えると、少し緊張した面持ちで振り返った。
「カズヤ・ツキモリ君。君の才覚については、ゲンダロウ会長からつぶさに報告を受けている。一個人として、君と同じくジオンが作り上げている
レビル将軍の言葉は、重く、そして期待に満ちていた。テム・レイは、興味深そうにカズヤの蒼い瞳を見つめ、穏やかな口調で問いかけた。
「会長から、君が独自に開発を進めているという人型機動兵器、『アイハス』の概念について伺った。もし差し支えなければ、詳しく教えてもらえないだろうか?」
カズヤと連邦軍の重要人物との出会いが、今、静かに始まった。ゲンタロウは、息子たちの才能が連邦の力となり、ひいては日本の、北海道の未来につながることを願っていた。
しかし、同時に、その天才的な閃きが、彼自身を孤独な道へと導くのではないかという不安も感じていた。
「アイハスは、ツキモリ重工業が作成したパワーアーマーの補助AIを改良して、搭載した自律知能搭載人型兵装システムです。OSはバワーアーマーから得たデータを流用して、作成しています。その為、重力下では安全に稼働しています」
「そこまで完成しているのですね。レビル将軍、アイハスは想像以上です」
「そのようだな」
テムはカズヤの話を聞き、目を輝かせながらレビルに自分の感想を伝えた。レビルも驚きを隠しつつ、深く頷いた。
「カズヤ君、アイハスの動力や武装、運動性、AI補助のレベルのデータはあるのかい!?」
「待ちたまえ、レイ大尉。ツキモリ重工業は連邦軍の下部組織では無く、長年の同盟者だ。我々も何かしらの情報を出さなければ、アイハスの情報を提供することは出来んだろう」
興奮しながら身を乗り出すテムを窘め、レビルは深く息を吐きながら、座り直した。
「現在、私が主導しているV作戦というのがある。ジオンのMSに対抗して、MS、MS運用を前提とした母艦、運用方法の確立する為の計画だ。
カズヤ君、アイハスやその関連するデータと我々のV計画のデータをお互いに共有しないか?」
カズヤはゲンタロウを見るが目を合わせることは無く、態度で自身で判断しないといけないと理解し、左手で口を隠し考え始めた。
ペガサス級に使われているミノフスキー・クラフトやビームライフルなどの技術は欲しい。しかし、今後のグリプス戦役やアナハイム・エレクトロニクスへの情報流出を考えるとリスキーな部分がある。
「……かしこまりました、アイハスのデータを提供致します」
「ありがとう、カズヤ君。君のおかげでV作戦は進展するだろう」
カズヤとレビルは握手を交わし、詳細を詰めていった。アイハスのデータはV作戦に利用され、先行生産型ガンダム、ジムの生産に多い役立った。
ミノフスキー・クラフトやビームライフルなどの技術はカズヤの今後のWACH計画やアイハスの改良に利用された。
「あの少年は一歩間違えたら、我々連邦軍の大いに危険な存在になる。だが、ジオンや他の派閥に盗られる訳にもいかぬ。何かしらの手を講じる必要性があるな」
通された客間でレビルはカズヤの才能と将来に有用性と危険性を感じて、重い言葉を吐き出していた。
後日、レビルの三女、リリア・イブラヒム・レビルとカズヤの婚約が発表された。
「うっそだろ」
ツキモリ重工業の広報で自分の婚約を知ったカズヤはその場に1時間も立ち尽くした。