機動戦士ガンダム Gemini Saga   作:木星市民

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7話 赤い彗星

「……原作よりMSが多い」

 

「原作ってなに?」

 

  カズヤはツクヨミの問いかけには応えず、映像解析に没頭した。初期型ガンキャノンが24機に対して、プグが2機、ザクⅠが6機。原作より多いMSが混戦を繰り広げていた。

 

「見事な殺られっぷりだな。数があっても技術はジオンが上か。赤色の機体は居るか?」

 

「……3時方向でガンキャノンと戦闘中よ」

 

  拡大映像には、赤色の機体が砲撃をかいくぐりながらガンキャノンに肉薄する姿が映っていた。その後、カズヤはペダルを踏み込み、推進剤が噴射されると同時に機体が戦場を疾走した。

 

 宇宙は爆炎と砲火の嵐に包まれていた。

 

 カズヤのアイハス改は推進剤を噴射し、爆煙の中を疾走する。

 

「前方、ザクⅠ三機が展開。280mmバズーカを発射——」

 

 ツクヨミの警告が響いた瞬間、カズヤは機体を左へ大きく傾けた。弾道の軌跡が解析画面に表示されるよりも速く、彼の直感が回避を指示していた。白熱した砲弾が右舷をかすめながら宇宙の闇へ消えていく。

 

「……予測より早い」

 

 ツクヨミの分析が一瞬遅れた。カズヤは軽く息を吐きながら、次の動きを考える間もなく機体を旋回させた。

 

「シャアの機体、ガンキャノンを翻弄中——高速機動で接近中」

 

 視界の先、赤い機体が敵の砲撃を巧みにかわしながら戦場を支配するかのように駆けていた。カズヤはシールドを構え、アイハス改の加速をさらに上げた。

 

「ツクヨミ、敵の動きの修正予測をしろ。シャアとの距離を測れ」

 

「了解——しかし貴方の動きが私の予測を超過しているわ」

 

 カズヤは笑みを浮かべた。機械の計算では測れない瞬時の判断が、彼にとっての戦場の勘だった。

 

 右方から黒い三連星のザクⅠが突撃し、マシンガンを連射する。カズヤは迷わずブースターを最大出力で叩き込み、機体を急上昇させた。弾丸が虚空を裂き、爆発音が後方に広がる。

 

「シャア、逃がすものか——」

 

 カズヤはアイハス改の試作ビームライフルを構えながら、赤い機体を視界に捉えた。シャアがこちらの動きに気づき、一瞬だけ姿勢を変えた。

 

 閃光が交錯し、戦場の混沌が極まる。カズヤは試作ビームライフルを構え、シャアの機体を捉えた。

 

「ロックオン完了——」

 

 ツクヨミの報告が響く。しかし次の瞬間、シャアの機体が急激に軌道を変え、眼前の中破したガンキャノンの後ろへと滑り込んだ。

 

「射線、遮断——ターゲットロスト。」

 

 カズヤは舌打ちした。シャアの動きは速い。まるでこの機体が生き物のように直感的な判断を下しているかのようだった。

 

「くそ……」

 

 カズヤは再照準を試みる。しかしその瞬間、ツクヨミが警告を発した。

 

「ザクⅠ、三機が高速機動で接近中。識別——黒い三連星!」

 

 ツクヨミの解析が走る。しかし、光学センサーの映像解析により、カズヤは戦場の敵影を把握した。

 

「ザクⅠ、三機がフォーメーションを組んで高速機動で接近!」

 

 カズヤは視界に映る影を見据えた。彼らの戦法は連携と機動を活かし、敵を圧倒する。その狙いは明白だった。

 

「俺を足止めするつもりか——」

 

 三機が挟み込むように配置される。先頭の機体が105mmマシンガンを連射しながら前方を封じ、残る二機が左右に広がった。

 

「光学解析中——」

 

 ツクヨミの分析を待つ暇などなかった。カズヤは機体を右へ滑らせ、推進剤をフル稼働させる。弾丸の嵐をかいくぐりながら、アイハス改は軌道を描いた。

 

「フォーメーションを崩す!」

 

 試作ビームライフルを構え、カズヤは最も近い機体を狙った。発射の瞬間、敵機はスパイク・シールドを構え、軌道を変えて回避する。しかし、次の一手はすでに決めていた。

 

「ツクヨミ、出力最大!」

 

 アイハス改の高出力型レールガンが火を噴き、衝撃波が敵機の防御を打ち砕く。スパイク・シールドが弾け飛び、ザクⅠがバランスを崩した。

 

「一機撃破!」

 

 だが、まだ二機——マシンガンの嵐が襲いかかる。カズヤは機体を旋回させ、脚部ミサイルポッドを発射。爆発が敵の軌道を歪ませ、一瞬の隙が生まれる。

 

「……今だ!」

 

 カズヤは推進剤を最大出力にし、戦場を駆け抜けた。

 

「シャアまで、あと——」

 

 黒い三連星の最後の一機が、ヒート・ホークを構えながら突進してくる。だが、カズヤの試作ビームソードが閃光を描き、迎え撃った。

 

 閃光が交錯し、最後のザクⅠが動きを止める。

 

「敵機、戦闘不能。」

 

 ツクヨミの冷静な報告の中、カズヤはシールドを構え、シャアを見据えた。

 

「今度は——お前だ、シャア・アズナブル!」

 

  宇宙空間に閃光が走る。カズヤのアイハス改は試作ビームライフルを構え、シャアの機体を狙った。

 

「弾幕展開、照準固定——」

 

 ツクヨミの解析に合わせ、高精度レールガンとガトリングガンが火を噴く。ビーム、実弾、爆発の嵐が赤い機影を飲み込もうとする。

 

 しかし——

 

「敵機、高速機動で回避!」

 

 シャアの機体は推進剤を巧みに制御し、弾幕の隙間を縫うように軌道を描く。ビームが掠めるたびに機体が僅かに傾き、まるで影のように空間を疾走する。

 

「……この機動、やはり速い!」

 

 カズヤは冷静さを保ちつつ、敵の進路を予測する。しかし次の瞬間——

 

「シャア、接近!」

 

 視界の端、赤い機体が急加速し、カズヤのアイハス改の懐に飛び込んでくる。

 

「くっ——!」

 

 ヒート・ホークが振りかざされる。カズヤはシールドを構えるが、斬撃の軌道が予測よりも鋭い。

 

 衝撃が走る——

 

「シールド、防御限界——」

 

 ツクヨミの警告が鳴り響く。しかしカズヤの思考は、次の瞬間に向けられていた。

 

 ヒート・ホークが振り下ろされる寸前、カズヤはアイハス改の腕を旋回させ、敵機の腕を掴んだ。

 

「確保!」

 

 衝撃が伝わる。機体同士が絡み合い、宇宙の闇に緊迫した静寂が走る。

 

 カズヤは息を整え、迷わず指示を出す。

 

「ツクヨミ、シャアとの通信回線を開け」

 

 機体の内部に電子音が響き、ノイズ混じりの短距離通信が接続される。

 

「急に回線を開いたと思いきや、私をダイクンの遺児だと言うのかね?」

 

 シャアの声は冷静だった。だが、その僅かな間に、アイハス改のセンサーが敵機の揺らぎを捉えた。

 

「そう呼ばれるのは気に入らないか?」

 

 カズヤは穏やかに言葉を紡ぎながら、機体の出力を調整し、敵機の制御を探る。シャアの動きは未だに鋭く、油断はできない。

 

「君が何を言いたいのかは知らないが、私と戦うのならば、言葉を交わす必要はないだろう」

 

 シャアは推進剤を吹かせ、再び距離を詰める。カズヤは試作ビームソードを構えながら、静かに言葉を継いだ。

 

「セイラ・マスの情報を持っていると言ったら?」

 

 一瞬、赤い機体の挙動が変わった。

 

 カズヤはその僅かな違和感を逃さなかった。シャアの反応は極めて微細なものだったが、確かに戦闘中の均衡に変化をもたらしていた。

 

「……ほう。」

 

 シャアの声がわずかに低くなる。

 

 カズヤは薄く微笑みながら、次の攻撃の準備を整えた——

 

「……ほう。」

 

 シャアの声がわずかに低くなる。彼は推進剤を調整しながらカズヤとの間合いを再構築する。

 

「セイラ・マスの情報——それがどうした?」

 

 戦場に響く通信。カズヤはアイハス改の出力を微調整しながら答えた。

 

 シャアの声がわずかに低くなる。彼は推進剤を調整しながらカズヤとの間合いを再構築する。

 

「君が何を言いたいのかは知らないが、私と戦うのならば、言葉を交わす必要はないだろう。」

 

 次の瞬間、シャアの機体が軌道を変えた。

 

 赤い機体が間合いを詰める。ヒート・ホークが軌道を描き、カズヤのアイハス改に迫る。

 カズヤはビームソードを構えながら、静かに言葉を紡いだ。

 

「だが、お前が何をしようとしているのか——俺は知っている。」

 

 シャアの推進剤が僅かに出力を上げる。カズヤはその反応を見逃さなかった。

 

「そして、お前が選び続けた道は、後悔と虚しさしか残らない!!——それでも進むのか!?」

 

「貴様は俺の何を知っている?」

 

 カズヤは穏やかに続ける。

 

「逃避行を余儀なくされ、その間に……優しい母親を失ったこともな。」

 

 一瞬、赤い機体が動きを止めた。

 

 わずかな推進剤の燃焼調整。減速ではない——ほんの僅かに、機体の挙動に迷いが生じたのだ。

 

 通常ならば即座に次の機動へと移るシャアの動きが、カズヤの言葉によって一瞬の遅れを生じている。

 

 だが、シャアは即座に推進剤を吹かせ、再び攻撃の軌道に乗せる。ヒート・ホークが閃光を描く。

 

「貴様が俺の過去を語る資格があるのか?」

 

 カズヤはシャアの言葉を無視し、防御しながら、さらに問いかける。

 

「お前の復讐——それは、本当にお前自身のものなのか?」

 

 赤い機体が間合いを詰める。カズヤはさらに言葉を紡ぐ。

 

「それとも……ジンバ・ラルに植え付けられたものなのか?」

 

 シャアの機動が僅かに乱れた。

 

 今度は迷いではない——推進軌道に微細なズレが生じた。狙いすました攻撃の精度が、ほんの僅かに狂ったのだ。

 

 カズヤはその変化を見逃さない。赤い機体は依然として鋭く、隙を見せることはない。しかし、その推進の軌道にはわずかな乱れが生じていた。

 

「貴様は預言者か? あるいは、ニュータイプにでもなったつもりか?」

 

 カズヤは微笑みながら応じる。

 

「俺は……ニュータイプかも知れない。それかただの虚言者かだ。」

 

 シャアの機体が再び間合いを詰めたその瞬間——

 

 カズヤの試作ビームライフルが火を噴く。

 

 青白い閃光が走り、シャアのザクの左足を撃ち抜いた。装甲が砕け、残骸が宙に舞う。

 

 しかし、シャアの動きは止まらない。推進剤が吹き上がり、片足を引きずりながらもヒート・ホークを振り上げる。

 

 ザクの赤い残影がアイハス改の懐に滑り込む。

 

「カズヤ、回避——!」

 

 ツクヨミの警告が響く。しかし、次の瞬間——

 

 ヒート・ホークが閃光を描き、アイハス改の右腕を切り裂いた。

 

 装甲が弾け、内部機構が露出する。カズヤは機体のバランスを調整しながら、シャアの視線の奥を探る。

 

  しかし、突如として両軍から撤退信号が打ち上げられた。

 

 カズヤのアイハス改の光学センサーが戦場全体を捉える。連邦軍の部隊が次々と後退し、ジオンのMSも戦線を離脱し始める。

 

「……ミノフスキー博士の確保が完了したか。」

 

 ツクヨミが状況解析を続ける。

 

「解析結果——連邦軍がミノフスキー博士を確保。ジオン側の戦闘目的が喪失したため、戦闘継続の合理性がなくなったと推測。」

 

「ジオンは博士の抹殺に失敗した——だから撤退か。」

 

 カズヤは静かに息を吐き、シャアのザクを見る。

 

「シャア、この撤退はお前にとって何を意味する?」

 

 赤い機影が僅かに姿勢を整える。

 

「戦局の一時的な収束——それ以上でも、それ以下でもない。」

 

 カズヤはシールドを構えながら、アイハス改の推進制御を調整する。

 

「ならば、お前の目的も一度、幕を閉じるわけだ。」

 

 シャアのザクは推進剤を噴射し、距離を取る。

 

「目的が終わったわけではない。次の手を考えるだけだ。」

 

 カズヤは小さく笑みを浮かべながら答える。

 

「ならば、またどこかで続きを語ろう。お前が本当に知りたいことが何かを、確かめるためにな。」

 

 シャアは沈黙する。そして、推進剤の閃光が輝き、赤い機影が戦場から消えていく。

 

「ツクヨミ。シャアとの会話ログを全て削除しろ」

 

「了解」

 

カズヤはツクヨミにシャアとの会話の記録を削除を指示し、ヘルメットを脱いだ。そして、備え付けられているドリンクパックを取り出すと飲み干した。

 

「俺はこれで歴史に介入した。だが、これだけでは、大きな流れを変えることは出来ないだろう」

 

「…………」

 

小さく呟く声にツクヨミは反応することは無く、少しの間、沈黙が続いたが、レーダーにスサノオの姿が映し出された。

 

カズヤは機体を艦に向けた。

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