ジークアクス世界の闇堕ちアムロ 作:gジェネサイコー
模擬戦――四度目の敗北
宇宙空間に二機のMSが向かい合っていた。マチュの乗るジークアクスはビームライフルとビームサーベルのみ。一方、シュウジのアレックスにはビームライフル、ビームサーベル、腕部ガトリングガン、そして背部から伸びるインコムが装備されている。かつてシイコ・レイが乗っていた機体を前に、マチュは油断なく操縦桿を握った。特に警戒しているのはインコムだった。先日の戦いで、ワイヤーの先端にある砲塔部分を切り離し、ビットとして独立運用できることを見ている。あれが別方向から飛んでくれば、正面のアレックスと同時に相手をしなければならない。だからこそ、マチュはいつ砲塔が切り離されてもいいように意識を割いていた。
模擬戦開始と同時に、マチュはビームライフルを撃ち込んだ。アレックスは射線を僅かにずらしてかわし、そのまま距離を詰めてくる。マチュはさらに射撃を重ねながら後退するが、シュウジは無理に攻め込まず、こちらの動きを一つずつ確認するように間合いを詰めていく。そしてアレックスの背部からインコムが射出された瞬間、マチュは反射的に身構えた。来る――ビットに分離する。そう思った。しかし、シュウジは分離させなかった。ワイヤーに繋がったままインコムを側面へ回り込ませ、マチュがそれを警戒して意識を向けた隙にアレックスが正面から踏み込む。ビームライフル、インコム、そして接近してからのビームサーベルと腕部ガトリングガン。攻撃そのものは決して複雑ではない。それなのに、マチュは次第に追い込まれていった。インコムがビットになる可能性を警戒するあまり判断が遅れ、回避すればその先へシュウジが回り込み、反撃しようとすれば別方向からインコムが射線を作る。まるでこちらの動きを先に読まれているようだった。
「くっ……!」
マチュは必死に食らいつく。ビームサーベルを抜き、アレックスへ斬り込む。しかし、シュウジはその一撃を受け流すと同時に機体を滑らせ、マチュが体勢を立て直すより早くガトリングガンを叩き込む。咄嗟に回避した先には、すでにインコムが回り込んでいた。ビームがジークアクスを捉える。
『模擬戦終了』
無機質なアナウンスが響いた。
「…………」
マチュは言葉を失った。インコムは最後までビットとして分離しなかった。警戒していた攻撃は、一度も使われなかった。それなのに負けた。いや――使われなかったからこそ、シュウジの上手さが際立っていた。ビットにできるという事実だけでマチュの意識をインコムへ縛りつけ、その隙を利用してアレックス本体で追い詰めていく。シュウジはマチュの武器を封じたのではない。マチュ自身の警戒心を利用して、戦場での判断を一つずつ上回っていたのだ。機体性能だけではない。パイロットとしての腕の差が、あまりにも大きかった。
『マチュ、大丈夫?』
通信機からシュウジの声が聞こえる。
「……大丈夫」
そう答えながら、マチュは操縦桿を強く握り締めた。
――次は、絶対に負けない。
そう自分に言い聞かせるように。
「次!」
まだ終わっていない。
そう自分に言い聞かせるように、マチュは操縦席へ身体を預けた。
そして、二戦目。
シュウジとの模擬戦を終えたマチュは、続けて二戦目へ移った。今度の相手はニャアン。そして彼女が乗るのは、白い装甲を持つZガンダムだった。頭部には60mmバルカン砲、両腕にはグレネード・ランチャーと実弾式の2連装ランチャー、腰にはビーム・サーベル、そして最新型の高出力ビームライフル。さらにZガンダムは可変機であり、ウェイブライダーへ変形することで通常のMSでは追随できない機動力を発揮する。武装だけを見てもジークアクスとは比較にならないが、それでもマチュには勝算があると思っていた。シュウジには負けた。しかし、ニャアン相手なら話は別だ。パイロットとしての実戦経験なら自分の方が上。ならば、その差を利用すれば勝てる――そう考えていた。
『マチュ、準備できたよ』
「うん。今度は負けないから」
模擬戦開始。
マチュは先ほどのアレックス戦と同じように、まず距離を取りながらビームライフルを構えた。対するZガンダムもライフルを構える。互いのビームが宇宙空間を走り、マチュは射線を読みながら機体を滑らせる。しかし、次の瞬間、Zガンダムが変形した。
「……!」
白い機体が瞬く間に姿を変える。
ウェイブライダー。
MSの形態では考えられない速度で、Zガンダムがマチュの側面へ回り込んだ。マチュは咄嗟に機体を旋回させるが、追いつかない。ウェイブライダー形態から放たれたビームがジークアクスのすぐ脇を抜け、マチュが回避した先へZガンダムが再びMS形態へ変形して現れる。
「速い……!」
マチュはビームライフルを撃つ。ニャアンはそれを避けると、今度は頭部バルカンを撃ちながら接近してきた。細かな弾幕がジークアクスを追い立てる。マチュは回避しながら反撃しようとするが、そこへ両腕のグレネード・ランチャーから小型グレネードが放たれた。単なる実弾ではない。追尾機能を持つそれは小型ミサイルのように軌道を変え、ジークアクスへ食らいついてくる。マチュは一発をかわし、二発目をビームライフルで撃ち落としたが、その間にもZガンダムは距離を詰めていた。
「ニャアン!」
『まだだよ!』
Zガンダムがビームライフルを構える。マチュも同時に撃った。互いのビームが交差し、マチュはそのまま懐へ飛び込む。近距離なら自分の方が――そう判断してビームサーベルを抜いた瞬間、Zガンダムの右腕から実弾が連射された。腕部2連装ランチャー。持ち替えすら必要としない内蔵武器による不意打ちに、マチュは咄嗟に機体を捻ってかわす。だが、その一瞬の隙をニャアンは逃さなかった。Zガンダムのビームサーベルが振り抜かれる。
刃がぶつかる。
マチュは押し返そうとする。
だが、Zガンダムの動きは滑らかだった。
「くっ……!」
マチュは機体を引いて距離を取る。まだだ。まだ自分には経験がある。ニャアンより多く戦場を知っている。そう自分に言い聞かせながら、今度は相手の動きを先読みして先回りしようとする。しかし、その読みそのものをZガンダムの機動力が上回った。変形、加速、急旋回。ニャアンが操縦するZガンダムは、マチュが「次はここへ来る」と予測した場所へ、予測より早く到達してしまう。マチュが反撃へ移ろうとした瞬間にはもう別の位置にいる。追いつこうとすればビームライフルが飛び、射撃を避ければグレネードが追い、近づけばバルカンと内蔵ランチャーが待っている。まるで一機のMSが何機にも増えたかのように、Zガンダムは縦横無尽に戦場を支配していた。
「なんで……!」
マチュは必死に食らいついた。
だが、最後にはZガンダムがウェイブライダーへ変形し、一気に間合いを離す。そして再びMS形態へ戻った瞬間、ビームライフルの銃口から伸びたロング・ビーム・サーベルがジークアクスを捉えた。
『模擬戦終了』
判定音が響く。
「…………」
マチュは呆然とした。
負けた。
ニャアンにも。
『マチュ……大丈夫?』
「……うん」
返事はした。
けれど、納得できなかった。
ニャアンの方が実戦経験で勝っていたわけではない。むしろ逆だ。自分の方が多く戦ってきた。相手の動きを読むことだって、これまでの戦いで身につけてきた。
それなのに――。
Zガンダムは、その経験差を正面から潰してきた。
変形による圧倒的な機動力。
豊富な射撃武装。
内蔵兵器による隙のない攻撃。
そして何より、マチュの操作に機体が追従するよりも早く、ニャアンの意思へ応えるかのように動く異常な反応性。
マチュが一手先を読んでも、Zガンダムはさらにその先へ行く。
それはまるで、パイロットの経験そのものを機体性能で押し潰されたような敗北だった。
シュウジに続いて、ニャアンにも負けた。
その後、何度か条件を変えて模擬戦を行った。
結果は変わらなかった。
シュウジに二敗。
ニャアンに二敗。
合計――四連敗。
ホワイトベースJr.へ戻る頃には、マチュはすっかり俯いていた。
格納庫へ入る。
三機のMSがハンガーへ固定され、整備員たちが冷却作業へ取りかかる。
マチュはコックピットから降りると、その場で俯いた。
何も言わない。
そんなマチュへ、シュウジとニャアンが近づいていく。
「マチュ……」
「大丈夫?」
二人の声。
マチュは答えない。
肩が小さく震えている。
「その……」
シュウジが困ったように言葉を探した。
「勝ち負けは、気にすることじゃないよ」
マチュが僅かに顔を上げる。
「君は前より格段に強くなってる」
「そうだよ!」
ニャアンも慌てて続けた。
「模擬戦やってて、何回もヒヤッとしたよ! 私だって危なかったんだから!」
「……」
「だから、凄いことだって!」
マチュの拳が震える。
そして。
勢いよく顔を上げた。
「……アルレット!」
「…………」
少し離れた場所。
三機の冷却を指示し終えたアルレット・アルマージュは、テム・レイと並んで機体各部のデータを確認していた。
聞こえている。
当然、聞こえている。
だがアルレットは、聞こえないふりをした。
「先生。シュウジとニャアンの模擬戦データも集まってきましたし、機体に彼ら専用の調整をしますか?」
「アルレット」
「はい」
「……呼んでいるよ」
「…………」
アルレットの動きが止まる。
小さくため息を吐いた。
尊敬する恩師、テム・レイとモビルスーツの話をしている時間を、できることなら邪魔されたくなかった。
だが。
本人から諭されてしまえば仕方がない。
アルレットは渋々、マチュへ振り返った。
「何ですか?」
「……」
「連敗記録の更新ですね」
あまりにも淡々とした言い方だった。
「慰めて欲しいなら、彼氏か友達に頼んでください」
「「…………」」
シュウジとニャアンが同時に顔を見合わせる。
そして、互いの表情を確認する。
僕らがマチュを負かして。
私たちがマチュを慰める?
二人の脳裏に、ほぼ同時に同じ言葉が浮かんだ。
――それなんてマッチポンプ?
「これで四連敗なんだけど!」
マチュが涙目で叫んだ。
「始める前に言ったでしょう」
アルレットは平然としている。
「今のあなたが勝てるわけがない、と。」
「だって!」
「二人が乗っている機体には、マグネットコーティングとサイコフレームが搭載されています。」
マチュが黙る。
「……それが何?」
「分かりませんか?」
アルレットはジークアクスへ視線を向けた。
「シュウジ相手なら、そもそも今のあなたでは機体が何であろうと簡単には勝てません。ですが、ニャアン相手なら話は別です。」
「……え?」
「あなたの方が、パイロットとしての実戦経験は上です。」
その言葉に、マチュが僅かに顔を上げた。
「なら……」
「ですが、その差を機体性能が潰しています。」
アルレットは淡々と説明を続けた。
マグネットコーティングによって機体の各部はより高速かつ滑らかに反応し、搭乗者の操作をほとんど遅延なく機体へ伝える。そしてサイコフレームは、ニュータイプであるニャアンの感応能力をさらに引き出している。つまり、本来ならマチュが持っている実戦経験という明確なアドバンテージを、Zガンダムは機体そのものの反応性で押し潰してしまうのだ。ニャアンがマチュより経験で勝っているわけではない。それでも、マグネットコーティングすら施されていないジークアクスでは、マチュが多少上回っている程度の操縦経験では覆せないほど、両者の機体性能には差がある。それは、実戦を幾度も潜り抜けてきたマチュを一方的な黒星へ追い込むほどの差だった。
「だから、カミーユのアレックスを貸すから、そっちに乗って模擬戦すればいいと忠告したのに。」
アルレットは呆れたように言う。
「ジオンのガンダムもどきなんかに拘るから負けるんです。」
「ガンダムもどきって……」
マチュが眉を寄せる。
アルレットにとって「ガンダム」という言葉には明確な定義があった。
テム・レイが作り上げた傑作機群。
百歩――いや、千歩譲っても、テム・レイの教えを受けた連邦の技術者たちが設計したMSまで。
それ以外は、たとえ同じような姿をしていようが、彼女にとって「ガンダム」と呼ぶには値しない。
一年戦争の混乱に乗じて盗み出され、後から改造された赤いガンダム。
そして、その後継機として生み出されたジークアクス。
アルレットからすれば、それらはあくまで「ガンダムに似た何か」でしかなかった。
「でも……」
マチュが不安そうにジークアクスを見上げる。
「そしたら、ジークアクスはどうするの?」
「模擬戦でデータ取りですよ。」
アルレットは即答した。
「ジオンが掛けた暗号化も無効化できました。データ解析もかなり進んでいます。」
「なら……」
「パイロットは……そうですね。」
アルレットは少し考えた。
「カミーユあたりにでも頼んで――」
「やだ!」
マチュの声が格納庫に響いた。
アルレットが目を瞬かせる。
「……何がです?」
「ジークアクスは!」
マチュは必死に機体を見上げる。
「ジークアクスは……!」
その先の言葉が出てこない。
ただ、自分の胸の奥にある何かだけは、はっきりと分かっていた。
この機体を。
自分の手から。
誰かに渡すなんて――。
絶対に嫌だった。
ホワイトベースJr.の艦内には、本来なら存在するはずのない部屋がある。
テム・レイ専用研究室。
戦艦の中に研究室を設けること自体が異例なのだが、連邦におけるテム・レイという技術者の重要性は、もはや「重要」という言葉だけでは片付けられない領域に達していた。新型MSの設計、サイコミュ技術、サイコフレーム、さらには既存技術の改良まで、彼の手によって生み出された技術が戦局を左右することは珍しくない。そんな人物を艦内に置く以上、上層部が研究設備を用意すること自体は当然だった。
ただし、問題が一つあった。
テム・レイ本人が、根っからの技術屋なのだ。
機密情報の管理については、技術への執着に比べればかなり大雑把だった。何せ原作では、自宅の自室に秘密兵器の設計図だけでなく、そのおおよそ百分の一程度の模型まで持ち帰っていた男である。それを息子に見られても本人は最後まで気づかなかった。
その前例を知る上層部は全会一致した。
――ならば、テム・レイが全力で技術の進歩のみを考えられる環境を整えつつ、他のことはこちらでやればいい。
こうして艦内に専用研究室が設けられ、その扉の前にはエコーズの隊員が二十四時間交代で警備につき、左右の隣室はそれぞれエコーズの待機室と仮眠室になった。技術者一人のために、まるで軍事施設の最重要区画のような警備体制である。
そんな研究室の中で今、テム・レイ、アルレット・アルマージュ、そしてパイロット代表としてアムロ・レイとシイコ・レイの四人が集まっていた。
議題は当然、先ほど行われた模擬戦。
三人のパイロット――マチュ、シュウジ、ニャアンの今後についてだった。
「マチュには、やはりジークアクスに特別なこだわりが出来ているようだな」
模擬戦のデータを確認しながら、テムが言った。
「全く」
アルレットが呆れたように息を吐く。
「いくら以前の先生のガンダムの後継機とはいえ、ジオンで作られたあの機体は整備の手間が倍以上かかるんです。マチュがこの先も戦うつもりなら、大人しくアレックスに乗り換えてくれたらよかったのに」
その言葉には、マチュへの意地悪など微塵もなかった。
アルレットがアレックスへの乗り換えを勧めたのも、ジークアクスを模擬戦用のデータ取りに回そうとしたのも、マチュのことを考えてのことだった。
あまりにも偉大な先達であるテム・レイを師として仰ぎ、同時に部下として働いてきた経験から、彼の技術や努力を軽んじる人間、あるいはそれを盗み取ろうとする人間に対してだけは、アルレットは凄まじい敵意を見せる。しかし、その根底にあるのは心優しい少女としての性格だ。
だからこそ、マチュがこれからも戦うというのなら、連邦のガンダムと比べて性能で劣るジオン製の「ガンダム」に乗り続けることが、彼女にとってどれだけ不利になるのかを心配していた。
この艦であれば倍程度の整備の手間などテム・レイとアルレットにかかれば誤差程度でしかない。しかし、この先も連邦に所属するなら同じ環境を維持することはできないのだから。
「一方でニャアンは、あまりにも普通に済みましたね」
アルレットがデータを切り替える。
「サイコフレームを搭載し直したとはいえ、あのバイオセンサーのままのZガンダムに乗りたいと本人が言った時は、どうなるかと思いましたが……」
そこでアルレットはアムロを見る。
「観戦していたアムロさんの目から見て、どうだったんです?」
「あの怨念たちは、今は大人しくしているな」
アムロは少し考えてから答えた。
「憎むべきジオンがいないからというのも理由の一つだろう。でも、それ以上に大きいのは、両親がいるバイオセンサーをニャアン本人が受け入れたことだと思う。二人の子を思う心が、怨霊たちにも少しずつ浸透してきているようだ。このままいけば……対ジオンの時だけ、ニャアンに力を貸してくれるようになるんじゃないか?」
「一体誰が、あんなやばいバイオセンサーを押し付けていったのかと思ったけど」
シイコが苦笑する。
「結果的には、ニャアンにとって両親の形見……というより、今も自分を見てくれている両親のための器になったわけか」
「そういうことだな」
テムは頷く。
「シュウジ・イトウ君も問題ない。彼はアレックスを完全に乗りこなしている。更なる新型機を与えるかは、今後次第といったところだな」
そしてテムは、再びマチュのデータへ視線を戻した。
「さて……話を戻すが、マチュがジークアクスにこだわる理由だ。アムロ、お前はどう思う?」
「何を?」
「彼女は気づいているのか? ジークアクスの中にいる、お前の存在に」
その問いに、アムロは僅かに考え込む。
「いや。ジークアクスが、初めて彼女の言う『キラキラ』――つまりニュータイプ同士の交感を起こした、特別な機体だということは理解していると思う。でも、ジークアクスに乗ることで『誰か』に守られていることまでは……無意識程度じゃないか?」
そこでアムロは、横から突き刺さるような視線に気づいた。
シイコが、じっとこちらを見ている。
「……なんだい?」
「守ってるんだ?」
「……」
アムロの表情が固まった。
「守ってるのは並行世界の俺だぞ?」
「そうね?」
シイコはにっこりと笑った。
「そういえば、あの宇宙を歪ませてるようなやばい干渉をしてきた存在にも、並行世界の誰かさんが何かして、バイトさんたちは助かってたわね」
「いや、助かったのはサイクロプス隊の隊長で……」
そこでアムロは一度言葉を止め、手元のドリンクを口にした。
そして、シイコがアルレットへ視線を向ける。
「アルレット、気をつけてね。やっぱり男って、若い女の子がいいみたい」
「ぶっ――!」
アムロは水を喉に詰まらせた。
咄嗟に横を向いたため、正面の壁に被害が集中する。弱い重力しか働いていない宇宙艦内では、吹き出された水は床へ落ちることなく無数の雫となって宙を舞い、そのまま壁へ張り付いた。
「アムロ……」
テムが息子を見る。
その声には、どこか心持ち重いものがあった。
「ゴホッ! ゴホッ!」
アムロは咳き込みながら叫ぶ。
「シイコ! なんてこと言うんだ! それから親父! 違うからな!」
「シイコ君」
テムは静かに妻へ向き直った。
「息子がすまないことをした。もし最後の手段を使うなら言ってくれ。私は君の味方だ」
「親父ぃ!?」
暗に「離婚調停を起こすなら父親として全面的にシイコ側につく」と宣言されたアムロは、今度こそ絶望的な顔になった。
その隣では、アルレットがシイコの手を握っていた。
「シイコさん! 私、たいしたことはできないですけど、何でも言ってください! 力になります!」
「アルレット……」
シイコはどこかわざとらしく目元を拭った。
「嬉しいわ。誰かさんに捨てられた私にも、優しくしてくれる人がいたのね」
「シイコ! 君を捨ててなんていない!」
アムロが叫ぶ。
「親父も! 俺はシイコと離婚するつもりなんてない! それからアルレット! 力になるなら、まず謂れのない不倫疑惑を向けられた俺の力になってくれ!」
「やだなぁ」
アルレットは笑った。
「分かってますよ。アムロさんが筋金入りの愛妻家だって」
そしてテムを見る。
「ねぇ、先生?」
「そうだな」
テムは真顔で頷いた。
「私の息子に、シイコ君をあれだけ愛していながら他の女性にも手を出す器用さも、それを隠し通すほどの女慣れもないからな」
「親父、そこまで断言する必要あるか?」
「安心してくれ、シイコ君」
テムは息子の抗議を完全に無視して続ける。
「私の息子は、君と付き合うまで誰とも付き合ったことのない男だ。全て君が初めての人だよ」
「お義父さん……嬉しいです」
シイコは満面の笑みを浮かべた。
「やっぱり持つべきは、理解のある義父と分かり合える後輩ね」
「そうですね!」
アルレットも嬉しそうに頷く。
「いや、ちょっと待ってくれ!」
勝手に不倫疑惑をかけられ。
勝手に離婚の話まで持ち出され。
挙句の果てには、本人を完全に蚊帳の外へ置いたまま、勝手に問題が解決している。
アムロは呆然と三人を見つめた。
そして、ふとジークアクスの中に気配を感じ取れる、並行世界の自分の存在を思う。
さらに、シイコが感じたという、宇宙の裏側で戦っていたもう一人の自分。
結果だけを見れば、どちらもシイコを救うことに繋がっている。
だが――。
アムロは心の中で、せめて恨み言の一つくらい言わせてくれと思った。
何せ、どちらの存在も短期的に見ればマチュやニャアンなど若い少女を助けているだけなのだから。
――並行世界の俺、大丈夫なのか?
ちゃんとシイコと結ばれたのか?
それとも、まさか……フラウ・ボウ?
一体どんな未来を歩んだら、こんなややこしいことになるんだ。
そんな疑問を抱きながら、アムロは自分の妻と父親とアルレットが仲良く談笑している光景を見つめるしかなかった。
某駆逐系主人公ゲームの3が冬に出るとのことで自分もとうとうPS5を買いました。
他よりは安いデジタルエデションのにしたのに外付けハードディスクがPS4時代ほど便利に使えなくなってるようなのでSSDを買ったんですが結果としてこれならPS5PRO買ったのがマシだったんじゃないかと悩むくらい金かかりました。やっぱりゲーミングパソコン買うべきだったか。
来年にはガンダムゲームの新作も出て個人的に1番好きなスパロボな第二次Zのリマスターも出るとのことで発売が待ち遠しすぎる!