AC4のファーストミッションを独自の解釈・設定入りで短編小説にしてみました。

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FIRST PRESENTATION

 

 空調が効いた戦闘指揮所でエミール・グスタフはモニターを注視していた。

 モニターは旧トルコ・アナトリア半島から海を跨いだオーストラリア大陸の廃都市を映し出している。

 

 エミールが代表を務めるコロニー・アナトリアの今後を決める作戦のクライアントであるGAグループが所有する偵察衛星とステルスUAVからの映像が中継されていた。

 

 独立計画都市グリフォンを占拠し続けているテロリストは都市の広域に渡って防衛戦力を配置していた。

 主力戦車がメインストリートに陣取り、多数の対戦車ヘリが低空を回遊する。

 

 さらに旧態然とした戦闘車両を見下ろすように、巨大な二本の脚で闊歩する鋼の姿があった。二脚に箱型の胴体を載せたそれはマッスルトレーサー(MT)

 歩行による不整地踏破能力と運動性を両立した機動兵器だ。

 

 テロリストの機体は機関砲で武装した軽装の機種であり、機動性はともかく攻撃力の面では脅威にはなり得ない。

 

 そして、クライアントを満足させる戦果にも満たない。

 

 幅のある河川の対岸にて並び立つ二機の巨人こそが作戦目標。

 巨人――先のMTに比べればまさしく人の形をしている。丸みのある重厚な装甲に覆われた体躯。簡易的ながら頭部を備え、カメラアイとセンサーが油断なく周囲を窺っている。

 右手にレーザーライフルを握り、左手にはシールドを携えて防御力をさらに高めていた。

 

 これこそがアーマード・コア(AC)

 MTの駆動系に用いられる、しかしより高度な電子制御を実現したアクチェエーター複雑系と大出力の燃料電池によって実現した最強の機動兵器である。

 従来のあらゆる兵器を凌駕する装甲・機動性・火力を兼ね備え、フレーム、内装、武装さえ自在に交換可能な汎用性を持つ。少数で戦局を決定する、一騎当千の存在"だった"。

 

 機種はGOPPERT-G3。現時点ではGAグループと友好的な関係を築いている欧州ハイテク企業連合インテリオル・グループの主力モデルだ。

 

 二機のACの左肩にはそれぞれ異なるエンブレムが描かれている。片や太陽、片や月。フランス出身の名高い傭兵、メイエル兄弟の駆る機体であった。

 

 ACを駆る傭兵は高度な戦闘力と専門性からレイヴンと綽名された。

 数年前に起こり、瞬く間に集結した国家解体戦争において、多くのレイヴンが国家側に雇われ、異次元の戦闘能力を持つ次世代型アーマードコア・ネクストに蹴散らされ、レイヴンと共に戦場を駆け抜けたACはノーマルと呼称されるようになっている。

 

 エミールは政治家であると同時に最先端の軍事技術を扱う技術者でもある。

 今回の作戦に投入される唯一の戦力が、圧倒的な旧世代機であるノーマルに対して圧倒的な優位を誇りながらも、撃破目標に対して不利な機体特性を持つことを憂慮した。

 

 頭の中で戦闘をシミュレーションする。彼は技術者でしかなく、戦士ではない。無駄なことだと分かっているが。

 

『君のショーが失敗に終わらないことを祈るよ』

 

 サブモニターに映っているGAグループ重役の嘲りが、エミールの思考を中断させた。

 

「ご心配なく。彼は実戦経験豊富なドライバーですから。対価に見合う戦果をご覧に入れますよ」

 

 エミールには政治の世界を切り抜ける稀有な才能があった。不安や焦りを完璧に隠し、超然とした態度で用意してきた返事を口にした。重役は陰険な笑みを浮かべていたが、それ以上、何も言わなかった。

 

――――状況は出来上がっている。あとはキミ次第だ。よろしく頼む。

 

 ブリーフィングで"レイヴン"に述べた言葉を反芻する。

 

「さあ、時間だ。フィオナ、始めてくれ」

 

 フィオナと呼ばれた若い女性の管制官は感情を押し殺した声で「了解」と返答する。

 彼女はアナトリアのか細い希望であるアーマードコア・ネクストを戦場に運ぶ輸送機に搭乗し、そのドライバーをサポートする立場にあった。

 

 

(落ち着いて。訓練は何度も繰り返してきた。出発前にした演習だって完璧にこなせていたじゃない)

 

 輸送機の管制席でプレッシャーに身を強張らせながら、フィオナはそう自分に言い聞かせる。

 フィオナ・イェルネフェルト。アナトリア前代表、イェルネフェルト教授の一人娘。彼女は今、戦場にいる。

 

 唯一の商品であり、不安定なネクストが十全に機能し、アナトリアに富をもたらすには専門家の支援が不可欠。だから、フィオナは自らオペレーターに志願した。

 

 故郷への義務感だけではない。アナトリアのネクストを駆るドライバーへの負い目もある。

 

 教授の死後、アナトリアの基幹産業であり国家解体戦争における企業連合体の勝利を決定付けたネクスト技術は主幹要員共々外部に流出した。

 その名に反して矮小な領土しか持たない共同体であるコロニー・アナトリアの経済破綻は目前であった。

 

 教授の後継者となったエミールはこの窮地を打開する手段として、保管されていた実験用ネクストACと国家解体戦争末期に保護したレイヴンを用いることを決断した。

 

 レイヴン――――雇い主であるトルコ陸軍の旅団が各地で蹂躙を重ねるネクストACへの恐怖から降伏し、孤立した所を本来数的に劣勢な企業側の大部隊によって包囲された男である。

 

 ノーマルを含む多数の敵機を撃破し、包囲網を突破した引き換えに乗機は大破寸前に。

 自身も内臓に達する重症を負ったレイヴンは朦朧とした意識のなかで壊れかけた愛機を操り、アナトリアの領土付近に辿り着いた。

 

 近隣の施設を視察していたフィオナは自らの権限で男を保護。

 

 フィオナが政府軍のレイヴンという厄介な荷物を連れ込んだことに、頭を抱えるエミールであったが、治療に伴う徹底的な検査の際、このレイヴンに僅かなアレゴリー・マニュピュレイト・システム(AMS)適性――ネクストACとの神経直結に必須の能力があることが判明したことで、当面の保護に賛成する態度を取った。

 

 その時からエミール・グスタフにはネクスト傭兵ビジネスのプランがあったのである。

 

 レイヴンは終戦から半年後に昏睡から目覚め、エミールとの契約を交わした。呆気にとられるほどの即決ぶりに驚かされた、と後にフィオナは聞かされた。

 

 傷が癒えると同時にレイヴンは企業連合体が共同運営するリンクス(ネクスト操縦者)養成施設で手術と訓練を受け、頸部にAMS接続コネクタを埋めてアナトリアに帰還した。

 

 そして、数年の時を経て戦場に戻ろうとしている。絶大な戦闘力と引き換えに、命を削るネクストのドライバーとして。

 

 フィオナは決意を固める。最後の一押しをする覚悟はできている、つもり。

 

「"レイヴン"――――通信は聞こえていますか?」

 

 輸送機のカーゴに収まり、その時を待つ"レイヴン"に呼びかける。気の利いた言い回しは思い浮かばなかった。

 

 

『良好だ。フィオナ、不明点を確認したい。作戦目的はグリフォンの奪還とあるが、建造物やインフラへの被害、さらにコジマ粒子装甲(プライマルアーマー)の使用制限が交戦規定に見当たらない。

 無制限の使用が許可されているという理解で良いのか?』

 

 返答は矢継ぎ早だった。マシンガンの連射のように、ずけずけと"レイヴン"は聞いてくる。

 

 緊張は感じられない。

 彼にとって戦場は愛しの我が家のようなものなのだろうか、あるいは他者のペースを乱して何事も優位に進めるのが彼のやり方なのだろうか。

 

 一瞬、呆気に取られたフィオナだが慌てて返答する。

 

「ええ。クライアントであるGAはネクストの全能力の使用を許可しているわ」

 

『そうか。ならしばらくはここで稼げそうだな』

 

 "レイヴン"の言葉の意味は、この時のフィオナには理解できなかった。

 

 GAグループはテロリストを排除し、独立計画都市グリフォンの復興を足掛かりにオーストラリアでの勢力を広げたい。

 しかし、ネクストに絶対的な防御力とスピードを与えるコジマ粒子は、周辺の環境を長期に渡って汚染し、人間を含む生命体にも悪影響を与える。

 都市に放射線をまき散らすのと変わらないのだ。

 

 既に輸送機は投下予定地点に入っている。迅速にネクストを出撃させる必要がある。

 

「あなたなら上手くできるわ。幸運を」

 

『当然だ』

 

 フィオナは吐き気を覚えるほどのプレッシャーの中、精一杯の言葉でレイヴンを送り出した。帰ってきた返事は素っ気なく、ぶっきらぼうな戦士の自信に満ちていた。

 

 カーゴが開き、砂色の武骨なネクストACが空に躍り出た。戦車のようなコアを持つ角ばった厳めしい姿は旧時代的。事実、六大企業のネクストのうち、最もノーマルから進歩がないのが現在の"レイヴン"の乗機だった。

 

 GAN01-SUNSHINE-L。アナトリアが保有していたネクストACはGAグループが製造した機体である。このL型は本来の仕様よりも軽量化された中量二脚で装甲と機動性をある程度両立している。サンシャインには複数のモデルが存在するが、総数は少ない。

 

 GAはコジマ技術で遅れを取っており、リンクスの数も不足している。だからこそ、傭兵の売り込み相手にうってつけだった。

 

 

 ジェネレーターが生成したコジマ粒子が放出され、整波装置によって還流し球形に機体を取り囲む。稲妻が瞬いたとき、プライマルアーマーは完全な状態で展開され、ただちに"レイヴン"はオーバードブーストを起動した。

 

 操縦桿は使わない。

 ただ、イメージするだけで、ネクストの統合制御体――――ノーマルACの補助AIよりも遥かに高度なそれがリンクスの意志を解釈し機体に伝達する。

 

 背部のオーバードブースターが開き、周囲のコジマ粒子を吸い込み、一気に燃焼させる。白緑色に輝くプラズマが迸り、とても高速で飛べそうにない角ばった人型兵器を音速を超えて加速させる。

 エネルギーの消費と引き換えに機体を亜音速まで加速させるオーバードブースト機構はノーマルにも存在するが、ネクストのそれは桁違いだ。

 

 空力的には最悪の形状でありながら、"レイヴン"は揺れを殆ど感じていない。プライマルアーマーが空気抵抗を打ち消しているのだ。

 このコジマ粒子の性質に護られているからこそ、ネクストはノーマルの一軍を圧倒する桁違いの戦闘力を発揮できる。

 

 耐G機構の面でもノーマルより優れている。従来のACより一回り大きい機体の余裕を用いて、コクピットブロックの周囲に耐Gジェルを充填してあるため、強烈な加速からもリンクスは保護される。

 従来型の分厚い耐Gスーツとヘルメットを被るだけで、加速荷重は十分許容範囲内になる。

 

 一方でコクピットブロックは狭く、モニターや操縦系統も非常用として最低限搭載されているのみ。

 必要な情報はリンクスの脳内に直接投射されるのだ。

 

 今も音速で低空侵入する乗機のアイカメラからの映像が"レイヴン"に伝わり、オーストラリアの大地と青空が視界に広がっている。

 

(鈍い。泥のなかを泳いでるようだ)

 

 レイヴンとして乗りこなしてきたどんなACよりも速く天を翔けながらも不満を、不快感を、もどかしさを感じていた。

 

 "レイヴン"のAMS適性はごく僅かであり、神経直結による深刻なストレスを避けるため、統合制御体との情報のやり取りは制限されている。流入してくるセンサ情報も機体のレスポンスも悪い。

 

 ブーストダッシュやダブルトリガーといったノーマルを操縦していた時には当たり前にできた動作も集中力を振り絞らなければもたつく始末だ。

 

 だが、いずれ克服して見せる。ネクストをモノにすると決意していた。

 

(報酬は前払いされているんだからな)

 

 フィオナに命を救われ、生を取り戻した。鴉は恩を忘れない――"レイヴン"は口にすることこそなかったが、アナトリアに命一つ分の借りがあると考えていた。

 

 それが人間としての戦う理由。戦士としての理由もある。

 

(いずれはネクストと闘る日も来るだろう。その日までに力を付けないとな)

 

リンクスとして傭兵を続けるのならば、いずれ他グループのネクストと交戦する日が来るだろう。その日を想うだけで闘志が煮え滾る。

 

 ネクストと相対する前に"レイヴン"の戦争は終わってしまった。今はノーマルと呼ばれるACで対決できないのが悔やまれるが、相手にとって不足はない。誰が最強か、教えてやる。

 

 物思いに耽るわずかに時間のうちに、ネクストは最初の目標を射程に捉えた。

 統合制御体は加速によるミサイルの射程距離の増大も加味して、テロリストが展開している機甲部隊とヘリをロックオンしている。

 

 撃て、AIが急かす。分かっているとも。殺してこいとミサイルに命じる。

 

 ネクストが背部に背負ったミサイルランチャーから多数のミサイルが放たれる。白煙を従えながら超音速で殺到する。

 チャフフレアの散布まで計算に入れ、第二段、第三段と連射。

 

 先制攻撃だけで、戦車とヘリの大半が堕ちた。

 貪るように殺到したミサイルが近接信管に捉えたヘリに爆風と破片を浴びせる。あるいは貪欲に戦車に食らいつき、流入したメタルジェットが起こした連鎖爆発が内部を焼き尽くした。

 

「ちぃっ」

 

 AMSの情報流が起こす軽い頭痛が破壊の根源的な快感に水を差す。

 

 顔をしかめながら、"レイヴン"はオーバードブーストを停止。滑空しつつ両手のバズーカの狙いを定める。形状からくる俗称に反して、大口径の徹甲弾を発射する手持ちの砲である。

 

 ターゲットはのっそりと歩きながら機関砲を掃射するMTだ。

 道路に火花を散らす着地と同時にトリガーを引けば、発射された砲弾がMTのど真ん中を穿ち、風穴を空け、それでも有り余る運動エネルギーがために砲弾はビルの外壁に突っ込んだ。

 

 バズーカの一射ごとにMTを撃破していく。腕に伝わってくる反動が心地よい。

 

 "レイヴン"のネクストは反撃の機関砲弾を浴びているが、全周囲に展開されたプライマルアーマーが弾き返している。小口径の弾丸などでは、ネクストの装甲に瑕を付けることさえできないのだ。

 

 生き残った対戦車ヘリからのミサイルも降り注いだが、これもプライマルアーマーで弾いた。

 プライマルアーマーの爆発物に対する防御力は圧倒的を通り越して怪物的だ。

 

 理論上、離脱するなどして爆心地から距離を取れば、核爆発に対してもダメージを大きな損傷程度に抑えて見せる。

 

 もっとも"レイヴン"が搭乗しているGA製ネクストは、コジマ粒子出力が貧弱なため、極めて堅牢に設計されたフレームが核爆発に耐えてくれるのを祈るしかないのが悲しいところだが。

 

『その調子よ。準備運動はそれくらいにして、ターゲットの撃破を優先して』

 

 フィオナはAMSによる負担を気遣っていくれているのだろう。

 

「そうする」と吐き気を堪えながら応答しようとしたとき、閃光を肌で感じた。

 

 クイックブースト――サイドブースターの推進剤が微量のコジマ粒子と爆発的な反応を起こし、ネクストは亜音速で右に弾かれる。

 瞬間的に移り変わる視界も神経接続によって余さず認識されており、頭痛と引き換えに思考と同じスピードで機体が動く。

 

 奥歯を噛みしめながら、叩きつけられるような勢いに耐え、引き金を引く。外れると直感した。

 

 左のバズーカが轟く。"月"のエンブレムを左肩に張り付けたノーマルACがブーストダッシュでビルの陰に隠れる。

 メイエル兄弟はろくでなしのフランス人だが腕前は確かだ。それに決して勝ち目のない戦いに臨まない。

 

「ネクスト相手に勝算ありか」

 

 言いながらクイックブーストで後退。亜音速のスピードで弾かれる前にレーザーに被弾する。核爆発さえ防ぐというプライマルアーマーがいともたやすく抜かれ、砂色のコアを灼いた。

 レーザーや高速の大口径砲弾に対してはプライアルアーマーの効果は薄い。艦載クラスの砲となれば一撃で致命傷になってしまう。

 

 クイックブーストとオーバードブーストによる超絶的な機動によって、致命弾を回避しながら戦うことがリンクスには求められるのだ。

 

 "レイヴン"に攻撃を命中させたのは"太陽"のエンブレムのノーマル。レーザーライフルを連射してくるGOPPERT-G3。

 外見は有り触れた量産タイプのACだが、企業が推しているこのタイプのノーマルはパーツ互換性を自社の規格品に絞った代わりに頑丈で整備性が高く、性能の向上もある程度の範囲で対応している。

 

 

 メイエル兄弟のGOPPERT-G3の中身はよほど金をかけたハイエンド仕様のようで、ジェネレーターに息切れの様子はなく、高出力のレーザーライフルを連射している。

 ミサイルを撃ちこみたいが、十字砲火を浴びており、反撃しようにも素早くビルの陰に引っ込んでしまう。

 

 "レイヴン"のダメージは蓄積し、想定よりも早い消耗で射撃の精度も下がっている。

 

「咄嗟の閃きじゃないな。ますますきな臭い」

 

 対ネクスト戦術の確信を持った戦い方だ。テロリストにはよほど熱心なスポンサーがいるのだろう。警戒するべきは同じネクストに留まらないようだ。

 

 

『"レイヴン"、大丈夫!? 無理ならば離脱しても――――』

 

「やかましい。仮にもオペレーターなら心配などより逆転の秘策を考えていろ――すまない、ちょっと接続のストレスで口が悪くなっている。本当だ、悪気はなかったんだ」

 

『とにかく危なかったら下がって! 約束よ! それとダメなオペレーターでごめんなさい!』

 

 なんで謝ってるんだ、俺は、お前は。そもそもこれは本心なのか、誤魔化したいのか。脳が煮え立ってきた。そろそろ終わらせないと不味い。

 

 ちらりと見えたが、メイエル兄弟はレーザーライフルをチャージしている。こっちの動きが鈍ってきたので、一気に撃破するつもりだろう。

 

 GAのACは対エネルギー兵器の防御に関しては、脆弱でいつまで経っても進歩がないというのはACドライバーの常識で、ネクストになっても変わりはない。

 

 砂色の重装ネクストは一気にオーバードブーストで飛び上がった。粒子装甲には余力があり、音速で距離を取って仕切り直すことができる。

 

 それはメイエル兄弟にとって想定の範囲内であり、二機は揃って物陰から飛び出し、離陸した"レイヴン"にレーザーを浴びせる。

 

 イチかバチか。"レイヴン"は無茶な動きを試みた。クイックブーストで右サイドに跳び、ビルの外壁を脚で蹴って跳躍する。こうして"月"のエンブレムのノーマルの射撃をかわしつつ射点を調整すると、頭上からバズーカをお見舞いする。

 

 脳天から貫通した後に爆散するメイエル弟のノーマル。

 

「クソ、自分が情けない」

 

 Gと複雑な操縦の負荷でふらふらする。

 統合制御体が咄嗟の判断でブーストを吹かし、機体をビルの陰に押しやってくれたおかげで、残った"太陽"のメイエル兄の狙撃は左肩に被弾するだけで済んだ。装甲が貫かれ、弾けた。コアに被弾していたらヤバかっただろうな。

 

 追撃は来ない。レーダー上のノーマルは背中を向けて全力でブーストダッシュしている。最大出力の射撃でレーザーライフルが使い物にならなくなったのだ。

 

「鴉は獲物を逃さない」

 

 "レイヴン"はクイックブーストで加速をつけて飛び出す。ミサイル・ロックオン。フルファイア。ノーマルACには過剰過ぎる誘導弾が背中からぶち当たり、ターゲットを木端微塵にする。

 

 残骸を一瞥してから地上に降り立ち、敵影に目を光らせる。頼みの綱のノーマルがやられたことで、テロリストは我先に逃げ出している。

 今日のところは、この都市での戦闘はお開き。次が楽しみだ。

 

「目標二機を撃破した。エミールは今頃小躍りしているだろう。しばらくは飯の種に悩む必要はなさそうだ」


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