あの日からどれだけの時間が経っただろう。願いを賭けて戦う指輪争奪戦において他の参加者でも、ゴジュウジャーとかいう特別な指輪に選ばれた戦士でもなく、ガリュードと名乗る狩人に無様に敗北しむざむざと指輪を奪われてから。
少年・天羽護…元ゴセイレッドは教室の窓からぼんやりと外を眺めていた。
「……やはり力が無ければ願いは叶えられないということか。…………強く、なりたいな」
(………ダメだな。あの日以来、何をするにも集中出来ていない)
放課後、少年は中庭で黄昏ていた。あの敗北の記憶はまだ頭の中でぐるぐるぐるぐる巡っている。あの狩人の目的も願いも分からない。だがそれでも平和を願う己の願いの方が余程叶えられるべきではないのか?まだまだ未熟な少年はそう思ってしまうのだ。
(やはりこの世は弱肉強食………力の無い者の願いなどいとも容易く壊されてしまう)
だからこそ指輪争奪戦に参加したというのに。結局第三勢力に奪われては意味がないではないか。
「……………力が欲しい」
平和を叶えられる程の力が。
「………ん?……これは……………!!」
すると、視線の先の茂みに何か光る小さな物が。
あの日からどれだけの時間が経っただろう。灰色の目の男に会えたと思ったら、なんか……こう………何やかんやあったと思ったら何かいつの間にか指輪を奪われてから。
女・紀伊友花…元ゼンカイザーは仕事も手につかずぼーっとしていた。あれは一体何だったんだろう。
「…………私の…指輪……ゼンカイジャーリング…………不老不死~~~~~!!!!」
「うるさいッスよ先輩。いきなり叫んでんじゃねぇッスよ先輩。とっとと仕事しろやボケ先輩」
「うるせぇ後輩ッ!!!!年功序列ってもんを知らんのか後輩ッ!!!!!!先輩をちゃんと敬え先輩を~~~~~!!!!!」
「はいはいとっととネタ探しについてきやがれ先輩」
「だ・か・ら!!!!年功!!!序列!!!!」
(っていうか本っっっっっ当に"灰色の目の男"マージで何者~~!?私のゼンカイジャーリング~~~~~~~)
指輪への未練はタラタラだ。タラタラのタラだった。
「ただでさえ元から大した仕事しねぇのに最近益々仕事しねぇのマジ何なんすか先輩。クビになりてぇのか先輩」
「うるせぇ~~~~~!!!色々あるのー大人にはー!!ま、ガキンチョには分からないか!!」
「俺先輩と一個しか変わらねぇッスよ」
「うるせぇッ!!」
「横暴………………」
とにもかくにも女は後輩と共に外へ(強制的に)ネタ探しに赴くことにした。
「………中々見つからないね、後輩くん。特ダネ」
「ギブアップすんの早くねぇッスか先輩。情けねぇにも程があんだろうが先輩」
「うるせぇやいッ!!!そもそも二人いるのに一つの方向でしかネタ探ししないの効率悪くない!?」
「今更ッスか先輩。突っ込むの遅ぇッスよ先輩」
「なんだよォ!!!!分かってたんなら言えよォ!!!!!!」
「ご近所迷惑だから叫ぶんじゃねぇ先輩。うるせぇぞ先輩」
「ここ!!!!採掘場跡ですけど!?!?」
周りに人いないじゃん!?と喚く先輩を死んだ目で見る後輩。
「あぁもう分かった!!!!私こっちで後輩くんあっち!!!先輩命令だかんな!!!!!!」
「はいはーい先輩」
「はいは一回!!!!!」
「へーい」
ひとまずは二手に別れて特ダネを探すことにした。女はやれやれ、なんて探索に取りかかる。
「とりあえず街中やら住宅街やらはもう他社に調べ尽くされてるだろうから採掘場にしたけど………本当にこんなところに特ダネなんてあるのかな~………?」
トボトボと気を落としながら女は歩く。目線を下にしながら。すると何やら懐かしい失くし物が。
「…………お…?およ?およよ?およよのよ~!?こ、これは………!!」
「ゴセイジャーリング!!」
「ゼンカイジャーリング!!」
そうして、それぞれの形で二人の元指輪の戦士は相棒とも言える指輪と再会したのだった。
『ねぇねぇ吠ゥ~本当にこんな何もない所に指輪の戦士なんているの~?』
「さぁな。ただちょっと来てみたくてよ。アイツらと一緒に戦った場所に」
時を同じくして一人の青年と一振りの剣が岩と緑に囲まれたこの地にやって来ていた。青年は懐かしそうに周りの景色を眺めている。
『寄り道してていいの?もしかしたらここに指輪の戦士がいて後ろから吠をザックリと………』
「そん時ゃ返り討ちにしてやりゃいいだろ。そんでもって指輪をいただく。……つか、んなこと言ったってそんなに心配してねぇんだろ?"兄ちゃん"」
『ふふふ、まぁね。吠は今まで色んな修羅場くぐってきたもんねぇ~』
青年の名は遠野吠。指輪の戦士…ゴジュウウルフにして他ならぬこの指輪争奪戦の再開を願った者だ。その横をふよふよ飛び回っている黒い剣の正体は彼の兄、遠野久光。またの名をガリューデカリバー50。
「そりゃ兄ちゃんもだろ。…………つか、俺の大体の修羅場って兄ちゃんじゃねぇの?」
『吠ゥ~それは言わない約束だよ~』
なんて、本人達にとっては他愛もない会話が進む。ふと、青年は立ち止まり周囲を見渡す。
『どうしたの吠ゥ?何か感じた?』
「………あぁ。この辺、誰かいるぜ」
青年の持つゴジュウウルフの指輪には特殊は能力がある。それは嗅覚の強化。青年は耳ならぬ鼻を澄ませながら周囲を睨み付け…不敵な笑みを浮かべる。
『こんな辺鄙な場所に来るっていったら大体"指輪の戦士"だね、吠ゥ』
「だろうな。言っとくけど手ぇ出すなよ、兄ちゃん。俺の獲物だからよ」
『吠のケチ~』
青年は兄と戯れながら"指輪の戦士"を探────
「会いたかったよゼンカイジャーリングちゅわぁーーーーん!!!!!もう絶対絶対ぜーったい離さないんだからーーーーーー!!!!!!」
探そうとした途端、どこからともなく大声が聞こえた。
『……………探す手間省けたねぇ』
「……………だな。ここに陸王いなくて良かったぜ。あいつの鼓膜100パー破れるだろ、こんな大声」
いた。いや、正確に言えばまだ声しか聞けてはいないが、確実に"指輪の戦士"。ゼンカイジャーリングちゅわんとか言ってるし。とんでもない大声だ。
「とにかく行ってみようぜ。この感じだと指輪の戦士だろうし」
『まぁ十中八九そうだろうねぇ~』
声が聞こえた方へと二人(一人と一振り)は向かっていく。そうすると、見えてきた。指輪と戯れる成人女性が。
『………吠ッ!見ちゃいけませんッ!!』
剣(兄)は咄嗟に弟の視界を遮るようにふよふよ舞い、弟に目の前の不審者を見せないようにする。
「うおっ!?何だよいきなり!?もう見えてるし……つか俺もう子供じゃねぇし!!!」
青年は目の前でふよふよしている
「おい、お前も"指輪の戦士"だろ!俺と戦え!!」
「キェァァァアくぁせdrftgyふじこlp 」
指輪と戯れていた不審者…もとい、指輪の戦士・紀伊友花は奇声を上げた。完全に人がいないと油断していたのだ。
「なっ、ななななななな何のことでっしゃろなぁ!?!?ゆ、ゆゆゆ指輪ァ!?」
『何で関西弁なの~?』
「声たっか。つかとぼけんな。思いっきり叫んでただろうが、"ゼンカイジャーリングちゅわん"って。お前、ゼンカイジャーのユニバース戦士だろ」
「チッ!バレたんなら仕方ねぇ!!!あぁそうだよその通りだよ悪いかよォ!!!」
「いや別に悪いとは言ってねぇだろ」
「~~~~~~~っ!!理不尽に失った指輪が奇跡的に戻ってきたんだ!!そんなすぐ失ってたまるかっての~~~~!!!」
『ねぇねぇ何で関西弁になったの~?』
「うるsえぇーーーーーッ!?!?け、剣が……しゃ、しゃしゃしゃ喋って浮いて………!!!」
「いや今更かよ」
『どうも~吠のお兄ちゃんです』
「しかも兄弟!?!?!?」
女…紀伊友花は驚いてばかりだ。びっくり仰天大騒ぎ。
「忙しいなお前………ちなみに兄ちゃんはちゃんと人間だぜ。今は色々あってこうなってっけど」
「色々って何ィ!?!?めちゃくちゃ気になーる!!!この戦いが終わったら聞かせて~!!みっっっちりとね」
『うわぁ急に元気~』
先程までとは打って変わって目をキラキラ輝かせている。好奇心のエンジンはブルンブルンだ。
「………とにかくようやくやる気になってみてぇだなぁ!!"エンゲージ"!!」
青年は赤い狼の指輪を取り出し金色の
「っしゃオラ言質とったーーーー!!!"エンゲージ"ィッ!!!!」
めちゃくちゃ元気を取り戻した女は手にしていたゼンカイジャーの指輪を銀色の
その姿はどことなく初代の戦士、アカレンジャーを連想させる。
いざ掴め!ナンバーワァァァァン!!
さぁ、戦いの火蓋は切って落とされ─────
「その戦い、僕が預かった!!」
一対一の指輪の獲り合い、そこに乱入者が一人。
「あ゛ぁ゛!?んだてめぇ!!」
『……………………へぇ、』
「ん?んんん?あーーー!!!」
その反応は三者三様。突然の知らぬ乱入者を威嚇する者、その乱入を見て笑みを溢す者もとい剣、そして騒ぐ者。
『……生きてたんだねぇゴセイレッドくん』
「護きゅん!!!久し振り~~~~~!!!」
「………知り合いなのか、お前ら」
「久し振りだなゼンカイザー!!そして見知らぬ戦士は初めまして。ゴセイジャーの指輪に選ばれた天羽護だ。よろしく」
乱入者、天羽護。眼鏡をかけた神経質そうな少年は周りを見渡し眼鏡をクイッと上げた。
「聞いたことのある声で喋る剣……それにこの"圧"と"闇のオーラ"………まさか君、"狩人"か」
『正解~ま、今は"ガリューデカリバー50"って呼んでよ』
「性懲りもなく僕たちの指輪を奪いに来たのか………!!あの時は成す術もなかったが、今度こそは!!」
少年は剣を睨み付ける。所謂、因縁の再会というやつだ。
「お、驚いてない……だと………!?私はハチャメチャにビビったのに………!!」
「ゴセイジャー……あぁ、兄ちゃんが使ってたやつか。なぁアンタ、うちの兄ちゃんはもうんなことはしねぇよ。弟の俺が保証するぜ」
「"兄ちゃん"………その姿、ゴジュウジャーのゴジュウウルフだな。弟いたのか、お前」
『まぁねぇ~僕の可愛い可愛い弟さ』
「どうして剣の姿になっている?いよいよ天罰が下ったか」
『まぁね、そんなとこさ』
「…………否定しないんだな」
ゴジュウウルフこと、遠野吠は静かに動向を窺っている。これが兄の罪の結果なら手出しはすまい。
ゼンカイザーこと、紀伊友花は静かに動向を窺っている。何がなんだか訳が分からないよ。
「………………"エンゲージ"、」
少年はゴセイジャーの指輪を銀色の
「……僕はお前を赦さない。だが、恨んではいない。敗れたのは僕の弱さ故だ」
『……………大人なんだねぇ、意外』
「だからこそ、再び掴んだこの奇跡無駄にはしない!!」
いざ掴めぇ!!ナンバーワァァァァァン!!!
「終わらせてやる愚かな戦い!輝く世界、ゴセイレッド!!涙は全部、ここで破壊」
フレェェェェ!!!!
「えーっと……と、とにもかくにも待ってましたリベンジマッチ!!秘密のパワーでゼンカイザー、ちょあーっと参上!!目指すは全開痛快勝利ぃ!!」
「指輪探して幾星霜!やっと見つけた願いと絆!!はぐれ一匹、ゴジュウウルフ!!お前らまとめて俺の獲物だぁ!!」
フレェェェェ!!!!
『………せっかくだから僕も名乗ろう。罪を重ねたこの人生、剣となって償おう。はぐれ一匹懐刀、ガリューデカリバー50。君たち二人、僕たちの獲物だよ』
Ready……Go!!
「っていうか愚かな戦いって思ってるのは変わらんのね護きゅうん!?!?」
ツッコミも入りつつ、それぞれがそれぞれの願いを賭けた、譲れない戦いが始まった。
「"ウルフデカリバー50"!!」
「"ギアトリンガー"!!」
「"スカイックソード"」
『……………………………"僕"!!』
各々が各々の武器を取り出す。先に動いたのはゼンカイザー。赤色の小さなハンドガトリングガン…ギアトリンガーを乱射し牽制する。
「どらどらどらどらどらどらどらどら~~~~~~~~~!!!君たちにどんな因縁があるのかは知らん!!護きゅんに何があったのかも知らん!!あとそこのウルフ兄さんの願いも知らんしなんで剣がお兄さんなんかも知らん!!」
…どうやらずっと置いてきぼりだったのを気にしているようだ。
「好奇心のエンジンは止まらない!!むしろ加速する一方だ!!どうしてくれる!!!」
「いや知らねぇし!!」
『僕たちに言われてもねぇ~』
「八つ当たりしないでもらえるかなゼンカイザー。それと"護きゅん"はやめてもらえないかなゼンカイザー。怖いんだが」
「あらやだごめんなさいね!!!」
"平行世界間ゲート"
空間に黒く大きな穴が空く。ゼンカイジャーの指輪の力の一つだ。ゼンカイザーはそこに逃げ込んだ。
「あっ、ちょ待ちやがれ!!!逃がすかよ!!!」
"ウルフデカリバー50"
ゴジュウウルフが持つ兄と色違いの赤い剣。狼を模したその剣も平行世界間ゲートと同じ力を持っていた。空間を切り裂くとその中にゴジュウウルフも入っていった。
『いってらっしゃーい吠~』
人間の姿であればのんびりと手を振っていたのだろう。そのくらい呑気な声で兄は弟を見送った。
「………"コンプレッサンダーカード"、天装」
ゴセイレッドは雷を司るゴセイカードを顔のようはガジェット…テンソウダーにセットし雷を呼ぶ。そしてそれは暗黒の剣へと襲いくる。
『おっとと、容赦ないねぇ君は~』
「貴様に油断は無用だと学んだからな。剣の姿だろうが容赦はしないぞ」
ひらりと躱す剣。だがそれを見越していたようにゴセイレッドはスカイックソードで斬りかかる。だがそれも中々当たらない。
『あはは、なんか変な感じだねぇ~自分が使ってた戦士と戦うってさ~』
「黙れ。そもそもこの指輪は最初から僕の物だ。それを貴様が横から奪い取ったんだろうが」
『………それを言っちゃうなら、"最初"はテガソードの物なんじゃないの~?君はその指輪に選ばれただけだ』
「屁理屈を………!!」
少年は二つのカードを取り出す。
「"ツイストルネードカード"、天装!!"コンプレッサンダーカード"、天装!!」
竜巻と雷の合わせ技だ。雷を巻き込み風はどんどん大きくなる。
「貴様相手に出し惜しみは、しない!"スカイックソード"!!」
それと同時にゴセイレッドは赤い剣を振るう。雷の竜巻を避けられてもその隙をつくために。
『あははっ!剣に剣で挑んじゃうんだ~いい趣味してるねぇ君~』
「五月蝿いっ!無駄口ばかり………!!」
ゴセイレッドの頭に、血が上る。どれだけ攻撃しても当たらない焦りもあるのだろう。
「……………っ!!…………っ、」
追撃をしようと踏み込んで、止まる。
「………前回も頭に血が上ったところを貴様にやられたんだったな」
自嘲するように頭を振る。つくづく、己の未熟さを思い知らされる。
「ガリュード……いや、ガリューデカリバー50。貴様に問いたい。お前にとっての償いとは何だ」
『…………随分藪から棒だねぇ~まぁいいか。君には聞く資格がある』
「…………随分と上から目線だな……」
ガリューデカリバー50もゴセイレッドが止まれば攻撃はしない。静かに語り始めた。
『僕は闇に呑まれていた。自分の心の奥底にあった闇にだ。テガジューンによって多少弄られた部分はあれど、大半は僕の意思でガリュードとなった』
「"テガジューン"………テガソードと関係が?」
『テガソードのレプリカの女神で僕たちブライダンの女王だよ。ガリュードに変身するための銃がそれさ』
少し話が逸れてしまった。それでもガリューデカリバー50…否、クオンは丁寧に説明する。
『その過程で多くの人を傷付けた。弟の吠もその内の一人……むしろ主なターゲットさ。吠の周りの人間にちょっかいかけまくったり、見せしめに使ったりね』
「酷い兄だな、貴様は」
『まぁね』
「…………否定しないんだな」
『だって事実だもん』
ゴセイレッドは呆れたようにため息を吐く。
「……お前の罪はよーーーく分かった。僕が一番聞きたいのは償い…贖罪の仕方だ。貴様にとっての贖罪とは何だ」
『まぁ慌てないで聞いてよ。それで僕たちはぶつかり合った。己の全身全霊を込めて。本音だってぶつけ合った。兄弟の絆を取り戻して、テガソードに贖罪のチャンスを貰った』
「それがこの姿、と………」
『正解~』
そうしてクオンは、真っ直ぐにゴセイレッドを見る。
『"剣となり吠の役に立つこと"。今までの罪の分まで……いや、それ以上にね。これが僕の償いだよ』
「今まで以上に、か………遠い道のりだとしても、貫く覚悟はあるのか?」
『あるよ。もちろん。その為のこの姿さ』
その覚悟は本物だ。それはゴセイレッドにも伝わったようで、いつの間にか天装術は消えていた。
「………そうか。貴様の覚悟はよく分かった」
『意外と素直だよねぇ君~』
「だがそれはあくまで"弟への"贖罪だ。それ以外に傷付けた人々や、今まで理不尽に傷付け奪ってきた"ユニバース戦士への"贖罪ではないだろう」
『………まぁ当然の疑問だねぇ。吠と一緒に傷付けてきた人の分の罪もちゃんと背負って償うよ。"吠の剣"となってね』
「………………ユニバース戦士は?」
『え?それは弱いのが悪くない?元々僕がいなくても指輪争奪戦で残りの一人になるまで戦い合うんだから、第三勢力の一人や二人いても何も変わらないでしょ~』
「同じな訳あるか!!貴様のせいで戦うチャンスすら失った戦士が何人いると思ってる!!!」
少年は昂る感情のまま、スカイックソードを振りかざす。
「やはり僕が天罰を下ぁす!!!!!!」
…一方的その頃、捻れた空間と切り裂かれた空間の先でゴジュウウルフとゼンカイザーは対峙していた。
「おい待てなんで逃げんだてめぇ!!!戦う気があんのかねぇのかどっちだ!!!!」
「だってだってだってぇ~~~~!!!みんなして否定しなくてもいいじゃーーーーん!!乙女心は繊細なんだゾ!!!!」
「はぁ!?何のことだよ!?」
対峙していた、というよりも追いかけっこをしていた。"平行世界間ゲート"を駆使し何故か逃げ回るゼンカイザーをウルフデカリバー50で空間を切り裂きながら追いかけるゴジュウウルフ。
「はーーーーーーひっど!!!ひっど!!!!覚えてないの~~~~!?!?」
「…………なんか角乃とは違う意味でめんどくせぇな!!!とっとと指輪渡しやがれ!!!」
「そんな堂々とめんどくさいって言う~~~~~!?!?しかも女の子に向かって!!!!うちの後輩くんといいこれだから男の子はーーーーーーッ!!!」
「コンプライアンスって知ってっかてめぇ。てかてめぇも失礼じゃねぇか!!!!」
相当頭に来たのか、ゴジュウウルフは赤いシャチを模した銃…オルカブースター5050と金に輝く指輪を取り出した。金色の丸い額縁のようなものに囲まれたゴジュウウルフの指輪を金色の
「"エンゲージ"!!」
"ワイルドパワーアップ"
ゴジュウウルフは光に包まれる。光が晴れる頃には金色の意匠が輝く姿になっていた。そう、ワイルドゴジュウウルフの完成である。
「た、多重エンゲージ…………!!何それかっこよ!!!!!さっすがゴジュウジャー!!」
「怒ったり褒めたり忙しい奴だなお前……」
「私もやりたいやりたいやりたいやりたーーーーーい!!!!」
もうすっかり機嫌は良くなったようだ。機嫌をとった覚えは無いが。何だか拍子抜けしてしまい若干攻撃する気力が失せた。せっかく呼んだオルカブースター5050も右腕の
「…………っだぁぁぁぁ!!!!もう何なんだてめぇもうどうにでもなりやがれぇーーーーーーッ!!!!!」
ワイルドゴジュウウルフは、やけになった。オルカブースター5050を連射し威嚇。
「えっ、ちょ、あああぁぁぁーーーーッ!?!?あっぶないなぁ!!!急に何!?」
「うるせぇ!!!!とっとと指輪寄越しやがれぇ!!!!!」
「何々何々何なのぉ~~~~!?!?」
ゼンカイザーは逃げ惑う。ギアトリンガーで応戦しオルカブースター5050の銃弾を相殺しようとするが、勢いは殺しきれない。モロに喰らい、ぐえーっ!なんて呻き声を上げる。
「ちょっ、ハチャメチャすぎない!?!?」
「てめぇに言われたかねぇよ!!!!!!」
ゼンカイザーは逃げる、逃げる、逃げる。そして思う。剣と盾があればなぁ。
「"
どうしましょどうしましょ。
"16バーン!"
ふと、ギアトリンガーからそんな音声が鳴った。
"バンバラバンバン バンバン バンバラバンバン バンバン"
"ババン ババン ババン ババン ババババーン"
バンバン鳴る音声に合わせゼンカイザーは光に包まれる。光が晴れた時には"ゼンカイザー"の姿はない。代わりに……
"ゼンカイジュラン"
剣と盾を携えた赤い甲冑のような戦士がいた。その姿は恐竜戦隊の守護神…大獣神を彷彿とさせる。
「………んだよ、お前も出来んじゃねぇか」
そう、ワイルドゴジュウウルフが褒めようとしたその時。
「どうぇーーーーーーーい!?!?!?変われるのぉーーーーーーーー!?!?!?」
「いやまぐれかよ!!」
「この際まぐれでも何でもいいやい!!とりゃー!!」
これ幸いとゼンカイザー…もとい、ゼンカイジュランは斬りかかっていく。だがその動きは緩慢で、ワイルドゴジュウウルフは容易く避けた。
「おんっっっっも…………甲冑じゃん、これ………………」
「まぁゴツイからな、それ」
ゼンカイジュランは、すぐにバテた。慣れないことはするものではない。
「…………変身解除……どうやるの……………」
「………お前マジでまぐれなんだな…………よく今までやったこれたなオイ……」
「やってこれてないから指輪奪われたんですけど!???っていうかっていうかウルフ兄さん、"灰色の目の男"について何か知らん~?」
「"灰色の目の男"………あぁ、陸王の兄貴分か。今は誘拐事件の犯人として牢屋に入ってるぜ」
ワイルドゴジュウウルフはあっさりと情報を流す。
「えっ、ちょ、ちょいちょいちょいちょいちょい待ちちょい待ち待ちたまへよウルフ兄さん。陸王って……あの百夜陸王?あのスーパーアイドルの」
「おう、その百夜陸王だぜ」
「………………知り合いなん??」
「おう」
「………………マジで??ウルフ兄さん何者??」
「あ゛?ただのアルバイターだよ」
「……………ほぉ~~~~………??」
ゼンカイジュランは何かを決意したように剣を強く握りしめた。
「……この戦いが終わったら……………話たんまり聞かせてもらうぜウルフ兄さんよぉ!!!!!」
重さなんて何のその。先程までとは打って変わって素早い動きで剣を振るった。
「うぉ!?マジかやだよめんどくせぇ!!くっそ教えなきゃ良かった!!!」
「ふっふっふ~もう遅ーい!!!」
疲れなんて平気へっちゃらな様子のゼンカイジュランにワイルドゴジュウウルフはたじたじ。さっきから振り回されっぱなしだ。
「あいつらに負けず劣らず滅茶苦茶すぎんだろ………………」
剣を避けつつオルカブースター5050を放つ。だがそれは盾に防がれた。ワイルドゴジュウウルフはそれでも構わず放ち続ける。鬱憤を晴らすかのように。
「えっ、あのっ、ちょっ………ウルフ兄さんも大概よ???」
「うるせぇ!!お前が言うな!!!」
"オルカブーステッドノヴァ"
オルカブースター5050の撃鉄を引きトリガーを押す。すると二人の戦士の間を水流が取り囲んだ。
「ばんか………いや、りょうい……………」
「あ゛ぁ?ばん……りょ………何だ?」
ゼンカイジュランはいやに呑気だ。ワイルドゴジュウウルフのオルカブースター5050の動きに合わせ渦潮が発生した。その渦潮はゼンカイジュランを拘束し、襲いくる。
"ババン ババン ババン ババン ババババーン"
"超 ゼンカーイ"
その水流の中で、何やら騒がしい音が聞こえる。先程聞いたばかりのその音。ワイルドゴジュウウルフは構えた。
"スーパーゼンカイザー"
そこにいたのはゼンカイジュランではない。メカメカしい銀色の恐竜の甲冑を身に纏ったゼンカイザーだ。片手にはランスを携え、堂々たる出で立ちで仁王立ちしている。
「………………動…けん………」
「………………だろうな」
先程の戦士よりもゴツイ装い。動けるはずもなく。だが防御力は上がったのか、ワイルドゴジュウウルフの攻撃などものともしない。オルカブースター5080の弾丸を弾き、金色の
「………………地味に痛い……」
「それは何でだよ!!効いてねぇんだろ!?」
「ほらよくあるじゃん。防弾チョッキ着てて助かったけどそれそれとして衝撃は殺しきれないから痣は出来るってやつ。今それ」
「"今それ"ェ!?」
ワイルドゴジュウウルフは天を仰ぐ。なんだかもうめんどくさくなってきやがった。
「…………戦いづれぇなら戻った方がいいんじゃねぇか?」
「それもそうね……」
スーパーゼンカイザーは大人しくゼンカイザーへと戻った。
「いやー、慣れないことはするもんじゃないね!!重かったー!!」
「……………………………」
一気に軽くなった身体でゼンカイザーはその場で軽快に足踏み。めちゃくちゃはしゃいでいる。…そんなゼンカイザーに容赦なくオルカブースター5080の弾丸の雨が降り注ぐ。
「うぎゃーっ!!!忘れてたぁーーーー!!!!!」
「忘れんなぁーーーー!!!!!」
ゼンカイザーは慌てて平行世界間ゲートへと逃げ込む。ワイルドゴジュウウルフは間髪入れず追いかけた。
「"
ゴセイレッドは翼を広げる。舞った羽は刃となりガリューデカリバー50へ襲いくる。漆黒の剣はヒラリヒラリと舞い容易く避けていく。
「……っ、ちょこまかと………!!」
また冷静さを失いそうになった、その時。空間に黒い穴が空く。そこから現れたのはゼンカイザーとワイルドゴジュウウルフ。
「"
やたらと癖の強い"
「あ゛!?」
『ん~?』
「は?は!?はぁ!?ゼンカイザー………何をする気だ……!?」
「えぇいなんとかなれぇぇぇーーーーっ!!」
ゼンカイザーがゴセイレッドへとぶつかった瞬間、二人の戦士は光に包まれた。"
光が収まり、ゼンカイザーとゴセイレッド、二人の戦士に何か新しいアイテムのようなものが降り注ぐ。
「これは………"ゼンカイジャーカード"……?」
「おー!"ゴセイジャーギア"!!」
ゴセイレッドには"機界戦隊ゼンカイジャー"の力が宿ったゴセイカードが、ゼンカイザーには"天装戦隊ゴセイジャー"の力が宿ったセンタイギアが舞い降りた。"
「"
「いや軽いな君は!!まったく…………"ゼンカイジャーカード"、天装」
ギアトリンガーにセットされるゴセイジャーギアと、テンソウダーにセットされるゼンカイジャーカード。二人の戦士を光が包み込む。
「うおおおおおおおお!!!!!羽根ぇぇぇぇ!!!!!生えたぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
光の奥から現れたのは、純白の翼を背中に宿したゼンカイザーと、見た目は何も変化がないゴセイレッド。
「………ちょっと羨ましいな。俺も禽次郎みてぇに空飛びてぇ」
『テンション高~っていうか、君は何も変わらないの?』
「………………………」
翼が生え大喜びの大はしゃぎなゼンカイザーを横目にゴセイレッドは静かに己の掌を見ている。
「"変わらない"、か………それはどうかな………!!」
ゴセイレッドは大きめの石ころをいくつか拾い上げ、激しく動き回り舞ってきた羽根を掴んだ。
「確かこんな感じだったか………"
翼が生えたゼンカイザー。間違いなくゴセイジャーの指輪の能力、"
ゴセイレッドのその見立ては合っていた。翼と融合した石ころはみるみるうちに姿を変え、やがて翼を持つ小人の戦士へと姿を変えた。
「これはテガソードでもゴセイグレートでもない。僕のオリジナルだ!!」
小人の石ころ戦士は縦横無尽に飛び回り、ガリューデカリバー50へと襲いかかる。
『へぇ~?中々やるねぇ君~』
小さい身体ながらも俊敏な動き。それはガリューデカリバー50にも勝るとも劣らない。ほぼ互角に渡り合う小人相手に少しばかり苦戦する。
「兄ちゃん、助けいるか?」
『いやぁいいよいいよ~吠はそっちのうるさいのに集中しな~』
「おう、分かった」
「我今しれっとうるさいのって言われた????解せぬ」
「「いや正論だろ」」
戦っている相手のはずなのに息の合ったツッコミ。そんな茶番もありつつも指輪の争奪戦は次第に終わりへと向かう。
「何だよぉ護きゅんもウルフ兄さんも二人揃ってぇ!!!乙女心は繊細なんだゾ!!?」
「だからその護きゅんはやめてくれないか!?」
「あぁもうお前らごちゃごちゃうるせぇなぁ!!!一気に
オルカブースター5050を構えるワイルドゴジュウウルフ。だがそこに、ガリューデカリバー50と戦っているはずの翼を持つ石の小人が襲いかかった。
「させると思うか?この中で一番強いのはゴジュウウルフ、お前だ」
「一体だけじゃなかったってか!!だが関係ねぇ!!」
ワイルドゴジュウウルフは構わず手に装着している金色の
「……………!!硬ぇな!!」
「知らなかったか?"石"は"ハサミ"に強いんだ!!」
「ジャンケンじゃねぇんだぞ!!」
『意外と頭柔らかいんだねぇ~』
そんなゴセイレッドの戦い方をまじまじと眺めるゼンカイザー。
「……………私より……護きゅんの方が…………"
割りと真面目にショックを受けている様子。
「だっ、だったら私もぉ!!護きゅん以上に"
「いやそういうことじゃないと思うが………………っていうか競ってるのか?これは」
「いよっしゃあぁぁぁああ!!!テンション爆上げFuuuuuuuuuuuu!!!!!!」
ゼンカイザーは翼を広げる。両手を広げて目一杯に。
「"
背中に生えた翼だけでなく、広げた両手すら翼となった。背中の翼で空を飛び、両手の翼を翻し上から無数の羽の刃を飛ばした。この場にいる戦士全員に向かって。
「チッ!オルカブースターじゃ落としきれねぇか!!兄ちゃん!!」
『はいはーい吠ゥ~』
ワイルドゴジュウウルフは兄を掴むと舞い散る羽を斬り落としていった。ただ、オルカブースター5050との合わせ技でも限界はあったのか所々被弾してしまった。
『ん~シンプル故に厄介な能力だねぇ。しかも今の使用者があれじゃあ動きも予想できないし』
ガリューデカリバー50が見上げた先には大はしゃぎで空を飛んでいるゼンカイザーの姿が。よっぽど楽しいらしい。
一方ゴセイレッドの方は咄嗟にスカイックソードを構え羽を防御する。だが細い剣では限界があり翼に切り刻まれる。…かに、思えた。
「……………!!」
スカイックソードは光に包まれ、その光は全ての羽を防いだのだ。それはやがて形を為し、先端に弓が付いた十字型の大きな武器へと変化した。
「…………"ゴセイバスター"」
これはゴセイレッド自身も予想外。だがこの好機を逃すほど愚かではない。その銃口はワイルドゴジュウウルフとガリューデカリバー50に向けられる。
「させるかよ!」
「おー!かーっくいーっ!頑張れー!!護きゅーん!!」
撃たせまいと駆けるワイルドゴジュウウルフ。金色の
「あ、そうそうゼンカイザー、ここだけの話なんだが………僕の小人はまだ生きてるぞ」
「へ??」
ゴセイバスターで刃を受けながら目線を空のゼンカイザーへと合わせる。それと同時にどこかに潜んでいた翼の小人がゼンカイザーの目の前に現れた。
「うぎゃあーーーっ!!!忘れてたぁーーーーッ!!!!」
「全く……君は本当に迂闊だな…………」
「流石に俺も心配になってくるぜ」
『よく今までやって来られたねぇ~あ、やってこられてないから指輪奪われたんだごめんごめーん』
「そこの剣兄さん喧嘩売ってんのかおぉん!?!???」
意識がガリューデカリバー50に向いたところで小人に背中の翼を折られた。成す術もなく地上へ落ちる。
「ぎぇあーーッ!!ぐえッ!!!」
「…………………"ゴセイバスター"、パニッシュ」
「………っ!やべっ!」
一瞬だけゼンカイザーを撃とうかと迷ったが、ワイルドゴジュウウルフの胴に銃口を合わせ引き金を引いた。
『させると思うのぉ?』
ゴセイバスターは本来ならば5人の護星天使の力を合わせて放つ技。一人で撃ったゴセイバスターはガリューデカリバー50に斬り裂かれてしまった。
「………………っ!!」
「サンキュー兄ちゃん!!」
「………随分と弟想いなんだな」
『当たり前でしょ。だって僕は"お兄ちゃん"だから』
両者の間にバチバチと見えない火花が散る。
「いてて………空から落ちるなんて初めて~…………痛い……」
背中の翼を失ったゼンカイザーがやっとむくりと起き上がる。両腕の翼はまだ失ってはおらず、翼で後頭部を擦っている。
「よくもやってくれたなぁーーーッ!!!あと私を置いてバチバチしないで寂しいッ!!!!」
「えぇー……………」
「何だお前!!!」
『我が儘だねぇ』
ゼンカイザーはワイルドゴジュウウルフかゴセイレッドか、とにもかくにも適当な戦士にドロップキックをかました。…が、案の定容易く避けられる。
「うるせぇやい!!我が儘で何が悪いんでぃ!!!」
『確かに』
「同調すんな兄ちゃん!!」
ワイルドゴジュウウルフはオルカブースター5050を構える。ゴセイレッドとゼンカイザー、二人の戦士に銃口を向ける。
「そろそろ決着つけてやる!!覚悟しやがれぇ!!」
オルカブースターの引き金を引く。すると、ゴセイレッドとゼンカイザー、二人の戦士を闇夜が包む。その背景には綺麗な満月が浮かんでいた。
「"
『と、フューチャリングお兄ちゃん♪』
宵闇月には似合わない、光線が放たれた。その光線をフォローするかのようにガリューデカリバー50は飛ぶ斬撃を放つ。二人の戦士は避けることも叶わず、光線と斬撃に防御も虚しく吹っ飛ばされてしまった。
「うぎゃあぁぁぁぁぁあッ!!!ひぇ~痛いよー痛いよーやべー光線出てたよぉ~~~~!!!」
「くっ………!ここまでか…………!!」
「勝負あり、だな。お前らの指輪は貰ってくぜ」
戦士としての仮面は剥がされ、そこには地べたに倒れ込むただの一般人の男女がいた。彼と彼女の指輪は無造作に転げ落ちていた。ワイルドゴジュウウルフ…否、遠野吠は地面に落ちた2つの指輪を拾い上げる。
「2回も指輪奪われるとかマジショック~~~~~でもまともに戦えただけで割りと満足」
「それは僕も同感だな、紀伊友花。例え同じ結果になろうと、力を出し尽くせただけで再戦の意義はある」
「あー、ゴセイレッドのあんたは兄ちゃんに、ゼンカイザーのあんたはアッサムみてぇに厄災にやられたんだっけか」
前回の指輪争奪戦では"指輪の狩人"や"厄災"といったイレギュラーが重なり力を出し切れず無念に散っていった選手も多い。目の前にいる二人の戦士もそのうちの一人なのだろう。
負けたというのにどこか清々しい様子の二人を見て青年は頭を掻いた。そして座り込む二人に視線を合わせるようにしゃがみこむ。
「なぁ、あんたらがこの指輪争奪戦にかけてた願いってなんだ?」
「………何なんだ藪から棒n「え?不老不死!!」
警戒する少年を横目に、女は元気よく親指を立てた。
「もう少し警戒しないか紀伊友花!!あっさり教えすぎだろう!!」
「え、負けたんだから別に良くない?どうせ叶わぬ願いですよぉーーーだぁッ!!」
「んな警戒しなくても別に変な事はしねぇよ。ただ俺が知りてぇだけ………っていうか、この指輪争奪戦はそれが目的だ」
『この指輪争奪戦のやり直しは吠が願ったものなんだよ~つまり一回吠は優勝してるの。だから君たち程度じゃあそう簡単には勝てないのは当たり前って訳さ♪』
「んだとゴラァ!?!?舐めてんのかてめぇやんのかおぉん!?!?!?」
「…………珍しく君と気が合いそうだな紀伊友花。随分と見くびられたものだな…………!!」
ブチギレモードの二人を見ても、ガリューデカリバー50は平気へっちゃらだ。全く反省していない様子。
「あーもう、無駄に煽んな兄ちゃん。本題入れねぇだろ」
『ごめんごめーん♪』
青年は兄を掴むと懐にしまいこんだ。これ以上余計な事を言わないように。
「"吠が願った"………ということは、本来の指輪争奪戦のチャンピオンは君だったはずだろう。何故わざわざやり直しを?」
「簡単な話だ。俺はあの指輪争奪戦の結末に納得出来なかった。共に戦って散っていった仲間たち横目にナンバーワンになんてなれるわけねぇだろ」
今でもあの光景は脳裏に焼き付いているのか、青年は眉間にシワを寄せ虚空を見つめた。
「それに何より、お前らが何を願ってこの戦いに臨んでんのか………いや、お前らのことが単純に知りてぇんだ。それだけだよ」
そして視線は二人へ向かう。青年は今、はぐれものの一匹狼としてではなく、指輪を集める旅人として接している。
「そういうことか…………」
「本来のチャンピオン……………そりゃ強い訳だわぁ……………多重エンゲージヤバかったもんなぁ~………………」
女は納得したようにうんうん頷いている。
「そういやあんた、紀伊友花……だっけか?なんで不老不死なんだ?正直意外だぜ。現実離れした願い持ってる戦士もいんだな」
「そう!私紀伊友花!!雑誌記者やってまーす!!」
ピースピース。
「まぁお兄さんと似たような感じかな?世界は広いでしょ?それを一人の人間の人生で堪能しきるのは不可能。ってことで不老不死。色んな世界を見たいのよ、私はさ」
「なるほど、そういう理由なのか………」
「とはいえやはり僕はあまり好かないな。その理論は命を軽んじている」
「まぁそれも負けたから不可能になったんですけどね!!!!!!」
わっはっは。若干やけっぱちである。
「そう拗ねんなっての。そこの……護きゅん?だったか」
「君にまで護きゅんと呼ばれたくはない!!流石に鳥肌が立ったぞ…………天羽護と呼んでくれ」
「あぁ、悪ぃ悪ぃ。じゃあ………護。お前はこの指輪争奪戦で何を望むんだ?」
『それ僕も知りたーい~世界平和とかかい?』
好奇心の赴くままに弟の懐からヒョコリと顔を出したガリューデカリバー50に自然と少年の眉間にシワが寄る。
「まぁ近くはあるが……少し違う。僕の願いは、僕がこの指輪争奪戦でナンバーワンとなり、戦いを終わらせることだ。流れる血は少ないに越したことはないだろう?」
『そうかなぁ?割りとどうでもよくなーい?』
「流れる血は少ないに越したことはないだろう!!!」
「兄ちゃん、話逸れるからちょっと黙っててくれねぇか?」
『はーい』
弟に諫められ大人しく引っ込むガリューデカリバー50。
「なるほどな………中々面白ぇな。同じ指輪の戦士の願いでもこうも方向性が違ぇのか」
「面白いでしょ?人間ってさ!!」
「あぁ、面白ぇ。人間も、この世界も」
にっかりと笑う女につられるように青年も笑った。ブライダンから、厄災から守り抜いたこの世界。この世界で生きることを肯定したっていいのだ。かつての青年では思いもしなかったこと。
「ありがとな、友花、護。中々面白かったぜ。またどっかで会ったら………一緒に何か食おうぜ。ハンバーガーでもフランクフルトでもな」
「おー!いいねいいねぇ~!!最高だねぇ~!!」
「………いいのか?曲がりなりにもライバル…いや、敵同士だったんだぞ?」
「関係ねぇよんな事ぁ。ただ単純に俺がそうしてぇってだけだ」
そうして青年は立ち上がる。新たに手にした二つの指輪を袋にしまい踵を返す。
「じゃ、またな」
青年は再び旅立った。指輪争奪戦の旅へと。
「まったねぇ~!!いやー面白かったねぇ!!」
「………そうか?僕はまた指輪を奪われて悔しいが」
とっくに姿も見えなくなった青年に向かってブンブン手を振る女を横目に少年はため息を吐く。
「ん~若いねぇ~護きゅーん。挫折なんて生きてりゃ山程するもんよ。その度に真面目に折れてたら損損」
「……………そのお気楽さがいっそ羨ましいな、紀伊友花」
「あ、そうだジャンケンしようよ護きゅん」
「………えっ?何だ急n「さいしょはグーっ!じゃんけんポーン!」
「えっ、あっ、ぽ、ポン…………」
何故か急に始まったじゃんけん。結果は女がパーで少年がグー。女の勝ちだ。
「何故いきなり…………このじゃんけんに何の意味が……………」
「やったー!!私と護きゅんの指輪争奪戦は私の勝ちー!!!」
「はぁ!?!?何だそれは聞いてないが!?!?」
「え、だって言ってないし」
女は、ケロッとしている。
「いやー結局私と護きゅんの指輪争奪戦の決着はついてないでしょ?地味に結構心残りでさー!あースッキリしたー!!」
「それはそうだが!それはそうだが!?」
「ってことで私仕事だから!じゃあねぇー!!バイバーイ!!」
「えぇー…………無茶苦茶だ、最後まで……………」
やけに上機嫌にこの場を去った女。そして一人になった少年は消化しきれない気持ちを抱えながらこの場を去っていった。
こうして、ゼンカイザーとゴセイレッド、二人の指輪の戦士の戦いは幕を降ろしたのである。