(X:@teltel_fumibo)
「春だ!忍びない今日にグッバイ」
https://syosetu.org/novel/374798/5.html
の続編となります。
向ヶ丘晴照は揚げ物のソースは付けすぎない派である。衣のサクサク感無くして揚げ物無し、コロッケもエビフライも天ぷらも衣を侵略しきらない程度だけソースやタルタル、天つゆをかける。ところで皆様もご存じだろう、遠野吠は天ぷらのつゆをヒタヒタになるまでしっかり漬ける派の人間である。そんな二人の前に串カツを置けばどうなるかというと…
「ヒタヒタが1番うめえ!」
「サクサクが1番おいしい!」
当然こうなるのだった。
やり直しの指輪争奪戦以降、吠は日本各地のバイトを転々としていた。再び大阪を訪れた際、いい機会とかつてわずかばかり幼馴染みだった晴照と一緒に気分転換に出かけていた。ああ、せめてそこでお好み焼き屋に入っていればこんな悲劇は起こり得なかったろう。しかし彼の地はB級グルメが群雄割拠する街・大阪、ジャンクな揚げ物に衝突する可能性は充分すぎるほどあった。ならばせめて食べ歩きが出来るものならどれだけ良かったか!!何故よりにもよって客の匙加減一つでソースの漬かりが大きく左右されてしまう串カツ屋に入ってしまったのか!!しかしどうか彼らを責めないでやってほしい。彼らはまだ美味しいものをモリモリと食べることができる23歳児、軽快にはじける油の香りと、野菜の旨味と肉汁をふんだんに蓄えたソースの香ばしさ、それらに抗えるはずも無かったのだから!!
「こちとら野菜なんて滅多に食えねえんだ!ソースに溶け込んだ野菜のうま味を染み込ませば凄えお得だろ!!」
「ソースは確かに美味しいさ、けどカラッと揚がった衣との調和だって持ち味なんだ!それを壊しちゃおしまいだろう!?」
「ヒタヒタが1番うめえ!」
「サクサクが1番おいしい!」
そして冒頭に戻る。口論が激化しても両者一歩も譲らず、ついには席を立ち最終手段に出る。
「悪ぃがこればっかりは!」
「ああ、吠くんと言えど譲れない!」
『テガソード!!(怒)』
歴史上幾度目か、契約の指輪が人間に譲り渡された。こんなくだらないことで指輪を所望する彼らも彼らだし、それで指輪を渡してしまう神も神というものだが、本人たちは大真面目にやっているのだ。どうか大目に見てほしい。
『エンゲージ!!(激怒)』
クラップユアハンズ!ゴジュウウルフ!
センタイリング!ニンニンジャー!
まだ店外に出てから基本形態で戦っているだけ分別はある方だろうか、しかし両者の拳は激しさを増し、互いが受けるダメージもまた重いものとなりつつある。オルカブースター5050を呼んだり怒りの炎で超絶化したりするのももはや時間の問題かに思われた。
しかし、その前に横槍が入った。人類が人間社会を構築する上で障害となる悪性概念の化身、厄災である。それは頭部に頸と尾が細長く曲がる角を持った単眼の怪物だった。腕は身の丈よりも遥かに長い首長竜の如き意匠を持つ鞭となっている。
「我が名は深淵なる厄災クラディスが一角・二度漬けのドゥプレクス!人間どもよ、再び正しき滅びを味わうがいい!!」
…冗談みたいな概念の者が来てしまった。厄災と言えどもピンからキリまで、こういったショボい悪性概念の厄災もないことはないのかもしれない。
「邪魔すんじゃねぇ!」
「今は吠くんと喧嘩してるんだ!」
ウルフ!デカリバーフィニーッシュ!!
ザ・技!!ナンジャ ナンジャ?ナンジャ ナンジャ?アカジャ!ニンジャー!忍者一閃!!
無粋な横槍を入れる厄災に対し、大事な喧嘩中の二人はそれぞれウルフデカリバー50と忍者一番刀をもって交互に必殺の一撃を叩き込む!だが、それぞれの傷痕は先につけた方から順番に治ってしまった!!
「無駄無駄! 我が司る“二度漬け”の力は回帰と反復!当然自分の身体を再び万全なものに出来る上に…ハアッ!!」
ジャキジャキイン!!
『ぐわあーっ!!』
「鞭の一振りもこの通り二倍になるのだ!」
巫山戯た肩書きに反して真っ当に強い能力を前にゴジュウウルフとアカニンジャーは倒れ伏してしまう。既に両者は互いにダメージを重ねすぎたため、この一撃は重い。客観的に見ても少々過度な愚行について、厄災も当然の如く嘲笑う。
「人間はくだらぬ事で争い絆を壊す愚かな存在だ。だいたい串カツなんてものは二度漬けすればサクサクもヒタヒタも味わえるというのに」
だがそれが馴染みの浅い幼馴染み達の逆鱗に触れた!!
「…悪いけど、俺たちはそんな次元の低い話はしてないんだよね!」
「じ、次元が低いだと!? この厄災・二度漬けのドゥプレクスに向かって身の程知らずな」
『知ったこっちゃねぇ(ないね)!』
二人の喝が重なり、二度漬けのドゥプレクスを迫力で後に躙らせた。
「俺たちは1回しかねえ人生で自分の道を選びながら生きてんだ! 口出しすんじゃねぇ!」
「ソースの"しゅみ"が足りずに串を噛み締めた日も、浸しすぎてしなしなになった衣に頬を濡らした日も、全部糧にして俺たちは進んでいくんだ! …それがわからない外道に串カツを語る資格はない!!」
二人の串カツ讃歌、ひいては人間讃歌に共鳴するように、究極の最終聖剣と超絶勝負の忍具が飛来する! しかし今回は互いの元の使い手ではない、それぞれ異なる主を使用者に選んでいる。
最強!頂点!ユニバース!!
テガソード!ナンバーワン!!
「今日も晴れてる!テガソードアカニンジャー!!」
N!I!N!I!NIN!NININ!!
超〜絶!ゴジュウジャー!!
「はぐれ一匹、ゴジュウウルフ超絶!!」
奇跡のパワーアップ! 派閥の垣根を超えて、テガソードアカニンジャーとゴジュウウルフ超絶の剣が同時にドゥプレクスを裂く!
「ぐ、ぐわあっ!?」
その傷は治らない。二倍の回帰による回復力は、同時攻撃という二倍の力によって相殺されてしまうのだ!
「なぜだ!? なぜ争い合う愚かな人類のくせに、この私に届く二倍の力を!!」
「決まってるだろ!!」
「ダチだからな!!」
戦い合う二人は実力差に依らず立場は対等であり、その熱の拮抗があるからこそ人は信念をかけて戦うのだ!!
「熱い!」
「アツいぜ!」
『燃えて来たぁ〜〜ッ!!』
二人の最強の赤い戦士たちがその忍タリティを熱く燃やし、超大規模の一撃を合わせて二閃叩き込む!
オーバーロード・オールハンズ!!
N!I〜!N!I〜!NIN!NINI〜N!!
『超〜絶!凌手駕シュリケン斬!!』
「ぐ、ぐわあああっ!!」
ドゥプレクスは相当な深手を負った。しかしなんたることが! その再生力をさらに二倍にし、巨大化したではないか! これはひとたび発動すれば際限なく膨張し地球どころか太陽系の存続まで危うくなる切り札だった。対抗する戦士たちは片や礼服の遠野吠、片やアカニンジャー超絶の姿となり、それぞれの巨大戦力を誘う。
「来やがれ!テガソード!!」
「風水忍法奥義・ハオー来砲車の術!!」
アウェイキング!
ライオンハオーッ!ライオンハオーッ!
空より偉大なる金の右掌・テガソードが、陸より荘厳たる獅子の城塞・ライオンハオージョウがドゥプレクスの倍々膨張を食い止めるべく到来する!
ハ・オー! ハ・オー!
ヨッシャー・ワッショイ!!
ハ・オー! ハ・オー!
ヨッシャー・ワッショイ!!
『覇王リングイン!!』
掴め!斬り裂け!レッド!!
掴め!斬り裂け!レッド!!
『超絶人神一体!覇王テガソードレッド!』
覇王ォーッ!テガソードレッド!!
それはさながら緋色のパワードスーツに搭乗した金の巨神だった。テガソードが操るさらに大きな両の腕には巨大なウルフデカリバー50とオルカブースター5050が装備されている。そこから繰り出される巨大な斬撃と水流の波動が膨れ上がっていくドゥプレクスの体積を片っ端から削っていく。そしてもはや肉は削がれ、ただの巨大なドゥプレクスを残すのみとなったところで必殺技の好機が訪れた!コックピットの内部、遠野吠はテガソードレッドの神体の、アカニンジャー超絶はウルフデカリバーおよびオルカブースターの必殺スイッチを起動する!
『覇王!
ウルフ!ソードフィニーッシュ!!
ウルフ!デカリバーフィニーッシュ!!
オルカ!ブーステッドノヴァ!!
斬撃や砲撃を織り交ぜた赤い多重攻撃が瞬く間に巨大ドゥプレクスの身体を貫き、やがて1本の黄金の軌跡となる。
「ろ、ロングリブ・クラディス〜」
そのエネルギーを受けたドゥプレクスは空中にその身を押し出されながら数度に渡って段階的に爆散した。その様子は、まるで揚がりたての串カツのようであった。
「俺こそが!サクサク串カツナンバーワンだ!!」
「俺こそが!ヒタヒタ串カツナンバーワンだ!!」
WINNER
AKANINGER & GOZYUWOLF!!
こうして大阪の街にまた平和が訪れ…
『いや串カツは』「ヒタヒタが」「サクサクが」『1番だろ!!』
訂正、再び勝負が始まった。ここにおける二人の勝敗はあえて語るまい。この街にはちょっとした喧嘩があるくらいが丁度いいのかもしれない。君はヒタヒタ派とサクサク派、どっちを応援したい? その好きを大切にしていれば、もしかしたら喧嘩するほど仲の良い友達と巡り会える!…かも?
蛇足だが、筆者は串カツは二本でヒタヒタもサクサクも楽しみたい派である。
《終われ》