(X:@teltel_fumibo)
番外編の番外編です。
「揚がってアッパレ! 一度きりの串カツ」
https://syosetu.org/novel/374798/65.html
の続編となります。
「天ぷらはヒタヒタが一番うめえ!」
「いいやサクサクが一番おいしい!」
皆様はこの光景に見覚えがあるだろう。そう、“また”である。また遠野吠と向ヶ丘晴照はヒタヒタサクサク論争を燃やしているのである。今度は晴照が東京に来ていること、場所が下町の定食屋であることなどの違いはあれど、だいたいの流れは串カツ事変と同じである。いい加減にしろ?筆者もそう思うが本人たちはいたって大真面目なので以下略。
しかし今回は少し流れが違った。2人が指輪の戦士になる前に横入りするものがあったのだ。
「我は厄災・天丼のドゥプレクス!人間どもよ、また会ったな!!」
またお前か。確かに同じネタを2回やることを俗に“天丼”とは言うが。
「何しに来た!そもそもお前は倒しただろ!」
「我が二倍の回帰によって再生したは良いものの、危うく人類どころか銀河系もろとも滅ぼしかけたのでな。クラディスを追放されてしまったのだ」
「クビになったってことか。…なんか、厄災も世知辛えな」
自身もまたクビになること幾星霜である吠は、悲しき追放者にやや同情を寄せた。
「そんな事より!貴様ら人間はまた懲りもせず下らぬことで争い合っているようだな!」
まったくもってそのとおりだがお前にだけは“懲りもせず”とか言われたくなかった。
「この争い、我が終止符を打ってやる!店主よ、厨房と天ぷらを借りるぞ!」
言うや否やドゥプレクスは店の奥に入っていく。ちなみに長かった首長竜のごとき鞭腕はつんつるてんに狩られて人型の手となっているため、特に周囲をなぎ倒すこともなく普通に手を洗えたようだ。
「光り輝く白米に踊るえび天をふたつ、そこにやや甘めの天つゆをサッとかけ…仕上げに二倍!」
何ということでしょう、匠の二倍の権能により、一人前の天丼が二人前に増えたではありませんか。
「我が二倍の天丼、とくと喰らえ!」
『うっ、美味い…っ!!』
サクサクのうちにえび天だけ齧って美味しい、つゆの染み込んだご飯と共に食べて美味しい、更には残されたつゆだくのご飯と食べても美味しい、反復と回帰が口の中で繰り返される素晴らしい天丼を前に、吠も晴照も圧倒された。
「天つゆに浸った米がサクサクの天ぷらにパンチをくれやがる!」
「散らばった天かすをヒタヒタのご飯で掻き込む幸福といったら!」
『ごちそうさん!!』
二人ともすっかり天丼を平らげてしまった。その顔は先の争いなど忘れたかのように幸せに満ちている。無理もない、天丼とは天ぷらのサクサクヒタヒタ論争における一種の最適解である。絶対に許されない悪である串カツの二度漬けとは違い、これはまさに宇宙の法則!理の具現化たるクラディスの面目躍如であろう。
「我こそが!天丼ナンバーワンだ!!」
WINNER
TENDON NO DUPLEX!!
そうしてみんな笑顔で昼食を終えることとなった。なおドゥプレクスはこの後グーデバーン&めーちゃん夫妻の支援も借り、件の定食屋で2杯頼めばお得な天丼を作る係として人類と共存する道を選んだようである。良かったね。
《今度こそ終われ》
以下、作者様のあとがきです。
これ以上書くと“三杯酢のトリスメギストス”とか来てこの定食屋に南蛮漬け係が加わってしまうからこの話はおしまいなんだ。