魔女と挑む聖杯戦争   作:ミクモ

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少し日が空けちゃいましたが2話目です!
~補足事項~ 
前話の後書きでもか来ましたがここでも...

追記:将希が召喚したキャスターについて
技名と外観で分かる方もいらっしゃると思いますが、再臨2段階目の姿を想像して頂ければなと思います。

それではどうぞ!



第2節 魔術師 

第2節 ~ 魔術師 ~

 

景色が一瞬にして変わる。

 

あの爆発したかのような一瞬の後、アトラムと将希は飛んで行くように壁に衝突、そのままの勢いで床に倒れ込んでいた。

 

視界の端には、先程までこちらに暴力を振るっていたアトラムが倒れている。

諸に受けた爆発のせいだろう。呻き声すら上げず、意識を失っているようだ。

 

将希は痛みの方が強く、意識は鮮明だった。

ただ、今は天井を見ることしかできないが。

 

「うっ、、、っは、うぐっ」

 

壁に衝突した時に呼吸が乱れ、上手く呼吸がしづらい。

アトラムから受けていた暴行もあるが、予想外の出来事に追加ダメージが大きかった。

つい先程まで、こちらを見てきた透き通った青い目の女性と目が合ったと思ったのに。

 

「やば、思ったより出しすぎちゃった...」

 

呼吸を落ち着かせていると女性の思わず出てしまったであろう声がした。

その声の主、爆風を発生させた張本人がこちらに駆け寄ってくる。

 

「えっと、先ずはごめんなさい!」

 

こちらに駆け寄るなり両膝を床に着け、膝立ちの状態で将希の全身の状態を見ながら杖をこちらに向ける。

彼女の杖が緑色に淡く光始めたと思ったら、自身の身体も同じく光に包まれ始めた。

アトラムから感じた様な嫌なオーラでは無いものが、全身を巡る。

身体の内側が暖かくてじんわりとしたもので包まれた。

 

「あの状況では、こっちの方が早いので...

槍に魔術をエンチャントして殴る!...のもありだったんですけど、相手が何を使ってくるか分からなかったので。

と言っても咄嗟で貴方ごと吹き飛ばしちゃいましたが...」

          

そう言って、アハハ...と苦笑いしながら横目を見た。

どうやら彼女は助けようとしてくれたらしい。

透き通る綺麗なあの青い目とまた目が合った。

目が合うと、こちらを安心させるような柔らかい笑みを向けて

 

「今は貴方の回復を、そこにいる彼は戦闘不能なので安心してください。」

 

彼女の声に頷きで返そうとしたら不思議と痛みが引いていることに気付いた。

身体が動けなくなっていた状態も回復して、腕を動かすと目に見える範囲で血が出ていた所も塞がっている。

魔術の凄さをまた体感した。

 

「助けてくれたんだね。ありがとう」

 

そう感謝の意を伝えると、彼女は少し目を見開いた後、何もなかったかのように優しい笑顔をこちらに向けた。

彼女の笑顔を見た後、安心してしまったのか身体は動かせるのに起き上がる気にはなれなかった。

今のこの状況もあるが、常識を越えた事が今日は多すぎたと思う。

夢を見ているような気もしなくはないが、あの痛みは間違いなく現実の出来事。

事実しかないから受け入れるしかない...

未だに起き上がる気になれないし、なんなら疲れた。

そう思っていると、彼女が姿勢を正してコホンと咳払いをする。

 

「こんな形になってしまいましたが、改めてご挨拶を。

今度こそ、貴方が私の召喚者さんですね?

私はトネリコ。雨の国の魔女、トネリコ。

どうか、先程のような荒事は無かったことに...

この世界には未だ不慣れですが、どうか、よろしくお願いしますね。」

 

あれは無かったことには出来ないかな~と思いつつ、こちらも反射で、こちらこそと会釈しながら返すと脇腹辺りを人差し指で軽く押された。

思わず、声が出る。

 

「痛っ!」

 

「おや、ここはまだ治っていないようですね。」

 

そう言いながら、ニコッとして指でツンツンと何回か押される。

彼女が先程までしていたような、安心できる笑顔ではない。

何故か彼女の機嫌を損ねたようだ。

どうやら、まずったらしい。

吹き飛ばされた事は何も言ってないのに、顔に出てたかなと思いつつ

 

「あの~、トネリコさん?そこはまだ痛いかも」

 

と柔らかく訴えるように言うと

 

「刺激を与えながらの方が治りが早いので、それにほら、意識が集中して治りが早いのです。

そうでしょう? ええ、断じて違いますよ?」

 

何が違うのだろうかと思ったら、また少し押される力が強くなった。

彼女とは会って間もないが、なんとなく分かってきた気がする。

この件は、これ以上は触れない方が良いらしいと思い、それより...と別の話題をする。

 

「トネリコさんは、どうやってここに来たの?

それにその格好は?」

 

そう、彼女の格好は外に出たらコスプレかと思うくらいに多くの人が持たない物ばかり。

鎧の他に鎖が付いた杖、あと床に刺さった槍...助けにくるにしては装備が充実と言うかファンタジーの世界に出てくるキャラクターそのもの。

 

「この装いは、旅の始めに揃えた物です。

かっこいいでしょう?」

 

えっへん、とでも言うようなドヤ顔で言ってくる。

旅の事についてはよく分からないが、確かにかっこいいし可愛いと思う。

彼女も満足げにニコニコしている。

 

「それとどうやって来たかって...それは貴方が呼んだんじゃないですか。

あそこの召喚陣から。」

 

と、彼女が指を指す方向には、床が少し破壊されているが幾重もの円と見慣れない文字が羅列してあった。

いつからファンタジーの世界に迷い混んだのだろうか...だがあの時確かに、彼女はその方向から光と風が吹き荒れた後、瞬間移動したかのように現れた。

今日は本当に色んな事が起こる。

この現実に頭が追い付きたくないが、最早詰め込んででも受け入れるしかない。

 

「俺が作った物ではないかな、それに召喚...か」

 

「どうやら、そのようですね。

貴方と目が合った時から今までの状況でおおよそ分かっていました。

ここは、私がそこで拘束している彼の魔術工房なのでしょう。

貴方がこんな事をする人のようには思えない...」

 

そう言って、彼女は数歩歩いて床に転がった石を拾った。

今は、月明かりを浴びて虹色に光っている。

 

「そうだ!その石!」

 

先程まで自分に置かれた状況と痛みで、それどころではなかったが彼女が手に取った石で思い出した。

あれは、子供達が変えられた石だ。

 

「マナの結晶のようですが、単純な魔力リソース...ではないですね。

それも中の魔力は複数、これは...」

 

そう言って、彼女は眉をひそめて石を見つめる。

 

「そうですか。

これがこの世界の、魔術師の魔力の集め方のひとつ...正直不快ですね。

こんな事をする魔術師がいるなんて」

 

そう言った彼女の言葉を聞いて、拘束されている男をチラリと見る。

今すぐにでも、この男を殴ってやりたいが、まだ今は回復に専念したい。

そう思いながら、トネリコさんに彼が言っていた事を話しつつ、希望的観測かもしれないがお願いをする。

 

「トネリコさん、子供達を元に戻せないかな?

俺に出来ることは可能な限りする。だからどうか、お願いします。」

 

これは、罪滅ぼしに近い。

あの時は目の前で救えなかったが、今救えるなら救いたい。

彼女になんでもするから何て綺麗事、自分には烏滸がましくて言えないけれど、これが自分にできる精一杯のお願いだ。

それに彼女の顔を見た所、彼女ならなんとかなりそうと思った。

 

彼女と再び目が合う、こちらをよく見て、見定めるように。

若干の間が空いた後、じっと見ていた顔がニコッと笑顔になった。

 

「ええ、もちろん!

今は貴方の魔力では足りないので、私の魔力と合わせて子供達を元に戻します。

ただ、後でちゃんと頂くものは頂きますから、そのつもりで。

良いですね?」

 

と、そう言ってくれた。

自分の魔力と言うのが足りなくて迷惑をかけるのは申し訳ないが、有難い事に後はどうにかなるらしい。

 

「ありがとう!後でどうにかなるのなら良かった!

是非お願いします!」

 

クスッと彼女は、まだお礼は早いですよと笑いながら言う。

 

「お礼は子供達を元に戻した後で改めてお願いします。

後で魔力の補給、お願いしますね!」

 

「うん、やり方は後で教えて貰えれば頑張るよ!」

 

「分かりました!では、そのように。」

 

彼女が一息付いてから、目を瞑り両手で結晶を包む。

オーラと言う風に自分は思っていたが、これが魔力...どうやら魔力が彼女の両手を通って結晶に集まっているようだ。

 

風がゆっくりと舞い始めた。

それに合わせて彼女の金の髪も舞い始める。

彼女が現れた時、状況が状況だったのであまり見れなかったが、よく見ると金だけではなく水色の髪もあるんだ...衣装綺麗だな、よく見たら槍もカッコいい!...とか場違いな事を思いながらまじまじと見続けていると、彼女の頬が赤く染まっている。

意識を集中して子供達を元に戻そうと頑張ってくれているからだろう。

そんな彼女を見ながら、後で魔力の補給ってどうやってやるんだろう?と考えた時、急に身体の内側がグンっと彼女の方に引っ張られる様な感覚を覚えた。

 

「あれっ」

 

どうやら、まだ回復しきれていなかったようだ。

貧血の様な感覚で視界が青黒くなる。

これは立ってられないと思い、その場に座り込む。

ちょっと、危なかった。

 

「大丈夫ですか?

無理しないで、そのまま休んでいて下さい。

貴方から魔力を頂きましたので、ここからは私の魔力でカバーします。」

 

座り込んだ自分の気配を察した彼女がこちらを気遣ってくれた。

まだいける。大丈夫ですと返して少し強がってみた。

が、片膝立ちした時にまた視界が青黒くなり始めたので頭を下げて呼吸を整える。

呼吸を意識していたら、彼女の方から召喚の時に感じたような強い風を受けた。

 

まだ視界の片隅が青黒さを感じながら彼女の方を見ると、彼女は両手で包んでいた結晶を床に置いていた。

結晶の形が、徐々に大きくなっていき人の形を成形し始めた。

ちょうど自分と同じくらいの大きさになってから、パキンッとヒビ割れたと同時に結晶にされていた子供達が姿を現す。

息はあるようだが、結晶にされる前と同じように脱力している。

けれど救えた、良かったと安堵していると

 

「上手くいきました!

けれど、体力が著しく落ちていますね。

この方々にも回復の魔術をかけて置きますから、貴方も休んでください。

えっと、、、」

 

何かを言いかけた所で彼女は口を止める。

どうしたんだろうと思い彼女を見ると、こちらを見上げるように見ていた。

 

ここで自分だけ名前を言っていない状況に気付いた。

それより先にお礼をと思い

 

「改めてありがとうございました!トネリコさん!

助けて貰ったのに名乗るのが遅くなってごめんなさい。

門馬 将希です。よろしくお願いします!」

 

「はい、こちらこそ!」

 

彼女も疲れている筈なのに変わらず笑顔で応えてくれた。

直後、苦笑いに変わり続けて言う。

 

「思ったより、魔力を使い過ぎちゃいました。

補給、させて貰いますね?」

 

「やっぱり、トネリコさんも疲れてますよね。

どうしたら、補給できますか?」

 

と聞くと、少し考える動作をしてから

 

「では、手を借りますね」

 

そう言って、彼女は右手の手袋を外して前に出してきた。

それに対してこちらは握手するように右手で握り返しすと、これにはトネリコさんも驚いたようで

 

「あっ、、、その、逆の手でお願いします。」

 

どうやら違ったらしい。

恥ずかしさを覚えつつ、左手に入れ換えた。

 

「すみません。これで良いですか?」

 

冷静を取り繕って話すが、胸の鼓動が少し早い。

子供や恋人にする手の繋ぎ方になってしまったのもあるが、自然と距離が近くなる。

 

彼女は頷いた後、壁に寄り掛かるようにして床に座った。

彼女も相当魔力を消費したのだろう。

片腕が上がってる状態では休めないだろうから、こちらも合わせて壁に寄り掛かって床に座る。

自分と彼女の間には一人分が座れるスペースを空けて。

 

「......よいしょっと」

 

すると彼女は空けていたスペースを埋めるようにして、こちらに近付いてきた。

肩と肩が触れ合う距離にドキッとしつつ、何考えてんだ俺と自制した。

出会って初日にいきなり関係が進んだような不思議な感覚だったが、そんな事を考えていると彼女の方へと流れる魔力に気が付いた。

これが魔力の補給の仕方かと思っていると、彼女が

 

「触れ合わなくても近くにいるだけで魔力供給はされますが、こうして触れ合う距離にいるとより効率的に補給できるんです」

 

そう言って、少し恥ずかしそう笑いながら部屋の全体を見ていた。

おもむろに彼女はこちらを見ずに話しかける。

 

「さて、この後の事を話しましょう。

子供達とそこにいる彼の事ですが、どうやらこの聖杯戦争には監督役と言う事後処理をしてくれる組織があるようです。

そこに一任しましょう。」

 

なんと有難い組織があるんだ。それは助かる。

 

「そう言う組織があるなら、頼るしかないかな。

あと、自分は聖杯戦争とか今日見た魔術とか色々分からないことだらけなんだけど、教えて貰っても良い?」

 

「その件です。」

 

と彼女はこちらを向いて話し始めた。

 

「ここからは、貴方が考えているよりも険しい道程になります。

先程までは貴方と協力して事態の解決にあたりましたが、今日以上に危険な目に合うこともあります。

それこそ、この聖杯戦争と言う殺し合いで命を落とすかも知れません。」

 

彼女はそう言って、視線を落とす。

こちらを見ずに話すのは後ろめたさからくるものだろうか。

 

「彼が使っていた魔術よりも残酷で救いがない事もあります。

一般人とは別の、常に命が天秤に乗っている人生を歩むことになるでしょう。

今なら私が記憶を消して、この戦いを放棄することもできます。

貴方は、どうしますか?...」

 

そう言い終わり、こちらを見た。

貴方は、と言う辺り少し一線を張られた気がした。

これだけ肩を寄せ合っているのに、距離を感じる。

貴方と私は違う世界の者で、今日は偶然、その境界が交わって出会えた運命。

この境界をまた引き直せるのに、それを止めてこちら側に来るのかと問う、強い意志を感じる青い目と自分の目が合う。

 

将希は一端、目線を放して立ち上がり彼女と手を離して彼女の正面に位置した。

何を言うか考えるよりも先に言葉が出ていた。

 

「今までの人生で魔術とかそう言う世界に関わってこなかっただけで、驚きはしたよ。

でも、今日みたいに巻き込まれる事があるのなら、俺は無関係の子供を巻き込むような人から守れるような戦える力を持ちたい。

だから、トネリコさんと一緒に戦わせて欲しい。

今は戦力にはならないかも知れないけど、戦力に数えられるように頑張るから」

 

そう言って将希は彼女に右手を差し出した。

今度こそ宜しくお願いしますの意味を込めて、握手をするために。

彼女は自分から視線を外さず、じっと見続けていた。

すると、ニコッとして

 

「分かりました。

将希さんの意志を尊重します。」

 

彼女も差し出された右手を、今度は握手をするために右手で握り返して立ち上がる。

 

「改めて宜しくお願いしますね。トネリコさん。」

「こちらこそです。将希さん。」

 

こうしてお互いに笑顔で握手をした。

続けて彼女は

 

「それに将希さんから、まだ頂くものを頂いていませんから」

 

「えっ、魔力じゃなくて?」

 

「はい、それはまたの機会に!

そもそも魔力も全然足りてませんよー」

 

とクスクス笑いながら部屋を歩く。

彼女は振り返り、手を後ろに組んで話す。

 

「それと、私以外に手を出すことは今後しないようにして下さいね?

危なっかしくて宝石に変えちゃいそうです。」

 

「それは勘弁してくれ...」

 

宝石と言うが、それは彼のように姿を変える事が出来ると言う意味だろう。

それはごめん被る。

どうやら知らなければならないことが多いようで、

足を引っ張らないように気を付けねばと思うのだった。

 

こうして将希は、その日魔術の世界に足を踏み入れた。




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