バカ強スペックの沙条愛歌になったので、可愛さ布教します   作:だっちゃまん

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あぁ、ちなみにベルちゃんの飛び出すシーンはありません。色々と展開が変わった結果トマト事件が消滅しました。打ち上げ自体は翌々日になってます。ひっそりとやってます。


強さの証明

 

えー、はい。天真爛漫、沙条愛歌の信者マナカです。ロキ・ファミリアの布教活動を終えて今一人で何階層かも分からない場所で音楽鑑賞しております。

 

うわ、今グキっていった…やば。ずっと殺し合いしてんじゃん。はい、37階層のコロシアムです。あのホワイトパレスでモンスター共がお互いをボコボコにしあっている魔境です。

 

ちなみに空を飛んでんだけど、たまーに俺に気が付いた馬鹿野郎が物投げてくんのよ。これやり返しても法律違反にならないよね?

 

「また骨が飛んできたし……」

 

なんかえげつない音を立てて飛んでくる骨を掴むのは絶対嫌だ。だから風属性の魔術で、俺に当たる直前にピタリと停止させた。そこで逆流する風圧を利用して、その骨をカウンターで投げ返す。勢いよく飛んだ骨は投馬鹿野郎の額に直撃し、弾け飛んだ。

 

…え、手加減してこれ……?

 

人に撃ったらダメなやつっぽい、もっとコントロール上手くなろ…。まぁ正直?黒竜を余裕でぶっ殺せる俺がこんな所で油売らずにラスボスぶちのめしに行けば物語も終わるし、これから先のバグだろうと別に24時間以内だったら未来を視れるし、沙条愛歌の力もあるから悩む必要はないけどさ。

 

…俺のせいで原作がバグったは流石にちょっとダメじゃん?これは俺の物語じゃないし?そりゃあ、黒竜がこっち来てブイブイ言わせてくんなら俺も出るけど、出ない限りはここの人達でやるべき事じゃん?

 

俺、ガワだよ?推しの力持ってるだけのファンだよ?伝道者だよ?そんなのうのうと過ごせるわけねーべ!俺そんなクソ強メンタルじゃないし!だから、自分が起こした不始末は自分で拭くし、俺のバグで何かが起こるなら責任取って自分で尻拭いしますし!

 

まぁ、それ以外だったなら自分から動くことは無いけど…助けを求められたら、力は貸すけども!

 

俺はクソ人間じゃあないんでね!!

 

──だから、自分の責任は自分で取るよ。

 

やっば、これなら推しも俺の事を罵詈雑言しつつも褒めてくれそう。てか、なんで魔術のコントロール下手なの俺。エクスカリバーは自然とコントロールできたのになんでこれは出来ないんだよ、やっぱガワのせい…?

 

まぁ…沙条愛歌の力の大多数を扱えて沙条愛歌同様の才能を有してるからと言っても、こちとらまだここに来て3日ぐらいしか経ってないし……モンスター戦もずっと殴ってばかりだし…仕方ないよね!

 

「とりあえずは……根源ちゃん、なんかイベント起きる?」

 

あーはいはい。危なっかしいものは無いけど…ベルと出会う。なるほどなるほど。

 

 

んッ……!?

 

 

 

 

⬛︎

 

 

 

 

 

 

「えと、神様……行ってきますね」

 

「……」

 

未だにふくれっ面を決め込むヘスティアに、ベルは色んな策を講じるも全てが空振り、ようやく少しずつ機嫌が治ってきたかと思えば、ふとした瞬間にまた機嫌が悪くなって……の繰り返しで、今朝はてんやわんやしていた。

 

マナカに救出されて、既に24時間以上経過しているが中々に収まらないようだ。そして、ダンジョンにいつも通り向かおうとしたらヘスティアは尚更機嫌を悪くしたようで、ベルの服の袖を掴んで離さない。

 

「…ベルくん」

 

「は、はい」

 

「君のステイタス……いや、これだけは言うぞ。君の成長は最早飛躍だ」

 

数ある冒険者、ベルよりも早くステイタスを刻んだ冒険者達よりも異常の速さで数値が上昇していた。言うなれば、植えて直ぐに植物の芽が出てきているようなもの。眷属がベルしか居ないし、ファミリア結成の歴史も浅いヘスティアと言えど理解していたのだ。

 

理解し、価値を正確に見極めた。

 

───レアスキルの効果だと。

 

それも、聞いた事のない未知のスキル。神々の格好の的になら無いように、ヘスティアはスキルの存在を隠すことを決めたのだ。

 

「良いかい、ベルくん。今の君は成長期だ、枷が外れたように劇的な成長を遂げている。確実に言えるよ、強くなる───だけど、これだけは聞いておくれ」

 

 

 

……ボクを、独りにしないでね。

 

 

ヘスティアの言葉は、ベルの心に確かに届いた。それは紛れもなく、確かな想いとして受け取って。

 

 

「──絶対に、神様を悲しませたりしません。僕もずっと、神様と共にいます」

 

 

 

──ヘスティアは思った。これはもう、事実上の婚約宣言じゃん。

 

「あぶっ…!」

 

「か、神様!?」

 

 

ヘスティアは鼻血を吹き出して倒れた。そんな騒動もありつつようやく迷宮に来たベルは片手に短剣を携え、慎重に足を踏み入れた。

 

ヘスティアは神々のパーティー兼顔出しのため何日か留守にする予定らしい。ならば、ヘスティアが寂しくならないように早めに切り上げていた迷宮攻略をちょっと長めにしてたって問題は無いはず。

 

もちろん、油断や慢心はないし警戒も見極めも行って駄目そうならすぐに引き返すつもりだ。この前のミノタウロスがあって以降、2階層にちょっとした忌避感はあったが…あの経験がベルをより強くした。

 

───既に、到達階層は六階層。ヘスティアの言う通り、劇的な飛躍を遂げている。それはベル自身も感じていたことだった。

 

明らかに、動きが違う。普段通りに動こうとすれば身体能力の開きで力加減を間違えてしまう。

 

「…僕は、強く…なれてる」

 

もう、あの失態をしたくない。

 

男として───情けないことをしてしまった。今度こそ、あの子に出会って僕のカッコイイところを見せたい。そんな想いを乗せた一撃はモンスターの喉仏を正確に捉えて、引き裂いた。

 

ゴブリンは呻き声を最後に息絶えた。他のモンスターも同じように俊敏な動きで攻撃を躱し、刺突、袈裟懸け等の攻撃を繰り出す。

 

一対二、複数の包囲網も随分と余裕をもって対処できている。その事実がベルの闘争心を更に刺激した。

 

「───僕だって、強くなれる」

 

噛み締め、剣を振り抜く。時間すらも置き去りにした刹那の斬撃は結果だけを敵に投げ渡した。それから六階層を着実と進んでいく、素材回収で少しずつ鞄に重みが現れ始めていた。

 

脚の動きが鈍って来たのを合図に、ベルは一度動きを止めた。

 

「…そろそろ、戻った方がいいかな」

 

 

「そうだね、私もそれに賛成」

 

 

呟き、ベルは踵を返す。腰に巻いた鞄に手を当てて今回の成果に満足気に───。

 

 

「うわぁッ!!??」

 

隣で浮遊している少女は、したり顔でベルを笑っていた。驚いた拍子に飛び上がったベルの鞄は地面に落ちて中身が散乱。

 

「そ、素材が……あ、あわわ……!」

 

「落ち着いて落ち着いて、それ私拾うから! うわ、なにこの鱗、キモッ!!」

 

少女の声に、覚えがあった。

 

その姿に、心が弾んでいた。

 

 

 

───ベルの中に刻まれた、憧憬がこう叫んだ。

 

 

 

《神秘の片鱗》だと。

 

 

「あ、貴女は…! えと、その、ええっと…!! その…!」

 

口が上手く回らない。ようやく会えたのに、羞恥心がベルを襲う。伝えたい言葉があるのに、飲み込めない。頭が沸騰寸前になって、ようやく吐き出されたのは。

 

「─お、おにゃまえはなんですか!!」

 

 

そんな、赤ちゃん語だった。

 

 

 

⬛︎

 

 

 

 

ベルくん可愛すぎない?

 

おにゃまえだって。おにゃまえ…こりゃあヒロインキラーになるわ。そら、庇護欲すごいわ。これで戦闘になるとブチブチの戦士になるんだよ?やっば、脳破壊じゃん。

 

ベルと出会うって言うから慌てて転移してきたけど…いやぁ六階層におるんだなぁ…。しかもめっちゃ今顔真っ赤にして手で覆ってんのギャップですやん。いやそうでも無いか…?

 

「おにゃまえはマナカって言います、そちらのおにゃまえは?」

 

「〜ッ、ベルって言います…」

 

今にも穴に入りたそうなベルは弱々しい言葉で名前を告げる。ちょっと意地悪しすぎたみたい。

 

「よろしくね、えっと、帰る途中だったかな?」

 

「は、はい…!鞄もいっぱいに───って、そうだ片付けなきゃ…あれ?素材が落ちて、あれ!?鞄の中にある!?あれ!!?」

 

なんとも綺麗な三段活用に内心ちょっと笑えてきたがここは我慢。ベルの様子からして体力は大丈夫そう、容量がいっぱいだから帰ろうとしたって感じらしいし、つーことは……暇ってことか。

 

Hey、根源。ヘスティアって今どこ?

 

……あーね、ガネーシャ・ファミリアのところか。パーティの件だな。と云うことは、数日はベルおひとり様って事だね。だったら、この際だし───俺も同行するか。

 

空間収納もあるから、容量は気にしなくて済むし転移もあるからベルを安全に教会に届けられるし。よし、そうしよう。次いでに推しの素晴らしさも説きつつ、主人公をこちらサイドに引っ張れば……ぐへへ。

 

未だに困惑しているベルの肩に手を置いて、俺は告げた。

 

 

 

「ねぇ、ベル。一緒に探索しない?」

 

 

「……へ?」

 

素っ頓狂な声を漏らすベルを強制的に立たせると、俺は面白可笑しそうに笑顔を咲かせる。

 

「私と迷宮デートしようよ」

 

「めめめ、迷宮デートぉ!?」

 

顔を赤く染めて、驚きのあまりにまた鞄を落とした。鞄が不憫だ。

 

「え、でも……その、マナカ、さんって……冒険者じゃない、ですよね?」

 

「うん、でも大丈夫だよ。私はね」

 

どこか懐疑的な目線のベルだけど、それ以上の追求はしないようで納得を見せる。俺に何を言っても答えは返ってこないと察したのだろうと俺は勝手に納得した。

 

「じゃあ、行こっか」

 

「……は、はい!」

 

 

 

 

⬛︎

 

 

 

 

 

場面は変わって、ガネーシャ・ファミリア主催のパーティー会場。此処では神々による情報交換や主神としての荷を降ろす憩いの場でもあった。 とある箇所では、フレイヤ、ヘファイストス、ヘスティアが並んでいた。

 

そんな場所で、ドレスに身に纏う事なく普段の格好でヘスティアは料理に舌鼓を打っていたところ、一人の女神がヘスティア達に近づく。

 

「おーい!! ファイたーん、フレイヤ、ドチビー!!」

 

目の前にやってきたのは、派手なドレスを身に纏った女神──ロキだった。

 

「ロキ、何しに来たんだよ」

 

「なんや、理由がなきゃ来ちゃあかんのか?そっちのほうが無粋っちゅーもんやろ。空気読めよ、ド・チ・ビ」

 

「……ッ」

 

ヘスティアの顔が歪んで、ロキを睨んだ。今にも胸倉を掴む勢いである。

 

「すごいことになってるわよ、顔。にしても、久しぶりね、ロキ。貴方達の名声は届いてるわ、上手にやってるじゃない」

 

「ファイたんにそう言われると、照れるなぁ……ウチの自慢の子供達なんや」

 

まさに、聖母のような微笑みでロキは笑う。そんな姿に少しばかりの驚愕を滲ませるヘファイストス。狡猾で悪知恵ばかりを働かせるロキの過去を知っているからこそ、その変化に驚きがあった。

 

「……ところで、フレイヤとヘファイストスに話があるんや。そのために来たようなもんや、今回は」

 

その時、会場の空気が1℃ほど沈んだ。ロキの纏う雰囲気が明らかに変わったのを、ヘスティア達は自覚したのだ。

 

「ボクは含まれないんだね?」

 

ヘスティアは眉をひそめながら問いかける。だが、ロキはその問いに笑って「ドチビじゃ抱えきれん話や。まぁ、聞くだけならええけどな」

 

その言葉には、多少の信頼が滲んでいた。ドチビと罵りお互いに険悪の仲ではあるものの、信用のおける神物と云う認識はロキとて持ち合わせていたからこその判断だ。

 

 

 

「───マナカっちゅー少女、知っとるか?」

 

その問いに答えたものはいない。喧騒のパーティー会場で、この空間だけに静寂が掻き毟る異質なものへと変化していた。

 

「……知らないわね、でも、それがどうしたのよ?ロキが改まって云うって事は…何があるの?」

 

ヘファイストスの疑問に答えるようロキは続ける。

 

その言葉の真意は分からない、けれど──かの女神が冷や汗を垂らすほどの存在だと云うことは、直感として感じ取っていた。

 

 

 

「リヴィラの街で、ウチの子供たちが接触した奴やけど……正直言うたる」

 

 

そして告げられたのは───正しく、今迄にないオラリオの異変を予感させるものだった。

 

 

 

「──ウチのアイズたんを、一騎打ちで破りよった」

 

 

 

 

 

⬛︎

 

 

 

 

 

隣を歩く少女を、ベルはちらりと横目で見た。

 

可愛い、なんて言葉じゃ片付かない。それはもうずっと前から知っている。この人は、ただの人じゃない。ミノタウロスを一瞬で倒した、実力も知っている。

 

何よりも、ギルドでエイナから告げられた「彼女は冒険者じゃなくて、一般人……でも、とてつもなく強い」と云う言葉と共に、ギルド側としても問題だが、保留扱いされるほど。なんて言葉を、噛み締めた。

 

そして……ベルが憧れた女の子。

 

(そんな彼女が、今……僕の隣を歩いてる)

 

「ねぇベル、こっちの通路、通ってみてもいい?」

 

「えっ、あ、はいっ!」

 

マナカの声に反射的に返事をしてしまう。彼女が進む道を拒める自信なんてない。

でも──。

 

(今の声……"確認"じゃなくて、"誘導"だった)

 

マナカの言葉はあくまで優しい。けれど、その内側に確かな意志があるのを、ベルは無意識に感じ取っていた。

 

迷宮を歩きながら、二人分の足音が続く。

 

──静かだ。けれど不思議と、気まずくはない。何かを話したい。でも、何を話せばいいのか分からない。

 

(強くなりたい、って言えば笑われるだろうか……彼女みたいに、強くなれるだろうか)

 

「──ベルくんは、どうして冒険者やってるの?」

 

突然、問いかけられた。ベルの足が、ぴたりと止まる。

 

「え、えと……その、女の子と仲良くなる……ため、です」

 

ベルの顔が赤みを帯びていくのがわかる。マナカに志した理由を話すのがちょっとばかし、恥ずかしかった。けれど彼女は、どこか面白そうに笑う。

 

「あはは!すっごく男の子だね」

 

それは、侮辱でもなければ軽蔑でも無い。ただ、心から思った言葉を彼女は吐いたのだろう。ベルは、そんな姿を見て─なおのこと、想いが強まった。

 

「それだけじゃなくて。強く、なりたいんです」

 

「ふーん?誰よりも強くなりたいの?」

 

「……なりたいです。あの時、何もできなかったから」

 

それが、どのあの時を指すのか、マナカには説明していない。けれど。

 

「じゃあ、強くなろっか。ちゃんと、ついてきてね?」

 

冗談交じりの笑み。だけど、その瞳は嘘をつけない色をしていた。ベルは思わず、息を呑んだ。

 

(この人は──本気で言ってるんだ)

 

一緒に歩きながらも、どこか手の届かない場所にいるような感覚。過去に助けられたときの無音の一撃、ギルドでの不自然な対応、名前すら明かされなかったその経緯──何より、あの眼。自分のすべてを見透かすような、あの瞳。

 

でも、どこか優しさを湛えて凛々しさすらも感じる瞳は、ベルの気持ちを否応がなしに……朱色に染めた。

 

「ベルくん?」

 

「っ、いえ、大丈夫です!着いていきます…!必ず」

 

情けないほどに反応してしまう自分にベルは少しだけ溜息を吐きたくなった。

 

 

気持ちは、変わらない。

 

この人に、追いつきたい。

 

 

「───ベル、じゃあアイツやれそう?」

 

目線の先で生まれたモンスター、四体。狭い通路で四体を相手にするのはリスクを伴う、危険行為。

 

しかし、指を指してマナカは問う。そこに含まれた思いに答えるべく、ベルは静かに頷いた。

 

「もし、倒せたら───ベルに渡したいものあるの、頑張れ」

 

握る短剣に、少しだけ力が籠もる。憧れの人に応援されたのなら……無様な姿を晒す訳にはいかない。

 

だから、負けられない。

 

 

 

(僕は──僕なりに、強くなりたい)

 

 

 

そう、心で唱えながら、ベルは飛び出した。

 

 

 

 

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