銀英伝短編集(小ネタあれこれ)   作:高島智明

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この短篇は、以前に投稿しました『異世界迷宮に行く筈が』の続きに当ります。


Re:異世界迷宮に行く筈が

「提督」

ユリアン・ミンツが、佐々木望の声でヤン・ウェンリーに話しかけた。

「こんな処に立っていても危ないですし、取り敢えず車に乗ってもらいましょう」

「そうだな」

ヤンも、富山敬の声で同意した。

 

自動運転が完全に実用化されたタクシーに3人で乗り込んで、ハイウェイを走り出した。

その車中で、ユリアンが確認する。

「どうします。今の行き先は官舎にしてありますが、警察とかに変更しますか」

 

とんでもない。お役所仕事に任せたら精神病院行きだ。

それにそんなことに成ったら、俺の只1つの強み『原作』知識が活かせなくなる。

「全てをお話しします。落ち着いて話せる処に連れて行ってもらえませんか」

「ふむ」

ヤンは、少しだけ考えて同意した。

 

自動タクシーはヤンの官舎の前に到着し、ユリアンが端末を取り出して決済した。

俺たち3人は官舎の居間に落ち着いて、俺とヤンはユリアンが居れた紅茶を前に対話を始めた。

「信じ難いかも知れませんが、全て真実です」

 

俺は話し始めた。

「私は西暦21世紀の地球に居ました」

”あの”サイトのこと。

ライトノベルのファンが真似して作ったサイトと思って適当に選択したら”この”世界に飛ばされたこと。

そして…

 

ここが重要だ。

『銀河英雄伝説』というメディアミックス作品について語った。

「ほう。私たちは其の作品の登場人物だと言うのかい。

それで”私”は、どんなキャラクターとして登場するのかな」

 

「貴方は、同盟側の主人公として描かれます。

やがて銀河帝国の皇帝と成り銀河の統一を目指すラインハルト・フォン・ローエングラムのライバルと成ります。

そして、不敗の伝説を後世の歴史に残すのです」

「それは、大した役回りだね」

ヤンは果たして、信じてくれただろうか?

俺は信じてくれることに賭けて話を続けた。

 

「それで、その決着はどう成るのかな」

「貴方は、最後まで皇帝ラインハルトに負けません。

そして、遂に皇帝ラインハルトとの講和の対談を設定するまでに漕ぎ着けるのですが…」

ここからが、問題だ。

「その対談の場に赴く途中で、銀河の戦乱が終わることを望まない陰謀家たちに暗殺されます」

ヤンよりも、ユリアンがピクッと反応したかも。

「その後はユリアン・ミンツが貴方の後継者と成り、最後は皇帝ラインハルトと和解しますが、それまでも戦乱は続きます」

 

「ユリアンが…」

ヤンは自分が殺されることよりも、ユリアンが後を継いで戦うことに反応した様だ。

確かに、イゼルローン攻略戦を前にして、

「私の家に14歳の男の子がいるが、その子が戦場に引き出されるのを見たくない」

等と、言っていた位だ。

 

「その時は、暗殺に気を付ければ好いでしょう。

その前に、確認しておきたいのですが、今は”何時”なのでしょう?」

ユリアンが軍服姿で無いこと、ヤンとユリアンが惑星ハイネセンに居たことからすると、イゼルローン赴任の前なのだろうが『原作』の”何時”の時点なのかが重要だ。

「未だ、アスターテ会戦は起こっていないのでしょうか?」

 

「アスターテ?イゼルローン回廊の同盟側にある星域だったかな。

そこで会戦が起こるのかい?」

「そうです。ラインハルト率いる帝国軍が、同盟側3個艦隊と戦います」

「それで?」

 

「3個艦隊のうち、2個艦隊を撃滅。最後の1個艦隊も追い詰めますが、貴方が指揮を受け継いで1矢を報い、貴方は同盟側の英雄に成ります。

只…」

ここからが肝腎だ。俺の介入で銀河の歴史に介入出来るかが試される。

「貴方は、親友の1人を失います。

撃滅されるのは、同盟軍第4艦隊そして第6艦隊です」

「それじゃ、ジャン・ロベール・ラップが…」

「残念ながら、そうです。

第6艦隊司令官はラップ参謀の忠言を悉(ことごと)く退け、艦隊は撃滅されます」

「それじゃ…ジェシカはどう成るんだ」

「ジェシカ・エドワーズは婚約者の運命を契機に反戦政治家と成り、主戦派と対立して行きます」

流石に「スタジアムの虐殺」についてまで語る気持ちには成れなかった。

 

「だがしかし、今、私に聞かせてどうなるんだ。

私は1人の艦隊参謀に過ぎない。

それに、他の艦隊にまで干渉する権限は無い」

「今の貴方には、そうかも知れません。ですが、シトレ「校長」ならどうでしょう」

「「校長」が…」

「統合作戦本部長ならば、ある程度は人事に介入する権限もあるでしょう。

例えば、艦隊司令官と参謀の不和を口実にするとか」

「確かに…シトレ「校長」なら…」

ヤンは立ち上がった。

 

「提督。信じるんですか?」

ユリアンの言い分も、むしろ常識的かも知れない。

「信じたくない気持ちも在るがね。

だけど”彼”の言うことが本当だったら…

第6それに第4艦隊の200万人の名から、ジャン・ロベール1人を助けるのは偽善かも知れない。

でも、あいつは好い奴だ。

それに…ジェシカが不幸に成るのは見たくない」

ヤンはTV電話の方へと歩み寄った………。

 

……。

 

…アスターテ会戦は『原作』通りに起こり、終わった。

帝国側ではラインハルトが、そして同盟側ではヤンが英雄に成った。

ただ、1つだけ『原作』とは変わっていた。

ジャン・ロベール・ラップは、司令官への不服従を理由に第6艦隊参謀を更迭され、統合作戦本部長付に転出していた………。

 

……。

 

…そして、第13艦隊司令官に抜擢されたヤンはイゼルローン要塞を攻略し「奇蹟の魔術師」と呼ばれた。

 

そのヤンの凱旋から間もなく、俺はヤンと共にシトレ本部長に呼び出された。

 

(いよいよだな)

同盟の致命傷と成った「アムリッツァ会戦」それに介入出来るか、どうか。

だがしかし、シトレ本部長は『原作』でも帝国領侵攻には反対だった筈だ。

本部長の旧知の政治家ホワン・ルイも。

それでも止められなかった。

 

けれども俺は知っている。

あのヒステリー参謀が鍵を握っている。

奴さえ…

 

俺はせいぜい介入してやる積もりだった。

果たして、銀河の歴史は何処へ行くのだろうか。

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