斬れぬものなど全くない   作:きんつば

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9話 折ること

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、伝蔵さんとやら。聞きたいことがあるんだが」

 

「…なんだよ」

 

俺は妹吸血鬼のいた部屋から出た後、何故か俺を見て泣き出した女の子、霧雨 魔理沙と行動を共にしていた。

 

まぁ後に彼女は、俺を見て泣いたわけじゃないと必死に身ぶり手振りを加えながら説明してくれたけどさ……何か、もう今度は、お兄さんが泣きそうなのよ。

何か彼女が慌てて、泣いてない!泣いてないんだぜ!って必死になって言うのよ。俺はこの時、このぐらいの年頃の女の子が自分の涙を見られて恥ずかしがるなんてなぁ、なんて少しほっこりした気持ちになっていたのだけど、そこで僕は察しました。

あっ…これは俺のためにここまで必死になってるんだな、って……

……なんかね、もう、死にたい。何?俺の顔そんなに怖いの?このぐらいの年頃の女の子には、初めて見ると涙を浮かべてしまうほど怖いの?

もう、なにさ。なんなのさ。

言っとくけど自分の気持ちってのは簡単に変えられるけど、自分の顔ってのは一生変わらないんだからね?君は僕のハートにクリティカルな行動を現在進行形で行っていたからね?やめろよその、あっ顔が怖くて泣いてしまってたけど何とか気付かれないように誤魔化そう、相手の為に。っていう優しさ。

その優しさはどんな刀よりも鋭利だからね?スパッといくからね?

ていうかもっと上手く誤魔化してくれませんか?必死すぎてもうね。なんていうか、ああ、もう、何でも良いや。死に場所を捜そう……

 

そんなことがあり、現在の俺の精神は少し不安定になっていた。そんな中、今俺は彼女と一緒に紅い廊下を歩いているのである。

 

「お前はこの館に何をしに来たんだ?」

 

そう隣の彼女から問いかけられた。

何をしに来たか?えっと、あれだよね。あれだよ…何だっけ?……そうそう、妹吸血鬼を無力化させることだった。いやほんとに、大変だったわ。ちょっと心臓に悪かったわ。でもあの妹さんが話が通じる奴で良かった。もし通じなかったら死・亡☆だったよ。今ごろ。

だが、その仕事はもう俺は終えてしまった。現在の少女の状態なら同じことはもうしないだろう。何せ演じているだけだ。周期的なものだったのだと俺は思う。それが偶然この異変時にあたってしまっただけだ。少女が、周りに自分の偽りの存在を知らしめるための行動が。偶然に。

 

運命は虚ろだ。未来はきっとそれよりもあやふや。……そんなものなんだろう。

 

さて、それでは隣にいる彼女には何と言おうか。正直これから何をしようとしているのか言ってもいいんだけど。その、なんだ、めんどくさい。

いや…めんどくさいっすよ。だってこれまでの経緯を長ーく話さなくてはいけないからね。短くして話してもいいんだけど、俺は脳筋だから誤解が生じるかも知れない。

まぁ、こんな時は大人の、嘘は言わないけど本当のことも言わないという汚い手を使いますか。

 

「仕事だよ。それで今からは残業だ」

 

「残業?」

 

「ああ。まったく、めんどくさいもん背負っちまった」

 

本当に、かったるい。

だけどそのまま放置ってのは、ねぇ?流石に後味が悪い。それに、やはりここは大人がしっかりとするべきなのである。

……頑張るか……ハァ。

 

そのまま歩くこと数分。俺達はある扉の前に着いた。

 

「…結構デカイ扉だな……よし!じゃあ早速いくぜ!」

 

そう言い、隣にいる魔理沙は勢いよく突撃していく。うん、ちょっち待って?ちょっと待ってください。

俺は彼女の襟を後ろからつかむことで進行を止める。

 

「ぐっ!な、なんだよ!」

 

「まぁ待て。ここはまず大人の俺から行こう」

 

「なんでだよ!別にそんなのどうでもいいだろ!?」

 

いや、今回ばかりはいけません。

この少しの間俺は君と話をしたけどね、わかったことがある。

君は礼儀というものを知らないだろう?

さっきから言葉使いがなっちゃいないぞ。せめてもの救いとしては偉そうな態度をとらないので話しやすいことかね。うん。

僕はね、子供がこういう態度をとってしまうのは許します。背伸びしたい時期だもの。多少の無礼は寛大な心で受け止めます。具体的には呼び捨てされるレベルぐらいまで。

でもね?今この館では僕のような広い心を持った人は少ないと思うんだ。

実は前から薄々と思ってはいたんだけどね、妹吸血鬼が強いとかハクレイの巫女最強説とか聞いた辺りぐらいから。

たぶん、この館は今ね、幻想郷の最強の最強による最強のための異変の中心部なのよ。大体つよい奴って偉そうな態度とる奴多いからね、もし君が「……この異変を…終わらせにきた!」とか無い胸はって言ったら瞬殺されるのよ。だから、ダメ。

 

まぁ見てな。俺が大人の礼儀ってのを見せてやるよ。

 

 

 

 

 

「あ、すんませーん。誰かいますかー。怪しい者じゃないっすけどー」

 

そう言い扉を開き中を見ると、目に映ったのは本と本と本。とにかく、たくさんの本が並んでいる広い部屋だった。

 

「…すごい。これほとんど魔法についての本だぜ!」

 

魔理沙は自分の身近にある本棚を見ては嬉しそうにそう言う。

こらこら、かってに誰かの物を触ってはいけないでしょうに。マナーがなってないぞ。怒っちゃうぞ。いいのか?

 

「はーい。ちょっとまってくださいねー」

 

俺が注意しようかと迷っているとき、この部屋の何処かから声がした。そして奥から一匹の黒い羽をはやした悪魔?が俺達の所にやって来た。

 

「はい。御待たせしました。何か御用でしょうか?」

 

目の前の長い赤の髪を揺らす女性はさっきの俺の声が聞こえていたらしい。礼儀正しく、そしてこちらに笑みを浮かべ俺に用件を聞いてきた。

 

……これだよ!これが、これが大事なんだよ!

俺は心の中でガッツポーズをとる。

今までこの館にいる奴等はめんどくさい奴ばかりだと勝手に思い、多少の偉そうな態度などは目を瞑ろうとしていた俺であったが、目の前の彼女を見て考えを改める。

そう、偏見はいけなかった!見てくれよ、この相手との対応に配慮しようとする姿勢!素晴らしいね。

きっと彼女だってこの館に居るのだから多かれ少なかれ力は確実に持っているはずだ。だが、だがそれでも凄まないこの姿勢。素晴らしい。フッ、世界ってのは、悪い奴の方が少ないのかもなぁ。

 

「ああ、すみません。お忙しいところ。少し聞きたいことがあるのですが」

 

「聞きたいこと、ですか?」

 

目の前の彼女は首を傾げる。

 

「…えーと。……姉の方の吸血鬼御嬢さんはこちらにいらっしゃいますか?」

 

「レミリア御嬢様ですか?」

 

「ああ、はい。たぶんその方です」

 

よく考えると俺は探している奴の名前すら知らなかったでござる。恥ずかしい。しかし、そんな俺に律儀に対応してくれる彼女。素晴らしすぎて涙がでそうでござる。

 

「今はこちらにはいらっしゃいませんね」

 

「…そうですか…ではどちらに居られますかね?」

 

「すみません。それはわからないです…」

 

申し訳なさそうにそう言う彼女。

そっかぁ、知らないかぁ。じゃあしょうがない。この場は後にするしかないか。

 

「そうですか、すみませんお時間をとらせてしまって。それでは」

 

そう言い、後ろを振り返りこの部屋から出ようとする俺。だがーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁなぁ、この本持っていっていいか?」

 

その時、そう魔理沙が彼女に言った。

 

 

………ん?

 

 

「いや、それは少し困ります……」

 

「えー?別にいいじゃんか少しくらい。こんなにあるんだから」

 

 

………お?(怒)

 

 

 

「で、ですが…」

 

「大丈夫大丈夫。借りるだけ、借りるだけだぜ」

 

 

彼女が困っているのにも関わらず、魔理沙は構わずにそう言う。

…ま、まぁ彼女はまだ子供なんだからね。しょうがないよ。だから、だから拳を握るな俺ぇ、落ち着くんだ。相手は子供だぞ?優しく大人の対応をするんだ。

そんなこんなで怒りを静めることに務めていた俺であったが、次の彼女の言葉を聞いた瞬間、完全にキレた。

彼女はどや顔になってこう言ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に借りるだけだぜ。死ぬまでな!!!」

 

 

 

「ちょっと正座しろやクソガキィィイイイ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…貴女、強い、わね」

 

「そう、あんたが弱いんじゃないの?」

 

「ふっ、よく言うわ」

 

人間のスペルカードルールによる戦闘は、博麗の巫女の勝利で幕を閉じた。

だが、その戦闘はこれまでの一方的な内容のようではなかったようだ。霊夢の着ている服にはいくつもの刃物で切り裂かれた後が残っており、彼女の頬には一筋の汗が垂れていた。霊夢はそんな自身の姿を見た後、

 

「まぁでも、……楽しかったわよ」

 

そう咲夜に語った。

咲夜はそれを聞いて少しだけ笑い、自らの両目を閉じ、そのまま立つことはなかった。

そんな咲夜の様子を見た後、霊夢はゆっくりと歩き前に進んでいく。

 

「ーーこの先が終着点よ。せいぜい、頑張りなさいな」

 

歩いている霊夢の後ろから、咲夜がそう言った。それを聞き霊夢は一瞬動きが止まるが、すぐにもとの歩く動作へと変える。そして自分にだけ聞こえる小さな声で言った。

 

 

 

 

 

「ようやく。この異変の首謀者をボコすことができるのね。……はやく終わらせましょ」

 

 

次第に霊夢の歩調は速くなっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だ、だからごめんって」

 

「謝って許されるならねぇ?神様なんて、いらないんだよなぁ?」

 

「は、はぁ!?「ああん!?」す、すみません」

 

「いや、もう許してやってくださいよ。私だって、怒こってませんよう」

 

「いや、このぐらいの年頃のクソガキには早めに対応しないとダメですよ。でないと今よりも生意気になってしまいます」

 

「私のどこが生意気「ああん!?」す、すみませんです」

 

俺は生意気な魔法使いこと、窃盗魔理沙に説教していた。

でもね、この行動は大人なら誰だってとるはずなのである。だって、どうどうと盗みを働こうとしてるのよ?これはどげんかせんといかんでしょ。叱らんといけないでしょ。第一この子反省してないと思うでござるよ?きっとこの子、俺が解放した瞬間「バーカ、バーカ!」とか言い出しそうだもん。

ふむ……困ったなぁ。どうすれば反省を促せるか…

 

「もう許してくれよぉ。正座なんて普段してないから足が痛いんだよ。解放してくれるなら何でもするからさぁ」

 

……何でも?なるほど。これはいい妥協案を思いついた。

 

「ふむ。わかった。じゃあ、えーと」

 

「あ、私は小悪魔と言います」

 

「あ、ご丁寧にどうも、俺は伝蔵って言います。小悪魔さんですね。じゃあ、貴女は正座してる彼女に何か命令していいですよ。何でもするらしいですから」

 

「ええ!?」

 

正直魔理沙に反省を促すことはほぼ不可能だろう。だったら被害に遭いそうになった小悪魔さんに、謝罪の形として何かをするということで今回は妥協しよう。

それに、少しこの場所で時間をかけすぎた。俺は早く姉吸血鬼を捜さないといけないのである。

 

「な、何でもですか……グヘヘ!」

 

…小悪魔さんの方から何か変な声が聞こえたが気のせいだろう。うん。気のせい気のせい。それにしても本当に本がたくさんあるなぁ~(逃避)

 

「ご、ゴホン!でも、やっぱり御客様に命令することなんて出来ませんよ。やるんでしたら伝蔵さんが代わりに命令してください」

 

「俺ですか?」

 

え?いや、それじゃあ意味無い気がするんだけど。それに……してほしいことなんて無いしなぁ。

そう思いつつ俺は魔理沙の方を見る。うーん。何かしてほしいこと、してほしいこと。

その時俺は魔理沙の足元にある箒が目に入った。

ん?……そうだ、この箒の長さなら……!

 

「よし、じゃあそのお前の箒を俺にくれ」

 

「わかった……って、ダメに決まってるだろ!これは私の大事な物なんだぞ!!」

 

えー、やっぱり駄目か。でもなー、結構こっちも切羽詰まってるのが現状だし、何とかしたいのが本音だ。

 

「じゃあ借りるだけだ。今日一日だけ、今日一日だけだから」

 

「……っ~~~!!!わかったよ!……でもなぁ、まだ使うかもしれないのになぁ……」

 

そう言いながら、魔理沙は渋々こちらに箒を渡してくれた。

本当にすまん。でも、俺もこれから大変になってくるから、どうしても譲れなかったんだ。

 

「よし。それじゃあ俺はこれから別のところに行く。魔理沙はどうする?」

 

「私はここにいることにするぜ。色々勉強になると思うしな」

 

そうか、それじゃあこれから俺は一人行動か。話し相手もいなくなるから寂しくなるな……

 

「じゃあ、くれぐれも盗みなんてするなよ?おい?わかってるよな?」

 

「わかってるよ!ったく、あんな大人には成りたくないもんだぜ」

 

おんおん?君あと見た目年齢が二年ぐらい後だったらグーがとんでたからね?気を付けるように。

 

「それじゃあ小悪魔さん。失礼します」

 

「はい。またのお越しをお待ちしています」

 

最後まで完璧だった小悪魔さんに感謝の念を感じながら、俺は部屋から退出して扉を閉めた。きっと次この場所に来るときは、全部終わらせた後のことになるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…よし、それじゃあ早速…」

 

俺は扉を閉めるとすぐに、ある行動に移すことにした。これからすることを思うと気が進まないが、背に腹は代えられないでござる。

俺は魔理沙の箒を床と水平になるように持つ。そして両腕に力をこめーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「せいやっ」

 

箒を折った。

 

……ごめんね。箒くん。君はなにも悪くない。でも僕には君の、木の棒の部分がどうしても必要だったんだ。

うう、良心が痛む。魔理沙は大事な物だって言ってたから、よけいに。

 

でも大丈夫だから。俺の用事が終わったら箒を直してくれるように、同じ魔法使いの奴に頼むから。あのアリスさんなら手先器用だから行けるでしょ。うん。いける。というかいかせる。いってくれないと困る。それに、用件は即行で終わらせて刹那で謝罪に行きますから。それで今回は勘弁してくだしゃあ。

 

木の棒を右手に掴み、上から下に一振りする。いつもの刀と違って十分な重さがないが、大した問題ではないだろう。

 

 

 

 

「剣の代わりも出来たことだし……行きますか」

 

 

 

 

そして俺は歩いていく。

目的地は姉吸血鬼の場所。

残業内容は埃のせいで見え難くなっている場所を見えやすくするだけの簡単なお仕事。

 

 

そして、俺は歩きながらこう思うのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ?俺って魔理沙よりも悪いことしてね?

 

 

 

 

 

 

 

 

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