斬れぬものなど全くない   作:きんつば

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3話 教えること(前編)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人間について考えてみた。

 

 

 

 

 

人間とは頭の良い生き物。

 

自分達より強い動物を仕留めることができるし、一方的に虐殺だってすることだってできる。そして、してしまう。

それは自然界の真理。咎められるようなことなどない。そういうふうに成り立っているから。成り立ってしまうから。

だから、

別に自分達が殺されても文句は言えないはずだ。

別に殺されて食われてもしょうがないはずだ。

別に娯楽として殺されても割りきれるはずだ。

 

だって、そういうものなんだから。

そうやって、人間だって生きてきたんだから。

 

 

 

 

ーーでも、俺は許せなかった。

別に奴らが間違ったことをしてるとは微塵も思わなかった。世の中は弱肉強食だということだって知っていたし、自分達だって同じようなことをしているから。だから、奴らが間違っているとは、俺は少しも思わなかった。

 

ーーーでも、やっぱり俺も人間だったからさ。

人間だったから、同じ人間達が殺されて、動かなくなった姿を見たら悲しかったし、何で殺したんだと叫んだし、生きる気力がなくなって、ただ空だけをみる案山子に成り果てたりもした。何も感じなくなって、青い空が何処までも憎く思えてしまうようになってしまった。

そして、そうなってしまったら、もう、人間ってのはさ、一つのことしか考えられなくなるんだよ。いや、もしかしたらそれは、すべての生物に通じるのかもしれないけどさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーああ、あいつらも同じ目に遭わせてやる、って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、妖夢よ。これから訓練を開始する」

 

「はい!」

 

俺は今、白玉楼にて妖夢の訓練を開始しようとしている。

俺が妖夢を正しい道に導くと決心してから次の日、早速訓練を始めようということになった。でも、最初なんでね。軽く妖夢ちゃんの力量を、最初は見極めるようにつとめようと思うでござる。

 

「じゃあ、まず白玉楼の周り50週」

 

「え?」

 

「ああ、もちろん妖力とか使うなよ?自分の足でしっかりと走ってこい」

 

妖夢が本気ですか、というような驚愕の表情を顔に浮かべる。もちろん、本気と書いてマジと読むくらい本気である。

 

まぁ俺も白玉楼の周りを50週も妖夢ちゃんが走れるとは思わない。むしろ走れない、という前提で行うのがこの訓練である。

この訓練の狙いとして、とりあえずはどれくらい体力があるのかということと、どれ程の根性で取り組むことが出来るのかということ。この二つを、この、伝蔵式訓練法・体力編(偽)で調べるというわけである。

…さあ、妖夢ちゃんのガッツを俺に見せてくれ。

 

「……わかりました!では行ってきます!」

 

「おう。あ、ちなみに2時間以内なーーって、ちょっと待て」

 

「?他にも何かあるのでしょうか」

 

「いや、さっきから気になってたんだが、…妖夢の周りをふよふよ漂ってる霊魂はなんだ?」

 

白玉楼には霊魂がたくさん漂ってるからさ、別に霊魂自体は珍しくないんだけど。何かあれだけ妖夢ちゃんのとこにいるんだよね。なに?とりつかれてるの?呪われてるの?

 

「えっと、これは私の半霊です」

 

…ハンレイ?ただの幽霊じゃなくて?いや、ハンレイっていう幽霊の中の種類なのか?

うーん、わからんなぁ。…あっ、そうか。妖夢ちゃんは私のハンレイって言ってたよな。ということはあの霊だけは妖夢ちゃんにとって特別……つまり、ペットとかそんな感じか?ではハンレイっていうのはあの霊の名前か。成る程、だからあの霊魂はご主人様である妖夢ちゃんといつも一緒なのか。

 

「成る程。すまないな、引き留めてしまって。では行ってこい」

 

「はい!わかりました!」

 

そうかー、この白玉楼では霊魂をペットに出来るのかー………って、

 

「ちょっと戻ってこーい!」

 

「ええー!?はい、わかりましたー!…で、他に何か?」

 

「いや、その、ハンレイと一緒に走るのか?」

 

何かハンレイも一緒にランニングについていっちゃってるんだが。…いやいや、走るときぐらい、ついていかせなくてもよくね?

ハンレイだって生きてるんだよ?……いや、死んでるからハンレイ。で、でも!ハンレイだって意思があるはずだよね!?だってあんなに元気よく妖夢ちゃんの周りぐるぐるしてるんだもん!何かしらの意識はあるに決まってる!だったら、50週もの苦行な挑戦を一緒に行う必要なんてないんだよ!俺だったら「イジメですか?」って真顔で問いかけるもの!!だから、だから……!

そんな俺の思いとは裏腹に、妖夢ははっきりとした声で、言った。

 

「はい!だって私と半霊はーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一心同体なんですから!!」

 

そう元気いっぱいに声を出し、妖夢ちゃんは言った。言いきった。俺はその言葉から、妖夢ちゃんの伝えたいことをしっかりと認識することができた。

…そうか、もう、妖夢ちゃんとハンレイの間には立派な絆が出来ているのか。それも友達同様、家族にだって負けないぐらいの。…そうだよな。もし、ハンレイだって嫌だったら何らかのアクションを起こすはずだ。だって、嫌なことは嫌だって言える、そういう、固い絆で結ばれているんだから。

だったら俺が言うことは何もない。この伝蔵式訓練法・体力編(笑)だって、きっと、二人なら乗り越えていけるだろうよ。

 

「ーーそうか。すまないな、つまらないこと聞いちまって」

 

「は、はぁ。」

 

「よし、じゃあ今度こそ行ってこいーーーハンレイと一緒に、な」

 

「はい!では行ってきます!」

 

フッ、もしかしたら俺が妖夢ちゃんを正しい道に導けなくても、ハンレイなら、あるいはーーー

 

 

 

 

 

ーー2時間後

 

 

 

 

「ハァ、ハァ」

 

これで、37週目……あれ?この子めちゃくちゃ速いんですけど?おい、誰だよ走りきれないとか言った奴。このままじゃ完走しちゃうよ?

ま、まぁ?流石に時間も時間なんで?もう次の訓練に移ることにしますけど?べっ、別に悔しくなんかないんだから!

 

「よし、妖夢。もうやめていいぞ」

 

「ハァ、ハァ、でも、まだ、走りきって、ません」

 

「いや、初めてにしては上出来だ。次の訓練に移る。その前に少し休んでおけ」

 

「…では、そうさせていただきます」

 

そう言って妖夢は走るのをやめ、白玉楼の中に入っていった。

ふむ。体力、根性共に十分あるな。なら、もう本格的な訓練に入るか。もっとも、これが最後の訓練。そして、これは訓練とは言えないがーー

 

 

……

 

 

「それでは、次の訓練を始める」

 

「はい!」

 

さっきからこの子いい返事するよね。いやーされた方もすごくいい気分になるからとても嬉しいことです。

こんな元気な子、俺の周りには今までいなかったから、なんか新鮮だな。いつも俺の周りには人の家に勝手に入る程度の能力の持ち主とか、いい年してお人形に全力を尽くす魔法使いとか、右腕に包帯をぐるぐる巻きにして「中二病ですか?」ってツッコミ待ちしてるような奴しかいなかったからね。本当、普通な子が知り合いになって良かった……

 

だが、だからこそ俺は次の訓練のことを言いづらいと感じていた。こんなにやる気に満ちあふれている子にこの訓練はさせたくなかった。

…実は昨夜、あのまま白玉楼に泊まらせていただいたわけなんだが、その時俺は自分がどうやって剣を学んだかな~と過去を振り返ってみたんだ。

そしたらなんと…

 

あれ?俺、ただ剣振ってただけだよね?…という結論に行き着いたのだ。

 

…これはまずい。だって、だいだい教える方は自分がこうやったから強くなれたとか、自分のあのやり方は悪かったからそこを改善して教えよう、とかそういう、「経験」をもとにして指導するものなのだ。

逆に俺が、自分のそのままの「けいけん(笑)」を言って教えても、は?なに言ってんのコイツ?となるわけである。

それに俺は実践などは感覚でやるタイプだ。だから実践に関しても「考えるな…感じろ」としか言えないのである。くそ、どうすればいい?と苦悩に苦悩を重ねて一晩を過ごした。そして、解決策を思いつくことはなかった。

なので、俺は教えるのを諦めた。

 

だがら、妖夢には俺の代名詞とも言えるものを、幻想郷一と紫がいう由縁のものを、教えなくして会得してもらうことにした。

つまり、見て覚えてくれませんか?戦法である。

 

 

「よし、じゃあこの二つの大岩に注目してくれ」

 

「…あれ?こんなの白玉楼にありましたっけ」

 

「いや、なかっただろう。これは俺が紫に頼んで運んでもらったものだ」

 

俺は自分が教えられないと知るやいなや、早速この全長8メートル以上ある大岩を紫に運んでもらうよう手配した。…もう、俺にはこれぐらいしかないよ!ただ、斬ることしかできないよ!

 

 

「いいか、妖夢」

 

「は、はい」

 

 

ごめんな。ほんっとーにごめんな。こんなことしか出来なくて。でも、俺は妖夢ちゃんなら出来るって信じてるから!信じれば救われますよね。きっと。そして、紫に「やはり天才か……」っ言わせてやってくださいよー!

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前にはこの岩を斬ってもらう。勿論、妖力などを抜きにして…真っ二つに」

 

 

 

 

…言っちゃった。もう、あと戻りはできへん。

 

 

 

 

 

 

 

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